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新たな情報Ⅱ
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私は一瞬躊躇った。領地内の話なので友人というのは当然貴族となる。
「それはどういう状況だったのでしょうか?」
「スペード侯爵家の敷地内にある物置小屋で、私の友人であるサイスト・クローバー侯爵が死体で発見されました。当然、スペード侯爵の人間は地下牢で監禁されております。犯人が誰か分からない以上、子供以外は使用人も含めて捕らえられているといった状況です」
この言い方するとスペード侯爵家が濡れ衣を着せられていると言った状況だろうか。それはそれで酷な話だけど一体何がどう絡んでくるんだろう?
「しかし、それと私達の事件ではどのような関係があるのでしょうか?」
「それは、サイスト・クローバー侯爵が金色蛇の仮面男の足取りを追っていたところなので、殺害された場所はスペード侯爵の敷地内ではありません。金色蛇の仮面男を追っていた彼は、そのまま金色蛇の仮面男に見つかってしまい殺されたのでしょう」
「金色蛇の仮面男の名前はQと名乗っているようです。これからはQと呼ぶほうが楽でしょう」
「そうでしたか――」
「では簡単な話ではないか。その殺害された場所がスペード侯爵家の敷地内で殺害されていないのであれば、その事実を伝えるといいではないか」
すると、シュタインさんの拳は震えていた。
「それが出来ないんです。御二人には見えているでしょう? 私のユニークスキルが――!」
「ええ」
シュタインさんのユニークスキルは霊の情報網という変わったユニークスキルだ。スキルの効果は、自分が必要としている情報を霊が教えてくれるというもの。ただ、このスキルはあまりにも残念だ。何故なら――。
「皆、私の話を信じてくれないのです。それは私のスキルが霊の声しか聞けないというものです。私には霊達の実態が見えない――しかしこの力は本物なのです。小さい事で言えば、探し物とかも霊達に訊けば教えてくれて、言われた場所に必ずありますので――しかし、私より格上の貴族達からは妄言だと言って否定されます」
そう――霊の実態が見えないという何とも中途半端なスキルだ。まだ実態が見えるのであれば信じてくれる人もいるだろう――何故なら、実態が見えないという事は、実態すら見えない得体の知れない助言を信じるのか? 声だけを信じるなんて頭がおかしいのではないのか? と、揶揄されるだろう。実態が見えていたとしても話はさほど変わらないが、見えているという事実を強調すれば信じてくれる人もいるかもしれない――大きな権力を持っている人が味方についていれば――。
「失礼ですが、サードさんの爵位は?」
「私は――子爵です」
シュタインさんはそう残念そうに呟いた。爵位についているだけで驕っているようなイメージがあったから、シュタインさんの印象は悪くない――と、言うより、今の言い方だと子爵という立場は弱いから劣等感に駆り立てられているのだろうか……?
「スペード侯爵に味方につこうとしましたが結局は失敗に終わりました。私の発言力ではスペード侯爵家を守ることはできませんでした。ですので、マーズベルの皆様には、この情報を元に真実を突き止めてほしいのです」
彼の左目には「なんとかしたい!」という強い情熱を感じ取れることができた。
「何とかサイストの無念を晴らしたいのです。濡れ衣を着せてのうのうとしている犯人を取り逃がしたくはないのです!」
何かものすごく悪い気しかしない。カルカラの貴族達の中に犯人がいるとなると、当然大きな力が働いているのは妥当だよね?
そう考えていると、ランベリオンの手をポンと叩く音がした。
「そのご友人の霊に直接訊けばよいのではないか!? それならば、サイスト殿がどのような情報を聞いていたのかも分かるではないか!?」
「確かに――」
私がそう頷いていると、シュタインさんは首を左右に振った。
「それが一番手っ取り早いと思いサイストを呼んでみましたが、彼からの声は無かったのです――霊達の情報によると除霊されたのだとか――」
除霊――また、次から次へとややこしいものを放り込んでくるわね――。
「左様であったか――まあその情報を元に動くのはアリだな。カルカラの貴族達の中に犯人がいるとなると、単独犯であろうと、複数犯であろうと必ず尻尾を捕まえてみせよう。でなければ我々も対策できないしな」
「そうね」
私がそう言うと、シュタインさんは目に涙を浮かべて「ありがとうございます!」と勢いよく頭を下げてきた。今更ではあるけどシュタインさんが嘘の情報を私達に渡しているつもりも無さそうだし、私達をハメようともしてなさそうだ。仮に嘘だったら泣かないだろうし――まあ、女性は嘘の涙とかも平気で出す人もいるから、女性に対しては参考にはならないけど。
「とりあえず明日動くしかないわね。店主同じの下さい」
「かしこまりました」
店主はそう返事をくれてオペレーターを作り始めた。ランベリオンがまだ飲むの? という顔で見てきているのは気にしない気にしない。
「あ! その一杯は私に払わせて下さい! お礼をさせてほしいのです」
「いいですよそんなの」
「ミユキ様のような綺麗な御方のお酒代を出せるのあれば本望です」
シュタインさんにそう強く言われた。声や目。体格を見る感じだと歳は変わらない――下手すると私より年下かもしれないシュタインさんにそう言われて少し嬉しいと感じた。そう言えば前にもカルカラの貴族に何か口説かれたような――。この世界に来てからもしかして私モテ始めているのかな? こんな表情が固い私の何処かいいのだか――。
「お待たせ致しました」
店主にカクテルを出されると――。
「出会いに乾杯して下さい。本当にありがとうございます」
シュタインさんはそう言って飲んでいる白ワインを差し出して来た。
「ええ。こちらこそありがとうございます」
グラスを重ねてコンという音を確認すると、私とシュタインさんは同時にお酒を口に運んだ。
「それはどういう状況だったのでしょうか?」
「スペード侯爵家の敷地内にある物置小屋で、私の友人であるサイスト・クローバー侯爵が死体で発見されました。当然、スペード侯爵の人間は地下牢で監禁されております。犯人が誰か分からない以上、子供以外は使用人も含めて捕らえられているといった状況です」
この言い方するとスペード侯爵家が濡れ衣を着せられていると言った状況だろうか。それはそれで酷な話だけど一体何がどう絡んでくるんだろう?
「しかし、それと私達の事件ではどのような関係があるのでしょうか?」
「それは、サイスト・クローバー侯爵が金色蛇の仮面男の足取りを追っていたところなので、殺害された場所はスペード侯爵の敷地内ではありません。金色蛇の仮面男を追っていた彼は、そのまま金色蛇の仮面男に見つかってしまい殺されたのでしょう」
「金色蛇の仮面男の名前はQと名乗っているようです。これからはQと呼ぶほうが楽でしょう」
「そうでしたか――」
「では簡単な話ではないか。その殺害された場所がスペード侯爵家の敷地内で殺害されていないのであれば、その事実を伝えるといいではないか」
すると、シュタインさんの拳は震えていた。
「それが出来ないんです。御二人には見えているでしょう? 私のユニークスキルが――!」
「ええ」
シュタインさんのユニークスキルは霊の情報網という変わったユニークスキルだ。スキルの効果は、自分が必要としている情報を霊が教えてくれるというもの。ただ、このスキルはあまりにも残念だ。何故なら――。
「皆、私の話を信じてくれないのです。それは私のスキルが霊の声しか聞けないというものです。私には霊達の実態が見えない――しかしこの力は本物なのです。小さい事で言えば、探し物とかも霊達に訊けば教えてくれて、言われた場所に必ずありますので――しかし、私より格上の貴族達からは妄言だと言って否定されます」
そう――霊の実態が見えないという何とも中途半端なスキルだ。まだ実態が見えるのであれば信じてくれる人もいるだろう――何故なら、実態が見えないという事は、実態すら見えない得体の知れない助言を信じるのか? 声だけを信じるなんて頭がおかしいのではないのか? と、揶揄されるだろう。実態が見えていたとしても話はさほど変わらないが、見えているという事実を強調すれば信じてくれる人もいるかもしれない――大きな権力を持っている人が味方についていれば――。
「失礼ですが、サードさんの爵位は?」
「私は――子爵です」
シュタインさんはそう残念そうに呟いた。爵位についているだけで驕っているようなイメージがあったから、シュタインさんの印象は悪くない――と、言うより、今の言い方だと子爵という立場は弱いから劣等感に駆り立てられているのだろうか……?
「スペード侯爵に味方につこうとしましたが結局は失敗に終わりました。私の発言力ではスペード侯爵家を守ることはできませんでした。ですので、マーズベルの皆様には、この情報を元に真実を突き止めてほしいのです」
彼の左目には「なんとかしたい!」という強い情熱を感じ取れることができた。
「何とかサイストの無念を晴らしたいのです。濡れ衣を着せてのうのうとしている犯人を取り逃がしたくはないのです!」
何かものすごく悪い気しかしない。カルカラの貴族達の中に犯人がいるとなると、当然大きな力が働いているのは妥当だよね?
そう考えていると、ランベリオンの手をポンと叩く音がした。
「そのご友人の霊に直接訊けばよいのではないか!? それならば、サイスト殿がどのような情報を聞いていたのかも分かるではないか!?」
「確かに――」
私がそう頷いていると、シュタインさんは首を左右に振った。
「それが一番手っ取り早いと思いサイストを呼んでみましたが、彼からの声は無かったのです――霊達の情報によると除霊されたのだとか――」
除霊――また、次から次へとややこしいものを放り込んでくるわね――。
「左様であったか――まあその情報を元に動くのはアリだな。カルカラの貴族達の中に犯人がいるとなると、単独犯であろうと、複数犯であろうと必ず尻尾を捕まえてみせよう。でなければ我々も対策できないしな」
「そうね」
私がそう言うと、シュタインさんは目に涙を浮かべて「ありがとうございます!」と勢いよく頭を下げてきた。今更ではあるけどシュタインさんが嘘の情報を私達に渡しているつもりも無さそうだし、私達をハメようともしてなさそうだ。仮に嘘だったら泣かないだろうし――まあ、女性は嘘の涙とかも平気で出す人もいるから、女性に対しては参考にはならないけど。
「とりあえず明日動くしかないわね。店主同じの下さい」
「かしこまりました」
店主はそう返事をくれてオペレーターを作り始めた。ランベリオンがまだ飲むの? という顔で見てきているのは気にしない気にしない。
「あ! その一杯は私に払わせて下さい! お礼をさせてほしいのです」
「いいですよそんなの」
「ミユキ様のような綺麗な御方のお酒代を出せるのあれば本望です」
シュタインさんにそう強く言われた。声や目。体格を見る感じだと歳は変わらない――下手すると私より年下かもしれないシュタインさんにそう言われて少し嬉しいと感じた。そう言えば前にもカルカラの貴族に何か口説かれたような――。この世界に来てからもしかして私モテ始めているのかな? こんな表情が固い私の何処かいいのだか――。
「お待たせ致しました」
店主にカクテルを出されると――。
「出会いに乾杯して下さい。本当にありがとうございます」
シュタインさんはそう言って飲んでいる白ワインを差し出して来た。
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