314 / 597
Qとの対峙Ⅲ
しおりを挟む
間違いなく奴の姿はある。しかし不思議だ。何故服が焦げていない――。まさか喰らっていないのか?
俺が近付こうとしたときだった。ピクリとディアン公爵の指が動いた。
「今のはなかなか効いたぞ?」
そう言ってディアン公爵は俺の方を振り向きそう言った。奴は防御系統のスキルを体の表面に膜のように張っていたのだろうか? そうじゃないとダメージが無いというのは可笑しい。効いたという事はアクティブスキル無効のスキルは持っていない事になるが――いや、それこそ演技かもしれないな。
「普通じゃ貴様は死なんらしいな」
「アルティメットスキルを試してみるか?」
「ほざけ」
俺がそう言うとディアン公爵はスカーの後ろに回り込み宙に浮きながら頭を掴んだ。
「クソ! 何をする!」
スカーはそう言ってもがいていた。手を振りジタバタとしているが振りほどくことができないようだ。
俺が援護にしに行こうとしたそのときだった――。
ズン――。
突如としてスカーが気絶を始めた。
「一体何をしたんだ?」
「魔眼で視れば分かるんじゃないか?」
そう言われたのでスカーの体内を見た。MPがほぼすっからかんになっている。
「MPを奪われたのか――?」
「そうだ。これも殺戮の腕の力だ。そしてその取り組んだMPを――」
嫌な予感がした。そう言って向けられた右手から放たれる巨大な赤いエネルギー波は、禍々しく邪気に満ちた黒い雷を纏っていた。
俺はすぐさま地壊を使って地面に穴を開けて避難した。冗談じゃない。こんな強烈な攻撃を喰らったらひとたまりもない。
耳をつんざくような轟音だった。ものすごいエネルギーなのは十分に分かるが、如何せん耳が痛くなるような音だった。
数十秒すると音は止み、エネルギー波も消えたようだった。
「どこにいった?」
ディアン公爵はそう言って辺りをキョロキョロとしていた。
「ここだ」
俺はそう言って地面から姿を現すと「成程」と頷いていた。
「地面に逃げ込んだわけか」
「ああ。流石の俺でも今の攻撃を喰らったらどうなるか分からんからな」
俺はそう言って辺りを見渡した。当然のように辺りの樹々は吹き飛んでいた。それも肉眼では判断できない程の距離がある。数キロはくだらないだろう。長さは勿論凄まじいのは勿論、横の幅も凄かった。50m近くの横幅なんて見たことが無い。アクティブスキルにしては威力が可笑しい――。
「賢明な判断だな。まあ今の威力を出すには、自分のMPだけでは厳しいから、拝借したスカーのMPも使って放った」
「その殺戮の腕とやらは、奪ったMPをエネルギーとして変換できるのか」
「そういう事だ」
殺戮の腕――想像以上に厄介なアーティファクトだ。こんな出鱈目なスペックの代物を十賢者の2人が造ったのか。となると、十賢者の10人のうち、2人が創世に関わっている事になる。
「そのアーティファクトは十賢者が造ったと言ったな?」
「ああ」
「誰と誰なんだ?」
「言う訳がないだろ」
「その2人は敵ってことでいいんだな?」
「まあそうなるな」
「成程。理解した」
十賢者――俺が会ったことがあるのは、こっちに来て会ったアーツという森妖精の爺だけだ。あの爺は心に淀みなどは無かったが、人体の構造を知っている者でないと造ることができないと考えると、あのアーツという爺が殺戮の腕に製造に関わっていても可笑しくは無い。ただそれを医学博士の人間がやるのか? いやあるか――殺戮の腕によって人類の更なる躍進とか適当な事を言って始めてた計画とか言われたら、ああそうですかってなるもんな。ただ、悪用されているなら意味が無い。近年で言うと、マカロフ卿が転生者としてこの世界に現れて十年ちょっとだったが、オスプレイや、戦闘機などの空飛ぶ鉄の塊での移動手段や攻撃手段が増えた。それによって各国の戦争が激化した。まあ俺としては他国がどうなろうと知った事では無いが、俯瞰的に見れば、技術の進歩は嬉しい事ではあると同時に災いをもたらす。
「創世は一体何を企んでいるんだ?」
「特に何も企んでなどいない」
完全な嘘だ。何かを企んでいなければそもそも殺戮の腕なんて代物を造らない。
「ただ言えるのは世界を動かすのは我々の役目だということだ」
「俺からしたらどうでもいいが、脳内お花畑の野郎の言う事はあまり聞きたいとは思わないな」
「お花畑ではない。実際に我々が行ってきた活動は人類の更なる躍進と、世界の平和のために行われている」
「平和か――。今でも反吐が出る程平和だと思うが?」
「我々からすればまだまだ」
「そうか。まあイカれた奴の事なんてどうだっていい。俺達は任務を全うするだけだ。アンタの仮面を剥ぎ取り、依頼主のところへ連れていくだけだ」
「ほう。しかし今のところ防戦一方になっているぞ?」
「余裕でいられるのも今のうちだ」
「殺戮の腕の強力さを知って尚余裕か――嫌いではないぞ?」
「ほざけ」
俺はそう言って地面を蹴り上げた。本番はここからだという事を思い知らせてやる。
俺が近付こうとしたときだった。ピクリとディアン公爵の指が動いた。
「今のはなかなか効いたぞ?」
そう言ってディアン公爵は俺の方を振り向きそう言った。奴は防御系統のスキルを体の表面に膜のように張っていたのだろうか? そうじゃないとダメージが無いというのは可笑しい。効いたという事はアクティブスキル無効のスキルは持っていない事になるが――いや、それこそ演技かもしれないな。
「普通じゃ貴様は死なんらしいな」
「アルティメットスキルを試してみるか?」
「ほざけ」
俺がそう言うとディアン公爵はスカーの後ろに回り込み宙に浮きながら頭を掴んだ。
「クソ! 何をする!」
スカーはそう言ってもがいていた。手を振りジタバタとしているが振りほどくことができないようだ。
俺が援護にしに行こうとしたそのときだった――。
ズン――。
突如としてスカーが気絶を始めた。
「一体何をしたんだ?」
「魔眼で視れば分かるんじゃないか?」
そう言われたのでスカーの体内を見た。MPがほぼすっからかんになっている。
「MPを奪われたのか――?」
「そうだ。これも殺戮の腕の力だ。そしてその取り組んだMPを――」
嫌な予感がした。そう言って向けられた右手から放たれる巨大な赤いエネルギー波は、禍々しく邪気に満ちた黒い雷を纏っていた。
俺はすぐさま地壊を使って地面に穴を開けて避難した。冗談じゃない。こんな強烈な攻撃を喰らったらひとたまりもない。
耳をつんざくような轟音だった。ものすごいエネルギーなのは十分に分かるが、如何せん耳が痛くなるような音だった。
数十秒すると音は止み、エネルギー波も消えたようだった。
「どこにいった?」
ディアン公爵はそう言って辺りをキョロキョロとしていた。
「ここだ」
俺はそう言って地面から姿を現すと「成程」と頷いていた。
「地面に逃げ込んだわけか」
「ああ。流石の俺でも今の攻撃を喰らったらどうなるか分からんからな」
俺はそう言って辺りを見渡した。当然のように辺りの樹々は吹き飛んでいた。それも肉眼では判断できない程の距離がある。数キロはくだらないだろう。長さは勿論凄まじいのは勿論、横の幅も凄かった。50m近くの横幅なんて見たことが無い。アクティブスキルにしては威力が可笑しい――。
「賢明な判断だな。まあ今の威力を出すには、自分のMPだけでは厳しいから、拝借したスカーのMPも使って放った」
「その殺戮の腕とやらは、奪ったMPをエネルギーとして変換できるのか」
「そういう事だ」
殺戮の腕――想像以上に厄介なアーティファクトだ。こんな出鱈目なスペックの代物を十賢者の2人が造ったのか。となると、十賢者の10人のうち、2人が創世に関わっている事になる。
「そのアーティファクトは十賢者が造ったと言ったな?」
「ああ」
「誰と誰なんだ?」
「言う訳がないだろ」
「その2人は敵ってことでいいんだな?」
「まあそうなるな」
「成程。理解した」
十賢者――俺が会ったことがあるのは、こっちに来て会ったアーツという森妖精の爺だけだ。あの爺は心に淀みなどは無かったが、人体の構造を知っている者でないと造ることができないと考えると、あのアーツという爺が殺戮の腕に製造に関わっていても可笑しくは無い。ただそれを医学博士の人間がやるのか? いやあるか――殺戮の腕によって人類の更なる躍進とか適当な事を言って始めてた計画とか言われたら、ああそうですかってなるもんな。ただ、悪用されているなら意味が無い。近年で言うと、マカロフ卿が転生者としてこの世界に現れて十年ちょっとだったが、オスプレイや、戦闘機などの空飛ぶ鉄の塊での移動手段や攻撃手段が増えた。それによって各国の戦争が激化した。まあ俺としては他国がどうなろうと知った事では無いが、俯瞰的に見れば、技術の進歩は嬉しい事ではあると同時に災いをもたらす。
「創世は一体何を企んでいるんだ?」
「特に何も企んでなどいない」
完全な嘘だ。何かを企んでいなければそもそも殺戮の腕なんて代物を造らない。
「ただ言えるのは世界を動かすのは我々の役目だということだ」
「俺からしたらどうでもいいが、脳内お花畑の野郎の言う事はあまり聞きたいとは思わないな」
「お花畑ではない。実際に我々が行ってきた活動は人類の更なる躍進と、世界の平和のために行われている」
「平和か――。今でも反吐が出る程平和だと思うが?」
「我々からすればまだまだ」
「そうか。まあイカれた奴の事なんてどうだっていい。俺達は任務を全うするだけだ。アンタの仮面を剥ぎ取り、依頼主のところへ連れていくだけだ」
「ほう。しかし今のところ防戦一方になっているぞ?」
「余裕でいられるのも今のうちだ」
「殺戮の腕の強力さを知って尚余裕か――嫌いではないぞ?」
「ほざけ」
俺はそう言って地面を蹴り上げた。本番はここからだという事を思い知らせてやる。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる