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新たな情報Ⅰ
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あの後、barで私の隣にランベリオンという席順でお酒を飲んで飲んで飲みまくっていた。
「ミユキ殿凄い勢いだな。こっちに来てからも10杯程飲んでいないか?」
「そういうランベリオンだってめちゃくちゃ飲んでいるじゃない」
頭がとてつもなくフワフワした状態で私はランベリオンにそう言った。
「マーズベルの転生者様とランベリオン様ですね?」
すると、一番奥の席に座っている黒いフードを被った人物に声をかけられた。私より席が1つ空いているだけのカウンター席なので、距離としては1mあるかないかくらいの距離だ。
「そうですよ。貴方は?」
「私はサードと申します」
ステータスを視た感じだとサードという名前は偽名だ。
「私の前で嘘の名前は通用しませんよ? 何か訳ありなのですか?」
彼の本名はシュベルク・アーティマー・シュタイン。スキルが多い事を考えると3,000前後の戦闘値があってもおかしくない手練れだ。
「そうでしたか。確かに私は究極の阻害者持ちではないですからね」
「だから何か訳ありなのかな? と考えておりました」
「訳ありといえば訳ありですね。でなければこんな格好しません」
確かに――。自覚はあったんだ。だって未だにフードで顔見えないもんな。この人正面を見ながら喋っているし。
「で、何か用ですか?」
自分で言っておいて何だがもの凄くドライな返しだ。だって仕方ないじゃん。お酒を楽しみたいんだから。
「マカロフ卿の情報は集まっていますか?」
その言葉に私は酔いが冷めた。
「何故それを?」
「マーズベルは今、大変な事になっていると伺いました。私から有益な情報を与えることができるのではと思いまして」
「有益な情報ですか?」
「はい。ヴェドラウイルスについての情報は知っていますか?」
「知っている情報もあれば知らない情報もあるでしょう……怪しい人はいたんですけどね」
私がそう話をしているときだった。
「ミユキ殿。見ず知らずの者に我々の調査を口外する必要はない。お酒で気が緩んでいるのではないのか?」
確かにランベリオンの言う通りだ。お酒で警戒心というものは完全に解けている。
「すみませんがこれ以上貴方とはお話しできません」
私はそう言って白ワイン、ジンジャーエール、レモンジュースのカクテル、オペレーターを口の中に運んだ。
「ヴェドラウイルスを撒いてカルカラの貴族達を襲った人物が、カルカラの貴族の中にいるんですよ。それもカーネル王国に来訪したときの人物の中に」
その可能性は薄い――。だってカルカラの貴族は襲われたと聞いた。
「話にならないわね」
私は彼に向かって特段何も言わずにそう吐き捨てた。
「自作自演なんですよ。襲われたというのは」
流石に聞き捨てならない情報だ。
「どういう事だ?」
私が話すよりランベリオンが先にそう問いかけた。
「カルカラの貴族の中にマカロフ卿と手を組んでいる人物がいるのは確実です」
「その根拠は何ですか?」
私がそう問いかけると男は私達に身体を向けてフードを取った。包帯で顔全体をグルグルに巻いており、見えるのはシュタインさんの左目のみ。
「私も含めて仲間が数人やられました。私はあの時にカーネル王国にいた貴族の中の1人です。この傷は帰りに黒いフードを被った男達に襲われたときの傷です」
それで疑問だ。回復で治らないものかと。
「その傷は回復で治らないんですか?」
「そうですね。治りません。妙な薬を飲まされたようでして……」
「我々の国に行けば治るかもしれませんが……やはりそれではカルカラの貴族のなかに犯人がいると言う事にはなりませんね」
「そもそも襲われた人物達を怪しむなど――」
ランベリオンがそう言った時だった。
「私達の中にはアーツ様もいました。目的はただの自作自演ではありません。それに以前、カルカラの貴族しか入れない領地に、黒いローブを身に纏った金色の蛇のような仮面を付けた男を見たことがあります。生憎、声に関しては変な声だったので、貴族のなかの誰かまでは分かりませんが、その男は私達を襲ったときにも存在しておりました」
「で、あるならばその時にいなかった貴族の方は覚えていますか?」
「いいえ。申し訳ございません」
シュタインさんはそう言って申し訳なさそうな目をしていた。
「その薬の影響で一部の記憶が飛んでいる可能性もあるな。その事件があったときの事は忘れているのはそれだけか?」
「ええ。確かにランベリオン様が仰る通り、襲われた時の記憶は曖昧です」
蛇仮面の男――。確かQという男だ。そもそもQという人物が1人ではないという可能性もある。或いは、Qという人物が1人だが、その時に別の人物に仮面を付けさせて、貴族の一員として紛れていた可能性もある。しかし、仮面を付けた男をイメージさせる目的は何の為? 貴族が入れない領地にQがいたことが不思議だ。そんな事すればQが貴族の中の誰かだとバレてしまう。その仮面を付けておかないといけない理由でもあったのだろうか?
「そして貴族の中に犯人がいると私にはもう1つ理由があります」
闇を見ているかのようなシュタインさんの目に、私とランベリオンは固唾を飲んだ。
「私の友人が、貴族の領地内で殺害されました」
シュタインさんの言葉が私の胸に深く突き刺さった。
「ミユキ殿凄い勢いだな。こっちに来てからも10杯程飲んでいないか?」
「そういうランベリオンだってめちゃくちゃ飲んでいるじゃない」
頭がとてつもなくフワフワした状態で私はランベリオンにそう言った。
「マーズベルの転生者様とランベリオン様ですね?」
すると、一番奥の席に座っている黒いフードを被った人物に声をかけられた。私より席が1つ空いているだけのカウンター席なので、距離としては1mあるかないかくらいの距離だ。
「そうですよ。貴方は?」
「私はサードと申します」
ステータスを視た感じだとサードという名前は偽名だ。
「私の前で嘘の名前は通用しませんよ? 何か訳ありなのですか?」
彼の本名はシュベルク・アーティマー・シュタイン。スキルが多い事を考えると3,000前後の戦闘値があってもおかしくない手練れだ。
「そうでしたか。確かに私は究極の阻害者持ちではないですからね」
「だから何か訳ありなのかな? と考えておりました」
「訳ありといえば訳ありですね。でなければこんな格好しません」
確かに――。自覚はあったんだ。だって未だにフードで顔見えないもんな。この人正面を見ながら喋っているし。
「で、何か用ですか?」
自分で言っておいて何だがもの凄くドライな返しだ。だって仕方ないじゃん。お酒を楽しみたいんだから。
「マカロフ卿の情報は集まっていますか?」
その言葉に私は酔いが冷めた。
「何故それを?」
「マーズベルは今、大変な事になっていると伺いました。私から有益な情報を与えることができるのではと思いまして」
「有益な情報ですか?」
「はい。ヴェドラウイルスについての情報は知っていますか?」
「知っている情報もあれば知らない情報もあるでしょう……怪しい人はいたんですけどね」
私がそう話をしているときだった。
「ミユキ殿。見ず知らずの者に我々の調査を口外する必要はない。お酒で気が緩んでいるのではないのか?」
確かにランベリオンの言う通りだ。お酒で警戒心というものは完全に解けている。
「すみませんがこれ以上貴方とはお話しできません」
私はそう言って白ワイン、ジンジャーエール、レモンジュースのカクテル、オペレーターを口の中に運んだ。
「ヴェドラウイルスを撒いてカルカラの貴族達を襲った人物が、カルカラの貴族の中にいるんですよ。それもカーネル王国に来訪したときの人物の中に」
その可能性は薄い――。だってカルカラの貴族は襲われたと聞いた。
「話にならないわね」
私は彼に向かって特段何も言わずにそう吐き捨てた。
「自作自演なんですよ。襲われたというのは」
流石に聞き捨てならない情報だ。
「どういう事だ?」
私が話すよりランベリオンが先にそう問いかけた。
「カルカラの貴族の中にマカロフ卿と手を組んでいる人物がいるのは確実です」
「その根拠は何ですか?」
私がそう問いかけると男は私達に身体を向けてフードを取った。包帯で顔全体をグルグルに巻いており、見えるのはシュタインさんの左目のみ。
「私も含めて仲間が数人やられました。私はあの時にカーネル王国にいた貴族の中の1人です。この傷は帰りに黒いフードを被った男達に襲われたときの傷です」
それで疑問だ。回復で治らないものかと。
「その傷は回復で治らないんですか?」
「そうですね。治りません。妙な薬を飲まされたようでして……」
「我々の国に行けば治るかもしれませんが……やはりそれではカルカラの貴族のなかに犯人がいると言う事にはなりませんね」
「そもそも襲われた人物達を怪しむなど――」
ランベリオンがそう言った時だった。
「私達の中にはアーツ様もいました。目的はただの自作自演ではありません。それに以前、カルカラの貴族しか入れない領地に、黒いローブを身に纏った金色の蛇のような仮面を付けた男を見たことがあります。生憎、声に関しては変な声だったので、貴族のなかの誰かまでは分かりませんが、その男は私達を襲ったときにも存在しておりました」
「で、あるならばその時にいなかった貴族の方は覚えていますか?」
「いいえ。申し訳ございません」
シュタインさんはそう言って申し訳なさそうな目をしていた。
「その薬の影響で一部の記憶が飛んでいる可能性もあるな。その事件があったときの事は忘れているのはそれだけか?」
「ええ。確かにランベリオン様が仰る通り、襲われた時の記憶は曖昧です」
蛇仮面の男――。確かQという男だ。そもそもQという人物が1人ではないという可能性もある。或いは、Qという人物が1人だが、その時に別の人物に仮面を付けさせて、貴族の一員として紛れていた可能性もある。しかし、仮面を付けた男をイメージさせる目的は何の為? 貴族が入れない領地にQがいたことが不思議だ。そんな事すればQが貴族の中の誰かだとバレてしまう。その仮面を付けておかないといけない理由でもあったのだろうか?
「そして貴族の中に犯人がいると私にはもう1つ理由があります」
闇を見ているかのようなシュタインさんの目に、私とランベリオンは固唾を飲んだ。
「私の友人が、貴族の領地内で殺害されました」
シュタインさんの言葉が私の胸に深く突き刺さった。
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