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赤髪の女性Ⅱ
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「何とか難を逃れたな」
「どこに行ったか気になるところだけど――まあ長期戦になったらヤバかったわね」
「そうだな――何よりこの者――」
ランベリオンはそう言ってこの赤髪の女性をじっと見ている。
「知り合いなの?」
「こんな風貌――緋色のかんざしを付けた女性がいるというのを聞いたことがあるのだ。名前が思い出せんくてな」
「そう――」
そう言っていると、「ん――?」という声が漏れた。そして、その女性は立ち上がるなり辺りを警戒していた。そして、私とランベリオンと目があった。
「くっ――追手か!」
そう言って剣を構えては私達に鋭い眼光を浴びせる。
「違う違う。私達は貴女が吹き飛ばされてきたから、何事かと思って貴女と戦っていた仮面の女性を追い払ったのよ」
私がそう言った後にランベリオンが続けた。
「我等は敵ではない。ただ、うぬが我等に戦いを挑むのであれば引き受けるがな」
「ちょっと何油売っているのよ!」
「ふふ――面白い奴等だ――っつ……」
笑ったかと思えば右の脇腹の切り傷を押さえて苦しそうにしていた。
「ちょっと大丈夫!?」
「ああ。ちょっと私の涙を掬ってくれないか?」
さっき笑って出た涙を掬ってくれというと謎の頼み事を受けた。私は仕方なくその指示に従った。その涙はまるでルビーのように綺麗だった。ただの涙が何でこんなに輝かしいのだろう――。
「これをどうすればいいの?」
「悪いが傷の所にかけてくれ」
「――痛みは大丈夫?」
「大丈夫だ」
私は言われた通りに赤髪の女性の涙を傷口に落とした。すると不思議な事が起きた――。
「傷口がどんどん塞いでいく――というか治ってる!?」
「思い出したぞ! こんなところで会えるとは思ってもみなかった!」
ランベリオンが急に大声を出したので私は何事かと思った。
「何よ急にそんな大声出して」
「間違いない。傷を癒す涙に緋色のかんざしを付けた女性――というか今の姿は人型化だ! 彼女は不死鳥だ」
「不死鳥!? それで治癒能力があるのね?」
「あら、私の事分かるんだな? 2人共名前は?」
「我はランベリオン・カーネル! 飛竜の王だ!」
「私はミユキ・アマミヤ。普通の人間よ」
「ほう――ミユキ殿の名前は聞いたことは無いがランベリオンの名前は知っている。確か最近ではマーズベルの国主に仕えたと聞いておるぞ?」
「その通りだ。仕えているつもりは無いのだがな」
「そうだったのか。通りでAを追い払えた訳だ」
不死鳥の女性はそう笑みを浮かべていた。やはり、あの人間も創世の構成員――。
「ところで貴女のお名前は?」
すると女性は首を左右に振った。
「生憎だが私には名前など無い。ただの不死鳥だ。好きに呼ぶとよい」
それを聞いて私は思わずランベリオンの顔を見た。
「そういう事もある。不死鳥そのものの個体値は高いからな。世界最強の鳥類だ。恐らくあの女性に苦戦を強いられていたのも名前が無い為に、成長速度が遅いのだな」
「ランベリオンの言う通りだ。不死鳥は何度でも甦りその度に強くなるけど、名前が無い私はその成長速度が遅い。戦闘値も5,000程しか無いからね」
「名前が無くて5,000って――」
「まあ、化物だな。元々のスペックが高いのだ」
「名前が付いただけで凄く強くなりそう」
「名前が付いた状態で一度死ねば6,000はいくだろうな」
「私が名前を付けてもらいたいと思う人がいないだけだ。自分が気に入った人間に付けてもらいたいのだ」
「そういう事だったのか」
「でも呼び名が無いと不便ね。S級の強さで呼び名が無い人初めて会ったわ」
「適当に呼んでくれていいぞ」
「じゃあフーちゃんにしよう!」
私がそう言うとランベリオンがぎょっとしていた。
「ミク殿が付けそうな可愛らしい呼び名だな」
いいじゃない別に! 私も女の子だから可愛い呼び名付けたくなるもん。
「うむ。それでよいぞ。してお主等は何故この島へ?」
「ちょっと任務でね。フーちゃんはどうしてそのAという人に狙われているの?」
「答えは簡単だ。私の能力を狙われておって捕まってな――それで何とか脱出したが追手に追われていた――その追手のAはその敵組織の中の1人だ。普段は表に顔を出さないが、私を捕えるために表にまで出て来て私を追いかけていたのだ」
「成程ね。そこまでしてフーちゃんの能力を手に入れたいってどんな能力?」
「不死鳥特有の特性じゃ。さっき見せた治癒の能力と、死んだら灰になって復活する能力を狙われている」
「気の毒だな。それで拷問などは受けたのか?」
「拷問というより洗脳ね。奴等は拷問が無駄ということは知っている」
「と、いうと?」
私がそう訊くとフーちゃんに訊ねた。
「私は死ぬ前に苦しんだり、死力を尽くした戦いで死ぬと、強くなるという能力だ。だから苦痛を与えることは避けているのだ。ただ、洗脳だと痛みは感じないからリスクが無いという話だ」
「よく無事でいれたな」
ランベリオンがそう言ってうんうんと頷く。
「と、言う事はさっきの奴等のアジトを知っているの? 私達、楽園を探しているの」
私がそう言うとフーちゃんは正気か!? というセリフが今にも出て来そうな驚いた表情をしていた。
「どこに行ったか気になるところだけど――まあ長期戦になったらヤバかったわね」
「そうだな――何よりこの者――」
ランベリオンはそう言ってこの赤髪の女性をじっと見ている。
「知り合いなの?」
「こんな風貌――緋色のかんざしを付けた女性がいるというのを聞いたことがあるのだ。名前が思い出せんくてな」
「そう――」
そう言っていると、「ん――?」という声が漏れた。そして、その女性は立ち上がるなり辺りを警戒していた。そして、私とランベリオンと目があった。
「くっ――追手か!」
そう言って剣を構えては私達に鋭い眼光を浴びせる。
「違う違う。私達は貴女が吹き飛ばされてきたから、何事かと思って貴女と戦っていた仮面の女性を追い払ったのよ」
私がそう言った後にランベリオンが続けた。
「我等は敵ではない。ただ、うぬが我等に戦いを挑むのであれば引き受けるがな」
「ちょっと何油売っているのよ!」
「ふふ――面白い奴等だ――っつ……」
笑ったかと思えば右の脇腹の切り傷を押さえて苦しそうにしていた。
「ちょっと大丈夫!?」
「ああ。ちょっと私の涙を掬ってくれないか?」
さっき笑って出た涙を掬ってくれというと謎の頼み事を受けた。私は仕方なくその指示に従った。その涙はまるでルビーのように綺麗だった。ただの涙が何でこんなに輝かしいのだろう――。
「これをどうすればいいの?」
「悪いが傷の所にかけてくれ」
「――痛みは大丈夫?」
「大丈夫だ」
私は言われた通りに赤髪の女性の涙を傷口に落とした。すると不思議な事が起きた――。
「傷口がどんどん塞いでいく――というか治ってる!?」
「思い出したぞ! こんなところで会えるとは思ってもみなかった!」
ランベリオンが急に大声を出したので私は何事かと思った。
「何よ急にそんな大声出して」
「間違いない。傷を癒す涙に緋色のかんざしを付けた女性――というか今の姿は人型化だ! 彼女は不死鳥だ」
「不死鳥!? それで治癒能力があるのね?」
「あら、私の事分かるんだな? 2人共名前は?」
「我はランベリオン・カーネル! 飛竜の王だ!」
「私はミユキ・アマミヤ。普通の人間よ」
「ほう――ミユキ殿の名前は聞いたことは無いがランベリオンの名前は知っている。確か最近ではマーズベルの国主に仕えたと聞いておるぞ?」
「その通りだ。仕えているつもりは無いのだがな」
「そうだったのか。通りでAを追い払えた訳だ」
不死鳥の女性はそう笑みを浮かべていた。やはり、あの人間も創世の構成員――。
「ところで貴女のお名前は?」
すると女性は首を左右に振った。
「生憎だが私には名前など無い。ただの不死鳥だ。好きに呼ぶとよい」
それを聞いて私は思わずランベリオンの顔を見た。
「そういう事もある。不死鳥そのものの個体値は高いからな。世界最強の鳥類だ。恐らくあの女性に苦戦を強いられていたのも名前が無い為に、成長速度が遅いのだな」
「ランベリオンの言う通りだ。不死鳥は何度でも甦りその度に強くなるけど、名前が無い私はその成長速度が遅い。戦闘値も5,000程しか無いからね」
「名前が無くて5,000って――」
「まあ、化物だな。元々のスペックが高いのだ」
「名前が付いただけで凄く強くなりそう」
「名前が付いた状態で一度死ねば6,000はいくだろうな」
「私が名前を付けてもらいたいと思う人がいないだけだ。自分が気に入った人間に付けてもらいたいのだ」
「そういう事だったのか」
「でも呼び名が無いと不便ね。S級の強さで呼び名が無い人初めて会ったわ」
「適当に呼んでくれていいぞ」
「じゃあフーちゃんにしよう!」
私がそう言うとランベリオンがぎょっとしていた。
「ミク殿が付けそうな可愛らしい呼び名だな」
いいじゃない別に! 私も女の子だから可愛い呼び名付けたくなるもん。
「うむ。それでよいぞ。してお主等は何故この島へ?」
「ちょっと任務でね。フーちゃんはどうしてそのAという人に狙われているの?」
「答えは簡単だ。私の能力を狙われておって捕まってな――それで何とか脱出したが追手に追われていた――その追手のAはその敵組織の中の1人だ。普段は表に顔を出さないが、私を捕えるために表にまで出て来て私を追いかけていたのだ」
「成程ね。そこまでしてフーちゃんの能力を手に入れたいってどんな能力?」
「不死鳥特有の特性じゃ。さっき見せた治癒の能力と、死んだら灰になって復活する能力を狙われている」
「気の毒だな。それで拷問などは受けたのか?」
「拷問というより洗脳ね。奴等は拷問が無駄ということは知っている」
「と、いうと?」
私がそう訊くとフーちゃんに訊ねた。
「私は死ぬ前に苦しんだり、死力を尽くした戦いで死ぬと、強くなるという能力だ。だから苦痛を与えることは避けているのだ。ただ、洗脳だと痛みは感じないからリスクが無いという話だ」
「よく無事でいれたな」
ランベリオンがそう言ってうんうんと頷く。
「と、言う事はさっきの奴等のアジトを知っているの? 私達、楽園を探しているの」
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