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アヌビスとRⅡ
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光のような速さでRの目の前に現れると、アヌビスはそのままRの顔面を蹴った。仮面が少し欠けたと同時に後ろにある壁に向かって吹き飛んだ。
「煽った割にはダメージをこれでもかと思うくらい喰らっているわね」
アマミヤさんがそう言っていたけど、私には何か違和感を感じていた。アヌビスも怪訝な表情を浮かべて自分の足を見ていた。
「何か可笑しい――余が見ているのは錯覚か?」
アヌビスがそう声を漏らした時だった。アヌビスの腹部に殺戮の腕のビームサーベルが貫いていた――。
「なっ!?」
私達はそう声を大きく上げた。突然の出来事に理解が追い付かない――。
「あっちの世界――つまり転生者が住む世界には変わり身の術という技があるらしい」
Rがそう言うと、吹き飛んだ先の壁に埋まっている白目を向いているRは姿を消してしまった。
「どういうカラクリだ?」
アヌビスはビームサーベルが腹部を貫通している状態なのに、首をゆっくりと後ろに向けてRにそう問いかけていた。正直、アヌビスにあんな致命傷を負わすことができるなんて想定外だ。
「アヌビス!」
「来るな!」
私はついアヌビスを呼んだ。しかし、アヌビスは私の目を真っ直ぐ見ていた。
「答えるとでも?」
Rは無情にも空いている左手でアヌビスの後頭部を掴んだ。
「こうなったら私を止めることはできんぞ?」
Rはアヌビスの後頭部を力強く掴む。アヌビスは痛みは感じていないようだけど、どんどん目が虚ろになり力が抜けていくようだった。
「マズい。あれはMPを吸収されているわ!」
アマミヤさんの言葉に真っ先に駆けだしたのはメルム・ヴィジャだった。
「ご主人様に何をする貴様!」
メルム・ヴィジャがそう言って黒の大鎌を振りかざした。
「アロケル!」
「お任せを!」
Rの掛け声で飛び出してメルム・ヴィジャの黒の大鎌を剣で受け止めたフードを被った1人の人物。声色からして男なのは間違いない。
「メルム・ヴィジャの大鎌を」
「受け止めた!?」
と、大きなリアクションをしているランベリオンとアマミヤさん。
「あやつ、やるな――」
そう言いながら顎に手をつけて頷いているフーちゃん。
鍔迫り合いの勢いでフードが取れてしまい、露わになった顔は左目に大きな縦の傷が入った褐色肌の大男だった。背中くらいまである長い金髪がオールバックになっていて、もみあげと顎鬚が繋がっているワイルドすぎる風貌の人物だ。ステータスを視る限り魔族らしい――。
「貴様邪魔をするのか!?」
「R様の命令だ。邪魔をしようとしている輩の邪魔をして何が悪い」
敵だけどド正論だね。もうこうなったら手助けをするしかない。
私はそう思うとRの方へと駆けだした。その後にはランベリオン、アマミヤさん、フーちゃんもついてきていた。アヌビスの様子を見ると声を上げるほどの元気が無くなっている。
「お……お前達……」
90,000,000という大量なMPもこの様子を見る限りでは大幅に減っている。
私はアヌビスに向けて笑みを浮かべた後、無防備になっているRの背中に一太刀を入れた。
Rは何かを言おうとしていたようだけど私の攻撃をモロに喰らった――筈だ。
その一太刀を入れたと同にRの手からアヌビスが離れた。
「大丈夫!?」
「生憎虚勢を張るのは苦手でな。MPを吸い取られるのがこれほどキツイとは――」
うん、大丈夫じゃないらしい。私のMPをスキルで分けてあげた方がいいみたいだ。
「ランベリオン、アマミヤさん、フーちゃん。他の敵の出方を見て時間稼ぎをお願い!」
「分かった!」
そう言ったと同時に他の敵が3人に一斉に襲い掛かった。ステータスを視た感じだと、Rの手下で一番強いのは、確実にアロケルという魔族だ。下手すると、ベリトさんやクロノスさんよりか強い可能性がある――。
だから、他の敵はあの3人で十分に足止めできると思う。
「すまないな」
そう言っているアヌビスの腹部の傷は自動再生と自動回復のお陰で体力的な問題は解消されていた。けれどもMPを奪われた事でアヌビスは衰弱している。
「ちょっと待ってね」
私がそう言ってアヌビスにMPを送り込もうとしたときだった。
「そうはさせんぞ転生者!」
Rが私にそう言ってきた。しかし何かで攻撃しようとしている気配は――。可笑しい。右手の殺戮の腕が無い――!?
「なっ――!?」
突如、真後ろから首を掴まれる感覚がした。そう思ったと同時に頭に強い衝撃を感じた。
「いたっ――一体何が?」
いきなり真後ろから首を掴まれてコンクリートの壁に激突させられるという意味の分からない現象――。
Rを見ると無くなっていた右手の殺戮の腕をRが付けていた。という事はロケットパンチ的な攻撃を仕掛けられたのかな? 何せよ不意をつかれたせいもあって結構なダメージを与えられた。物理攻撃でこれほど痛いと感じるのは久しぶりだ。
「まさか本当に飛ばせるなんて」
「これが科学の力だ。この殺戮の腕はあの方の最高傑作だからな」
「殺戮の腕を使うのはさぞ楽しいだろうね」
「器用なら使いこなせるが貴様はどうかな?」
「今から取ってきてもいいんだけどね?」
「何!? どういうことだ?」
「冒険者がQの影武者を倒したのよ。それで殺戮の腕を持ち帰ってきてくれた。だから殺戮の腕はうちの国にもあるのよ」
「そうか――」
Rの声が一気に低くなった。
「ならば死ね」
そうRが襲い掛かってきた。アヌビスが回復するまで持ち堪えるしかない!
「煽った割にはダメージをこれでもかと思うくらい喰らっているわね」
アマミヤさんがそう言っていたけど、私には何か違和感を感じていた。アヌビスも怪訝な表情を浮かべて自分の足を見ていた。
「何か可笑しい――余が見ているのは錯覚か?」
アヌビスがそう声を漏らした時だった。アヌビスの腹部に殺戮の腕のビームサーベルが貫いていた――。
「なっ!?」
私達はそう声を大きく上げた。突然の出来事に理解が追い付かない――。
「あっちの世界――つまり転生者が住む世界には変わり身の術という技があるらしい」
Rがそう言うと、吹き飛んだ先の壁に埋まっている白目を向いているRは姿を消してしまった。
「どういうカラクリだ?」
アヌビスはビームサーベルが腹部を貫通している状態なのに、首をゆっくりと後ろに向けてRにそう問いかけていた。正直、アヌビスにあんな致命傷を負わすことができるなんて想定外だ。
「アヌビス!」
「来るな!」
私はついアヌビスを呼んだ。しかし、アヌビスは私の目を真っ直ぐ見ていた。
「答えるとでも?」
Rは無情にも空いている左手でアヌビスの後頭部を掴んだ。
「こうなったら私を止めることはできんぞ?」
Rはアヌビスの後頭部を力強く掴む。アヌビスは痛みは感じていないようだけど、どんどん目が虚ろになり力が抜けていくようだった。
「マズい。あれはMPを吸収されているわ!」
アマミヤさんの言葉に真っ先に駆けだしたのはメルム・ヴィジャだった。
「ご主人様に何をする貴様!」
メルム・ヴィジャがそう言って黒の大鎌を振りかざした。
「アロケル!」
「お任せを!」
Rの掛け声で飛び出してメルム・ヴィジャの黒の大鎌を剣で受け止めたフードを被った1人の人物。声色からして男なのは間違いない。
「メルム・ヴィジャの大鎌を」
「受け止めた!?」
と、大きなリアクションをしているランベリオンとアマミヤさん。
「あやつ、やるな――」
そう言いながら顎に手をつけて頷いているフーちゃん。
鍔迫り合いの勢いでフードが取れてしまい、露わになった顔は左目に大きな縦の傷が入った褐色肌の大男だった。背中くらいまである長い金髪がオールバックになっていて、もみあげと顎鬚が繋がっているワイルドすぎる風貌の人物だ。ステータスを視る限り魔族らしい――。
「貴様邪魔をするのか!?」
「R様の命令だ。邪魔をしようとしている輩の邪魔をして何が悪い」
敵だけどド正論だね。もうこうなったら手助けをするしかない。
私はそう思うとRの方へと駆けだした。その後にはランベリオン、アマミヤさん、フーちゃんもついてきていた。アヌビスの様子を見ると声を上げるほどの元気が無くなっている。
「お……お前達……」
90,000,000という大量なMPもこの様子を見る限りでは大幅に減っている。
私はアヌビスに向けて笑みを浮かべた後、無防備になっているRの背中に一太刀を入れた。
Rは何かを言おうとしていたようだけど私の攻撃をモロに喰らった――筈だ。
その一太刀を入れたと同にRの手からアヌビスが離れた。
「大丈夫!?」
「生憎虚勢を張るのは苦手でな。MPを吸い取られるのがこれほどキツイとは――」
うん、大丈夫じゃないらしい。私のMPをスキルで分けてあげた方がいいみたいだ。
「ランベリオン、アマミヤさん、フーちゃん。他の敵の出方を見て時間稼ぎをお願い!」
「分かった!」
そう言ったと同時に他の敵が3人に一斉に襲い掛かった。ステータスを視た感じだと、Rの手下で一番強いのは、確実にアロケルという魔族だ。下手すると、ベリトさんやクロノスさんよりか強い可能性がある――。
だから、他の敵はあの3人で十分に足止めできると思う。
「すまないな」
そう言っているアヌビスの腹部の傷は自動再生と自動回復のお陰で体力的な問題は解消されていた。けれどもMPを奪われた事でアヌビスは衰弱している。
「ちょっと待ってね」
私がそう言ってアヌビスにMPを送り込もうとしたときだった。
「そうはさせんぞ転生者!」
Rが私にそう言ってきた。しかし何かで攻撃しようとしている気配は――。可笑しい。右手の殺戮の腕が無い――!?
「なっ――!?」
突如、真後ろから首を掴まれる感覚がした。そう思ったと同時に頭に強い衝撃を感じた。
「いたっ――一体何が?」
いきなり真後ろから首を掴まれてコンクリートの壁に激突させられるという意味の分からない現象――。
Rを見ると無くなっていた右手の殺戮の腕をRが付けていた。という事はロケットパンチ的な攻撃を仕掛けられたのかな? 何せよ不意をつかれたせいもあって結構なダメージを与えられた。物理攻撃でこれほど痛いと感じるのは久しぶりだ。
「まさか本当に飛ばせるなんて」
「これが科学の力だ。この殺戮の腕はあの方の最高傑作だからな」
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「器用なら使いこなせるが貴様はどうかな?」
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「何!? どういうことだ?」
「冒険者がQの影武者を倒したのよ。それで殺戮の腕を持ち帰ってきてくれた。だから殺戮の腕はうちの国にもあるのよ」
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