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ゾーク大迷宮の魔物Ⅲ
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「えらい呆気なく死んじゃったね」
スーがポカンとした表情を浮かべながらそう呟いた。
「流石マカロフ卿。お見事です」
また、メリーザとレイはそう言って俺の前で跪いていた。
「ケッ――気に入らねえ」
一方、ワイズはそう吐き捨てるように台詞を吐いた後、私を睨めつけていた。まあ、これもいつも通りだ。
「さっさと行くぞ」
ワイズがそう私達を睨めつけると、一人で先に進んでいった。
「はあ――」
私はつい大きな溜め息をついてしまった。メリーザ、レイ、スーは珍しいと言わんばかりの表情をしていたので何事かと思った。
「そんなに不思議か?」
「はい。そこまで大きな溜め息は非常に珍しいです」
私の問いに応えたのはメリーザだった。
「普段とは比較になりませんね。まあ奴がいる限りは仕方ないことでしょう」
レイはそう言ってワイズを睨めつけている。レイはメリーザ同様、絶対的な忠誠心を抱いていることから、ワイズの存在が気に入らなくて仕方ないのだ。気持ちは分かるが、統率する私の身も少し考えてほしいという感情と、嬉しいという感情が入り混じっている。
「行くぞ皆」
「はい!」
そう威勢よく返事を行ってくれる3人。対するワイズは我々の足取りが遅いので、20m程先で立ち止まってこちらを睨めつけていた。特に変わった様子は無いが、苛立ちを覚えているのは確実だ。奴からの視線が痛い。
「行く」
「ああ」
ドスの効いた声でそう返事をしたワイズ。いちいち攻撃的だ。
私は久しぶりの葉巻を口に咥えてそのまま先を進んだ。
しばらく歩くと、再び巨大な門が私達の前に立ちはだかった。ワイズが目一杯力を入れて開くと、ディルーザードのミニverが大量にいた。ざっと見ただけでも100頭は超える。そして、小さいと言っても3m程の巨躯を持っているので、なかなかに手強そうだ。
この小さいディルザードの名前はディルビアというらしい。奴等は私達に気付くなり一斉に襲い掛かって来た。勿論、先頭に立っているのはワイズなので――。
「オラアアア!」
どう猛な魔物の如く、自身の爪でディルビアを切り割いて行く姿は、三国志の呂布のような無双っぷりだ。私達が加勢しなくても片付けてくれそうだ。
そう思いながら闊歩していた所だ。
ワイズは突如として入口付近の壁に激突してきた。
頭を強打し、一瞬白目を向いて意識が飛んでいるのは明白。仮面の半分が割れたことにより素顔が露わになる。
鼻から血を流し、私と同じ白い肌。鋭い琥珀色の目は鷹のように鋭い。そして、目鼻立ちが整った端正な顔立ちをした美丈夫だ。
そんなワイズは鼻から流血している。
意識が戻り、グッと歯を食いしばると、歯は鮫のように鋭利になった。
「あ、ワイズがムキになってる」
スーがそうからかうと、ワイズは忍者の如く壁に両手をくっつけて引っ付いたまま、スーの事を睨めつけた。
「ああ? テメェから先に殺すぞ」
まるで百獣の王のような鋭い眼光。流石の私でもここまで鋭い眼光は飛ばせない。いつもならヘラヘラと笑っているスーも、表情が強張って萎縮していた。
「マカロフ。俺様に手を貸せ。雑魚が3人いても勝てない」
「私に協力要請をするのは珍しいな」
「いいから黙って手を貸せ。仮説を立てることが上手い貴様なら、俺様の身に何が起きたか分かるだろ?」
「ああ。透明の魔物でもいるんだろ? しかも、ワイズの耳と鼻では判別できない程、気配を消すことに長けているパワーがある魔物だ」
そう――。ワイズは交配種でもあり、コヴィー・S・ウィズダムが造りだした怪物。他の魔物とは比べ物にならない、嗅覚と聴覚を持ち合わせている。それにワイズ自身も耐久力は抜群の上、自身の力を抑制している特性の仮面は、ダイヤモンドで出来ている。なので、仮面を割るなんて現象はまずあり得ない。そう考えていると、透明で気配を消すことに長けたパワータイプの魔物だと仮説を立てることができる。
「流石だ。当たっている。俺様の仮面が割った事を後悔させてやろうぜ」
半分割れた仮面を床に落として、素顔を完全に露わにするワイズ。
しかし不思議なのは見えない敵をどうやって叩くかだ。
「3人はディルビアを殲滅してくれ」
「はい!」
メリーザ、レイ、スーの3人は散開してディルビアを潰していった。と、言っても1頭辺り3,500程の強さを誇っているので、なかなかの体力勝負になりそうだ。
「作戦はあるのか?」
「見ておけ」
ワイズはニィと口角を吊り上げると、壁の半壊させるほどの脚力を使って、真っ直ぐジェット機のような速さで突っ込んだ。
「怨念の波動!」
音速で動くワイズから放たれたフロアに響き渡る悪魔のような叫び声に似た音波。思わず耳を塞いでしまう程の不快な音が耳を刺激する。
「アイツ。やる前に何か言え」
私は思わずそう呟いていた。すると、フロアにいるディルビア達は、叫喚しながら苦しみ始めた。ワイズが0コンマ何秒という世界で、100m先の部屋の隅に着いた頃。
全身紺色の鱗で包まれている巨大な魔物が突如現れた。
大きい目をギョロギョロとさせ、紫色の長い舌が特徴的な姿はまさにカメレオンと言えるだろう。身体の逞しさは恐竜図鑑のTレックスのようで、何故か飛竜のような翼と、アナコンダのように太い尾を持つ四足歩行のコイツの名前は、インベラーズ・ジュラと呼ぶらしい。
目測で全長10m程あるコイツは、リドリー・スコットの映画に出て来そうな少しグロテスクなデザインだと感じた。
スーがポカンとした表情を浮かべながらそう呟いた。
「流石マカロフ卿。お見事です」
また、メリーザとレイはそう言って俺の前で跪いていた。
「ケッ――気に入らねえ」
一方、ワイズはそう吐き捨てるように台詞を吐いた後、私を睨めつけていた。まあ、これもいつも通りだ。
「さっさと行くぞ」
ワイズがそう私達を睨めつけると、一人で先に進んでいった。
「はあ――」
私はつい大きな溜め息をついてしまった。メリーザ、レイ、スーは珍しいと言わんばかりの表情をしていたので何事かと思った。
「そんなに不思議か?」
「はい。そこまで大きな溜め息は非常に珍しいです」
私の問いに応えたのはメリーザだった。
「普段とは比較になりませんね。まあ奴がいる限りは仕方ないことでしょう」
レイはそう言ってワイズを睨めつけている。レイはメリーザ同様、絶対的な忠誠心を抱いていることから、ワイズの存在が気に入らなくて仕方ないのだ。気持ちは分かるが、統率する私の身も少し考えてほしいという感情と、嬉しいという感情が入り混じっている。
「行くぞ皆」
「はい!」
そう威勢よく返事を行ってくれる3人。対するワイズは我々の足取りが遅いので、20m程先で立ち止まってこちらを睨めつけていた。特に変わった様子は無いが、苛立ちを覚えているのは確実だ。奴からの視線が痛い。
「行く」
「ああ」
ドスの効いた声でそう返事をしたワイズ。いちいち攻撃的だ。
私は久しぶりの葉巻を口に咥えてそのまま先を進んだ。
しばらく歩くと、再び巨大な門が私達の前に立ちはだかった。ワイズが目一杯力を入れて開くと、ディルーザードのミニverが大量にいた。ざっと見ただけでも100頭は超える。そして、小さいと言っても3m程の巨躯を持っているので、なかなかに手強そうだ。
この小さいディルザードの名前はディルビアというらしい。奴等は私達に気付くなり一斉に襲い掛かって来た。勿論、先頭に立っているのはワイズなので――。
「オラアアア!」
どう猛な魔物の如く、自身の爪でディルビアを切り割いて行く姿は、三国志の呂布のような無双っぷりだ。私達が加勢しなくても片付けてくれそうだ。
そう思いながら闊歩していた所だ。
ワイズは突如として入口付近の壁に激突してきた。
頭を強打し、一瞬白目を向いて意識が飛んでいるのは明白。仮面の半分が割れたことにより素顔が露わになる。
鼻から血を流し、私と同じ白い肌。鋭い琥珀色の目は鷹のように鋭い。そして、目鼻立ちが整った端正な顔立ちをした美丈夫だ。
そんなワイズは鼻から流血している。
意識が戻り、グッと歯を食いしばると、歯は鮫のように鋭利になった。
「あ、ワイズがムキになってる」
スーがそうからかうと、ワイズは忍者の如く壁に両手をくっつけて引っ付いたまま、スーの事を睨めつけた。
「ああ? テメェから先に殺すぞ」
まるで百獣の王のような鋭い眼光。流石の私でもここまで鋭い眼光は飛ばせない。いつもならヘラヘラと笑っているスーも、表情が強張って萎縮していた。
「マカロフ。俺様に手を貸せ。雑魚が3人いても勝てない」
「私に協力要請をするのは珍しいな」
「いいから黙って手を貸せ。仮説を立てることが上手い貴様なら、俺様の身に何が起きたか分かるだろ?」
「ああ。透明の魔物でもいるんだろ? しかも、ワイズの耳と鼻では判別できない程、気配を消すことに長けているパワーがある魔物だ」
そう――。ワイズは交配種でもあり、コヴィー・S・ウィズダムが造りだした怪物。他の魔物とは比べ物にならない、嗅覚と聴覚を持ち合わせている。それにワイズ自身も耐久力は抜群の上、自身の力を抑制している特性の仮面は、ダイヤモンドで出来ている。なので、仮面を割るなんて現象はまずあり得ない。そう考えていると、透明で気配を消すことに長けたパワータイプの魔物だと仮説を立てることができる。
「流石だ。当たっている。俺様の仮面が割った事を後悔させてやろうぜ」
半分割れた仮面を床に落として、素顔を完全に露わにするワイズ。
しかし不思議なのは見えない敵をどうやって叩くかだ。
「3人はディルビアを殲滅してくれ」
「はい!」
メリーザ、レイ、スーの3人は散開してディルビアを潰していった。と、言っても1頭辺り3,500程の強さを誇っているので、なかなかの体力勝負になりそうだ。
「作戦はあるのか?」
「見ておけ」
ワイズはニィと口角を吊り上げると、壁の半壊させるほどの脚力を使って、真っ直ぐジェット機のような速さで突っ込んだ。
「怨念の波動!」
音速で動くワイズから放たれたフロアに響き渡る悪魔のような叫び声に似た音波。思わず耳を塞いでしまう程の不快な音が耳を刺激する。
「アイツ。やる前に何か言え」
私は思わずそう呟いていた。すると、フロアにいるディルビア達は、叫喚しながら苦しみ始めた。ワイズが0コンマ何秒という世界で、100m先の部屋の隅に着いた頃。
全身紺色の鱗で包まれている巨大な魔物が突如現れた。
大きい目をギョロギョロとさせ、紫色の長い舌が特徴的な姿はまさにカメレオンと言えるだろう。身体の逞しさは恐竜図鑑のTレックスのようで、何故か飛竜のような翼と、アナコンダのように太い尾を持つ四足歩行のコイツの名前は、インベラーズ・ジュラと呼ぶらしい。
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