【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
237 / 597

マカロフ卿を追えⅠ

しおりを挟む
「一体、ナリユキ君に何をしたの!?」

 私がそう言うと、マカロフ卿は大きく煙を吐いた。ナリユキ君も何が何やらと言った感じで、マカロフ卿をギロリと睨めつけている。

「なあに簡単な話だ。コイツを精神的に追い詰めていただけで。ナリユキ・タテワキ。お前が見ていたのは幻覚だ」

「幻覚……?」

「ああ。幻覚を見せれば貴様は耐え切れずに私達の仲間になってくれると思っていたのだがな――こんなに早く来るとはどういうカラクリだ? 答えてもらおうかミク・アサギ」

 マカロフ卿はそう言って私を睨めつけて来た。マカロフ卿には転移テレポートイヤリングという概念は無いらしい。あとはマカロフ卿といかにして戦わずに逃げるかだ――。

「答える義理はないわ」

「だろうな」

 あれ待って。今思ったけど兵士達置いてけぼりじゃない?

 私が苦い表情をしていると、クロノスさんが「どうかされましたか?」と質問をしてきた。

「そう言えば他の人――」

「大丈夫ですよ。私が見ておりますから」

 クロノスさんはそう言っ外の景色を見下ろした。マカロフ卿は「成程な」と言っていただけで、特に表情を変えることはなかった――寧ろ興味が無いと言った感じ――しかし、どこかホッとしているようにも思える。

 駄目だ。マカロフ卿が考えていることが全然分からない。

「で、ナリユキ・タテワキを救う為に私と戦うのか?」

「勿論」

「私も戦いますよ」

「確かに私は空を飛べないので防戦一方かもな。しかしだからと言って手が無い訳ではない」

 マカロフ卿はそう言ってニヤリと笑みを浮かべた。

 その不敵な笑みに背筋に緊張が走った。一体いつからいたのか。突如として現れた攻撃ヘリのアパッチ。

「なっ――」

「何も肉弾戦をするとは言っていないよな?」

星光の聖域ルミナ・サンクチュアリ!」

 私が咄嗟にそう唱えると、この一室をマカロフ卿を含めて光で包み込んだ。私がいる場所を中心に光が包み込まれている範囲内には魔法陣が描かれている。

「そう来ると思った」

 アパッチによる銃撃をフル無視して、マカロフ卿はナリユキ君を連れてどこかへ連れ去ろうとした。

「クロノスさん!」

「はい!」

 クロノスさんがナリユキ君を担ぐマカロフ卿に掌を向けた。

「遅いな」

 その台詞と共に撃たれた中口径拳銃のマカロフの鉛弾。以前とは驚くほどの早撃ちでクロノスさんは両足に1発ずつ。胸に3発喰らっていた。

「ぐっ――」

 クロノスさんは一瞬何が起きたか分からなかったようだけど、出血している胸に手を当てながら床に崩れ落ちた。

 銃撃が止むとアパッチは私達の視界から消え去った。壁に穴が開いているから普通は音聞こえるのに、もしかしてハイブリッド車みたいな消音機能ついてる? もうマカロフ卿が相手だと異世界で戦っている気がしない。

 私はアパッチを無視してクロノスさんに回復ヒールを行った。

「足を引っ張ってしまって申し訳ございません」

「仕方ないですよ。こういう展開はFPSのキャンペーンモードではお決まりなので」

「え? どういう事ですか?」

 クロノスさんの質問は今はとりあえず無視。本当にFPSのキャンペーンモードばりに上手くいかない。

「とにかく追いましょう! 私は先に追っているので、兵士さん達をどこかへ避難させて下さい。その後に合流しましょう」

「しかし私にはミク様を探知するスキルはないのですが」

「これで私の居場所が分かります」

「これは?」

 私がクロノスさんに渡したのはアンテナが付いた黒いデバイスだった。

「この赤く光っているのは何でしょうか? ものすごく近くにあるようですが」

「それは探知機です。そしてその赤い光は私なんです。マカロフ卿の兵士の数人は探知機と発信機を持っているようでした。ですので盗みました」

 私はそう言ってスマートキーのような小型のデバイスをクロノスさんに見せつけた。

「成程」

「これがあれば私がこのアーティファクトと落としたり壊したりしない限りは分かります。ですので急いでください」

「かしこまりました。お気をつけて」

 クロノスさんはそう言ってこの部屋から下に飛び降りて姿を消した。

 それを確認すると私はこの部屋を出た。廊下に出ると煙幕が撒かれていた。

「何も見えない――」

 私がそう言った途端――。

「うおおおおお!」

 そう叫びながら襲い掛かって来る兵士がいた。複数の声がするのでこの煙幕の中、私に襲い掛かってきているのは1人では無いことは確かだ。

 私は煙の微妙な動きで気配を感じ取りレイピアで襲い掛かって来る敵を斬りつけた。

 次々と声を上げて倒れていく敵兵。声がしなくなったと同時に煙が晴れていった。

「もう何なの」

 私の周りには「うう……」と声を漏らしながら倒れている敵兵が20人程いた。煙の中で味方を斬りつけないための対策だろうか。彼等は皆ゴーグルをしていた。全然強くないのに私を意図も簡単に見つけられるわけだ。

「駄目だ。全然足取りが掴めない――」

「こうなったら」

 私はそう思うとこのお城を包み込むような大きさの結界を展開した。これにより、全ての人間がどの位置にいるか把握できる。

「お城の裏側から逃げようとしている」

 私は天使の翼エンジェル・ウイングを展開して天井を燦爛の光線シャイニング・レイで破壊した。

 天井は大穴を開けてそのまま空から見下ろすとナリユキ君が見えた。お城の裏には大きくHと書かれた場所があった。お城の裏はどうやらヘリポートになっていたらしい。

 ヘリコプターのプロペラが動いていることから、マカロフ卿がナリユキ君を連れたら何処かへ逃げる気だ。

「そうはさせない」

 私はヘリコプターの方へと突っ込んでいった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

処理中です...