243 / 597
密告者Ⅱ
しおりを挟む
「じゃあ俺とミクちゃんはルミエールの所に行ってくるから宜しくな」
「はい!」
皆が返事してくれた後は、「くれぐれも気を付けて下さい」という心配の声だった。まあ一度捕まってしまったから余計に心配するわな。今までの俺なら「大丈夫」と絶対的な自信を持っていたけど、今は正直何とも言えない。何が起きるか分からないというのは身をもって体験した。あと、正直腕を切られる拷問はヤバかった。何あれ? 意地張っていたけど、ゆっくりと切り落とされていくのは地獄でしかないよ? もう二度と受けたくない。
「では解散」
俺がそう言うと皆は部屋からゾロゾロと出て行った。
「ほな気ぃつけて行って来てくださいね」
「ありがとうレンさん」
「おう。帰ってきたらまた酒飲みましょ~」
レンさんはそう陽気な声を出しながら後ろ向きで手を振っていた。
「そうだな。って言ってもそんなに時間かからないと思うけど」
「そうやといいけどな。不測の事態ってよくあるから」
レンさんはそう言ってこの部屋を出て行った。
「皆優しいね。改めて言う事じゃないか」
「まあ分かり切ってることだもんな」
俺がそう言うとミクちゃんは「そうだね」と笑顔で言ってくれた。眩しい――眩しいよミクちゃん。
「ほい」
俺が手を出すとミクちゃんは少し照れくさそうに右手を差し出してくれた。俺が軽く握るとミクちゃんの顔が紅潮しているのが分かった。この人、何でこのタイミングでうぶな反応するんですか? めちゃくちゃ可愛くないですか?
「じゃあルミエールを思い浮かべてくれ」
「うん」
「よし」
ミクちゃんの返事が聞けたので、俺とミクちゃんは同時に目を瞑ってルミエールの顔を思い浮かべた。
「ん? ナリユキ――?」
ルミエールの声だ。えらい声の感じからしてキョトンとしているのが目に浮かぶ。俺はそっと目を目を開けた。
「ナリユキ様無事だったんですか!?」
「生きていた!」
と、大盛り上がりな様子。色々な冒険者がいるここはカーネル王国ギルド本部だ。
「ナリユキ殿! ミク殿!」
「ナリユキ様! ミク様!」
そう言って俺とミクちゃんに駆け寄って来たのルミエールと話していたベルゾーグとアリスだ。
「ご無事で何よりです」
と、ミクちゃんの手をぎゅっと握りに行ったアリス。ミクちゃんはそのアリスを抱きしめていた。
「ごめんね。心配かけたね」
「本当にそうですよぅぅ」
う~ん。何か姉妹感強めだな。いつも通りの事ではあるが。
「本当に戻って来たんだね」
俺は俺でルミエールに抱きつかれることになった。冒険者が皆見ているのに恥ずかしいんだけど。
「心配かけたなルミエール。ありがとう」
俺がそう言いながらルミエールを引きはがして、ルミエールの顔をよくよく見てみると目の下のクマが酷かった。俺とクロノスと兵士5人がどうなっているのか分からないという状況だったから、ここ最近あまり寝る事が出来なかったんだろうな――。
「クロノス達も全員無事だ」
「そうか! それは良かった。本当に驚いたよ。まさかナリユキまで捕まってしまうって」
ルミエールがそう言った後に、ギルドの冒険者達が口を開いた。
「私達が不甲斐ないばかりに申し訳ございません」
そう言ったのは弓を持っている森妖精の男の冒険者だった。他にも人間、獣人、猪戦士、牛獣人などの面々が俺に謝罪をしてきた。
「皆を助けるためにナリユキ様は自分の身を敵に委ねました。ナリユキ様だけなら何とか切り抜けることができた場面だったでしょう。しかし、我々の存在がかえって邪魔になってしまいました。本当に申し訳ございませんでした」
そう言って来たのは、ルミエールの護衛をしている兵士の男だった。歳は30半ばと言ったところ。正直あのときは非難をされまくっていたから兵士の中に味方はいないとすら思っていたんだけど。
「いえいえ全然大丈夫ですよ」
「この御恩は一生忘れません。ナリユキ様を非難した兵士に関しては何らかの処置をとらせて頂きますので、あの時の無礼はどうか御赦しを頂けると幸甚です」
俺はそう兵士に謝罪をされた。処置か――そこまでしなくてもいいんだけどな。
「別にそこまでしなくてもいいよ」
「いえいえ。自分の命を助けてもらった身のはずが、非難するという事は反道徳的です。それは我々の教育が疎かだという事です。何かしらの形で償ってもらわねば、彼等は同じミスを繰り返すでしょう」
確かに言っていることはその通りだけどな。何か罪悪感半端ねえ――。
「わかった。頼むよ」
「ありがとうございます」
そう勢いよく言われたので俺はまあこれはこれでいいかと思った。
「ベルゾーグ、アリス、情報収集のほうはどうだ?」
俺がそう言うと、ベルゾーグもアリスも渋い顔をしていた。
「正直なところありませんでした」
「ここにカーネル王がいるのも、拙者とアリスが協力要請をしたからだ。少し気は悪いのだが、ここにいるギルドの人間が嘘をついていないか見ていたんだ」
「それでこんなに集まっているのか?」
「そうだ。反発する者もいたが基本的には協力的だった。結果、ナリユキ殿の情報を流した人間はギルドにはいない。またそれに関する情報を持っている人間はいなかった」
「まあ予測はできていたけどな。可能性を潰してくれたのは非常にありがたい」
「と、言うと?」
「ギルド本部へも転移イヤリングを使って移動したから、目撃者ってほぼほぼいない筈なんだよな」
「そうだったのか」
ベルゾーグは肩をガクッと落としていた。でもこれ知っているのって後クロノスくらいだからルミエールを恨んでも意味無いぞ。
「はい!」
皆が返事してくれた後は、「くれぐれも気を付けて下さい」という心配の声だった。まあ一度捕まってしまったから余計に心配するわな。今までの俺なら「大丈夫」と絶対的な自信を持っていたけど、今は正直何とも言えない。何が起きるか分からないというのは身をもって体験した。あと、正直腕を切られる拷問はヤバかった。何あれ? 意地張っていたけど、ゆっくりと切り落とされていくのは地獄でしかないよ? もう二度と受けたくない。
「では解散」
俺がそう言うと皆は部屋からゾロゾロと出て行った。
「ほな気ぃつけて行って来てくださいね」
「ありがとうレンさん」
「おう。帰ってきたらまた酒飲みましょ~」
レンさんはそう陽気な声を出しながら後ろ向きで手を振っていた。
「そうだな。って言ってもそんなに時間かからないと思うけど」
「そうやといいけどな。不測の事態ってよくあるから」
レンさんはそう言ってこの部屋を出て行った。
「皆優しいね。改めて言う事じゃないか」
「まあ分かり切ってることだもんな」
俺がそう言うとミクちゃんは「そうだね」と笑顔で言ってくれた。眩しい――眩しいよミクちゃん。
「ほい」
俺が手を出すとミクちゃんは少し照れくさそうに右手を差し出してくれた。俺が軽く握るとミクちゃんの顔が紅潮しているのが分かった。この人、何でこのタイミングでうぶな反応するんですか? めちゃくちゃ可愛くないですか?
「じゃあルミエールを思い浮かべてくれ」
「うん」
「よし」
ミクちゃんの返事が聞けたので、俺とミクちゃんは同時に目を瞑ってルミエールの顔を思い浮かべた。
「ん? ナリユキ――?」
ルミエールの声だ。えらい声の感じからしてキョトンとしているのが目に浮かぶ。俺はそっと目を目を開けた。
「ナリユキ様無事だったんですか!?」
「生きていた!」
と、大盛り上がりな様子。色々な冒険者がいるここはカーネル王国ギルド本部だ。
「ナリユキ殿! ミク殿!」
「ナリユキ様! ミク様!」
そう言って俺とミクちゃんに駆け寄って来たのルミエールと話していたベルゾーグとアリスだ。
「ご無事で何よりです」
と、ミクちゃんの手をぎゅっと握りに行ったアリス。ミクちゃんはそのアリスを抱きしめていた。
「ごめんね。心配かけたね」
「本当にそうですよぅぅ」
う~ん。何か姉妹感強めだな。いつも通りの事ではあるが。
「本当に戻って来たんだね」
俺は俺でルミエールに抱きつかれることになった。冒険者が皆見ているのに恥ずかしいんだけど。
「心配かけたなルミエール。ありがとう」
俺がそう言いながらルミエールを引きはがして、ルミエールの顔をよくよく見てみると目の下のクマが酷かった。俺とクロノスと兵士5人がどうなっているのか分からないという状況だったから、ここ最近あまり寝る事が出来なかったんだろうな――。
「クロノス達も全員無事だ」
「そうか! それは良かった。本当に驚いたよ。まさかナリユキまで捕まってしまうって」
ルミエールがそう言った後に、ギルドの冒険者達が口を開いた。
「私達が不甲斐ないばかりに申し訳ございません」
そう言ったのは弓を持っている森妖精の男の冒険者だった。他にも人間、獣人、猪戦士、牛獣人などの面々が俺に謝罪をしてきた。
「皆を助けるためにナリユキ様は自分の身を敵に委ねました。ナリユキ様だけなら何とか切り抜けることができた場面だったでしょう。しかし、我々の存在がかえって邪魔になってしまいました。本当に申し訳ございませんでした」
そう言って来たのは、ルミエールの護衛をしている兵士の男だった。歳は30半ばと言ったところ。正直あのときは非難をされまくっていたから兵士の中に味方はいないとすら思っていたんだけど。
「いえいえ全然大丈夫ですよ」
「この御恩は一生忘れません。ナリユキ様を非難した兵士に関しては何らかの処置をとらせて頂きますので、あの時の無礼はどうか御赦しを頂けると幸甚です」
俺はそう兵士に謝罪をされた。処置か――そこまでしなくてもいいんだけどな。
「別にそこまでしなくてもいいよ」
「いえいえ。自分の命を助けてもらった身のはずが、非難するという事は反道徳的です。それは我々の教育が疎かだという事です。何かしらの形で償ってもらわねば、彼等は同じミスを繰り返すでしょう」
確かに言っていることはその通りだけどな。何か罪悪感半端ねえ――。
「わかった。頼むよ」
「ありがとうございます」
そう勢いよく言われたので俺はまあこれはこれでいいかと思った。
「ベルゾーグ、アリス、情報収集のほうはどうだ?」
俺がそう言うと、ベルゾーグもアリスも渋い顔をしていた。
「正直なところありませんでした」
「ここにカーネル王がいるのも、拙者とアリスが協力要請をしたからだ。少し気は悪いのだが、ここにいるギルドの人間が嘘をついていないか見ていたんだ」
「それでこんなに集まっているのか?」
「そうだ。反発する者もいたが基本的には協力的だった。結果、ナリユキ殿の情報を流した人間はギルドにはいない。またそれに関する情報を持っている人間はいなかった」
「まあ予測はできていたけどな。可能性を潰してくれたのは非常にありがたい」
「と、言うと?」
「ギルド本部へも転移イヤリングを使って移動したから、目撃者ってほぼほぼいない筈なんだよな」
「そうだったのか」
ベルゾーグは肩をガクッと落としていた。でもこれ知っているのって後クロノスくらいだからルミエールを恨んでも意味無いぞ。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
同級生の女の子を交通事故から庇って異世界転生したけどその子と会えるようです
砂糖琉
ファンタジー
俺は楽しみにしていることがあった。
それはある人と話すことだ。
「おはよう、優翔くん」
「おはよう、涼香さん」
「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」
「昨日ちょっと寝れなくてさ」
「何かあったら私に相談してね?」
「うん、絶対する」
この時間がずっと続けばいいと思った。
だけどそれが続くことはなかった。
ある日、学校の行き道で彼女を見つける。
見ていると横からトラックが走ってくる。
俺はそれを見た瞬間に走り出した。
大切な人を守れるなら後悔などない。
神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる