230 / 597
マカロフ卿の様子Ⅰ
しおりを挟む
「ん……」
俺は意識が朦朧としているなかゆっくりと目を開けるとまず見えたのは天井だ。どうやら俺は意識を失っていたらしい。見渡し見ると薄暗い部屋で、内装はレンガ造りのようだ――っつ……。
左の脇腹に痛みが走った。そうか俺は撃たれたんだ……。それで意識を失っていた。クソ――。
あれ? 手が全く動かない――。
「クソ手も足も繋がれていやがる」
どうやら俺はベッドに手も足も繋がれている。もう何をされるのかがある程度予測できた。そう思うだけで憂鬱だ。正直言うと怖い。スキルが発動しないだけで恐怖は膨れ上がる。いっそのこと死にたい――とすら思える。
「物音がしたんでな。起きたようだな」
ガチャと部屋に入って来たのはノコギリを持っているマカロフ卿と、表情が暗いメリーザだった。
「目覚めはどうだ?」
「最高だな」
俺がそう言うとマカロフ卿はふっと笑いやがった。
俺はこんなふざけた事を言ったが、顔は面白いくらいに引きつっているだろう。
「普通ならヤメロ! それで何をする気だ!? って言って青褪めた表情で訴えかけてくるもんだが……」
マカロフ卿はそう言って葉巻を吹かした。
「残念ながら俺の意思は曲げない。ならもうそっちが諦めるか俺を殺すしかないだろ」
「拷問されるのが怖くないのか?」
「俺はどんな拷問されても吐かない」
俺はそうマカロフ卿を睨めつけた。するとマカロフ卿は「面白い」と一言。俺に近付いてくるなり――。
「ほら。貴様が望んでいた拷問だ」
「ぐあぁぁぁぁ!!」
ギリギリと俺の腕にノコギリの刃が食い込んだ。激痛なんてものじゃない。上下に動かして、俺の左腕を木を削るかの如く切っていく。
俺がどれだけジタバタしても拘束された手足で自由など無い――。俺を待っているのはただ腕を切り落とされる未来のみ――。
「どうだ痛いか? 痛いだろう?」
マカロフ卿はそう言って俺の左腕を淡々と切っていく。
俺の腕からどんどんと溢れてくる血――。普通ならば意識が飛ぶのだろうけど、与えられている刺激が強烈すぎる故にただ俺は断末魔を上げ続けていた――。
「本当に民間人か? ほら、これが貴様の左腕だ」
俺はマカロフ卿に自分の左腕を見せられた。
しかし俺は痛みと遠のいていく意識のお陰で当然喋ることはできなかった。ただ息を切らすのみだ。視界を少し横にずらすと、俺の腕が本当に無くなっているのを実感する。当然出血が収まることなんて無い――。
俺は自分自身で顔が青白くなっていくのが分かっていた。
「マカロフ卿――お言葉ですがやりすぎでは?」
メリーザがマカロフ卿にそう質問していた。
「コードの命令だからな」
「しかし彼はアードルハイム帝国に捕まっていた人々を救い出しました。そのなかには私の友人もいました。ただ、私は一人で立ち向かう勇気が無かったので、友を救うということができなかった――それを彼は成し遂げてくれたのです!」
メリーザはそう涙ながらにマカロフ卿にそう強く訴えていた。
「何が言いたい?」
メリーザに向けるマカロフ卿の目は仲間に向けるような鋭さではなかった――もはや本気で敵対するときの目だ――。
「止めませんか? 私が今すぐ彼の腕を元通りにします」
メリーザはそう言って俺に近付いて来たが――。
「邪魔をするな」
マカロフ卿はメリーザの腹部を殴った。メリーザは腹部を押さえながら床に縮こまっている。
「邪魔が入ったな。続きを始めようか。どうだ? 我々の下につく気はないか? 貴様の能力はコードに買われている。悪い事は言わない、我々の下につけ」
「い……やだ……ね」
俺が掠れた声でそう呟くと、マカロフ卿は俺の胴体に付いている切断部の腕に葉巻を押し当ててきた。
「貴様本当に死にたいのか!?」
俺はの押し当てられている葉巻で再び断末魔を発していた。熱いと痛いの同時攻撃――ただでさえ切られた腕は痛いで済まされないほどの激痛なのに――。
「マカロフ卿! 止めて下さい! 今の貴方は過去に貴方がされたことの憂さ晴らしをしているだけにしか見えません! その行為は本当に貴方が望んでいる事なのですか!?」
「五月蠅いぞメリーザ! これは仕事だ。コードの命令に間違いなどない!」
「コードに固執する必要はないでしょう! 貴方は貴方なのですから! 彼を痛いぶることが貴方の正義なのですか!?」
目に涙を浮かべながらマカロフ卿を睨めつけるメリーザ――俺は彼女がマカロフ卿に対して反論するとは微塵も思っていなかった。寧ろマカロフ卿の命令は忠実にこなす印象があった。それは良くも悪くも、マカロフ卿以外と関わるときの彼女はどこか無機質だったからだ。
「もういい。その男をあの部屋へ連れて行っておけ」
そう言った後、マカロフ卿は壁を殴って部屋を出て行った。正直、何が何やら分からない。一体、何が起きているんだ?
俺がそう思っていると、メリーザは俺の切断された腕を持ち、俺の胴体に付いている腕とくっつけた。そしてメリーザは必死に回復を行ってくれた。どうやら元通りにしてくれるらしい。
「腕を切り落としたり……元に戻してくれたり……意味分からねえ。アンタ等の間に何があったんだよ」
俺は声が途切れ途切れになりながらもそう問いかけた。勿論、その間メリーザは俺の言葉を遮ること無く黙って聞いていた。
「私達というより――マカロフ卿がここ最近おかしくなってきてるのです」
「おかしい?」
俺がそう問いかけるとメリーザはゆっくりと口を開いた。
俺は意識が朦朧としているなかゆっくりと目を開けるとまず見えたのは天井だ。どうやら俺は意識を失っていたらしい。見渡し見ると薄暗い部屋で、内装はレンガ造りのようだ――っつ……。
左の脇腹に痛みが走った。そうか俺は撃たれたんだ……。それで意識を失っていた。クソ――。
あれ? 手が全く動かない――。
「クソ手も足も繋がれていやがる」
どうやら俺はベッドに手も足も繋がれている。もう何をされるのかがある程度予測できた。そう思うだけで憂鬱だ。正直言うと怖い。スキルが発動しないだけで恐怖は膨れ上がる。いっそのこと死にたい――とすら思える。
「物音がしたんでな。起きたようだな」
ガチャと部屋に入って来たのはノコギリを持っているマカロフ卿と、表情が暗いメリーザだった。
「目覚めはどうだ?」
「最高だな」
俺がそう言うとマカロフ卿はふっと笑いやがった。
俺はこんなふざけた事を言ったが、顔は面白いくらいに引きつっているだろう。
「普通ならヤメロ! それで何をする気だ!? って言って青褪めた表情で訴えかけてくるもんだが……」
マカロフ卿はそう言って葉巻を吹かした。
「残念ながら俺の意思は曲げない。ならもうそっちが諦めるか俺を殺すしかないだろ」
「拷問されるのが怖くないのか?」
「俺はどんな拷問されても吐かない」
俺はそうマカロフ卿を睨めつけた。するとマカロフ卿は「面白い」と一言。俺に近付いてくるなり――。
「ほら。貴様が望んでいた拷問だ」
「ぐあぁぁぁぁ!!」
ギリギリと俺の腕にノコギリの刃が食い込んだ。激痛なんてものじゃない。上下に動かして、俺の左腕を木を削るかの如く切っていく。
俺がどれだけジタバタしても拘束された手足で自由など無い――。俺を待っているのはただ腕を切り落とされる未来のみ――。
「どうだ痛いか? 痛いだろう?」
マカロフ卿はそう言って俺の左腕を淡々と切っていく。
俺の腕からどんどんと溢れてくる血――。普通ならば意識が飛ぶのだろうけど、与えられている刺激が強烈すぎる故にただ俺は断末魔を上げ続けていた――。
「本当に民間人か? ほら、これが貴様の左腕だ」
俺はマカロフ卿に自分の左腕を見せられた。
しかし俺は痛みと遠のいていく意識のお陰で当然喋ることはできなかった。ただ息を切らすのみだ。視界を少し横にずらすと、俺の腕が本当に無くなっているのを実感する。当然出血が収まることなんて無い――。
俺は自分自身で顔が青白くなっていくのが分かっていた。
「マカロフ卿――お言葉ですがやりすぎでは?」
メリーザがマカロフ卿にそう質問していた。
「コードの命令だからな」
「しかし彼はアードルハイム帝国に捕まっていた人々を救い出しました。そのなかには私の友人もいました。ただ、私は一人で立ち向かう勇気が無かったので、友を救うということができなかった――それを彼は成し遂げてくれたのです!」
メリーザはそう涙ながらにマカロフ卿にそう強く訴えていた。
「何が言いたい?」
メリーザに向けるマカロフ卿の目は仲間に向けるような鋭さではなかった――もはや本気で敵対するときの目だ――。
「止めませんか? 私が今すぐ彼の腕を元通りにします」
メリーザはそう言って俺に近付いて来たが――。
「邪魔をするな」
マカロフ卿はメリーザの腹部を殴った。メリーザは腹部を押さえながら床に縮こまっている。
「邪魔が入ったな。続きを始めようか。どうだ? 我々の下につく気はないか? 貴様の能力はコードに買われている。悪い事は言わない、我々の下につけ」
「い……やだ……ね」
俺が掠れた声でそう呟くと、マカロフ卿は俺の胴体に付いている切断部の腕に葉巻を押し当ててきた。
「貴様本当に死にたいのか!?」
俺はの押し当てられている葉巻で再び断末魔を発していた。熱いと痛いの同時攻撃――ただでさえ切られた腕は痛いで済まされないほどの激痛なのに――。
「マカロフ卿! 止めて下さい! 今の貴方は過去に貴方がされたことの憂さ晴らしをしているだけにしか見えません! その行為は本当に貴方が望んでいる事なのですか!?」
「五月蠅いぞメリーザ! これは仕事だ。コードの命令に間違いなどない!」
「コードに固執する必要はないでしょう! 貴方は貴方なのですから! 彼を痛いぶることが貴方の正義なのですか!?」
目に涙を浮かべながらマカロフ卿を睨めつけるメリーザ――俺は彼女がマカロフ卿に対して反論するとは微塵も思っていなかった。寧ろマカロフ卿の命令は忠実にこなす印象があった。それは良くも悪くも、マカロフ卿以外と関わるときの彼女はどこか無機質だったからだ。
「もういい。その男をあの部屋へ連れて行っておけ」
そう言った後、マカロフ卿は壁を殴って部屋を出て行った。正直、何が何やら分からない。一体、何が起きているんだ?
俺がそう思っていると、メリーザは俺の切断された腕を持ち、俺の胴体に付いている腕とくっつけた。そしてメリーザは必死に回復を行ってくれた。どうやら元通りにしてくれるらしい。
「腕を切り落としたり……元に戻してくれたり……意味分からねえ。アンタ等の間に何があったんだよ」
俺は声が途切れ途切れになりながらもそう問いかけた。勿論、その間メリーザは俺の言葉を遮ること無く黙って聞いていた。
「私達というより――マカロフ卿がここ最近おかしくなってきてるのです」
「おかしい?」
俺がそう問いかけるとメリーザはゆっくりと口を開いた。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる