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噂を広げろⅠ
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「ディアン公爵は人望がある方なので、ストレートにディアン公爵がQという人物で、サイスト・クローバー侯爵を殺害したと伝えるのは難しいかと思います。噂が広がれば、悪い方向に物事が進んでしまうような気がしてなりません」
「確かにそうじゃな。ディアン公爵が真犯人だったなんて公表したら暴動などが起きかねん」
「それほど人望が厚いのですか?」
俺がそう質問をすると、アーツさんが「うむ」と頷いた。
「市民からの人気が高い。言い方は悪いが特に下民からの人気じゃ。カルカラは元々市民と貴族の格差が激しかった。それは土地の所有権を貴族達が大幅に規制していたから、下民は商売を自由にできなかった。彼等ができる仕事と言えば畑を耕すことしかできなかったのだ。理由は2点あって、1つ目は、自由に商売が出来ると畑仕事をする人が少なくなるから。2つ目は商売に成功し、下剋上を果たした下民にヘコヘコしなければならないのを貴族のプライドが許さなかった」
「成程。変なプライドが邪魔をしていたのですね」
「そうだ。しかし、ディアン公爵はそれは可笑しい。皆が平等にチャンスがあるべきと、貴族で大々的に発言したのが彼だったのだ」
「アーツさんやダイヤ侯爵は何とも思わなかったのですか?」
「私は血が恵まれていただけです。正直、自信を持って戦える商売の実力などはありませんから」
「ワシはカルカラ王に相談したことはあるんじゃがな。話が一方通行で進まんかったから、いつしか諦めていた」
「成程。そういうことでしたか」
「じゃあ、ディアン公爵って凄い人なんですね」
ミクちゃんがそう言うとダイヤ侯爵は頷き、アーツさんは「そうじゃな」と同意していた。
「元々、この国は税も多めに取っておりました。しかし、市民への還元率は少なかったのです。その問題をディアン公爵の努力のお陰で税を20%から10%に下げる事ができました」
「10%も下げたんですか!?」
「そうです。その代わりに、国がより発展するように頑張ってくれ! その一言でここ数年で変りました。ディアン公爵は15歳の時にはすでに商売を営んでおりましたので、長い間貴族という身分でありながら、下民の人達と手を組んで売れる農作物を目指しながら商売に奮闘しておりました。ですので市民の不満と、この国の本当に必要な物と不必要な物の見極めができていたので、あらゆる改革に成功したのです」
「当然、ディアン公爵が小さいときは、他の貴族からの風当たりが強かったからのう。今の50代以上の貴族達は皆敵じゃった。しかし、ディアン公爵の実力は凄まじく、農業、漁業、鉱石、武器と様々な商売を行って、国の法を変えることが出来るほどの地位に上り詰めたのだ。そう考えるとナリユキ殿みたいじゃな」
「私は色々と失敗していますよ。自分の商売は総合的に見ると上手くいっています。というか、元々マーズベルの食べ物や鉱石はヘビーユーザーがいたので、赤字になるような見通しは無かったんですよ。ただ、国民がやっているお店とかはやっぱり失敗しているものもあります」
「それは人が良すぎないか?」
と、アーツさんに笑われた。
「私は皆が幸せになってほしいので、赤字で悩むとか止めてほしいんですよ」
俺がそう言うとアーツさんもダイヤ侯爵も微笑んでいた。
「話を聞けば聞くほどディアン公爵と似ているところがありますね」
「そうじゃの。それで言うとナリユキ殿も裏切るって形になるがの」
「冗談はよして下さいアーツ様。もしそうなってしまえば、我々は太刀打ちできません。ただ死を待つのみになってしまいます」
と、凄いブラックジョークを言ってきた。何か複雑な気持ちになるんだけど。
「ディアン公爵――相当な人気者ですね」
ミクちゃんがそう言うとダイヤ侯爵が――。
「そうなんです。ですので、私ですらほんの少し信じられていない部分があるくらいなので」
「ワシもじゃな。ディアン公爵は虫も殺さない善人って噂があるくらいじゃからのう」
虫も殺さない――どんだけ善人なんだ。もはや話を聞いている限りだと、コードとノックの情報が実は嘘なんじゃないか? って疑ってしまうんだけど。
「ですので、事件についてとディアン公爵について聞く必要がありますね。そのなかで、ディアン公爵に無関心そうな人だけに、ディアン公爵が犯人だったという情報を共有したほうがいいかもしれません」
「そして、事件に関心がある人間にはディアン公爵の情報は伏せつつも、真犯人は別にいるという風に誘導するような記憶を与えるのじゃ。そもそも、金色蛇の仮面を付けた男に殺害されたという情報は出回っていなかったからのう」
「そうでしたか。しかし金色蛇の仮面そのものは見たことありましたよね?」
「そうじゃな。そのような人間がいるという話は聞いたことがある」
「その金色蛇の仮面を付けた男が、他国の重鎮と対談しているという話も噂では聞いたことがありましたので――しかし、その正体がディアン公爵だったのは妙に納得がいきますね」
「ログウェルを建国したのが創世なんです。その幹部という事もあり、コードもノックも敬意を払っているようでした」
「それは創世の幹部という事もあるでしょうが、人としての敬意もありそうですね――」
ダイヤ侯爵はそう言って複雑な表情をしていた。
「いずれにしても少し準備しますので、無断で商売を始めてもいいところ教えて頂けませんか?」
「いいでしょう。それなら、ダイヤ侯爵家の土地をお貸しします。ついて来て下さい」
ダイヤ侯爵が気を利かせてくれて俺は噂を広めるために怪しいお店の準備に取り掛かることになった。
「確かにそうじゃな。ディアン公爵が真犯人だったなんて公表したら暴動などが起きかねん」
「それほど人望が厚いのですか?」
俺がそう質問をすると、アーツさんが「うむ」と頷いた。
「市民からの人気が高い。言い方は悪いが特に下民からの人気じゃ。カルカラは元々市民と貴族の格差が激しかった。それは土地の所有権を貴族達が大幅に規制していたから、下民は商売を自由にできなかった。彼等ができる仕事と言えば畑を耕すことしかできなかったのだ。理由は2点あって、1つ目は、自由に商売が出来ると畑仕事をする人が少なくなるから。2つ目は商売に成功し、下剋上を果たした下民にヘコヘコしなければならないのを貴族のプライドが許さなかった」
「成程。変なプライドが邪魔をしていたのですね」
「そうだ。しかし、ディアン公爵はそれは可笑しい。皆が平等にチャンスがあるべきと、貴族で大々的に発言したのが彼だったのだ」
「アーツさんやダイヤ侯爵は何とも思わなかったのですか?」
「私は血が恵まれていただけです。正直、自信を持って戦える商売の実力などはありませんから」
「ワシはカルカラ王に相談したことはあるんじゃがな。話が一方通行で進まんかったから、いつしか諦めていた」
「成程。そういうことでしたか」
「じゃあ、ディアン公爵って凄い人なんですね」
ミクちゃんがそう言うとダイヤ侯爵は頷き、アーツさんは「そうじゃな」と同意していた。
「元々、この国は税も多めに取っておりました。しかし、市民への還元率は少なかったのです。その問題をディアン公爵の努力のお陰で税を20%から10%に下げる事ができました」
「10%も下げたんですか!?」
「そうです。その代わりに、国がより発展するように頑張ってくれ! その一言でここ数年で変りました。ディアン公爵は15歳の時にはすでに商売を営んでおりましたので、長い間貴族という身分でありながら、下民の人達と手を組んで売れる農作物を目指しながら商売に奮闘しておりました。ですので市民の不満と、この国の本当に必要な物と不必要な物の見極めができていたので、あらゆる改革に成功したのです」
「当然、ディアン公爵が小さいときは、他の貴族からの風当たりが強かったからのう。今の50代以上の貴族達は皆敵じゃった。しかし、ディアン公爵の実力は凄まじく、農業、漁業、鉱石、武器と様々な商売を行って、国の法を変えることが出来るほどの地位に上り詰めたのだ。そう考えるとナリユキ殿みたいじゃな」
「私は色々と失敗していますよ。自分の商売は総合的に見ると上手くいっています。というか、元々マーズベルの食べ物や鉱石はヘビーユーザーがいたので、赤字になるような見通しは無かったんですよ。ただ、国民がやっているお店とかはやっぱり失敗しているものもあります」
「それは人が良すぎないか?」
と、アーツさんに笑われた。
「私は皆が幸せになってほしいので、赤字で悩むとか止めてほしいんですよ」
俺がそう言うとアーツさんもダイヤ侯爵も微笑んでいた。
「話を聞けば聞くほどディアン公爵と似ているところがありますね」
「そうじゃの。それで言うとナリユキ殿も裏切るって形になるがの」
「冗談はよして下さいアーツ様。もしそうなってしまえば、我々は太刀打ちできません。ただ死を待つのみになってしまいます」
と、凄いブラックジョークを言ってきた。何か複雑な気持ちになるんだけど。
「ディアン公爵――相当な人気者ですね」
ミクちゃんがそう言うとダイヤ侯爵が――。
「そうなんです。ですので、私ですらほんの少し信じられていない部分があるくらいなので」
「ワシもじゃな。ディアン公爵は虫も殺さない善人って噂があるくらいじゃからのう」
虫も殺さない――どんだけ善人なんだ。もはや話を聞いている限りだと、コードとノックの情報が実は嘘なんじゃないか? って疑ってしまうんだけど。
「ですので、事件についてとディアン公爵について聞く必要がありますね。そのなかで、ディアン公爵に無関心そうな人だけに、ディアン公爵が犯人だったという情報を共有したほうがいいかもしれません」
「そして、事件に関心がある人間にはディアン公爵の情報は伏せつつも、真犯人は別にいるという風に誘導するような記憶を与えるのじゃ。そもそも、金色蛇の仮面を付けた男に殺害されたという情報は出回っていなかったからのう」
「そうでしたか。しかし金色蛇の仮面そのものは見たことありましたよね?」
「そうじゃな。そのような人間がいるという話は聞いたことがある」
「その金色蛇の仮面を付けた男が、他国の重鎮と対談しているという話も噂では聞いたことがありましたので――しかし、その正体がディアン公爵だったのは妙に納得がいきますね」
「ログウェルを建国したのが創世なんです。その幹部という事もあり、コードもノックも敬意を払っているようでした」
「それは創世の幹部という事もあるでしょうが、人としての敬意もありそうですね――」
ダイヤ侯爵はそう言って複雑な表情をしていた。
「いずれにしても少し準備しますので、無断で商売を始めてもいいところ教えて頂けませんか?」
「いいでしょう。それなら、ダイヤ侯爵家の土地をお貸しします。ついて来て下さい」
ダイヤ侯爵が気を利かせてくれて俺は噂を広めるために怪しいお店の準備に取り掛かることになった。
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