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アードルハイムからの来訪者Ⅱ
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「これがあればいつでも話すことができるだろ? 俺の屋敷にいる人間が話すことをできるようにしておくから、気兼ねなく相談してくれ。俺はいつでもアードルハイムに行けるから」
「いつでもって言ってもなかなか距離がありますからね」
ラングドールがそう言うと俺とミクちゃんはニッと笑みを浮かべた。
「な――なんですか?」
「ラングドールよ。俺とミクちゃんに付いているこの耳飾りが分からないか? まあイヤリングって言うんだけど」
「わ――分からないです」
ラングドールは終始困った表情を浮かべてた。やっぱりこのイヤリングは知らないんだという安心感はあったけど、同時にこんなに凄いイヤリングを他国に知られないようにしている青龍さんの徹底ぶりが凄い。
「これは転移イヤリングって言って、思い浮かべてた人物の所へ瞬時に移動できるんだ」
俺がっそう説明をするとラングドールは「す……凄い!」と感心していた。しかし、数秒も経てば「う~ん」と唸っていた。
「それほど凄い物が出回ってしまうと悪者が入手したとき――犯罪は凄く増えるでしょうね。それこそアードルハイム皇帝の手に渡っていたどうなっていたことやら……オシャレなアクセサリーに見えるので、まさかそんな凄いスキルがあるとは思いもしませんでしょう」
「そうだろ? これが無きゃ俺は今頃助かっていなかったさ。もしかすると死んでいたかもな」
「と、言うと?」
「私が青龍さんからこのイヤリングを買って、マカロフ卿のアジトへ瞬時に移動したんです。メリーザの結界に感知されるでしょうから、その結界に感知されない加護を使って侵入したんですよ」
「持っている人達が貴方達や青龍様で良かった。もし、他の人が持っていたら我々も夜も眠れないでしょう。いつ殺されるか分からない恐怖と戦わないといけない訳ですから」
「違いない」
「ヴェドラウイルスの方はどうなんですか?」
「ああ。幻幽蝶を入手したから問題無い。ミクちゃん、医療施設に持って行っておいてくれないか?」
「いいよ」
俺はミクちゃんに幻幽蝶が入っているケースを渡した。
「少し見てもいいですか?」
「ああ」
俺がケースを1つ渡すと幻幽蝶がケースのなかで舞っている姿にラングドールはうっとりとしていた。
「凄い……幻幽蝶って伝記でしか聞いたことがありませんので。確か餌とかも何もいらないんですよね?」
ラングドールはそう訊いて来たけど俺はそんな情報微塵も知らない。
「え? そうなの?」
「知らなかったですか? 幻幽蝶は空気さえあれば生きていける不思議な魔物なんですよ」
「でもステータスに不食っていうスキル付いていないぞ?」
「恐らく特性ですね」
「成程――それは凄い」
幻幽蝶っていう個体なんだろうな。普通の蝶にはそんな特性付いていないから、蝶という概念では無い別の魔物になるのだろうか?
「ではお返しします」
「すみません。じゃあ私行ってきます!」
「おう! 頼んだぞ!」
俺がそう言うとミクちゃんは手を振りながら姿を消した。それを見て呆然としているラングドール。
「本当に消えた――ナリユキ様と同等の耳飾りを付けておりましたのでその効果ですか?」
「そうだ」
「凄く便利ですね。行きたいところに瞬時に移動できるなんて」
「そうだな。でもまあ、青龍さんはあのアイテムをそう易々とは売らないからな」
「やはり危険だからですか?」
「それもあるだろうが、そもそもそんなポンポンと作ることができる代物では無いしな」
「成程。それもそうですね」
俺とラングドールがそう話をしていると、再びメイが「大変ですっ!」とトコトコと駆け寄って来た。その後にはアリシアの姿もある。
「メイ、今日忙しいな。それにアリシアも一緒か」
「はい」
アリシアはそう柔らかい表情を浮かべて返事をした。何か良い事でもあったのだろうか?
「可愛いメイドさんですね」
と、ニッコリとラングドールが笑みを浮かべるとメイは少し恥ずかしがっていた。うちのメイドを口説かないでくれ。アンタ、顔めちゃくちゃ強いんだから。誰がどう見たって王子様みたいな面しているんだから。
「この手紙を見て下さい! 差出人はメリーザさんです!」
まあメイは森妖精だからアリシアと同格のメリーザを呼び捨てにすることはできないんだろうな。
「メリーザって確かマカロフ卿の時にいた森妖精ですよね? ナリユキ様は味方につけたのですか?」
「味方というか協力だな」
「森妖精語で書いているので私が読み上げます」
メイはそう言って俺とラングドールの近くに来た。森妖精語なんてものがあるんだな。
「いいぞ。宜しく頼む」
「私は同席していても良いものでしょうか?」
ラングドールはそう不安気に訊いて来たので「気にするな」と返した。
「では読み上げます。ナリユキ・タテワキ殿。お身体は大丈夫でしょうか? どこかに違和感などは感じないでしょうか? 無事いるのであれば安心です。さて、この手紙を送るに至ったのは、つい先日、コードがナリユキ・タテワキ殿が仰っていたQという人物が訪れたからです。金色蛇の柄をした仮面を付けた奇妙な男でした。コードとQの話が気になった私は盗み聞きをして情報の入手に至りました。まずはヴェドラウイルスに関してですが、コードが出資しているわけではありませんでした。ですので、私達とQは別の勢力だと考えておいて下さい。ヴェドラウイルスに関しては私も知らない情報だったので、貴方も薄々気付いていたことでしょう。マカロフ卿がこの件を知っているかどうかは正直不明ですが、私達とQは協力関係という形です。ですので、情報の行き来が遅いという欠点がありましたが、Qはそれを補うアイテムをコードに渡していたので、その欠点を補う事ができました。また、ナリユキ・タテワキ殿が幻幽蝶を入手していたこともQは既に知っておりました。幻幽蝶は100年に1度現れるという幻の魔物ですが本当に入手できたのでしょうか? もし本当であれば、情報が漏れているので、身近にスパイなり諜報員なりがいるはずなので炙り出すことが先決でしょう。また、幻幽蝶の効果を無効化できるような対策を講じているとQは言っておりました。私が現段階で入手した情報は以上です。引き続き、無理のない程度に詮索します。本当に世界の平和を望むのであれば、マーズベルという国が亡んではいけないと思っておりますので――以上です」
「ありがとうな」
俺がそう言うとメイは満足そうだった。さて――。
「いつでもって言ってもなかなか距離がありますからね」
ラングドールがそう言うと俺とミクちゃんはニッと笑みを浮かべた。
「な――なんですか?」
「ラングドールよ。俺とミクちゃんに付いているこの耳飾りが分からないか? まあイヤリングって言うんだけど」
「わ――分からないです」
ラングドールは終始困った表情を浮かべてた。やっぱりこのイヤリングは知らないんだという安心感はあったけど、同時にこんなに凄いイヤリングを他国に知られないようにしている青龍さんの徹底ぶりが凄い。
「これは転移イヤリングって言って、思い浮かべてた人物の所へ瞬時に移動できるんだ」
俺がっそう説明をするとラングドールは「す……凄い!」と感心していた。しかし、数秒も経てば「う~ん」と唸っていた。
「それほど凄い物が出回ってしまうと悪者が入手したとき――犯罪は凄く増えるでしょうね。それこそアードルハイム皇帝の手に渡っていたどうなっていたことやら……オシャレなアクセサリーに見えるので、まさかそんな凄いスキルがあるとは思いもしませんでしょう」
「そうだろ? これが無きゃ俺は今頃助かっていなかったさ。もしかすると死んでいたかもな」
「と、言うと?」
「私が青龍さんからこのイヤリングを買って、マカロフ卿のアジトへ瞬時に移動したんです。メリーザの結界に感知されるでしょうから、その結界に感知されない加護を使って侵入したんですよ」
「持っている人達が貴方達や青龍様で良かった。もし、他の人が持っていたら我々も夜も眠れないでしょう。いつ殺されるか分からない恐怖と戦わないといけない訳ですから」
「違いない」
「ヴェドラウイルスの方はどうなんですか?」
「ああ。幻幽蝶を入手したから問題無い。ミクちゃん、医療施設に持って行っておいてくれないか?」
「いいよ」
俺はミクちゃんに幻幽蝶が入っているケースを渡した。
「少し見てもいいですか?」
「ああ」
俺がケースを1つ渡すと幻幽蝶がケースのなかで舞っている姿にラングドールはうっとりとしていた。
「凄い……幻幽蝶って伝記でしか聞いたことがありませんので。確か餌とかも何もいらないんですよね?」
ラングドールはそう訊いて来たけど俺はそんな情報微塵も知らない。
「え? そうなの?」
「知らなかったですか? 幻幽蝶は空気さえあれば生きていける不思議な魔物なんですよ」
「でもステータスに不食っていうスキル付いていないぞ?」
「恐らく特性ですね」
「成程――それは凄い」
幻幽蝶っていう個体なんだろうな。普通の蝶にはそんな特性付いていないから、蝶という概念では無い別の魔物になるのだろうか?
「ではお返しします」
「すみません。じゃあ私行ってきます!」
「おう! 頼んだぞ!」
俺がそう言うとミクちゃんは手を振りながら姿を消した。それを見て呆然としているラングドール。
「本当に消えた――ナリユキ様と同等の耳飾りを付けておりましたのでその効果ですか?」
「そうだ」
「凄く便利ですね。行きたいところに瞬時に移動できるなんて」
「そうだな。でもまあ、青龍さんはあのアイテムをそう易々とは売らないからな」
「やはり危険だからですか?」
「それもあるだろうが、そもそもそんなポンポンと作ることができる代物では無いしな」
「成程。それもそうですね」
俺とラングドールがそう話をしていると、再びメイが「大変ですっ!」とトコトコと駆け寄って来た。その後にはアリシアの姿もある。
「メイ、今日忙しいな。それにアリシアも一緒か」
「はい」
アリシアはそう柔らかい表情を浮かべて返事をした。何か良い事でもあったのだろうか?
「可愛いメイドさんですね」
と、ニッコリとラングドールが笑みを浮かべるとメイは少し恥ずかしがっていた。うちのメイドを口説かないでくれ。アンタ、顔めちゃくちゃ強いんだから。誰がどう見たって王子様みたいな面しているんだから。
「この手紙を見て下さい! 差出人はメリーザさんです!」
まあメイは森妖精だからアリシアと同格のメリーザを呼び捨てにすることはできないんだろうな。
「メリーザって確かマカロフ卿の時にいた森妖精ですよね? ナリユキ様は味方につけたのですか?」
「味方というか協力だな」
「森妖精語で書いているので私が読み上げます」
メイはそう言って俺とラングドールの近くに来た。森妖精語なんてものがあるんだな。
「いいぞ。宜しく頼む」
「私は同席していても良いものでしょうか?」
ラングドールはそう不安気に訊いて来たので「気にするな」と返した。
「では読み上げます。ナリユキ・タテワキ殿。お身体は大丈夫でしょうか? どこかに違和感などは感じないでしょうか? 無事いるのであれば安心です。さて、この手紙を送るに至ったのは、つい先日、コードがナリユキ・タテワキ殿が仰っていたQという人物が訪れたからです。金色蛇の柄をした仮面を付けた奇妙な男でした。コードとQの話が気になった私は盗み聞きをして情報の入手に至りました。まずはヴェドラウイルスに関してですが、コードが出資しているわけではありませんでした。ですので、私達とQは別の勢力だと考えておいて下さい。ヴェドラウイルスに関しては私も知らない情報だったので、貴方も薄々気付いていたことでしょう。マカロフ卿がこの件を知っているかどうかは正直不明ですが、私達とQは協力関係という形です。ですので、情報の行き来が遅いという欠点がありましたが、Qはそれを補うアイテムをコードに渡していたので、その欠点を補う事ができました。また、ナリユキ・タテワキ殿が幻幽蝶を入手していたこともQは既に知っておりました。幻幽蝶は100年に1度現れるという幻の魔物ですが本当に入手できたのでしょうか? もし本当であれば、情報が漏れているので、身近にスパイなり諜報員なりがいるはずなので炙り出すことが先決でしょう。また、幻幽蝶の効果を無効化できるような対策を講じているとQは言っておりました。私が現段階で入手した情報は以上です。引き続き、無理のない程度に詮索します。本当に世界の平和を望むのであれば、マーズベルという国が亡んではいけないと思っておりますので――以上です」
「ありがとうな」
俺がそう言うとメイは満足そうだった。さて――。
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