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新ヴェドラウイルスⅠ
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「あ! ナリユキ君! ちょうど良いところに来てくれた! 今大変な事になっているの!」
そう慌てて駆け寄って来たのはミクちゃん。施設内では人が行き交い騒然としている。医師である森妖精達は剣幕な表情を浮かべながら、ストレッチャーで横たわっている人を運んでいた。それに辺りの壁や床がボロボロに崩れており、焦げたニオイまで――。
「どうなっているだ……」
ヴェドラウイルスに感染していると思わしき患者達が収容されているこの施設。その2階で今俺が見ている光景に疑問が1つ浮かんでいた。
「何で皆火傷しているんだよ。それに――」
顔をグルグルと包帯で巻いていることから、相当な火傷を負っているのだろう。ほんの少しの隙間から焼きただれているのが見える。あまりにも痛々しい光景だ。
「どうしたんだよ」
「それがね。イーサンさんが突如苦しみ始めて爆発したらしいの――勿論イーサンさんは死亡。その爆発はこの2階のフロアを半壊させるほどの威力だったらしいの」
「それでこの有様という訳か――」
「そう。皆治療室に運びながら治療をしているんだけど、何か特殊な菌が混ざっているらしくて回復までに時間がかかるんだって」
「成程な――医師達は皆無事なのか?」
「それが大変なの」
ミクちゃんはそう言って暗い表情を浮かべていた。
「どうしたんだよ」
「私とナリユキ君は滅菌を持っているからヴェドラウイルスにかかる心配はない。だからついてきて」
俺はミクちゃんに連れられて1つ上の階のフロアに来た。そこにある一室に入ると全身に湿疹が出来て苦しんでいるリーズの姿が……。
「おいまさか!」
俺が慌てて駆け寄ったがリーズは「ナリユキ様……」と小さく口を開くのみだった。
「勿論、幻幽蝶を使ったんだけどヴェドラウイルスの進行は止まらないの」
苦しい表情を浮かべるミクちゃんに俺は言葉を詰まらせた。せっかく幻幽蝶を入手したのにこのままじゃ国民の命を救う事ができない。
「どうなっているんだ」
「分からない――。これはまたレンさんの魔眼で見てもらうしかない――けど――」
「けど何だ?」
「イーサンさんが爆死したことによってこの院内にはヴェドラウイルスの菌が充満しているの。皆苦しみ始めているからここにいる医師の何名かも感染することは間違いない」
「じゃあレンさんをここに連れてきたら」
「間違いなく感染する。幻幽蝶が効かないとなった今は打つ手立てが……」
ミクちゃんが浮かべいる顔には「どうしよう」と書かれているようだった。このままでは非常にマズい事なるのは間違いない。何か手は――。あっ――!
俺がハッとした表情を浮かべていたのだろう。ミクちゃんが「どうしたの?」と問いかけて来た。
「いや、方法はある。まずはリーズに試してみるべきか」
俺はベッドで苦しんでいるリーズに近付くと、金色に輝く右手でリーズの左手に触れた。一度パッシブスキルの知性と記憶を俺が奪い、俺の記憶と知性を混ぜてリーズに返す。頼む成功してくれ。
俺がそう強く念じていると、リーズは苦しまなくなった。寝たきりではあるが、吹きだしていた汗も引いていった。
「まさかナリユキ君、滅菌を共有したの?」
「そうだ。できるか試してみたけど成功したな」
「そうだね! ここに幻幽蝶の薬を使ったら回復の促進になるんじゃないかな?」
「確かにそうだな。よし、俺はとりあえず患者のところに回って滅菌Ⅴを共有してくる」
「分かった! 私はしばらく様子を見ておくね!」
「おう!」
俺はこの部屋を出て2階にいる皆のところへと駆けて全ての患者に対して知性・記憶の略奪と献上を行った。全員が滅菌Ⅴを手に入れたということ訳ではないが、8割ほどの人は滅菌Ⅴを入手したことによって落ち着きを少し取り戻した。あとは爆破によって受けたダメージをどうにかすると言ったところだった。
「凄いですねナリユキ様! 我々が出来なかったことをこうも簡単に」
病室の一室の前で医師達の森妖精数人に囲まれていた。
「別にいいさ。俺がたまたま知性・記憶の略奪と献上を持っていただけだからな。医学的な知識が加われば滅菌の原理も分かる――だから知性を共有すれば無意識に滅菌というスキルを入手できるんじゃないかと思ったわけだ」
「素晴らしいです。あとは医師の皆にも知性・記憶の略奪と献上を使わないといけないから、手が空いた者から俺のところに来てくれ。待合室で待っているから」
「はい! 皆にそう指示をしておきます」
「おう」
そう言って医師達は俺の前から消えて、皆に滅菌のスキルを共有してもらえるという事を広めてもらう。
俺が待合室で皆を待つこと数分。医師達はゾロゾロとやってきた。説明として絶対に滅菌が入手できるという訳ではない事を伝えて、医師達に滅菌Ⅴのスキルを共有した。また、戦闘スキルだからあまり意味無いかもしれないけど、個々の戦闘値を上げるという意味で、ユニークスキル以外のスキル全てを共有した。中にも戦闘タイプはいたそうで、3,500くらいの戦闘値になった医師もいたので驚きだ。
そう慌てて駆け寄って来たのはミクちゃん。施設内では人が行き交い騒然としている。医師である森妖精達は剣幕な表情を浮かべながら、ストレッチャーで横たわっている人を運んでいた。それに辺りの壁や床がボロボロに崩れており、焦げたニオイまで――。
「どうなっているだ……」
ヴェドラウイルスに感染していると思わしき患者達が収容されているこの施設。その2階で今俺が見ている光景に疑問が1つ浮かんでいた。
「何で皆火傷しているんだよ。それに――」
顔をグルグルと包帯で巻いていることから、相当な火傷を負っているのだろう。ほんの少しの隙間から焼きただれているのが見える。あまりにも痛々しい光景だ。
「どうしたんだよ」
「それがね。イーサンさんが突如苦しみ始めて爆発したらしいの――勿論イーサンさんは死亡。その爆発はこの2階のフロアを半壊させるほどの威力だったらしいの」
「それでこの有様という訳か――」
「そう。皆治療室に運びながら治療をしているんだけど、何か特殊な菌が混ざっているらしくて回復までに時間がかかるんだって」
「成程な――医師達は皆無事なのか?」
「それが大変なの」
ミクちゃんはそう言って暗い表情を浮かべていた。
「どうしたんだよ」
「私とナリユキ君は滅菌を持っているからヴェドラウイルスにかかる心配はない。だからついてきて」
俺はミクちゃんに連れられて1つ上の階のフロアに来た。そこにある一室に入ると全身に湿疹が出来て苦しんでいるリーズの姿が……。
「おいまさか!」
俺が慌てて駆け寄ったがリーズは「ナリユキ様……」と小さく口を開くのみだった。
「勿論、幻幽蝶を使ったんだけどヴェドラウイルスの進行は止まらないの」
苦しい表情を浮かべるミクちゃんに俺は言葉を詰まらせた。せっかく幻幽蝶を入手したのにこのままじゃ国民の命を救う事ができない。
「どうなっているんだ」
「分からない――。これはまたレンさんの魔眼で見てもらうしかない――けど――」
「けど何だ?」
「イーサンさんが爆死したことによってこの院内にはヴェドラウイルスの菌が充満しているの。皆苦しみ始めているからここにいる医師の何名かも感染することは間違いない」
「じゃあレンさんをここに連れてきたら」
「間違いなく感染する。幻幽蝶が効かないとなった今は打つ手立てが……」
ミクちゃんが浮かべいる顔には「どうしよう」と書かれているようだった。このままでは非常にマズい事なるのは間違いない。何か手は――。あっ――!
俺がハッとした表情を浮かべていたのだろう。ミクちゃんが「どうしたの?」と問いかけて来た。
「いや、方法はある。まずはリーズに試してみるべきか」
俺はベッドで苦しんでいるリーズに近付くと、金色に輝く右手でリーズの左手に触れた。一度パッシブスキルの知性と記憶を俺が奪い、俺の記憶と知性を混ぜてリーズに返す。頼む成功してくれ。
俺がそう強く念じていると、リーズは苦しまなくなった。寝たきりではあるが、吹きだしていた汗も引いていった。
「まさかナリユキ君、滅菌を共有したの?」
「そうだ。できるか試してみたけど成功したな」
「そうだね! ここに幻幽蝶の薬を使ったら回復の促進になるんじゃないかな?」
「確かにそうだな。よし、俺はとりあえず患者のところに回って滅菌Ⅴを共有してくる」
「分かった! 私はしばらく様子を見ておくね!」
「おう!」
俺はこの部屋を出て2階にいる皆のところへと駆けて全ての患者に対して知性・記憶の略奪と献上を行った。全員が滅菌Ⅴを手に入れたということ訳ではないが、8割ほどの人は滅菌Ⅴを入手したことによって落ち着きを少し取り戻した。あとは爆破によって受けたダメージをどうにかすると言ったところだった。
「凄いですねナリユキ様! 我々が出来なかったことをこうも簡単に」
病室の一室の前で医師達の森妖精数人に囲まれていた。
「別にいいさ。俺がたまたま知性・記憶の略奪と献上を持っていただけだからな。医学的な知識が加われば滅菌の原理も分かる――だから知性を共有すれば無意識に滅菌というスキルを入手できるんじゃないかと思ったわけだ」
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「はい! 皆にそう指示をしておきます」
「おう」
そう言って医師達は俺の前から消えて、皆に滅菌のスキルを共有してもらえるという事を広めてもらう。
俺が待合室で皆を待つこと数分。医師達はゾロゾロとやってきた。説明として絶対に滅菌が入手できるという訳ではない事を伝えて、医師達に滅菌Ⅴのスキルを共有した。また、戦闘スキルだからあまり意味無いかもしれないけど、個々の戦闘値を上げるという意味で、ユニークスキル以外のスキル全てを共有した。中にも戦闘タイプはいたそうで、3,500くらいの戦闘値になった医師もいたので驚きだ。
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