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脱出作戦Ⅰ
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「取って来たぞ」
突如現れるなり、私に転移イヤリングを見せてくる青龍さん。
「ありがとうございます。金貨何枚でしたっけ?」
「そうだな。15枚頂こう」
青龍さんにそう言われたので、私は金貨15枚を渡した。正直なところ、現実世界にこんなものがあれば金貨15枚じゃ安すぎる――。
「付け方は分かるな?」
「はい」
私は転移イヤリングを両耳に付けると。
「似合っているではないか」
「ありがとうございます」
私がそうお礼を言うと青龍さんは「よし」と声を出した。
「では行くか。マカロフ卿の事だ。監視カメラとやら牢がある場所に設置しているかもしれない。また、メリーザのスキルなどで、侵入者を察知する結界が張られている可能性もある。念のため自身と余に加護を与えてくれ」
「はい」
私は青龍さんの胸に手を置いた。
「精霊の加護」
私の手から出現した光は青龍さんへと伝わっていく。光がしっかりと伝わると、青龍さんは神々しい光に包み込まれていた。
「長年生きているが、このスキルを使える者は早々いないからな――加護を受けた者とごく一部の者しかこの光は見えないのがまた面白い」
「確かにそうですね」
私は再度「精霊の加護」と唱えた。自身にかける場合は唱えるだけでいい。これにより私達は相当強い結界ではない限り、感知されることはない。このスキルはマーズベルにも侵入できるスキルだから、マカロフ卿の所だとまず感知されないと踏んでいる。まあ戦闘値がナリユキ君ばりの人が結界作っていたら別だけど――。
「それでは行きましょう」
「その前に手を出せ。体の一部が接触している事で同時に移動できる。同時でなければマズいだろ?」
「確かにそうですね」
私は青龍さんと手を繋いだ。
「いきます」
「ああ」
目を瞑った状態で私がそう合図を出しクロノスさんの顔を思い浮かべた。
次の瞬間、明らかに景色が変わったのが分かった。目を瞑っていても、屋敷には電気が付いているので、差し込んでくる光の強さの違いが分かる。勿論、ひんやりとした空気も違うし、埃臭さが鼻を刺激するのも当然だ。
私は目を開けると、マカロフ卿のアジトにいるはずなのに電気という概念は無く、松明という原始的な手法が灯りの代用となっていた。その松明は私から見て右側に位置し、5m感覚程で設置されていた。
そして左側には牢屋がある。幸いにもアードルハイム帝国の地下牢獄にような鼻を刺激する異臭は無かった。そのことから、ここの牢はあまり使われていないのだろうと感じた。
「ミク様と青龍様!? 何故ここに!?」
視界の左側から声がした。気配を感じ取ったのかどうか分からないけど、クロノスさんが数メートル先の牢の中から声をかけてきた。
「無事そうで何よりです」
私は走って駆け寄り、クロノスさん達の様子を見てみた。
お風呂を入っていないから少しニオイがするのは当たり前だけど大して気にならない。けれどもクロノスさんの表情が異常に暗い。
「監視カメラは無さそうだな。意外と警備甘いんだな。それに見張りもいないとは――」
ゆっくりと近付いて来る青龍さんににクロノスさんはホッとした表情を見せていた。それに中にいるカーネル王国の兵士達も嬉し涙を流していた。自分達の身に何が起きるか分からない――不安と恐怖と戦っていたからこその涙だ。
「見張りは本当にいないんですか? クロノスさん」
「ええ。今はいません。それよりどうやってここに来たんですか? 私達でも道が分からないというのに……転移イヤリングですか?」
「はいそうです」
「成程――凄い行動力ですね。正直諦めていましたよ。ナリユキ様を助けに来たんですよね?」
「はい。道とか分かりますか?」
私はそう言いながらスキルで牢の錠を外した後、クロノスさんと他の5人の枷を全て外した。
「ナリユキ様はここよりさらに奥の牢に閉じ込められていました――しかし――」
クロノスさんは唇を噛みしめて暗い表情を浮かべていた――。
「何かあったんですか……?」
「もう24時間ほど牢に帰ってきていないのです……マカロフ卿に連れられてから戻ってきていないのです」
嘘でしょ……? いや、たった24時間という捉え方もできるけど――。
「何をするとか言っていましたか?」
「申し訳ございません。ナリユキ様の殺されるのか? という問いに対してマカロフ卿は知らないと答えていましたので、私達には何も分かりません。最悪……」
「そうですよね……」
クロノスさんが言いたいことは言わなくても分かった――。
「それだとしたら余が敵ならクロノス達を殺すがな。生かしておいても意味が無い――」
青龍さんの発言で、私とクロノスさんはハッと目を合わせた。
「確かにそうですね」
「それにだ。余の天眼のスキルの1つである千里眼を使った結果ナリユキ殿は生きている。が――」
青龍さんは曇った表情をしている。一体その天眼でナリユキ君の何を見たのだろう……。
「どうかしたんですか?」
そう発した私の声は物凄く震えていた。
「見れば分かる。ナリユキ殿を助けに行くぞ」
青龍さんの言葉は嬉しかった――けど、一番はナリユキ君の状態だ。ショッキングな姿になっているのだろうか……。
はたまたナリユキ君の身に大きな何かが起きているのだろうか……。
気になるけど、今ここで考えていても仕方ない。せっかく皆がくれた機会を無駄には出来ない。
私達はナリユキ君を助けるために足を進めた。
突如現れるなり、私に転移イヤリングを見せてくる青龍さん。
「ありがとうございます。金貨何枚でしたっけ?」
「そうだな。15枚頂こう」
青龍さんにそう言われたので、私は金貨15枚を渡した。正直なところ、現実世界にこんなものがあれば金貨15枚じゃ安すぎる――。
「付け方は分かるな?」
「はい」
私は転移イヤリングを両耳に付けると。
「似合っているではないか」
「ありがとうございます」
私がそうお礼を言うと青龍さんは「よし」と声を出した。
「では行くか。マカロフ卿の事だ。監視カメラとやら牢がある場所に設置しているかもしれない。また、メリーザのスキルなどで、侵入者を察知する結界が張られている可能性もある。念のため自身と余に加護を与えてくれ」
「はい」
私は青龍さんの胸に手を置いた。
「精霊の加護」
私の手から出現した光は青龍さんへと伝わっていく。光がしっかりと伝わると、青龍さんは神々しい光に包み込まれていた。
「長年生きているが、このスキルを使える者は早々いないからな――加護を受けた者とごく一部の者しかこの光は見えないのがまた面白い」
「確かにそうですね」
私は再度「精霊の加護」と唱えた。自身にかける場合は唱えるだけでいい。これにより私達は相当強い結界ではない限り、感知されることはない。このスキルはマーズベルにも侵入できるスキルだから、マカロフ卿の所だとまず感知されないと踏んでいる。まあ戦闘値がナリユキ君ばりの人が結界作っていたら別だけど――。
「それでは行きましょう」
「その前に手を出せ。体の一部が接触している事で同時に移動できる。同時でなければマズいだろ?」
「確かにそうですね」
私は青龍さんと手を繋いだ。
「いきます」
「ああ」
目を瞑った状態で私がそう合図を出しクロノスさんの顔を思い浮かべた。
次の瞬間、明らかに景色が変わったのが分かった。目を瞑っていても、屋敷には電気が付いているので、差し込んでくる光の強さの違いが分かる。勿論、ひんやりとした空気も違うし、埃臭さが鼻を刺激するのも当然だ。
私は目を開けると、マカロフ卿のアジトにいるはずなのに電気という概念は無く、松明という原始的な手法が灯りの代用となっていた。その松明は私から見て右側に位置し、5m感覚程で設置されていた。
そして左側には牢屋がある。幸いにもアードルハイム帝国の地下牢獄にような鼻を刺激する異臭は無かった。そのことから、ここの牢はあまり使われていないのだろうと感じた。
「ミク様と青龍様!? 何故ここに!?」
視界の左側から声がした。気配を感じ取ったのかどうか分からないけど、クロノスさんが数メートル先の牢の中から声をかけてきた。
「無事そうで何よりです」
私は走って駆け寄り、クロノスさん達の様子を見てみた。
お風呂を入っていないから少しニオイがするのは当たり前だけど大して気にならない。けれどもクロノスさんの表情が異常に暗い。
「監視カメラは無さそうだな。意外と警備甘いんだな。それに見張りもいないとは――」
ゆっくりと近付いて来る青龍さんににクロノスさんはホッとした表情を見せていた。それに中にいるカーネル王国の兵士達も嬉し涙を流していた。自分達の身に何が起きるか分からない――不安と恐怖と戦っていたからこその涙だ。
「見張りは本当にいないんですか? クロノスさん」
「ええ。今はいません。それよりどうやってここに来たんですか? 私達でも道が分からないというのに……転移イヤリングですか?」
「はいそうです」
「成程――凄い行動力ですね。正直諦めていましたよ。ナリユキ様を助けに来たんですよね?」
「はい。道とか分かりますか?」
私はそう言いながらスキルで牢の錠を外した後、クロノスさんと他の5人の枷を全て外した。
「ナリユキ様はここよりさらに奥の牢に閉じ込められていました――しかし――」
クロノスさんは唇を噛みしめて暗い表情を浮かべていた――。
「何かあったんですか……?」
「もう24時間ほど牢に帰ってきていないのです……マカロフ卿に連れられてから戻ってきていないのです」
嘘でしょ……? いや、たった24時間という捉え方もできるけど――。
「何をするとか言っていましたか?」
「申し訳ございません。ナリユキ様の殺されるのか? という問いに対してマカロフ卿は知らないと答えていましたので、私達には何も分かりません。最悪……」
「そうですよね……」
クロノスさんが言いたいことは言わなくても分かった――。
「それだとしたら余が敵ならクロノス達を殺すがな。生かしておいても意味が無い――」
青龍さんの発言で、私とクロノスさんはハッと目を合わせた。
「確かにそうですね」
「それにだ。余の天眼のスキルの1つである千里眼を使った結果ナリユキ殿は生きている。が――」
青龍さんは曇った表情をしている。一体その天眼でナリユキ君の何を見たのだろう……。
「どうかしたんですか?」
そう発した私の声は物凄く震えていた。
「見れば分かる。ナリユキ殿を助けに行くぞ」
青龍さんの言葉は嬉しかった――けど、一番はナリユキ君の状態だ。ショッキングな姿になっているのだろうか……。
はたまたナリユキ君の身に大きな何かが起きているのだろうか……。
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