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ヴェドラウイルスⅢ
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あれから館に戻ると浴衣姿のレンさん達が館の前で待っていた。
「話聞いたで。エラい大変な事になってるみたいですね」
「患者の容態はどうなんですか?」
レンさんとアズサさんに質問されたが――。
「一命は取り留めた。しかし、今後はしばらく経過観察をしないといけない」
「そうでしたか。実は俺達もそのウイルスについては話くらいは聞いたことあるんです」
「拠点がカーネル王国なので情報が入ってきます。それに感染を防止させたのが森妖精の医学博士ですから」
「アンデッドにも普通に効くらしいですから。抗体を持っていないと、生命体である以上はかかってしまう強烈な疫病ですよ。もう重々承知かとは思いますが、これはマーズベル滅亡の序章です」
レンさん、ネオンさん、ノーディルスさんの順に話をしたが――。
「ん? 森妖精の医学博士?」
「はい。今はどうか分かりませんが以前はカーネル王国に住んでいらしたアーツ様という方で、十賢者の一人です」
「十賢者? いきなり異世界ファンタジーなネーミングきたなこれ」
「とりあえずせっかく温泉入ったんだから話は屋敷のなかでしよう」
ミクちゃんの提案に全員が賛成してカフェルームに皆を集めた。ここは屋敷内の人間なら誰でも使用していいティータイムを楽しむことができる部屋だ。イメージとしてはぶっちゃけホテルのエントランスロビーのようなイメージだ。
赤い絨毯に黒い椅子。そして木のテーブルを置いている。
「何や。こんなところまであるんかいな」
「家ちゃうな。ホテルやな」
レンさんとアズサさんの意見とは裏腹に、見慣れない景観に絶句しているノーディルスさんとネオンさん。
当然だが俺達以外は誰もいない。いるとすれば飲み物を淹れてくれる従者くらいだ。
「お飲み物は何にされますか?」
「コーヒーの人」
俺がそう言うと、レンさんとノーディルスさんが挙手した。
「俺もだから3つだな」
「かしこまりました。ミク様達はいかがなさいますか?」
「私はストレートティーで」
「うちはマンゴラッシー」
「私はハーブティーで」
ミクちゃん、アズサさん、ネオンさんの順番に答えたが見事に注文が割れた。
「直ぐにお持ち致します」
従者がお辞儀をしてから立ち去ってキッチンの中へと消えて行った。
「で、話を戻すがその十賢者ってのは何だ?」
「十賢者は生物学、医学、などに精通した権威の方々十人の事を指します。いわば専門性特化の六芒星のようなものです」
「成程――何気にその単語は初めて聞いたな。そのアーツって人は有名な人なのか?」
「一部ですね――それこそコヴィー・S・ウィズダム様のような感じです。ある程度地位の高い人が知っている――のような感じです」
「成程――」
「そのアーツって人には会う事できないのかな?」
ミクちゃんの質問に、ネオンさんは「何とも言えません」と首を振った。
そう話をしているとベリトとアリスがこっちに向かってきた。
「ナリユキ様お待たせしてしまい申し訳ございません」
「いや寧ろ早いだろ」
「そう言って頂けて大変光栄でございます」
ベリトとアリスはそう言って俺とミクちゃんに頭を下げた。
「まあ、レンさん達もいるし一緒に訊いてもらおう。座って説明してくれ」
「お気遣い頂き誠に感謝致します。それではご説明させて頂きます」
ベリトがそう固い口調で話すと「もっと気ぃ楽にしたらええのに」とレンさんが呟く。
「つか、施設行って痕跡を記憶してから調べるの早くね?」
「時間はありましたので」
マジかよこの人。俺より全然仕事早い気がするんだけど。益々、レイドラムと手を組んでいたのか分からない。俺はそう思うと自然に苦笑いを浮かべていた。
「まずは一番重要な事をお報せ致します」
ベリトの神妙な顔つきに思わず皆が固唾を飲んだ。
「ナリユキ様達は麺屋美白湯にいらっしゃいましたよね? 彼はどうやらナリユキ様達が訪れた時間帯にカウンター席でラーメンを食べていたようです」
あれまこれは大変だ。
「てことは、席は違っていたけど、感染している可能性は僅かだけどあるのか」
「そういうことになります」
俺はベリトにそう言われたのでとりあえず人数分の不織布のマスクを用意した。
「ほい。これ配って」
「うわあ。マスクなんて久しぶりに見たな」
「ホンマやな」
そう言ってマスクを付けるレンさんとアズサさん。
「この布はこう付けるのですか?」
「そうだよ」
マスクを付ける動作をするネオンさんに補助をするミクちゃん。全員がマスクを付けてたところで話が再開。
「息苦しいな」
ノーディルスさんの発言に俺は少し想像してしまった。もし、人型化を解除した状態でノーディルスさんがマスクを付けたらどうなるんだろう――と。ノーディルスさんは元の姿だと顔が大きいから、多分マスクで口と鼻が全部隠せない。中途半端に隠れる状態だし、そもそも耳が無いから引っ掛けることができない――。
「男はラーメン屋の後、メインストリートで食べ歩きを行っておりました」
そう言って俺はベリトから一枚の紙を渡された。
そこに記されていたのはウイルスを持ち込んだ男が訪れたお店だった。
「話聞いたで。エラい大変な事になってるみたいですね」
「患者の容態はどうなんですか?」
レンさんとアズサさんに質問されたが――。
「一命は取り留めた。しかし、今後はしばらく経過観察をしないといけない」
「そうでしたか。実は俺達もそのウイルスについては話くらいは聞いたことあるんです」
「拠点がカーネル王国なので情報が入ってきます。それに感染を防止させたのが森妖精の医学博士ですから」
「アンデッドにも普通に効くらしいですから。抗体を持っていないと、生命体である以上はかかってしまう強烈な疫病ですよ。もう重々承知かとは思いますが、これはマーズベル滅亡の序章です」
レンさん、ネオンさん、ノーディルスさんの順に話をしたが――。
「ん? 森妖精の医学博士?」
「はい。今はどうか分かりませんが以前はカーネル王国に住んでいらしたアーツ様という方で、十賢者の一人です」
「十賢者? いきなり異世界ファンタジーなネーミングきたなこれ」
「とりあえずせっかく温泉入ったんだから話は屋敷のなかでしよう」
ミクちゃんの提案に全員が賛成してカフェルームに皆を集めた。ここは屋敷内の人間なら誰でも使用していいティータイムを楽しむことができる部屋だ。イメージとしてはぶっちゃけホテルのエントランスロビーのようなイメージだ。
赤い絨毯に黒い椅子。そして木のテーブルを置いている。
「何や。こんなところまであるんかいな」
「家ちゃうな。ホテルやな」
レンさんとアズサさんの意見とは裏腹に、見慣れない景観に絶句しているノーディルスさんとネオンさん。
当然だが俺達以外は誰もいない。いるとすれば飲み物を淹れてくれる従者くらいだ。
「お飲み物は何にされますか?」
「コーヒーの人」
俺がそう言うと、レンさんとノーディルスさんが挙手した。
「俺もだから3つだな」
「かしこまりました。ミク様達はいかがなさいますか?」
「私はストレートティーで」
「うちはマンゴラッシー」
「私はハーブティーで」
ミクちゃん、アズサさん、ネオンさんの順番に答えたが見事に注文が割れた。
「直ぐにお持ち致します」
従者がお辞儀をしてから立ち去ってキッチンの中へと消えて行った。
「で、話を戻すがその十賢者ってのは何だ?」
「十賢者は生物学、医学、などに精通した権威の方々十人の事を指します。いわば専門性特化の六芒星のようなものです」
「成程――何気にその単語は初めて聞いたな。そのアーツって人は有名な人なのか?」
「一部ですね――それこそコヴィー・S・ウィズダム様のような感じです。ある程度地位の高い人が知っている――のような感じです」
「成程――」
「そのアーツって人には会う事できないのかな?」
ミクちゃんの質問に、ネオンさんは「何とも言えません」と首を振った。
そう話をしているとベリトとアリスがこっちに向かってきた。
「ナリユキ様お待たせしてしまい申し訳ございません」
「いや寧ろ早いだろ」
「そう言って頂けて大変光栄でございます」
ベリトとアリスはそう言って俺とミクちゃんに頭を下げた。
「まあ、レンさん達もいるし一緒に訊いてもらおう。座って説明してくれ」
「お気遣い頂き誠に感謝致します。それではご説明させて頂きます」
ベリトがそう固い口調で話すと「もっと気ぃ楽にしたらええのに」とレンさんが呟く。
「つか、施設行って痕跡を記憶してから調べるの早くね?」
「時間はありましたので」
マジかよこの人。俺より全然仕事早い気がするんだけど。益々、レイドラムと手を組んでいたのか分からない。俺はそう思うと自然に苦笑いを浮かべていた。
「まずは一番重要な事をお報せ致します」
ベリトの神妙な顔つきに思わず皆が固唾を飲んだ。
「ナリユキ様達は麺屋美白湯にいらっしゃいましたよね? 彼はどうやらナリユキ様達が訪れた時間帯にカウンター席でラーメンを食べていたようです」
あれまこれは大変だ。
「てことは、席は違っていたけど、感染している可能性は僅かだけどあるのか」
「そういうことになります」
俺はベリトにそう言われたのでとりあえず人数分の不織布のマスクを用意した。
「ほい。これ配って」
「うわあ。マスクなんて久しぶりに見たな」
「ホンマやな」
そう言ってマスクを付けるレンさんとアズサさん。
「この布はこう付けるのですか?」
「そうだよ」
マスクを付ける動作をするネオンさんに補助をするミクちゃん。全員がマスクを付けてたところで話が再開。
「息苦しいな」
ノーディルスさんの発言に俺は少し想像してしまった。もし、人型化を解除した状態でノーディルスさんがマスクを付けたらどうなるんだろう――と。ノーディルスさんは元の姿だと顔が大きいから、多分マスクで口と鼻が全部隠せない。中途半端に隠れる状態だし、そもそも耳が無いから引っ掛けることができない――。
「男はラーメン屋の後、メインストリートで食べ歩きを行っておりました」
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