【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
292 / 597

脱出を目指してⅢ

しおりを挟む
「別に嘘はついていない」

 ランベリオンはそう言っていたけど、私からすれば嘘ばかりついているじゃない! って言いたくなる。

「それで? 私達を嗅ぎまわっていた理由は何だ?」

 この場面で嘘をつくのはなかなか難しい――。正直に言ってもいいような気がする。

「貴様等が我等に喧嘩を売ったのだろう?」

 ランベリオンはそう言ってRアールの事を睨めつけた。明らかに喧嘩腰だ。

「さて喧嘩を売ったとは何の事だろうか?」

「とぼけるな。マーズベルにヴェドラウイルスを撒いた男がいる。そいつQキューと名乗る男だ。奴は金色蛇の仮面を付けており、その仮面の男の足取りを掴む為に我等は色々と嗅ぎまわっていたのだ。知らないとは言わせないぞ」

 ランベリオンの口調を考えると結構怒っている――まあこのRアールっていう男も白々しいからな~。それに、アルファベット順にいくと、Qキューの次はRアールだから知らない訳が無いはずなんだけど――嘘、適当。今のは無し。

「1つ言っておくが我々の組織でも構成員がどのような事をしているか分からない場合もある。それに構成員同士が素顔を知らないという事もザラにあるからな」

「ビジネスライク的な感じなのかしら? それは本当?」

「本当だ」

 するとランベリオンは複雑そうな表情を浮かべていた。構成員と話す機会があっても足取りを掴むのが難しいという現実に直面してしまったからだ。

「なので結論から言うと私は知らない。しかし、創世ジェスという組織があると知られたのは我々が活動するにあたって非常にマズい」

「やはり殺すのか? やるならさっさとやるがよい」

 ランベリオンはそう言ってRアールを睨めつける。何かランベリオンってたまに不器用よね。スキルが使えないのにやたらと好戦的だ。本当に止めてほしい。

「そんなに死にたいのであれば殺してやらんでも無いが、私からしても2人はなかなかの強者だ。殺すには惜しい――なので、ここの檻に閉じ込めたという訳さ。どうだ? いっそのことここで暮らさないか?」

 おっと――急な展開ね――。でも私とランベリオンはマーズベルの国民。意地でもここの国民にはならないわ。

「断る」

「私もよ」

 私とランベリオンがそう答えるとRアールはしばらく沈黙した。

「腹が減っているだろう。食事を持ってきてやる。しばらく考えるんだ」

 Rアールはそう言って私達の前から去って行った。

「食事が出るのは分かるけど何を考えているのかしら」

「全く読めないな」

「そうね――それにあの仮面があるとやっぱり話をしているときの表情が分からないから、どういった感情で話をしているのか読みづらいわ」

「とりあえずは生き残れそうだな。別に話さなくても良かったんじゃないかと思ってきた」

「流石に何も話をしなかったら拷問されていたわよ」

「そうか?」

「そうよ。でもまあ思いつきにしてはなかなか良かったストーリーだったと思うよ」

「ストーリー? 何でう――」

 ランベリオンが嘘と言おうとしていたから、私はランベリオンの口を閉じた。

「もしかしたら監視されているかもしれないでしょ? ほら、アードルハイムみたいに監視カメラみたいなのがあるかもしれない」

「その発想はなかった。悪い――でもそれだと我等の行動もバレるのではないか?」

「まあそこは何とか誤魔化すことができるでしょ」

 私がそう言うとランベリオンはジトリと私の顔を除いて来た。

「何よ?」

「うぬはしっかりそうに見えて割と適当だよな」

「今更ね」

 私がそう言うとランベリオンはつまらなさそうな表情を浮かべていた。からかおうとしたのだろうか?

「ご飯が食べられると思ったら急激にお腹が減ってきたな」

 ランベリオンはそう言ってぐう~とお腹を鳴らした。当然私も同じだ。ご飯が食べられると思ってからお腹が減って仕方ない。何しろお腹が減りすぎてお腹が痛いくらいだ。

「とりあえずしばらく休もう」

「賛成――ところでランベリオンは眠たくないの?」

「実は眠たいのだ。眠気と腹減りが凄まじい」

「お風呂に入りたいしね」

「そうだな。贅沢は言わないから水浴びくらいはしたいものだ。ミユキ殿も我と一緒の檻では辛かろう」

「そうでも無いわよ。とりあえず早く出て元の生活に戻りたいわね。ここにずっと閉じ込められているのは人として大事な物を失う気がするわ」

「それを考えるとアードルハイムで捕まっていた人々は苦労をしたものだな」

「そうね。不憫ふびんだったと思うわ」

 私はそう言いながらアードルハイムで捕まっていた人々を思い出すと同時に、改めてタテワキさん達に感謝をした。マーズベルの皆が来てくれなければアードルハイムは未だにアードルハイム皇帝の好きにさせられていた――いつもと変わらない地獄の日々を皆は送らないといけなかったのだ。今となっては普通の送る人どころか、マーズベルで悠々自適の生活を送っている人もいる。

 私はそんな事を考えていると再び誰かが来る足音がした。しかも1つではなかった。

Rアール様も別の国から来た人間に食料を与えるなど人柄がよすぎるよな」

「そうだな」

 そう言って歩いて来たのは白い鎧を身に纏った2人の兵士だった。スキルを使えない今、鑑定士さえ使えないから兵士の実力がどんなものかも分からない。見た感じはそれほど強そうではないけど決して弱くは無い。鍛え上げていたと思っていたアードルハイムの帝国兵より強いだろう。

「ほら食べろ」

 そう兵士にぶっきらぼうに置かれた食料はバスケットに入ったパンと赤い木の実と野草のようなものをすりつぶしてニンニクの香りを付けた料理だった。量はそれほど多くないものの、なかなか美味しそうだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

処理中です...