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ヴァース島Ⅳ
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現れ出て来たのは巨大すぎる魔物だった。黄色に光る6つ眼。銀色の甲殻を持ち深海魚のような鋭く尖った歯を無数に持ち、ムカデのような頭と、お腹には細い角のようなものがいくつも生えていた。そして、カマキリの鎌のように鋭い脚が、これもムカデの如く数百本と生えている。体長はおよそ50m――正直言って気持ち悪い。
「これはまた珍しい魔物だな」
「なんだこの魔物は――」
ランベリオンはそう言って驚いてこの巨大な虫の魔物のステータスを視ていた。当然私も視てみたがどうやら毒のスキルやら風のスキルを使うらしい。また火属性のスキルも僅かながら使える――これほど巨大で多くの属性を扱えるのだから4,000は確実にあるだろう。名前付きでは無いので、恐らく言語を話すことができないが、実力が私と同等でも何ら違和感がない。
「マーズベルでもカルベリアツリーのダンジョンでもこれほど巨大な巨虫種は見たことが無いぞ」
「奴はメルム・ヴィジャというこの島でも危険度が高い魔物だ! 奴は万が一倒せたとしても親が来る! 何もせずに逃げるんだ!」
ジャックさんは私達にそう呼びかけて来たがこのメルム・ヴィジャという魔物――えげつないくらいの重圧を放ってきている。動こうとしても体が動いてくれない――。それにこの大きさで子供ってどういう事なのよ。
「何!? もしかして動けないのか!?」
「そうだ。思うように体が動かなくてな。どうやらこの魔物と戦うしか方法は無いらしい」
ランベリオンはそう冷や汗を垂らしつつそう言い放った。
「ぐぬううう」
ジャックさんはそう唸っていた。それほどこの魔物はヤバいのだろうか――私達が対峙しているこの魔物でも十分すぎるほど強いのに親は一体――。
「ギシャアアア!」
メルム・ヴィジャはそう言ってその大きな脚の鎌を連続で振り下ろして来た。私達はその鎌の攻撃を避けて一旦、散り散りになる。
次の出方を見ようとしてたが、メルム・ヴィジャは毒の砲弾を連続で飛ばしてきていた。これが当たってしまえばものの数分で体が毒に侵されて数時間後には死んでしまう――。絶対に当たってはいけない。
私は1発1発避けていると、次の瞬間――私は真横に吹き飛ばされてしまい、いくつかの樹をなぎ倒しながら平原へと放り出された。
「うっ……危なかった……」
そうは言ったものの、全身は血まみれとなっていた。ダメージが相当大きいらしく、絶対零度を使えない。ただし、私には唯一無二のユニークスキルがある。それは完全なる運命という、今起きているこのピンチな状況をプラスに変えることができる運命を捻じ曲げるユニークスキルだ。とは言ってもそのプラスがいつになるのかが分からないけど――。結局アードルハイムに長い間いたのも、タテワキさんといつか会うためのものだったし。
そう考えると死ぬことはない。戦うしかないと腹を括ることができる。
「それにしても凄いわね」
私は何百メートルも飛ばされたらしい。正面を見ると私が吹き飛んできたところは、樹が見事に倒壊していたからだ。
「さて。あの化物をどうやって倒そうかしら」
生憎私には毒耐性は無い。かと言ってランベリオンの地獄の火炎玉を撃ってしまうとこの島の森が焼け野原になってしまう――。
「やはり私が奴の動きを止めるしか無いわね」
それにしても強い敵と戦う時に回復士がいないのはなかなか厳しい。私の恵みの雨では敵も回復してしまうしな。
「とりあえず行くか」
私は再び戦場へと戻った。ランベリオンもジャックさんも攻撃を避けながらも無事だったか!? という声をかけてくれた。
「大丈夫! それよりその魔物を引き付けておいて!」
私がそう言うと、2人は何も言わずにただ頷いてくれた。
私はふうと深呼吸をして地面に手をつく。
「氷河の樹!」
私がそう言うと、地面からメルム・ヴィジャより巨大な氷の樹の枝が、メルム・ヴィジャの巨体を串刺しにしながら持ち上げた。大きさが大きさだ。私のMPはアルティメットスキルを使ったのように大幅に減った。
「凄いではないか!」
「これほど巨大な氷の樹は見たことがない」
ランベリオンは私を褒めてくれて、ジャックさんは私の氷河の樹の巨大さに啞然としていた。
しかし、メルム・ヴィジャは死んではいない。紫色の血を流しながらギシャアアアと鳴いている。もがき苦しんでいるが体中のあちこちが串刺しになっているので逃げることはおろか、身動きが取れないだろう。
「今の間に叩いて! 頭を潰して!」
「そうだな」
「頭は俺が潰す。ランベリオン殿は炎で奴の頭を焼いてくれ」
ジャックさんがそう言うと、ランベリオンは得意気な笑みを浮かべてた。
「我には死の灰というユニークスキルがある」
「何だそれは?」
「見ていれば分かる」
ランベリオンはそう言って紅炎放射を口から噴出。当たった箇所はみるみるうちに灰となっていく。食べ物は普通に焼けるのに、生物は灰になってしまうって理不尽ね。効果は、当たって生き物を灰と化すみたいな効果なのかしら? 究極の阻害者のせいで見れないし。
そうして、メルム・ヴィジャは見事に焼けて灰となって絶命した。ただ、このメルム・ヴィジャを倒してしまったことによって、後々苦しむのはもう少し先の話だ。
「これはまた珍しい魔物だな」
「なんだこの魔物は――」
ランベリオンはそう言って驚いてこの巨大な虫の魔物のステータスを視ていた。当然私も視てみたがどうやら毒のスキルやら風のスキルを使うらしい。また火属性のスキルも僅かながら使える――これほど巨大で多くの属性を扱えるのだから4,000は確実にあるだろう。名前付きでは無いので、恐らく言語を話すことができないが、実力が私と同等でも何ら違和感がない。
「マーズベルでもカルベリアツリーのダンジョンでもこれほど巨大な巨虫種は見たことが無いぞ」
「奴はメルム・ヴィジャというこの島でも危険度が高い魔物だ! 奴は万が一倒せたとしても親が来る! 何もせずに逃げるんだ!」
ジャックさんは私達にそう呼びかけて来たがこのメルム・ヴィジャという魔物――えげつないくらいの重圧を放ってきている。動こうとしても体が動いてくれない――。それにこの大きさで子供ってどういう事なのよ。
「何!? もしかして動けないのか!?」
「そうだ。思うように体が動かなくてな。どうやらこの魔物と戦うしか方法は無いらしい」
ランベリオンはそう冷や汗を垂らしつつそう言い放った。
「ぐぬううう」
ジャックさんはそう唸っていた。それほどこの魔物はヤバいのだろうか――私達が対峙しているこの魔物でも十分すぎるほど強いのに親は一体――。
「ギシャアアア!」
メルム・ヴィジャはそう言ってその大きな脚の鎌を連続で振り下ろして来た。私達はその鎌の攻撃を避けて一旦、散り散りになる。
次の出方を見ようとしてたが、メルム・ヴィジャは毒の砲弾を連続で飛ばしてきていた。これが当たってしまえばものの数分で体が毒に侵されて数時間後には死んでしまう――。絶対に当たってはいけない。
私は1発1発避けていると、次の瞬間――私は真横に吹き飛ばされてしまい、いくつかの樹をなぎ倒しながら平原へと放り出された。
「うっ……危なかった……」
そうは言ったものの、全身は血まみれとなっていた。ダメージが相当大きいらしく、絶対零度を使えない。ただし、私には唯一無二のユニークスキルがある。それは完全なる運命という、今起きているこのピンチな状況をプラスに変えることができる運命を捻じ曲げるユニークスキルだ。とは言ってもそのプラスがいつになるのかが分からないけど――。結局アードルハイムに長い間いたのも、タテワキさんといつか会うためのものだったし。
そう考えると死ぬことはない。戦うしかないと腹を括ることができる。
「それにしても凄いわね」
私は何百メートルも飛ばされたらしい。正面を見ると私が吹き飛んできたところは、樹が見事に倒壊していたからだ。
「さて。あの化物をどうやって倒そうかしら」
生憎私には毒耐性は無い。かと言ってランベリオンの地獄の火炎玉を撃ってしまうとこの島の森が焼け野原になってしまう――。
「やはり私が奴の動きを止めるしか無いわね」
それにしても強い敵と戦う時に回復士がいないのはなかなか厳しい。私の恵みの雨では敵も回復してしまうしな。
「とりあえず行くか」
私は再び戦場へと戻った。ランベリオンもジャックさんも攻撃を避けながらも無事だったか!? という声をかけてくれた。
「大丈夫! それよりその魔物を引き付けておいて!」
私がそう言うと、2人は何も言わずにただ頷いてくれた。
私はふうと深呼吸をして地面に手をつく。
「氷河の樹!」
私がそう言うと、地面からメルム・ヴィジャより巨大な氷の樹の枝が、メルム・ヴィジャの巨体を串刺しにしながら持ち上げた。大きさが大きさだ。私のMPはアルティメットスキルを使ったのように大幅に減った。
「凄いではないか!」
「これほど巨大な氷の樹は見たことがない」
ランベリオンは私を褒めてくれて、ジャックさんは私の氷河の樹の巨大さに啞然としていた。
しかし、メルム・ヴィジャは死んではいない。紫色の血を流しながらギシャアアアと鳴いている。もがき苦しんでいるが体中のあちこちが串刺しになっているので逃げることはおろか、身動きが取れないだろう。
「今の間に叩いて! 頭を潰して!」
「そうだな」
「頭は俺が潰す。ランベリオン殿は炎で奴の頭を焼いてくれ」
ジャックさんがそう言うと、ランベリオンは得意気な笑みを浮かべてた。
「我には死の灰というユニークスキルがある」
「何だそれは?」
「見ていれば分かる」
ランベリオンはそう言って紅炎放射を口から噴出。当たった箇所はみるみるうちに灰となっていく。食べ物は普通に焼けるのに、生物は灰になってしまうって理不尽ね。効果は、当たって生き物を灰と化すみたいな効果なのかしら? 究極の阻害者のせいで見れないし。
そうして、メルム・ヴィジャは見事に焼けて灰となって絶命した。ただ、このメルム・ヴィジャを倒してしまったことによって、後々苦しむのはもう少し先の話だ。
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