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創世についてⅡ
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「結論から言うとQの正体はストーク・ディアン公爵だった」
「カルディアから手に入れた情報は間違いなかったという事ですね?」
私がそう言うとナリユキ閣下は「ああ」と応えてくれた。
「ただまあ、新しい情報としてはストーク・ディアン公爵には、同じアルファベットのコードネームを持つ部下がいるようだな」
「しかし、そのコードネームは何が由来で付けられているのでしょうか? 単純にファーストネームから取っているのか、セカンドネームから取っているのか。それとも構成員が何らかの意味を持たせて自分達で決めているのか――名前の意味が分かれば特定しやすいと思うのですが……」
「まあ、流石にコードは名前の意味までは知らなかったが、元々ログウェルを創ったのは創世だからな。そして一番驚きだったのが、創世の幹部が、ログウェル王を抜擢したらしい。理由としては、ログウェルを創世の支部みたいな形にする必要があったからだそうだ。ログウェル王が抜擢されたのも、当時神と呼ばれていた人物のことを崇拝していたからだそうだ」
「神か……そう言えば昔そんな呼ばれ方をされていた森妖精がいたな」
「え、知っているんですか? 青龍さん」
ナリユキ閣下が青龍様にそう問いかけると低い声で「そうだな――」と呟いた。
「2,000年程前の事だが――」
青龍様がそう口を開くとナリユキ閣下が「ちょっと待った!」と青龍様の言葉を遮った。
「2,000年前って確か、四龍と龍騎士伝説も2,000年程前じゃなかったですか?」
「そうだが?」
「2,000年前に色々と起きていますね――何かもう凄いとしか言葉が出て来ない――語彙力……」
と、何やらナリユキ閣下はゲッソリとした表情をしていた。
「神ですか……我々はその話は聞いたことがありませんでした」
「それはそうだな。この世界は大きく分けて、余のオストロンがある東の国と、マーズベルとカーネルのような西の国の2つに分類されている。勿論、レンファレンス、ログウェル、アードルハイムも西の国に分類されるな」
私はこの時点で察した――ナリユキ閣下、カーネル王、クロノスの表情を見る限り彼等もその意味が分かったようだ。
「つまり、ログウェルは西の国の状況を知るために創世がログウェルという国を創ったのですか?」
「単純に考えればそうだろうな。如何せん、余はその時、黒龍との一件で、神と呼ばれていた人物の情報はそれほど知らないのだ」
「他に知っている人はいないのですか?」
私がそう問いかけると、青龍様は「そうだな」と難しい表情をしていた。
「そもそも、東も西も黒龍が暴れたせいで大半が亡んだからな。アスモデウスもその時は魔界にいたから、東の国でも知っているのはごく一部ではないだろうか? それこそヴァース島で情報収集するほうが一番いい」
「成程――しかし今ヴァース島にはナリユキ閣下の配下達が情報収集をしております。であれば、ここは私達が行くべきではないかと。ログウェルの国の命令で東の国の土地勘は少しはありますので」
「なんかあまり気持ちのいい情報源じゃないな」
カーネル王がそう嫌味を言ってきたが気にしないでおこう。
「いや、それはまだ急がなくてもいい」
「そうですか」
「神と呼ばれているくらいだ。神と呼ばれている人なんか、この世界では今のところ青龍さんくらいしか聞いたことが無い。そう考えるとZ級の力を持っている可能性がある。俺がカルベリアツリーのダンジョンで強くなったり、マカロフ卿がゾーク大迷宮で強くなったように、短期間でさらに戦闘値を上げる必要がある。今でも十分強いけど、今後は殺戮の腕という強力な武器を持った創世の幹部とぶつかる可能性があるからな」
「私に奪った殺戮の腕を――」
「却下!」
青龍様、カーネル王、クロノスがそう私に反論してきた。ナリユキ閣下の表情を見ると苦笑を浮かべているので、まあ却下ということだろう。それはそうだ。
「まずは俺達が出来ることはストーク・ディアン公爵の足取りを追う事が最優先だろうな。ヴェドラウイルスを何処で製造していたのか? 協力者は創世とログウェル以外で誰がいるのか? 同じアルファベットのコードネームを持つ人物の正体は誰なのか? この辺りを調べることができれば、ストーク・ディアン公爵の行動パターンが読めて、居場所を突き止めることができると思うんだ。理想はアヌビスが倒してくれることだけどな。それで身柄を拘束してこっちに戻ってくれれば何の問題も無い」
私はその発言に驚いた。あのアヌビスという化物がいながら、ストーク・ディアン公爵が逃げることも計算に入れている――。
「あの怪物から逃げ切ることができるのって世界でも限られていると思いますが」
クロノスがそう発言するとナリユキ閣下は「確かにそうだ」と頷く。
「しかしあの殺戮の腕はどうやら、コヴィー・S・ウィズダムさんが関わっているらしいんだ」
「――またあの老人か――」
「カルベリアツリーのダンジョンの魔物の生みの親だからね――確かにあの人が関わっているなら殺戮の腕の性能は相当高い事になるね」
「ルミエールの言う通りだ。だから例えアヌビスがいたとしても逃げられている可能性が高い。流石にアヌビスが負けることはないだろうけどな」
ナリユキ閣下のその話を聞いて、この事件はかなり沼にハマってしまっている気がしてきた。マーズベルにある破壊の石を狙っている事も考えると、創世がとてつもなく大きな事件を起こそうとしている気がしてきた。その第一段階としてヴェドラウイルスの撒布を企んだ――そう考えても違和感はない。
「カルディアから手に入れた情報は間違いなかったという事ですね?」
私がそう言うとナリユキ閣下は「ああ」と応えてくれた。
「ただまあ、新しい情報としてはストーク・ディアン公爵には、同じアルファベットのコードネームを持つ部下がいるようだな」
「しかし、そのコードネームは何が由来で付けられているのでしょうか? 単純にファーストネームから取っているのか、セカンドネームから取っているのか。それとも構成員が何らかの意味を持たせて自分達で決めているのか――名前の意味が分かれば特定しやすいと思うのですが……」
「まあ、流石にコードは名前の意味までは知らなかったが、元々ログウェルを創ったのは創世だからな。そして一番驚きだったのが、創世の幹部が、ログウェル王を抜擢したらしい。理由としては、ログウェルを創世の支部みたいな形にする必要があったからだそうだ。ログウェル王が抜擢されたのも、当時神と呼ばれていた人物のことを崇拝していたからだそうだ」
「神か……そう言えば昔そんな呼ばれ方をされていた森妖精がいたな」
「え、知っているんですか? 青龍さん」
ナリユキ閣下が青龍様にそう問いかけると低い声で「そうだな――」と呟いた。
「2,000年程前の事だが――」
青龍様がそう口を開くとナリユキ閣下が「ちょっと待った!」と青龍様の言葉を遮った。
「2,000年前って確か、四龍と龍騎士伝説も2,000年程前じゃなかったですか?」
「そうだが?」
「2,000年前に色々と起きていますね――何かもう凄いとしか言葉が出て来ない――語彙力……」
と、何やらナリユキ閣下はゲッソリとした表情をしていた。
「神ですか……我々はその話は聞いたことがありませんでした」
「それはそうだな。この世界は大きく分けて、余のオストロンがある東の国と、マーズベルとカーネルのような西の国の2つに分類されている。勿論、レンファレンス、ログウェル、アードルハイムも西の国に分類されるな」
私はこの時点で察した――ナリユキ閣下、カーネル王、クロノスの表情を見る限り彼等もその意味が分かったようだ。
「つまり、ログウェルは西の国の状況を知るために創世がログウェルという国を創ったのですか?」
「単純に考えればそうだろうな。如何せん、余はその時、黒龍との一件で、神と呼ばれていた人物の情報はそれほど知らないのだ」
「他に知っている人はいないのですか?」
私がそう問いかけると、青龍様は「そうだな」と難しい表情をしていた。
「そもそも、東も西も黒龍が暴れたせいで大半が亡んだからな。アスモデウスもその時は魔界にいたから、東の国でも知っているのはごく一部ではないだろうか? それこそヴァース島で情報収集するほうが一番いい」
「成程――しかし今ヴァース島にはナリユキ閣下の配下達が情報収集をしております。であれば、ここは私達が行くべきではないかと。ログウェルの国の命令で東の国の土地勘は少しはありますので」
「なんかあまり気持ちのいい情報源じゃないな」
カーネル王がそう嫌味を言ってきたが気にしないでおこう。
「いや、それはまだ急がなくてもいい」
「そうですか」
「神と呼ばれているくらいだ。神と呼ばれている人なんか、この世界では今のところ青龍さんくらいしか聞いたことが無い。そう考えるとZ級の力を持っている可能性がある。俺がカルベリアツリーのダンジョンで強くなったり、マカロフ卿がゾーク大迷宮で強くなったように、短期間でさらに戦闘値を上げる必要がある。今でも十分強いけど、今後は殺戮の腕という強力な武器を持った創世の幹部とぶつかる可能性があるからな」
「私に奪った殺戮の腕を――」
「却下!」
青龍様、カーネル王、クロノスがそう私に反論してきた。ナリユキ閣下の表情を見ると苦笑を浮かべているので、まあ却下ということだろう。それはそうだ。
「まずは俺達が出来ることはストーク・ディアン公爵の足取りを追う事が最優先だろうな。ヴェドラウイルスを何処で製造していたのか? 協力者は創世とログウェル以外で誰がいるのか? 同じアルファベットのコードネームを持つ人物の正体は誰なのか? この辺りを調べることができれば、ストーク・ディアン公爵の行動パターンが読めて、居場所を突き止めることができると思うんだ。理想はアヌビスが倒してくれることだけどな。それで身柄を拘束してこっちに戻ってくれれば何の問題も無い」
私はその発言に驚いた。あのアヌビスという化物がいながら、ストーク・ディアン公爵が逃げることも計算に入れている――。
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「しかしあの殺戮の腕はどうやら、コヴィー・S・ウィズダムさんが関わっているらしいんだ」
「――またあの老人か――」
「カルベリアツリーのダンジョンの魔物の生みの親だからね――確かにあの人が関わっているなら殺戮の腕の性能は相当高い事になるね」
「ルミエールの言う通りだ。だから例えアヌビスがいたとしても逃げられている可能性が高い。流石にアヌビスが負けることはないだろうけどな」
ナリユキ閣下のその話を聞いて、この事件はかなり沼にハマってしまっている気がしてきた。マーズベルにある破壊の石を狙っている事も考えると、創世がとてつもなく大きな事件を起こそうとしている気がしてきた。その第一段階としてヴェドラウイルスの撒布を企んだ――そう考えても違和感はない。
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