【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

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Qとの対峙Ⅰ

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「ここがそうだ」

 俺がそう言うとカリブデウスとスカーは「ほお」と呟いていた。

「立派な大聖堂だな」

「この大聖堂を破壊したときに見せる人間の顔が見てみたい」

 スカーはこの大聖堂を褒めて、カリブデウスは破壊衝動に駆り立てられていた。流石の俺でもこの大聖堂を目の前にして破壊したいとは思わないので、カリブデウスに関しては正真正銘の頭が可笑しい奴だ。

 地上高10m程のこの大聖堂。白銀を基調とした外観とは真反対に、中央にある黒の鉄の扉が解放されていた。勿論、この大聖堂から放たれる威風堂々とした存在感は世界中を歩き回っても中々巡り合えるものでは無い。俺が魔族のハーフだからなのか、こういったものには何処か懐かしさを覚える。

「行くぞ。奴はこの中にいる可能性が高い」

「ああ」

「御意」

 御意――。それはスカーが時折見せる、俺に対して覚悟しているぞと主張するサインだ。数年ぶりに聞いたかもしれないな。

 俺が先頭に立ち大聖堂の中へと入って行った。辺りを見渡すと中央に3脚ずつ設置されている黒の長椅子が奥までズラリと配置されている。そして、黒の長椅子の両脇には白銀の円柱が両脇に、椅子と同じ列に立っていた。柱の中心から少し上の辺りには何やら人型の像が柱を囲うようにして立てられている。

 外から見た窓ガラスの部分は横に3列、縦に3列で区切られており、ステンドグラスになっているので、そこには貴族が描かれていた。貴族は何故こうも自己主張が激しいのだろうか――反吐が出る。

「これだけ広いのに人がいないとは」

 カリブデウスはそう言いながら辺りを見渡していた。流石にこれだけ大きな建造物で人影が見えないのは誰でも不気味に思うだろう。

「いや――一番奥にいるぞ」

 スカーがそう言って指した先には、黒いローブの男が天使の姿をした金色像の前に立っていた。

「来たか。よく分かったな」

 どこか機械的な声でそう返事をされた。肉声をアーティファクトで変えているようだ。

「貴様の姿は割れているぞ。Qキュー――いや、ストーク・ディアン」

「ほう――」

 男は俺達の方に振り向いた。顔には金色蛇の仮面を付けている。

「何か確証はあるのか?」

「俺のスキルで情報を得た。ノックの心臓を喰らってな」

「ノックの心臓を――? まさかノックを殺したのか?」

「ああ」

 俺がそう言うとディアン公爵は「そうか……」と呟いていた。しかし、俺には分かる。コイツは悲しんで何かいない。力無く呟いたように見せて心の中では笑っている。不気味な奴だ――。

「悲しくなさそうだな」

「分かるのか?」

 そう舐めた口調で俺に問いかけてきた。

「ああ。見たくも無いものが俺には見えるのさ。なので心が綺麗な人間と、心が汚染されている奴が一目で分かる。因みにこの愉快な仲間達のコイツが心が汚染されている奴だ」

 俺がそう言ってカリブデウスの頭を掴んだ。

「貴様離せ! この馬鹿力め! その細い腕のどこからこんな馬鹿力が出てくるのだ」

「五月蠅いな。戦闘値の差だ」

「私はどっちだ?」

「喜べ。十分に汚染されている。真っ黒だな」

 俺がそう言うと再度ディアン公爵は高笑いをしていた。心臓喰らいカルディア・グールを使ったんだ。このQキューと名乗る男がディアン公爵なのは間違いない。しかし、カルカラで集めた情報のディアン公爵とは真逆の印象だ。印象だけなら確実に綺麗な心を持つ真っ白な男だ。物腰が柔らかく、気が利き、皆から好かれ愛される人間性。そして、どこかミステリアスな雰囲気も持つ雰囲気――そのミステリアスな雰囲気が出ているのは、間違いなくQキューという仮面を被っているからだろう。

「それにしても君達3人はなかなか筋がいいな」

「怖気づいたか?」

「いや? と、いうより私の本来の力ではまともに戦っても勝てないのは分かっている。3人まとめてかかって来られると歯が立たない」

「随分と弱気だな」

 言葉とは反するこの余裕――一体どこからきているんだ?

「君もなかなか特殊な細工を仕掛けているな。私が今視ているステータスは出鱈目なのだろう?」

「ああ。そうだな」

 すると、ディアン公爵は溜め息をついた。

「それならば仕方無いな」

 ディアン公爵はそう言って俺達に手を向けて来た。露わになった腕には、メタリックな黒と金色のアーティファクトが腕に装着されていた。

 刹那――俺達に向かって飛んできたのは赤いエネルギー波だった。

「自信が無かったにしては随分強力なパワーだな!」

 俺はそう言ってそのエネルギー波を上に弾き飛ばした。その隙にディアン公爵は距離を詰めてきており、気付けば拳が飛んできていた。

「カルディア!」

 スカーがそう叫んでいた。無論、俺が攻撃に当たる訳が無い。

 拳を受け止めて俺は驚いた。

「俺より弱い素振り見せていた割には随分と力が強いじゃないか!」

 そう俺は吐き捨てたが、心の内ではコイツの馬鹿力を制御するのに必死だった。ただ拳を受け止めただけで流れる冷や汗などいつぶりだろうか。

「喰らえ!」

 カリブデウスとスカーがそう言ってディアン公爵に襲い掛かった。が――。

「単調な攻撃だな」

 ディアン公爵は俺の注意を払いながら、カリブデウスとスカーをもう片方の手で吹き飛ばしていた。恐らく排除リジェクトだろう。

「隙だらけだぞ?」

 隙など俺は見せているつもりはなかった。しかし、ディアン公爵の蹴りが俺の腹部に入った。みるみるディアン公爵との距離が離れていく。吹き飛ばされたのだ。腹部に強烈な一撃を喰らって――。

 気付けば背中に痛みを感じながら、黒の長椅子を倒して大聖堂内を荒らしていた。まあ――エネルギー波を上に飛ばした時点で天井を破ってしまっているが――なかなか厄介だぞこの男――!
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