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乱入者Ⅳ
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私が着いた頃にはちょうどアヌビスがQと対峙しているところだった。
「アリシアだと――?」
Qは私達の気配を感じてこっちに振り向いた。しかし、疑問なのが何故Qがアリシアさんの事を知っているかだ――。森妖精の族長だからアリシアさんを知っているのは不思議ではないけど、初対面なら「アリシアか?」や「ほう――アリシアか」というリアクションでいい筈だ。
「アリシアさん。知り合い?」
「Qの正体はストーク・ディアン公爵なんですよね?」
「そうです」
「で、あるなら私はストーク・ディアン公爵という人間とは会ったことはありません。名前だけは有名なので認知しておりますが――」
「じゃあ今の反応はストーク・ディアン公爵が一方的に知っているという事ですね」
「そうだと思います」
アリシアさんはそう言っていたけど表情を見るからにどこか自信が無さそうだった。
「Q。アリシアさんの事を知っているような口ぶりだったけど知り合い?」
「アリシアよ」
私の疑問は無視で、Qがアリシアさんに声をかけた。
「君はそんなところにいるべき存在では無い。森妖精達を引き連れて我々の所へ来るべきなんだ」
「どういう事だ?」
私が話す前にアヌビスがそう問いかけた。しかし、Qはそれを気にも留めずアリシアさんに話しかけていた。
「どういう意味ですか? さっぱり分からないです」
「その森羅万象というユニークスキル――強すぎると思ったことはないか?」
「確かに強いです。どうして私がこんな力を持っているのか疑問に思う事があります。だから長い間自分の使命を探し続けていた。一時期冒険者になったのもその影響――」
そこまでアリシアさんは喋ると「ハッ」とした表情を浮かべていた。
「喋りすぎたみたいですね」
そこまで聞いたQは何やら満足そうだった。
「君の力はある方によって分け与えられたスキルだ。君が生まれた2,000年程前にね」
2,000年――気が遠くなるな――。てか何でQはそんな事を知っているんだろう。アリシアさんと一体何の関係が――。
「2,000年前か――その時余は封印されていたな」
と、今度はアヌビスが気になる情報を投下してきたけどそれは後で聞こう。
「私にスキルを分け与えた――?」
「そうだ。それで君は森羅万象という強力なスキルを持っているのだ」
「どういう事? スキルを分け与える?」
私がそう質問してもQは無視を続けた。
「君の使命はそのユニークスキルを使って我々とあの方の為に世の中を動かすことだ。君と戦いたくはない。一緒に来て欲しい」
Qはそう言って手を差し伸べて来た。しかしアリシアさんは、Qの事をキッと鋭い目つきで睨んでいた。
「最初から最後まで出鱈目を――この世界で生まれる生物は皆、誕生したときにユニークスキルを持ち、転生者は夢や希望、もっとこうなりたかったなどの願望が元となり、ユニークスキル付与されます」
「確かにそうだ。しかし特例もある。胎児のときはユニークスキルが付与されていないのだ。赤子として出て来たときにこのユニークスキルが付与される――いや、この話はどうでもいい」
――いや、私としてはその話もっと聞きたいんだけど――。
「貴様の正体は人間だろう? 何故余ですら知らなかった情報を知っているのだ」
アヌビスですら知らなかった情報らしい。まあアヌビスは地下世界という特殊な世界の住人だから案外知らないのか――。いや、何か石版とか記されていそうな気もするんだけどな。
「それは初耳ですね」
「だろうな。これはごく一部の者しか知らない情報だ。いずれにせよ、君がいるならあの方に報告しなくては――」
「ちょっと待て! 貴様逃げる気か!?」
「一旦退くだけだ。1VS3の状況で勝てると思う程、自分の力を過信していない。ましてや、アリシアとアヌビスのコンビ――私にとっては最悪だ」
それは誰にとっても最悪な気がする。と――思っていたら、Qが何か結晶のようなものを出していた。
「ミク・アサギ! アリシア! 奴を逃がすな!」
アヌビスがそう強い口調で言ったので私とアリシアさん、そしてアヌビスの3人でQを掴みにかかった。
「逃がさない!」
そう言って捕らえようとした瞬間に姿を消してしまった。
「逃がしてしまったか――!」
アヌビスはそう言って床をドン! と力強く叩いていた。
「今のアレは?」
アリシアさんも知らないようだったのでアヌビスが口を開いた。
「アレも転移系統の鉱石だ。余が知っている限りは地上にはない。地下世界で稀に目にする鉱石だ。とは言ってもオリハルコンや煉鋼石、破壊の石に比べると稀少度は下がるがな」
「つまり☆が4くらいの鉱石という事か――」
私がそう呟くとアヌビスは首を傾げていた。
「何でもないよ。こっちの話だから」
「そうか」
と。アヌビスは少しモヤモヤしていそうだが、まあいいかという表情をしていた。
「私の生い立ち……」
アリシアさんはQに言われた意味深な発言の事について熟考していた。無理もない。見ず知らずの他人が何故自分の生い立ちをペラペラ話すことができるのか意味が分からないもんね。
「森羅万象は地下世界で密かに伝わる伝説と聞いたことがある。そしてその伝説を知る方法が、ゾーク大迷宮の深部に存在する石版だ。元々、余はゾーク大迷宮の番人もしているが、残念ながらその伝説は知らんくてな」
「そうか――どんな伝説か全く聞いたことないの?」
「勿論ざっくりとは知っている。とある3つのスキルに纏わる話だ」
「アリシアだと――?」
Qは私達の気配を感じてこっちに振り向いた。しかし、疑問なのが何故Qがアリシアさんの事を知っているかだ――。森妖精の族長だからアリシアさんを知っているのは不思議ではないけど、初対面なら「アリシアか?」や「ほう――アリシアか」というリアクションでいい筈だ。
「アリシアさん。知り合い?」
「Qの正体はストーク・ディアン公爵なんですよね?」
「そうです」
「で、あるなら私はストーク・ディアン公爵という人間とは会ったことはありません。名前だけは有名なので認知しておりますが――」
「じゃあ今の反応はストーク・ディアン公爵が一方的に知っているという事ですね」
「そうだと思います」
アリシアさんはそう言っていたけど表情を見るからにどこか自信が無さそうだった。
「Q。アリシアさんの事を知っているような口ぶりだったけど知り合い?」
「アリシアよ」
私の疑問は無視で、Qがアリシアさんに声をかけた。
「君はそんなところにいるべき存在では無い。森妖精達を引き連れて我々の所へ来るべきなんだ」
「どういう事だ?」
私が話す前にアヌビスがそう問いかけた。しかし、Qはそれを気にも留めずアリシアさんに話しかけていた。
「どういう意味ですか? さっぱり分からないです」
「その森羅万象というユニークスキル――強すぎると思ったことはないか?」
「確かに強いです。どうして私がこんな力を持っているのか疑問に思う事があります。だから長い間自分の使命を探し続けていた。一時期冒険者になったのもその影響――」
そこまでアリシアさんは喋ると「ハッ」とした表情を浮かべていた。
「喋りすぎたみたいですね」
そこまで聞いたQは何やら満足そうだった。
「君の力はある方によって分け与えられたスキルだ。君が生まれた2,000年程前にね」
2,000年――気が遠くなるな――。てか何でQはそんな事を知っているんだろう。アリシアさんと一体何の関係が――。
「2,000年前か――その時余は封印されていたな」
と、今度はアヌビスが気になる情報を投下してきたけどそれは後で聞こう。
「私にスキルを分け与えた――?」
「そうだ。それで君は森羅万象という強力なスキルを持っているのだ」
「どういう事? スキルを分け与える?」
私がそう質問してもQは無視を続けた。
「君の使命はそのユニークスキルを使って我々とあの方の為に世の中を動かすことだ。君と戦いたくはない。一緒に来て欲しい」
Qはそう言って手を差し伸べて来た。しかしアリシアさんは、Qの事をキッと鋭い目つきで睨んでいた。
「最初から最後まで出鱈目を――この世界で生まれる生物は皆、誕生したときにユニークスキルを持ち、転生者は夢や希望、もっとこうなりたかったなどの願望が元となり、ユニークスキル付与されます」
「確かにそうだ。しかし特例もある。胎児のときはユニークスキルが付与されていないのだ。赤子として出て来たときにこのユニークスキルが付与される――いや、この話はどうでもいい」
――いや、私としてはその話もっと聞きたいんだけど――。
「貴様の正体は人間だろう? 何故余ですら知らなかった情報を知っているのだ」
アヌビスですら知らなかった情報らしい。まあアヌビスは地下世界という特殊な世界の住人だから案外知らないのか――。いや、何か石版とか記されていそうな気もするんだけどな。
「それは初耳ですね」
「だろうな。これはごく一部の者しか知らない情報だ。いずれにせよ、君がいるならあの方に報告しなくては――」
「ちょっと待て! 貴様逃げる気か!?」
「一旦退くだけだ。1VS3の状況で勝てると思う程、自分の力を過信していない。ましてや、アリシアとアヌビスのコンビ――私にとっては最悪だ」
それは誰にとっても最悪な気がする。と――思っていたら、Qが何か結晶のようなものを出していた。
「ミク・アサギ! アリシア! 奴を逃がすな!」
アヌビスがそう強い口調で言ったので私とアリシアさん、そしてアヌビスの3人でQを掴みにかかった。
「逃がさない!」
そう言って捕らえようとした瞬間に姿を消してしまった。
「逃がしてしまったか――!」
アヌビスはそう言って床をドン! と力強く叩いていた。
「今のアレは?」
アリシアさんも知らないようだったのでアヌビスが口を開いた。
「アレも転移系統の鉱石だ。余が知っている限りは地上にはない。地下世界で稀に目にする鉱石だ。とは言ってもオリハルコンや煉鋼石、破壊の石に比べると稀少度は下がるがな」
「つまり☆が4くらいの鉱石という事か――」
私がそう呟くとアヌビスは首を傾げていた。
「何でもないよ。こっちの話だから」
「そうか」
と。アヌビスは少しモヤモヤしていそうだが、まあいいかという表情をしていた。
「私の生い立ち……」
アリシアさんはQに言われた意味深な発言の事について熟考していた。無理もない。見ず知らずの他人が何故自分の生い立ちをペラペラ話すことができるのか意味が分からないもんね。
「森羅万象は地下世界で密かに伝わる伝説と聞いたことがある。そしてその伝説を知る方法が、ゾーク大迷宮の深部に存在する石版だ。元々、余はゾーク大迷宮の番人もしているが、残念ながらその伝説は知らんくてな」
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