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創世の軍団Ⅲ
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「まさか冥魔族までいるとはな――報告に入っていた通り厄介そうだ」
「R――」
ランベリオンがそう呟いた。さっきランベリオンとアマミヤさんが言っていたのはこの大男の事だったのね。
「ランベリオンとミユキ・アマミヤ。あの牢をどうやって脱出した? お陰で私の顔は丸潰れなものでな」
ランベリオンとアマミヤさんがそう言われて、メルム・ヴィジャの事を指していた。
「――メルム・ヴィジャ!? 何でこんなところに!?」
「そういえば、息子の無念を晴らすために、コイツ等に襲い掛かったとき、丸呑みできないと思えば、鉄の何かを破壊していたな」
「と、言う事だ。幸か不幸かこのメルム・ヴィジャが後ろの壁から出て来て檻を破壊してくれたので脱出できたのだ」
「――それは誤算だった――そのメルム・ヴィジャが何故味方にいるんだ!? メルム・ヴィジャはこの国でも危険視されている魔物だぞ!? しかもステータスを視る限り親の方じゃないか!」
Rの口調には先程までの余裕が完全に消えていた。アヌビスとメルム・ヴィジャの存在に驚いているんだ。確かにメルム・ヴィジャもめちゃくちゃ強い。マーズベルでも一位の魔物なんだけど。これも全て世界樹の影響なのかな?
「我は気高き冥魔族のアヌビス様の僕となったのだ。貴様等人間共にとやかく言われる筋合いは無い。巨人だろうと何だろうと、我に刃を向ける者は食ってやろう」
「そうだ。Rと言ったな? 貴様人体を改造しているな? 余はそれができる人間をよく知っている――それにその腕も奴がなせる芸当だ。ソイツは今どこにいるんだ?」
アヌビスがRに向ける目つきが鋭くなった。アヌビスの目的と何か関係があるのだろうか?
「残念ながらあの方の情報を話すわけにはいかない。何しろ、我々に殺戮の腕とこの無敵の体を与えてくれた素晴らしい頭脳を持つ方だからだ」
「今、奴の居場所を教えてくれれば見逃してやる。本当に余に牙を向けるという選択肢で良いのだな?」
「ああそうだ」
Rがそう言うと、R以外の巨人族と黒いフードを被った敵が襲い掛かって来た。
「余に牙を向けた事を後悔するがいい。貴様等は下がって見ておけ。何も手出ししなくてよい。邪魔だからな」
アヌビスのドスの効いた声は私達を委縮させるには十分だった。私でも立っていられるのがやっとの、凄まじい重圧だった。ランベリオン、アマミヤさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャも恐怖の二文字を植え付けられて足が震えていた。これが冥府の化身の称号を持つ魔物の本来の姿――。
案の定――襲い掛かって来た敵達は皆足を止めた。
「何だ今のは!?」
「あれ以上進んだら首が飛ぶイメージが……」
敵はそう口々にしている。彼等は額から冷や汗を流すと同時に固唾を飲み込んだ。この尋常ではない緊張感と静寂のせいか、小さい物音なら聞こえてしまう――。
「来ないのなら行くぞ?」
そうアヌビスが彼等を脅したと同時に、「うおおお!」と大声で叫びながら巨人の2人が先に襲い掛かった。
「馬鹿! よせ!」
そう声をかけたのはRだった。
「格好の的だな」
巨人族2人は自分の身の丈と同じくらいの槍を振りかざしてきた。長さもデザインもあのアグリオスが持っていた武器と一緒だ。
アヌビスはその2つの槍を手の甲で受け止めていた。
「冥影の移動」
アヌビスは自分の影の中に隠れて姿を消した。
「馬鹿な!」
「どこにいった!?」
巨人族の2人はキョロキョロと周りを見ていた。
「下だ! ミマース!」
Rは必死にそう叫んだ。右側から襲って来た巨人、ミマースの股下に姿を現したアヌビスは、口角を吊り上げて不気味な表情を浮かべて金色の杖を振った。
その瞬間皆の目は点になっていた。私もそうだ――。
「へ?」
ミマースの体は右半身と左半身が真っ二つとなり絶命した。どういう仕組みになっているのあの杖!?
「杖から斬撃を飛ばしただけだ。この杖はオリハルコンで出来ていてな」
そうニヤリと笑みを浮かべると、もう1人の巨人は大量の冷や汗を流しながら「クソオオオ!」と怒号を散らして槍を振り下ろした。
「その槍なかなかいい武器だな」
もう1人の巨人の左肩に乗ってアヌビスはそう不敵な笑みを浮かべる。
「勢いだけでは余には勝てないぞ。貴様焦っているだろ?」
アヌビスはそう言って巨人の顔の一部を左頬を掴んだ。
「何をする!?」
「大丈夫だ。直ぐに終わる」
手で振り払えばいいものの、アヌビスの力が強すぎて騒ぐことしかできないできる巨人――。
「圧倒的だな」
「アヌビスは地下世界では有名人だからな」
「強すぎるわね」
「アヌビス様。流石です――」
ランベリオン、フーちゃん、アマミヤさん、メルム・ヴィジャの順番でそう感想を漏らしていた。
「|魂吸引《ドレイン・ソウル!」
アヌビスがそう言ったと同時に巨人から青い炎のような浮遊物を体内に取り込んだ。その青い炎がスッポリ抜けると巨人はそのまま倒れてしまった。
「ミマースとパッラースがあんな一瞬で――」
「冗談じゃない。尋常ない強さだ」
敵は明らかに委縮していた。アヌビスが一歩動くと、敵は一歩下がる。
「R様――」
黒いフードを被った男の1人がそう言うとRは舌打ちをして前に出て来た。
「ほう。やるのか?」
「これ以上犠牲者は出したくないのでな。私が貴様の相手をしてやろう」
「そうか――その殺戮の腕とやらの力見せてくれ」
「ああ。勿論だ」
アヌビスは巨人族の2人を葬った後、今度はRと戦う事になった。Rは自分の力を分かっていないような人間ではない筈――アヌビスに挑むという事は相当自信があるようだ。
「R――」
ランベリオンがそう呟いた。さっきランベリオンとアマミヤさんが言っていたのはこの大男の事だったのね。
「ランベリオンとミユキ・アマミヤ。あの牢をどうやって脱出した? お陰で私の顔は丸潰れなものでな」
ランベリオンとアマミヤさんがそう言われて、メルム・ヴィジャの事を指していた。
「――メルム・ヴィジャ!? 何でこんなところに!?」
「そういえば、息子の無念を晴らすために、コイツ等に襲い掛かったとき、丸呑みできないと思えば、鉄の何かを破壊していたな」
「と、言う事だ。幸か不幸かこのメルム・ヴィジャが後ろの壁から出て来て檻を破壊してくれたので脱出できたのだ」
「――それは誤算だった――そのメルム・ヴィジャが何故味方にいるんだ!? メルム・ヴィジャはこの国でも危険視されている魔物だぞ!? しかもステータスを視る限り親の方じゃないか!」
Rの口調には先程までの余裕が完全に消えていた。アヌビスとメルム・ヴィジャの存在に驚いているんだ。確かにメルム・ヴィジャもめちゃくちゃ強い。マーズベルでも一位の魔物なんだけど。これも全て世界樹の影響なのかな?
「我は気高き冥魔族のアヌビス様の僕となったのだ。貴様等人間共にとやかく言われる筋合いは無い。巨人だろうと何だろうと、我に刃を向ける者は食ってやろう」
「そうだ。Rと言ったな? 貴様人体を改造しているな? 余はそれができる人間をよく知っている――それにその腕も奴がなせる芸当だ。ソイツは今どこにいるんだ?」
アヌビスがRに向ける目つきが鋭くなった。アヌビスの目的と何か関係があるのだろうか?
「残念ながらあの方の情報を話すわけにはいかない。何しろ、我々に殺戮の腕とこの無敵の体を与えてくれた素晴らしい頭脳を持つ方だからだ」
「今、奴の居場所を教えてくれれば見逃してやる。本当に余に牙を向けるという選択肢で良いのだな?」
「ああそうだ」
Rがそう言うと、R以外の巨人族と黒いフードを被った敵が襲い掛かって来た。
「余に牙を向けた事を後悔するがいい。貴様等は下がって見ておけ。何も手出ししなくてよい。邪魔だからな」
アヌビスのドスの効いた声は私達を委縮させるには十分だった。私でも立っていられるのがやっとの、凄まじい重圧だった。ランベリオン、アマミヤさん、フーちゃん、メルム・ヴィジャも恐怖の二文字を植え付けられて足が震えていた。これが冥府の化身の称号を持つ魔物の本来の姿――。
案の定――襲い掛かって来た敵達は皆足を止めた。
「何だ今のは!?」
「あれ以上進んだら首が飛ぶイメージが……」
敵はそう口々にしている。彼等は額から冷や汗を流すと同時に固唾を飲み込んだ。この尋常ではない緊張感と静寂のせいか、小さい物音なら聞こえてしまう――。
「来ないのなら行くぞ?」
そうアヌビスが彼等を脅したと同時に、「うおおお!」と大声で叫びながら巨人の2人が先に襲い掛かった。
「馬鹿! よせ!」
そう声をかけたのはRだった。
「格好の的だな」
巨人族2人は自分の身の丈と同じくらいの槍を振りかざしてきた。長さもデザインもあのアグリオスが持っていた武器と一緒だ。
アヌビスはその2つの槍を手の甲で受け止めていた。
「冥影の移動」
アヌビスは自分の影の中に隠れて姿を消した。
「馬鹿な!」
「どこにいった!?」
巨人族の2人はキョロキョロと周りを見ていた。
「下だ! ミマース!」
Rは必死にそう叫んだ。右側から襲って来た巨人、ミマースの股下に姿を現したアヌビスは、口角を吊り上げて不気味な表情を浮かべて金色の杖を振った。
その瞬間皆の目は点になっていた。私もそうだ――。
「へ?」
ミマースの体は右半身と左半身が真っ二つとなり絶命した。どういう仕組みになっているのあの杖!?
「杖から斬撃を飛ばしただけだ。この杖はオリハルコンで出来ていてな」
そうニヤリと笑みを浮かべると、もう1人の巨人は大量の冷や汗を流しながら「クソオオオ!」と怒号を散らして槍を振り下ろした。
「その槍なかなかいい武器だな」
もう1人の巨人の左肩に乗ってアヌビスはそう不敵な笑みを浮かべる。
「勢いだけでは余には勝てないぞ。貴様焦っているだろ?」
アヌビスはそう言って巨人の顔の一部を左頬を掴んだ。
「何をする!?」
「大丈夫だ。直ぐに終わる」
手で振り払えばいいものの、アヌビスの力が強すぎて騒ぐことしかできないできる巨人――。
「圧倒的だな」
「アヌビスは地下世界では有名人だからな」
「強すぎるわね」
「アヌビス様。流石です――」
ランベリオン、フーちゃん、アマミヤさん、メルム・ヴィジャの順番でそう感想を漏らしていた。
「|魂吸引《ドレイン・ソウル!」
アヌビスがそう言ったと同時に巨人から青い炎のような浮遊物を体内に取り込んだ。その青い炎がスッポリ抜けると巨人はそのまま倒れてしまった。
「ミマースとパッラースがあんな一瞬で――」
「冗談じゃない。尋常ない強さだ」
敵は明らかに委縮していた。アヌビスが一歩動くと、敵は一歩下がる。
「R様――」
黒いフードを被った男の1人がそう言うとRは舌打ちをして前に出て来た。
「ほう。やるのか?」
「これ以上犠牲者は出したくないのでな。私が貴様の相手をしてやろう」
「そうか――その殺戮の腕とやらの力見せてくれ」
「ああ。勿論だ」
アヌビスは巨人族の2人を葬った後、今度はRと戦う事になった。Rは自分の力を分かっていないような人間ではない筈――アヌビスに挑むという事は相当自信があるようだ。
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