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パルムス公爵Ⅰ
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俺達が喫茶店を出て訪れたのは大聖堂のような造りをした建造物が街から少し外れた場所に構えていた。
「今日はいるかな」
ダイヤ侯爵はそう呟きながら、鎧を着た門番に話しかけた。
「これはこれはダイヤ侯爵、アーツ様」
「すまないね。今日はパルムス公爵に会いたいと申し出ている客人を連れてきた」
ダイヤ侯爵がそう言って大きく開いた手を、後ろにいる俺達に方に向けて紹介してくれた。
「ナリユキ・タテワキです」
「ミク・アサギです」
すると、2人の門番は「おお!」と驚いた声をあげていた。
「マーズベル共和国の国主様と聖女様でしたか。お目にかかれて光栄です」
2人にそう挨拶をされて名前も名乗られた。今更だけど門番でも知っているという事は一般人からの認知も高いって事だよな。
「パルムス公爵は中にいらっしゃいますよ。しかし、どのようなご用件でしょうか? 差し支えなければ教えていただけませんか? 大変申し上げにくいのですが、マーズベルの国主様と聖女様といえど、理由なく施設内に入ることは国の規則によって禁じられているのです」
「それはですね――」
俺が説明をしようとすると、ダイヤ侯爵が「任せて下さい」と言って前に出た。
「サイスト・クローバー侯爵の事件で新しい情報を掴んだ。ナリユキ閣下がそれをパルムス公爵に情報提供しようとしている」
すると、門番2人が顔を見合わせて驚いていた。
「あの、凄惨な事件の新情報ですか――いいでしょう。お通り下さい」
「すまない」
俺達はダイヤ侯爵が説明してくれたお陰で通る事ができた。仮に俺が説明していればどのような情報ですか? と聞かれていたかもしれないので、要領が分かっているダイヤ侯爵に任せて正解だったな。
「相変わらず堅苦しい連中ばかりじゃの」
中に入るなり、アーツさんが周りを見渡してそう言った。確かに施設内にいる人達は一般人も貴族が混在しているが、近寄りがたい雰囲気をまとった人間ばかりだった。
「何か一気空気が変わったね」
「そうだな。なかなか重たい空気出ているよな」
俺とミクちゃんがそう話をしていると、ダイヤ侯爵が「いました」と呟いた。ダイヤ侯爵が指したのはエントランスにあるカフェコーナーで新聞を見ながらコーヒーを飲んでいる中年男性がいた。
パーマをしているようなクルクルの茶髪でセンターパートしている。鼻が長い白人の男性だった。黒縁の丸眼鏡をかけた黒いスーツという出で立ちだ。何か――イメージと違う。そもそも何でこの人、貴族の皆が着ているような服を着ていないんだ?
「パルムス公爵」
ダイヤ侯爵がそう声をかけると、パルムス公爵が俺達とギロリと睨んできた。
「相変わらず愛想の無い奴じゃの」
アーツさんがそう言うと――。
「それが私なので――で? アーツ様とダイヤ侯爵という珍しい組み合わせな上に、そこにいる2人は誰だ? 纏っているオーラといい、鑑定士でステータスを視る事ができない事を考えると相当な手練れはあるが」
「この御二方は、マーズベル共和国のナリユキ・タテワキ閣下とミク・アサギ様です」
「成程――そうか」
――リアクション薄――声、ちっちゃ!
「なかなか個性的な人だね……」
コミュ力オバケのミクちゃんですらちょっと戸惑うって何なんだ。
「今日は何をしにここへ?」
「実はサイスト・クローバー侯爵の件で新しい情報を入手しましたので、是非ナリユキ閣下の話を聞いて頂きたいのです」
「ほう。どんな情報だ?」
「スペード侯爵家の人間の中に容疑者はいないというお話です」
俺がそう言うと、パルムス公爵は眉間に皺を寄せて、明らかに不機嫌な表情になってしまった。
「話にならないですね。事件の事は本当に知っているのですか?」
もう、使いたくない敬語使わなくていいよ――とか思ってしまった。吃驚するくらい高圧的なんだけどこの人。
「それなりの証拠があるのですか?」
「勿論。少し頭を借りていいですか?」
「何故ですか?」
「情報を共有したいのです。私が見た全てをパルムス公爵に――」
俺がそう言うとパルムス公爵は鼻を鳴らした。
「嫌だと言ったらどうするのですか?」
「特に何もしません」
俺がそう言うとパルムス公爵は溜め息をつきながら、手に持っている新聞をテーブルの上に置いて、コーヒーを口に運んだ。
「ナリユキ閣下は確かアードルハイムのガープのユニークスキルを持っていると聞きましたが?」
「はい。そうです」
「知性や記憶を奪うスキルと聞いております。何をされるか分からないのに頭を貸すことはできません」
「事件について記憶を共有するだけですよ。決して貴方の記憶や知性を奪う気はありません」
「信用できませんね」
――クセが凄い。案の定ダイヤ侯爵が「パルムス公爵!」と強い口調になっていた。
「ヤレヤレ。こうなることは何となく分かっていたんじゃが……申し訳ないのう」
「アーツさんが謝る必要はありませんよ」
とは言ってもどうする――。他に権力を持っている人がいればいいんだけどな――。でもむやみやたらに言っても意味が無いし――。
「ではまずは話を聞いて頂けませんか?」
「まあそれならいいでしょう。真犯人がいるという面白い話の裏には何があるのか気になりますし」
――何気に煽ってくるなこの人――まあいいや。
「今日はいるかな」
ダイヤ侯爵はそう呟きながら、鎧を着た門番に話しかけた。
「これはこれはダイヤ侯爵、アーツ様」
「すまないね。今日はパルムス公爵に会いたいと申し出ている客人を連れてきた」
ダイヤ侯爵がそう言って大きく開いた手を、後ろにいる俺達に方に向けて紹介してくれた。
「ナリユキ・タテワキです」
「ミク・アサギです」
すると、2人の門番は「おお!」と驚いた声をあげていた。
「マーズベル共和国の国主様と聖女様でしたか。お目にかかれて光栄です」
2人にそう挨拶をされて名前も名乗られた。今更だけど門番でも知っているという事は一般人からの認知も高いって事だよな。
「パルムス公爵は中にいらっしゃいますよ。しかし、どのようなご用件でしょうか? 差し支えなければ教えていただけませんか? 大変申し上げにくいのですが、マーズベルの国主様と聖女様といえど、理由なく施設内に入ることは国の規則によって禁じられているのです」
「それはですね――」
俺が説明をしようとすると、ダイヤ侯爵が「任せて下さい」と言って前に出た。
「サイスト・クローバー侯爵の事件で新しい情報を掴んだ。ナリユキ閣下がそれをパルムス公爵に情報提供しようとしている」
すると、門番2人が顔を見合わせて驚いていた。
「あの、凄惨な事件の新情報ですか――いいでしょう。お通り下さい」
「すまない」
俺達はダイヤ侯爵が説明してくれたお陰で通る事ができた。仮に俺が説明していればどのような情報ですか? と聞かれていたかもしれないので、要領が分かっているダイヤ侯爵に任せて正解だったな。
「相変わらず堅苦しい連中ばかりじゃの」
中に入るなり、アーツさんが周りを見渡してそう言った。確かに施設内にいる人達は一般人も貴族が混在しているが、近寄りがたい雰囲気をまとった人間ばかりだった。
「何か一気空気が変わったね」
「そうだな。なかなか重たい空気出ているよな」
俺とミクちゃんがそう話をしていると、ダイヤ侯爵が「いました」と呟いた。ダイヤ侯爵が指したのはエントランスにあるカフェコーナーで新聞を見ながらコーヒーを飲んでいる中年男性がいた。
パーマをしているようなクルクルの茶髪でセンターパートしている。鼻が長い白人の男性だった。黒縁の丸眼鏡をかけた黒いスーツという出で立ちだ。何か――イメージと違う。そもそも何でこの人、貴族の皆が着ているような服を着ていないんだ?
「パルムス公爵」
ダイヤ侯爵がそう声をかけると、パルムス公爵が俺達とギロリと睨んできた。
「相変わらず愛想の無い奴じゃの」
アーツさんがそう言うと――。
「それが私なので――で? アーツ様とダイヤ侯爵という珍しい組み合わせな上に、そこにいる2人は誰だ? 纏っているオーラといい、鑑定士でステータスを視る事ができない事を考えると相当な手練れはあるが」
「この御二方は、マーズベル共和国のナリユキ・タテワキ閣下とミク・アサギ様です」
「成程――そうか」
――リアクション薄――声、ちっちゃ!
「なかなか個性的な人だね……」
コミュ力オバケのミクちゃんですらちょっと戸惑うって何なんだ。
「今日は何をしにここへ?」
「実はサイスト・クローバー侯爵の件で新しい情報を入手しましたので、是非ナリユキ閣下の話を聞いて頂きたいのです」
「ほう。どんな情報だ?」
「スペード侯爵家の人間の中に容疑者はいないというお話です」
俺がそう言うと、パルムス公爵は眉間に皺を寄せて、明らかに不機嫌な表情になってしまった。
「話にならないですね。事件の事は本当に知っているのですか?」
もう、使いたくない敬語使わなくていいよ――とか思ってしまった。吃驚するくらい高圧的なんだけどこの人。
「それなりの証拠があるのですか?」
「勿論。少し頭を借りていいですか?」
「何故ですか?」
「情報を共有したいのです。私が見た全てをパルムス公爵に――」
俺がそう言うとパルムス公爵は鼻を鳴らした。
「嫌だと言ったらどうするのですか?」
「特に何もしません」
俺がそう言うとパルムス公爵は溜め息をつきながら、手に持っている新聞をテーブルの上に置いて、コーヒーを口に運んだ。
「ナリユキ閣下は確かアードルハイムのガープのユニークスキルを持っていると聞きましたが?」
「はい。そうです」
「知性や記憶を奪うスキルと聞いております。何をされるか分からないのに頭を貸すことはできません」
「事件について記憶を共有するだけですよ。決して貴方の記憶や知性を奪う気はありません」
「信用できませんね」
――クセが凄い。案の定ダイヤ侯爵が「パルムス公爵!」と強い口調になっていた。
「ヤレヤレ。こうなることは何となく分かっていたんじゃが……申し訳ないのう」
「アーツさんが謝る必要はありませんよ」
とは言ってもどうする――。他に権力を持っている人がいればいいんだけどな――。でもむやみやたらに言っても意味が無いし――。
「ではまずは話を聞いて頂けませんか?」
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