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マカロフ卿を追えⅠ
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「一体、ナリユキ君に何をしたの!?」
私がそう言うと、マカロフ卿は大きく煙を吐いた。ナリユキ君も何が何やらと言った感じで、マカロフ卿をギロリと睨めつけている。
「なあに簡単な話だ。コイツを精神的に追い詰めていただけで。ナリユキ・タテワキ。お前が見ていたのは幻覚だ」
「幻覚……?」
「ああ。幻覚を見せれば貴様は耐え切れずに私達の仲間になってくれると思っていたのだがな――こんなに早く来るとはどういうカラクリだ? 答えてもらおうかミク・アサギ」
マカロフ卿はそう言って私を睨めつけて来た。マカロフ卿には転移イヤリングという概念は無いらしい。あとはマカロフ卿といかにして戦わずに逃げるかだ――。
「答える義理はないわ」
「だろうな」
あれ待って。今思ったけど兵士達置いてけぼりじゃない?
私が苦い表情をしていると、クロノスさんが「どうかされましたか?」と質問をしてきた。
「そう言えば他の人――」
「大丈夫ですよ。私が見ておりますから」
クロノスさんはそう言っ外の景色を見下ろした。マカロフ卿は「成程な」と言っていただけで、特に表情を変えることはなかった――寧ろ興味が無いと言った感じ――しかし、どこかホッとしているようにも思える。
駄目だ。マカロフ卿が考えていることが全然分からない。
「で、ナリユキ・タテワキを救う為に私と戦うのか?」
「勿論」
「私も戦いますよ」
「確かに私は空を飛べないので防戦一方かもな。しかしだからと言って手が無い訳ではない」
マカロフ卿はそう言ってニヤリと笑みを浮かべた。
その不敵な笑みに背筋に緊張が走った。一体いつからいたのか。突如として現れた攻撃ヘリのアパッチ。
「なっ――」
「何も肉弾戦をするとは言っていないよな?」
「星光の聖域!」
私が咄嗟にそう唱えると、この一室をマカロフ卿を含めて光で包み込んだ。私がいる場所を中心に光が包み込まれている範囲内には魔法陣が描かれている。
「そう来ると思った」
アパッチによる銃撃をフル無視して、マカロフ卿はナリユキ君を連れてどこかへ連れ去ろうとした。
「クロノスさん!」
「はい!」
クロノスさんがナリユキ君を担ぐマカロフ卿に掌を向けた。
「遅いな」
その台詞と共に撃たれた中口径拳銃のマカロフの鉛弾。以前とは驚くほどの早撃ちでクロノスさんは両足に1発ずつ。胸に3発喰らっていた。
「ぐっ――」
クロノスさんは一瞬何が起きたか分からなかったようだけど、出血している胸に手を当てながら床に崩れ落ちた。
銃撃が止むとアパッチは私達の視界から消え去った。壁に穴が開いているから普通は音聞こえるのに、もしかしてハイブリッド車みたいな消音機能ついてる? もうマカロフ卿が相手だと異世界で戦っている気がしない。
私はアパッチを無視してクロノスさんに回復を行った。
「足を引っ張ってしまって申し訳ございません」
「仕方ないですよ。こういう展開はFPSのキャンペーンモードではお決まりなので」
「え? どういう事ですか?」
クロノスさんの質問は今はとりあえず無視。本当にFPSのキャンペーンモードばりに上手くいかない。
「とにかく追いましょう! 私は先に追っているので、兵士さん達をどこかへ避難させて下さい。その後に合流しましょう」
「しかし私にはミク様を探知するスキルはないのですが」
「これで私の居場所が分かります」
「これは?」
私がクロノスさんに渡したのはアンテナが付いた黒いデバイスだった。
「この赤く光っているのは何でしょうか? ものすごく近くにあるようですが」
「それは探知機です。そしてその赤い光は私なんです。マカロフ卿の兵士の数人は探知機と発信機を持っているようでした。ですので盗みました」
私はそう言ってスマートキーのような小型のデバイスをクロノスさんに見せつけた。
「成程」
「これがあれば私がこのアーティファクトと落としたり壊したりしない限りは分かります。ですので急いでください」
「かしこまりました。お気をつけて」
クロノスさんはそう言ってこの部屋から下に飛び降りて姿を消した。
それを確認すると私はこの部屋を出た。廊下に出ると煙幕が撒かれていた。
「何も見えない――」
私がそう言った途端――。
「うおおおおお!」
そう叫びながら襲い掛かって来る兵士がいた。複数の声がするのでこの煙幕の中、私に襲い掛かってきているのは1人では無いことは確かだ。
私は煙の微妙な動きで気配を感じ取りレイピアで襲い掛かって来る敵を斬りつけた。
次々と声を上げて倒れていく敵兵。声がしなくなったと同時に煙が晴れていった。
「もう何なの」
私の周りには「うう……」と声を漏らしながら倒れている敵兵が20人程いた。煙の中で味方を斬りつけないための対策だろうか。彼等は皆ゴーグルをしていた。全然強くないのに私を意図も簡単に見つけられるわけだ。
「駄目だ。全然足取りが掴めない――」
「こうなったら」
私はそう思うとこのお城を包み込むような大きさの結界を展開した。これにより、全ての人間がどの位置にいるか把握できる。
「お城の裏側から逃げようとしている」
私は天使の翼を展開して天井を燦爛の光線で破壊した。
天井は大穴を開けてそのまま空から見下ろすとナリユキ君が見えた。お城の裏には大きくHと書かれた場所があった。お城の裏はどうやらヘリポートになっていたらしい。
ヘリコプターのプロペラが動いていることから、マカロフ卿がナリユキ君を連れたら何処かへ逃げる気だ。
「そうはさせない」
私はヘリコプターの方へと突っ込んでいった。
私がそう言うと、マカロフ卿は大きく煙を吐いた。ナリユキ君も何が何やらと言った感じで、マカロフ卿をギロリと睨めつけている。
「なあに簡単な話だ。コイツを精神的に追い詰めていただけで。ナリユキ・タテワキ。お前が見ていたのは幻覚だ」
「幻覚……?」
「ああ。幻覚を見せれば貴様は耐え切れずに私達の仲間になってくれると思っていたのだがな――こんなに早く来るとはどういうカラクリだ? 答えてもらおうかミク・アサギ」
マカロフ卿はそう言って私を睨めつけて来た。マカロフ卿には転移イヤリングという概念は無いらしい。あとはマカロフ卿といかにして戦わずに逃げるかだ――。
「答える義理はないわ」
「だろうな」
あれ待って。今思ったけど兵士達置いてけぼりじゃない?
私が苦い表情をしていると、クロノスさんが「どうかされましたか?」と質問をしてきた。
「そう言えば他の人――」
「大丈夫ですよ。私が見ておりますから」
クロノスさんはそう言っ外の景色を見下ろした。マカロフ卿は「成程な」と言っていただけで、特に表情を変えることはなかった――寧ろ興味が無いと言った感じ――しかし、どこかホッとしているようにも思える。
駄目だ。マカロフ卿が考えていることが全然分からない。
「で、ナリユキ・タテワキを救う為に私と戦うのか?」
「勿論」
「私も戦いますよ」
「確かに私は空を飛べないので防戦一方かもな。しかしだからと言って手が無い訳ではない」
マカロフ卿はそう言ってニヤリと笑みを浮かべた。
その不敵な笑みに背筋に緊張が走った。一体いつからいたのか。突如として現れた攻撃ヘリのアパッチ。
「なっ――」
「何も肉弾戦をするとは言っていないよな?」
「星光の聖域!」
私が咄嗟にそう唱えると、この一室をマカロフ卿を含めて光で包み込んだ。私がいる場所を中心に光が包み込まれている範囲内には魔法陣が描かれている。
「そう来ると思った」
アパッチによる銃撃をフル無視して、マカロフ卿はナリユキ君を連れてどこかへ連れ去ろうとした。
「クロノスさん!」
「はい!」
クロノスさんがナリユキ君を担ぐマカロフ卿に掌を向けた。
「遅いな」
その台詞と共に撃たれた中口径拳銃のマカロフの鉛弾。以前とは驚くほどの早撃ちでクロノスさんは両足に1発ずつ。胸に3発喰らっていた。
「ぐっ――」
クロノスさんは一瞬何が起きたか分からなかったようだけど、出血している胸に手を当てながら床に崩れ落ちた。
銃撃が止むとアパッチは私達の視界から消え去った。壁に穴が開いているから普通は音聞こえるのに、もしかしてハイブリッド車みたいな消音機能ついてる? もうマカロフ卿が相手だと異世界で戦っている気がしない。
私はアパッチを無視してクロノスさんに回復を行った。
「足を引っ張ってしまって申し訳ございません」
「仕方ないですよ。こういう展開はFPSのキャンペーンモードではお決まりなので」
「え? どういう事ですか?」
クロノスさんの質問は今はとりあえず無視。本当にFPSのキャンペーンモードばりに上手くいかない。
「とにかく追いましょう! 私は先に追っているので、兵士さん達をどこかへ避難させて下さい。その後に合流しましょう」
「しかし私にはミク様を探知するスキルはないのですが」
「これで私の居場所が分かります」
「これは?」
私がクロノスさんに渡したのはアンテナが付いた黒いデバイスだった。
「この赤く光っているのは何でしょうか? ものすごく近くにあるようですが」
「それは探知機です。そしてその赤い光は私なんです。マカロフ卿の兵士の数人は探知機と発信機を持っているようでした。ですので盗みました」
私はそう言ってスマートキーのような小型のデバイスをクロノスさんに見せつけた。
「成程」
「これがあれば私がこのアーティファクトと落としたり壊したりしない限りは分かります。ですので急いでください」
「かしこまりました。お気をつけて」
クロノスさんはそう言ってこの部屋から下に飛び降りて姿を消した。
それを確認すると私はこの部屋を出た。廊下に出ると煙幕が撒かれていた。
「何も見えない――」
私がそう言った途端――。
「うおおおおお!」
そう叫びながら襲い掛かって来る兵士がいた。複数の声がするのでこの煙幕の中、私に襲い掛かってきているのは1人では無いことは確かだ。
私は煙の微妙な動きで気配を感じ取りレイピアで襲い掛かって来る敵を斬りつけた。
次々と声を上げて倒れていく敵兵。声がしなくなったと同時に煙が晴れていった。
「もう何なの」
私の周りには「うう……」と声を漏らしながら倒れている敵兵が20人程いた。煙の中で味方を斬りつけないための対策だろうか。彼等は皆ゴーグルをしていた。全然強くないのに私を意図も簡単に見つけられるわけだ。
「駄目だ。全然足取りが掴めない――」
「こうなったら」
私はそう思うとこのお城を包み込むような大きさの結界を展開した。これにより、全ての人間がどの位置にいるか把握できる。
「お城の裏側から逃げようとしている」
私は天使の翼を展開して天井を燦爛の光線で破壊した。
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ヘリコプターのプロペラが動いていることから、マカロフ卿がナリユキ君を連れたら何処かへ逃げる気だ。
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