333 / 597
楽園Ⅱ
しおりを挟む
「メルム・ヴィジャさんがこの土の壁に聞けば分かるんじゃないですか?」
「確かに本物の土で出来ているなら大丈夫だが」
「確かに――さっきは樹でサウスを縛り上げていたもんな」
と、ランベリオンが呟いていたけど、それに関しては相変わらず無視していた。メルム・ヴィジャとランベリオンさんとアマミヤさんが仲良くなる未来が見えない。
メルム・ヴィジャが土の壁に触れると――。
「ご主人様。ご指示を下さい」
「何か思ったのと違う――普通に可愛い」
土の壁には目と口がついていた。しかも土の壁は満面の笑みを浮かべている。
「この部屋には何らかの仕掛けがあるのか?」
「ええ。ありますよ」
「それはどのような仕掛けなのだ?」
「火を消すとこの国に関する書物が閲覧できます」
「だそうだ」
そうメルム・ヴィジャが私達に話しかけてきた。
「火は簡単に消せるものなのか?」
「いえいえ。高い戦闘値をお持ちでないとこの特殊な火を消すことはできません。それに聖属性をお持ちでないと難しいです。普段、ここに来られる方は森妖精か幹部の方なので」
森妖精――。森妖精がこんなところに来るんだ?
「ねえねえ土壁さん。その森妖精ってどんな人ですか?」
「これはこれは可愛いお嬢さん。森妖精は数名いますよ。しかし名前をお出しすることはできません」
「我の命令でもか?」
メルム・ヴィジャさんがそう質問してくれた。意外と気が利く魔物で助かる。
「ええ。大変申し訳ございません」
土壁さんはそう言って申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「まあ良い。それで火は聖属性でどうやって消せばいい?」
「聖属性をお持ちの戦闘値が5,000以上の方であれば、あらゆる聖属性のスキルで火を消すことができます。但し、全ての火を同時に消さなければなりません」
「ミク殿なら問題無いな――というか、この中なら聖属性を持っているのがミク殿しかおらん」
「頼めるか小娘?」
頼めるか小娘って――どんな頼み方!? というのはさておき、私は早速、松明の中心の位置についた。
さて――。
私は目を瞑って深呼吸を行った。同時に消さないといけないとなると少し集中力がいる。どれくらいの範囲の同時かは分からないけど、私が立っているこの位置が、寸分の狂いも無いど真ん中とは言い切れないので、スキルが火を消すまでの時間が僅差で出てくるはずだ。
「天使の音」
私がそう唱えると火が一瞬にして消えた。このスキルは本来火を消すだけのスキルでは無い。そよ風のような衝撃波を発して相手を探知することができるスキルだ。その探知した周囲の人間の強さが分かる。まあ敵はいないようだね。
効果範囲が半径20mってそんなに広くないからな~。
ゴゴゴゴゴゴゴ――。
そう音を立てながらここの空間が少し揺れた。感覚でいくと震度2くらいの揺れだ。それほど強い揺れではない。寧ろ音が強烈だ。
「何か出て来たぞ!」
「やったねミクちゃん!」
「凄いな――たった一発で凄い集中力だ」
「上出来だ」
ランベリオンさん、アマミヤさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャという順番で私を褒めてくれた。音がした後ろを振り返ると、壁から何やら土の台が出て来て、その上には巻物が出て来た。お城のような外観といい巻物といい、もしかして創世の幹部の中に日本が好きな人でもいるのだろうか?
「この字の感じ――鍾乳洞にあった石碑と同じね」
「確かにそうだな。全く読めない」
ランベリオンさんとアマミヤさんがそう言っていたので、私もその巻物を見せてもらう事にした。確かに読めない――けどこの字はネットやテレビで見たことがある――。何だったかな――。
「我なら読めるかもしれない。貸してくれ」
そう言われたので一旦メルム・ヴィジャにその巻物を渡した。
「分からん」
思わずズッコケそうになった。分からんのかーい! とも言いたくなったけどキャラ崩壊しそうだから止めよう。
「この字は私も知らないな。どこの言語だ?」
フーちゃんも顔をしかめて「う~ん」と唸っていた。分かるはずもない。だってこの字は私達の世界にあった言語なのだから――。
「ロシア、フランス、スペイン、ポルトガル……イタリア――ラテン語だ!」
私がそう大声で叫ぶとランベリオンさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャは首を傾げていた。
「何だその言語は? 聞いたことが無い」
「私も知らんな」
「勿論我も知らん」
ランベリオンさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャの順にそう感想を述べていた。
「どこかで見たことがあると思ったのはそれが理由ね。字が英語に少し似ていたのもその影響ね」
「ですね。でもラテン語って分かっても読めないんじゃ――そもそもこの世界にラテン語読める人いるんですか?」
私がそう訊くと全員首を左右に振っていた。
「それこそQなら読めるのではないだろうか? Qがもし読めるのであれば、Qを倒してナリユキ殿が知性・記憶の略奪と献上を使ってラテン語を覚えるしかないだろうな。十賢者にも考古学者がいると聞くが、生憎パイプが無いしな」
「ということはQを倒すのは避けては通れない道ですね。とりあえずこの巻物の写しを作りましょう」
私がそう言うと、皆が「奪えばよくない?」と言ってきた。そんな4人一気に言わなくても――。
「この巻物が相手にとってもし貴重な物なら必ず取りにくる。それに戦力総出で来るかもしれない。さっきアヌビスに少しヤバい話を聞いたのよ」
「ヤバい話?」
アマミヤさんがそう訊いて来たので私は「はい」と言って頷いた。
「敵はナリユキさんと同じように複数のユニークスキルを持っている人物かもしれないです」
「かもしれないか――根拠は何なのだ?」
ランベリオンさんがそう訊いてきた。
「確かに本物の土で出来ているなら大丈夫だが」
「確かに――さっきは樹でサウスを縛り上げていたもんな」
と、ランベリオンが呟いていたけど、それに関しては相変わらず無視していた。メルム・ヴィジャとランベリオンさんとアマミヤさんが仲良くなる未来が見えない。
メルム・ヴィジャが土の壁に触れると――。
「ご主人様。ご指示を下さい」
「何か思ったのと違う――普通に可愛い」
土の壁には目と口がついていた。しかも土の壁は満面の笑みを浮かべている。
「この部屋には何らかの仕掛けがあるのか?」
「ええ。ありますよ」
「それはどのような仕掛けなのだ?」
「火を消すとこの国に関する書物が閲覧できます」
「だそうだ」
そうメルム・ヴィジャが私達に話しかけてきた。
「火は簡単に消せるものなのか?」
「いえいえ。高い戦闘値をお持ちでないとこの特殊な火を消すことはできません。それに聖属性をお持ちでないと難しいです。普段、ここに来られる方は森妖精か幹部の方なので」
森妖精――。森妖精がこんなところに来るんだ?
「ねえねえ土壁さん。その森妖精ってどんな人ですか?」
「これはこれは可愛いお嬢さん。森妖精は数名いますよ。しかし名前をお出しすることはできません」
「我の命令でもか?」
メルム・ヴィジャさんがそう質問してくれた。意外と気が利く魔物で助かる。
「ええ。大変申し訳ございません」
土壁さんはそう言って申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「まあ良い。それで火は聖属性でどうやって消せばいい?」
「聖属性をお持ちの戦闘値が5,000以上の方であれば、あらゆる聖属性のスキルで火を消すことができます。但し、全ての火を同時に消さなければなりません」
「ミク殿なら問題無いな――というか、この中なら聖属性を持っているのがミク殿しかおらん」
「頼めるか小娘?」
頼めるか小娘って――どんな頼み方!? というのはさておき、私は早速、松明の中心の位置についた。
さて――。
私は目を瞑って深呼吸を行った。同時に消さないといけないとなると少し集中力がいる。どれくらいの範囲の同時かは分からないけど、私が立っているこの位置が、寸分の狂いも無いど真ん中とは言い切れないので、スキルが火を消すまでの時間が僅差で出てくるはずだ。
「天使の音」
私がそう唱えると火が一瞬にして消えた。このスキルは本来火を消すだけのスキルでは無い。そよ風のような衝撃波を発して相手を探知することができるスキルだ。その探知した周囲の人間の強さが分かる。まあ敵はいないようだね。
効果範囲が半径20mってそんなに広くないからな~。
ゴゴゴゴゴゴゴ――。
そう音を立てながらここの空間が少し揺れた。感覚でいくと震度2くらいの揺れだ。それほど強い揺れではない。寧ろ音が強烈だ。
「何か出て来たぞ!」
「やったねミクちゃん!」
「凄いな――たった一発で凄い集中力だ」
「上出来だ」
ランベリオンさん、アマミヤさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャという順番で私を褒めてくれた。音がした後ろを振り返ると、壁から何やら土の台が出て来て、その上には巻物が出て来た。お城のような外観といい巻物といい、もしかして創世の幹部の中に日本が好きな人でもいるのだろうか?
「この字の感じ――鍾乳洞にあった石碑と同じね」
「確かにそうだな。全く読めない」
ランベリオンさんとアマミヤさんがそう言っていたので、私もその巻物を見せてもらう事にした。確かに読めない――けどこの字はネットやテレビで見たことがある――。何だったかな――。
「我なら読めるかもしれない。貸してくれ」
そう言われたので一旦メルム・ヴィジャにその巻物を渡した。
「分からん」
思わずズッコケそうになった。分からんのかーい! とも言いたくなったけどキャラ崩壊しそうだから止めよう。
「この字は私も知らないな。どこの言語だ?」
フーちゃんも顔をしかめて「う~ん」と唸っていた。分かるはずもない。だってこの字は私達の世界にあった言語なのだから――。
「ロシア、フランス、スペイン、ポルトガル……イタリア――ラテン語だ!」
私がそう大声で叫ぶとランベリオンさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャは首を傾げていた。
「何だその言語は? 聞いたことが無い」
「私も知らんな」
「勿論我も知らん」
ランベリオンさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャの順にそう感想を述べていた。
「どこかで見たことがあると思ったのはそれが理由ね。字が英語に少し似ていたのもその影響ね」
「ですね。でもラテン語って分かっても読めないんじゃ――そもそもこの世界にラテン語読める人いるんですか?」
私がそう訊くと全員首を左右に振っていた。
「それこそQなら読めるのではないだろうか? Qがもし読めるのであれば、Qを倒してナリユキ殿が知性・記憶の略奪と献上を使ってラテン語を覚えるしかないだろうな。十賢者にも考古学者がいると聞くが、生憎パイプが無いしな」
「ということはQを倒すのは避けては通れない道ですね。とりあえずこの巻物の写しを作りましょう」
私がそう言うと、皆が「奪えばよくない?」と言ってきた。そんな4人一気に言わなくても――。
「この巻物が相手にとってもし貴重な物なら必ず取りにくる。それに戦力総出で来るかもしれない。さっきアヌビスに少しヤバい話を聞いたのよ」
「ヤバい話?」
アマミヤさんがそう訊いて来たので私は「はい」と言って頷いた。
「敵はナリユキさんと同じように複数のユニークスキルを持っている人物かもしれないです」
「かもしれないか――根拠は何なのだ?」
ランベリオンさんがそう訊いてきた。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
裏切者には神罰を
夜桜
恋愛
幸せな生活は途端に終わりを告げた。
辺境伯令嬢フィリス・クラインは毒殺、暗殺、撲殺、絞殺、刺殺――あらゆる方法で婚約者の伯爵ハンスから命を狙われた。
けれど、フィリスは全てをある能力で神回避していた。
あまりの殺意に復讐を決め、ハンスを逆に地獄へ送る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる