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パルムス公爵Ⅱ
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俺はその後、パルムス公爵に一通りの説明を行った。
「成程。しかしながらその話が正しかったとしても、残念ながら結論を変えることはできません」
パルムス公爵の瞳には強い意志がこもっていた。絶対に認めないという強い意志が――。
「どうしてですか!? 私もナリユキ閣下に知性の略奪と献上で記憶を共有してもらいましたが、犯人は――」
「ディアン侯爵と言いたいのだろう? それにディアン公爵は生きていると」
「ええ。どこかへ雲隠れしているのです」
「それでもだ。これ以上話すことは無い。どうかお引き取り願えますか?」
パルムス公爵の瞳を見て俺は今の状況では何を言っても無駄な気がした。何を言っても話は一方通行で終わるだろう――。
「分かりました。今回はこの辺りで帰ります。お時間を取らせてしまい申し訳ございません」
「そうですか」
「失礼します」
俺がそう言うと、ダイヤ侯爵が「もっと話をすれば分かるかもしれないですよ!?」と言ってきた。ミクちゃんも本当に諦めるの? と目で訴えてきている。
「時間の無駄ですからね」
俺がそう言って席を立って席を立つと、ミクちゃん、ダイヤ侯爵が慌ててついてきた。
「ワシですら知らん何かと関りがありそうじゃな。絶対に引きはがしてやるぞ。その仮面」
「何の事やら」
そんな会話をした後、鼻を鳴らして俺の後についてきたアーツさん。その後は一度裁判所から出て、表にあるベンチに腰掛けた。
「何で諦めんたんですか? ナリユキ閣下」
「そうですよ。確かに頑固ではありましたけど」
「多分、裏の力が加わっているんだろうな――」
「裏の力ですか……」
ダイヤ侯爵はそう呟いた。裏の力と言っても、ディアン公爵は創生の人間だ。だから、創生の力が働いてるのは何ら不思議ではないけど、カルカラにいる創生の幹部は、ディアン公爵だけじゃなかったって事か――?
「どうかされましたか? ナリユキ様?」
「大丈夫だ」
「裏の力に心当たりがあるのか?」
アーツさんが俺にそう問いかけてきた。年齢も年齢だからある程度心を見透かされているんだろう。
「何となくですけどね。しかしその裏の力がこの国でどういう立ち位置なのか分からないので――」
「それはワシにも言えない事か――?」
俺はそう言われてしばらく悩んだ後、アーツさんに創生に関して、知っている情報を全て提供した。殺戮の腕の事についても、コヴィー・S・ウィズダムさんの話についてもだ。
「確かに奴の頭脳なら殺戮の腕とやら作ることはできるな。その組織についてはダイヤ侯爵に情報を共有してもよいぞ」
「そうでしたか。それなら安心です」
「教えて頂けるのですか?」
「ええ。頭を貸してください」
俺がそう言うとダイヤ侯爵は再び俺に頭を差し出してくれた。ダイヤ侯爵にも創生に関する情報を全て共有すると、ダイヤ侯爵は唖然としていた。
「こんな組織があったのですか――」
「そうです」
「バーナム大聖堂は、創生が造った可能性が高いという事ですね? ディアン公爵が通っていたくらいなので」
「そういう事だと思います。創生の幹部は、全員アルファベットという、私達の元の世界の言葉が使われておりますが、正体が割れているRとQは2人共貴族なので、大聖堂のステンドグラスに描かれている貴族は、創生の幹部という認識で間違いないでしょう」
「でもあの天使はなんじゃろうな。残念ながら、創生という組織があったのも驚きではあったが、確かに大昔に、ミロク様を信仰している集団がいると聞いたことがあるな。だとすると、この国もミロク様と関りがあるのじゃろうか――」
「そう考えても不思議ではありませんが、ミロクさんの話は今のところ置いておきましょう。それより重要なのは、この国の誰が創生と関りがあるのかどうかです」
「そうですね。まずは市民に、事件に関する情報を広めてもらうのはどうでしょうか?」
「そうなると、ナリユキ閣下が知性の略奪と献上を大勢の人に使うしかない」
「ただ下手にやれば、行動が目立ってしまうのう」
ミクちゃん、ダイヤ侯爵、アーツさんがそうアイデアを出してくれた。
「そうですね。因みにこの人に報せておけば、話をひっくり返すことができるかも? っていう人物はいますか?」
俺の質問にアーツさんもダイヤ侯爵も首を左右に振った。
「そうですか――」
これは思ったよりカルカラに滞在することになるな。
「どうやって広めるかは今思いつきました」
俺がそう言うと3人は「おお!」と声をあげた。
「テーマは強くなれるという事です」
「強くなれる? それまた随分変わった話じゃな。なかなか面白そうではないか」
アーツさんの興味を引けた。ミクちゃんは目をキラキラさせており、ダイヤ侯爵はまだしっくりときていない感じだった。
「人をいっぱい集められて、口コミも広げることができて、人に触れる機会を作れる方法――規制されていない場所で、例えばですけど【誰でも強くなれる嘘のような本当の話】とキャッチコピーを作って、私が知性の略奪と献上で、カルベリアツリーのダンジョンで、培った魔物やスキルに関する情報を共有します。その時に、オマケみたいな形で事件についての記憶を共有するのです。全員に事件についての記憶を共有するのもアレですから、サイスト・クローバー侯爵の事件への関心度が高い人に、その記憶を共有します。それを無料で何日か続けていれば、真犯人はディアン公爵だと口に出す人が増えて、町に話が広がっていくはずです」
「――凄いな。アイデア自体は悪くない。お主がマーズベルの国主になり、あらゆる農作物や鉱石、それに観光客が多くてマーズベルに利益を生んでいる片鱗を少し見た気がする。はっきり言って恐ろしい」
「流石ですね――しかし、気になる点は1つだけありますね」
ダイヤ侯爵にそう言われたので「何ですか?」と俺は返した。
「成程。しかしながらその話が正しかったとしても、残念ながら結論を変えることはできません」
パルムス公爵の瞳には強い意志がこもっていた。絶対に認めないという強い意志が――。
「どうしてですか!? 私もナリユキ閣下に知性の略奪と献上で記憶を共有してもらいましたが、犯人は――」
「ディアン侯爵と言いたいのだろう? それにディアン公爵は生きていると」
「ええ。どこかへ雲隠れしているのです」
「それでもだ。これ以上話すことは無い。どうかお引き取り願えますか?」
パルムス公爵の瞳を見て俺は今の状況では何を言っても無駄な気がした。何を言っても話は一方通行で終わるだろう――。
「分かりました。今回はこの辺りで帰ります。お時間を取らせてしまい申し訳ございません」
「そうですか」
「失礼します」
俺がそう言うと、ダイヤ侯爵が「もっと話をすれば分かるかもしれないですよ!?」と言ってきた。ミクちゃんも本当に諦めるの? と目で訴えてきている。
「時間の無駄ですからね」
俺がそう言って席を立って席を立つと、ミクちゃん、ダイヤ侯爵が慌ててついてきた。
「ワシですら知らん何かと関りがありそうじゃな。絶対に引きはがしてやるぞ。その仮面」
「何の事やら」
そんな会話をした後、鼻を鳴らして俺の後についてきたアーツさん。その後は一度裁判所から出て、表にあるベンチに腰掛けた。
「何で諦めんたんですか? ナリユキ閣下」
「そうですよ。確かに頑固ではありましたけど」
「多分、裏の力が加わっているんだろうな――」
「裏の力ですか……」
ダイヤ侯爵はそう呟いた。裏の力と言っても、ディアン公爵は創生の人間だ。だから、創生の力が働いてるのは何ら不思議ではないけど、カルカラにいる創生の幹部は、ディアン公爵だけじゃなかったって事か――?
「どうかされましたか? ナリユキ様?」
「大丈夫だ」
「裏の力に心当たりがあるのか?」
アーツさんが俺にそう問いかけてきた。年齢も年齢だからある程度心を見透かされているんだろう。
「何となくですけどね。しかしその裏の力がこの国でどういう立ち位置なのか分からないので――」
「それはワシにも言えない事か――?」
俺はそう言われてしばらく悩んだ後、アーツさんに創生に関して、知っている情報を全て提供した。殺戮の腕の事についても、コヴィー・S・ウィズダムさんの話についてもだ。
「確かに奴の頭脳なら殺戮の腕とやら作ることはできるな。その組織についてはダイヤ侯爵に情報を共有してもよいぞ」
「そうでしたか。それなら安心です」
「教えて頂けるのですか?」
「ええ。頭を貸してください」
俺がそう言うとダイヤ侯爵は再び俺に頭を差し出してくれた。ダイヤ侯爵にも創生に関する情報を全て共有すると、ダイヤ侯爵は唖然としていた。
「こんな組織があったのですか――」
「そうです」
「バーナム大聖堂は、創生が造った可能性が高いという事ですね? ディアン公爵が通っていたくらいなので」
「そういう事だと思います。創生の幹部は、全員アルファベットという、私達の元の世界の言葉が使われておりますが、正体が割れているRとQは2人共貴族なので、大聖堂のステンドグラスに描かれている貴族は、創生の幹部という認識で間違いないでしょう」
「でもあの天使はなんじゃろうな。残念ながら、創生という組織があったのも驚きではあったが、確かに大昔に、ミロク様を信仰している集団がいると聞いたことがあるな。だとすると、この国もミロク様と関りがあるのじゃろうか――」
「そう考えても不思議ではありませんが、ミロクさんの話は今のところ置いておきましょう。それより重要なのは、この国の誰が創生と関りがあるのかどうかです」
「そうですね。まずは市民に、事件に関する情報を広めてもらうのはどうでしょうか?」
「そうなると、ナリユキ閣下が知性の略奪と献上を大勢の人に使うしかない」
「ただ下手にやれば、行動が目立ってしまうのう」
ミクちゃん、ダイヤ侯爵、アーツさんがそうアイデアを出してくれた。
「そうですね。因みにこの人に報せておけば、話をひっくり返すことができるかも? っていう人物はいますか?」
俺の質問にアーツさんもダイヤ侯爵も首を左右に振った。
「そうですか――」
これは思ったよりカルカラに滞在することになるな。
「どうやって広めるかは今思いつきました」
俺がそう言うと3人は「おお!」と声をあげた。
「テーマは強くなれるという事です」
「強くなれる? それまた随分変わった話じゃな。なかなか面白そうではないか」
アーツさんの興味を引けた。ミクちゃんは目をキラキラさせており、ダイヤ侯爵はまだしっくりときていない感じだった。
「人をいっぱい集められて、口コミも広げることができて、人に触れる機会を作れる方法――規制されていない場所で、例えばですけど【誰でも強くなれる嘘のような本当の話】とキャッチコピーを作って、私が知性の略奪と献上で、カルベリアツリーのダンジョンで、培った魔物やスキルに関する情報を共有します。その時に、オマケみたいな形で事件についての記憶を共有するのです。全員に事件についての記憶を共有するのもアレですから、サイスト・クローバー侯爵の事件への関心度が高い人に、その記憶を共有します。それを無料で何日か続けていれば、真犯人はディアン公爵だと口に出す人が増えて、町に話が広がっていくはずです」
「――凄いな。アイデア自体は悪くない。お主がマーズベルの国主になり、あらゆる農作物や鉱石、それに観光客が多くてマーズベルに利益を生んでいる片鱗を少し見た気がする。はっきり言って恐ろしい」
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ダイヤ侯爵にそう言われたので「何ですか?」と俺は返した。
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