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竜騎士Ⅳ
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「報告を待っているよ」
「かしこまりました!」
ルミエールにそう期待を寄せられて、勢いよく挨拶をするレンさん。他の3人も同様の挨拶を行いこの部屋を退出した。
「じゃあ俺もそろそろ行こうかな」
「え? もう行くのかい? せっかくなんだからゆっくりして行けばいいのに」
「そうですよ。この機会なので私が精一杯おもてなしをさせて頂きます」
ルミエールに続いてそうアプローチをかけてくるガブリエルさん。まあゆっくりカーネル王国を観光したい気もするがそういう訳にもいかない。
「俺は今からオストロンに行ってくるから、皆はカーネル王国に行っていていいぞ」
「え? 今から行くの? 護衛なしで?」
「ああ。だってイヤリング1セットしかないからな」
「そうか。それは残念」
そうミクちゃんは肩を落とすが、俺が一瞬でオストロンに行けると聞いて、ルミエールもクロノスもガブリエルも目が点になっていた。
「俺が付けている耳飾りあるだろ? これで思い浮かべた人のところに一瞬で転移できるんだ。何だ知らないのか?」
「知らないよそんな凄い代物!」
「つ――造られたんですか!?」
と、ルミエールがバンとテーブルを叩いた後に、ガブリエルが身を乗り出して聞いて来た。クロノスさんは落ち着けと言わんばかりの顔を浮かべている。
「青龍さんから買ったんだよ」
「ハハ――。付き合いは長いはずなのに知らなかった……」
と、苦笑いを浮かべて頭を抱えているルミエール。
「青龍様がそんな貴重な物を譲るのは珍しいですね」
クロノスはそう言って顎に手をついて考えていた。
「もしかすると、何かあったとき駆けつけてほしいっていうサインではないでしょうか? ナリユキ閣下は相当お強いので」
ガブリエルさんがそう褒めてくれた。大天使に褒められるのはなかなかハッピーな気持ちになれるな。
「まあそういうことだから俺は行くわ。ミクちゃん達は観光するか?」
「今回はパスにしておきます。仕事が山積みになっているものですから」
ミクちゃんは申し訳なさそうな表情を浮かべながらルミエールに謝罪した。他の3人にも目でサインを送ったが、全員首を振ったので今回はパスという事らしい。
「それなら仕方ないね。またゆっくり遊びに来ておいでよ。ミクさん、これからもうちの冒険者パーティーの治癒をしっかり頼んだよ」
「勿論です。任せて下さい!」
ミクちゃんが自信満々にそう言うとルミエールは安堵していた。
「じゃあ行くわ。またな、ルミエール、クロノス、ガブリエル」
「ああ」
「ナリユキ様。くれぐれも気をつけて下さい」
「また必ずいらして下さいね」
3人にそう言われた後、俺はミクちゃん達にも微笑みかけた。すると皆返してくれたので、そのまま俺はこの場から姿を消した。
感覚としては転移と同じだった。目を瞑って行きたいところをイメージするだけで瞬時に移動する。
移動したかと思えば肌寒い風が俺を襲った。夏だと言うのにこの風――。それに辺りは建物が全くない景観だった。俺の目には何が映っているかと言うと、雲海と新緑の山々だった。
絶景――。その言葉が相応しい迫力のある景色だった。
「すげえな。そう言えば富士山も登ったことないもんな~。別にアウトドアもまとにやらねえし」
新鮮な空気を目一杯吸い込んでいると――。
「何だ。誰かと思えばその紳士服はナリユキ殿か」
後ろから聞き覚えがある声がしたので、振り返るとそこにはマスクをしていない青龍さんが近付いてきた。相変わらず綺麗な顔をしているけど、この人1,000歳超えているもんな――。と、考えると頭がバグりそうだ。
「青龍さん一週間ぶりですね」
「確かにそれくらいか。と、言うかお主も余の事は青龍と呼ぶがよい。名前長くて言いづらいだろ? フルネームで呼ぶ必要は無い」
「では青龍さんで」
「うむ」
青龍さんはそう満足気な笑みを浮かべていた。普段はマスクしているから表情分からなかったけど、意外と優しい笑みを絶やさない人なんだと思った。龍族で長い事オストロンの主を務めているから、最初は堅苦しくて怖い人を想像していたからな。
「青龍さんはここで何を?」
「余は先程まで修行していた。いつもこの時間帯はこの山の滝で瞑想を行って心を清めた後に、海を割っている」
海を割るってまた訳の分からんことを――。
「その後は友人と組み手を行っておる」
「そうでしたか」
「放っておくと動けなくなってしまうからな。少し気になったのだが、ナリユキ殿はまた強くなったか? 以前とは体から出ているオーラの質が違う」
「カルベリアツリーのダンジョンに潜ったんですよ。ですので、その事で少しお伺いしたい事と、報告しておきたい場所があったので来たんです」
「そうだったか。ではまず聞きたいことやら聞こうではないか」
「その前に座りますか?」
俺が手の甲を青龍さんに見せると、青龍さんは「うむ。そうだな」と応えてくれた。
俺が出したのはこの雰囲気に合うウッドチェアだった。すると青龍さんはなかなか趣があるなと気に入ってくれた。そして対面同士で座る。
「ではまず聞きたいことですが」
「うむ」
「龍騎士について知っている限りの事を教えてほしいのです」
すると、青龍さんは「ほう」と呟きながら眉をピクリと動かした。
「かしこまりました!」
ルミエールにそう期待を寄せられて、勢いよく挨拶をするレンさん。他の3人も同様の挨拶を行いこの部屋を退出した。
「じゃあ俺もそろそろ行こうかな」
「え? もう行くのかい? せっかくなんだからゆっくりして行けばいいのに」
「そうですよ。この機会なので私が精一杯おもてなしをさせて頂きます」
ルミエールに続いてそうアプローチをかけてくるガブリエルさん。まあゆっくりカーネル王国を観光したい気もするがそういう訳にもいかない。
「俺は今からオストロンに行ってくるから、皆はカーネル王国に行っていていいぞ」
「え? 今から行くの? 護衛なしで?」
「ああ。だってイヤリング1セットしかないからな」
「そうか。それは残念」
そうミクちゃんは肩を落とすが、俺が一瞬でオストロンに行けると聞いて、ルミエールもクロノスもガブリエルも目が点になっていた。
「俺が付けている耳飾りあるだろ? これで思い浮かべた人のところに一瞬で転移できるんだ。何だ知らないのか?」
「知らないよそんな凄い代物!」
「つ――造られたんですか!?」
と、ルミエールがバンとテーブルを叩いた後に、ガブリエルが身を乗り出して聞いて来た。クロノスさんは落ち着けと言わんばかりの顔を浮かべている。
「青龍さんから買ったんだよ」
「ハハ――。付き合いは長いはずなのに知らなかった……」
と、苦笑いを浮かべて頭を抱えているルミエール。
「青龍様がそんな貴重な物を譲るのは珍しいですね」
クロノスはそう言って顎に手をついて考えていた。
「もしかすると、何かあったとき駆けつけてほしいっていうサインではないでしょうか? ナリユキ閣下は相当お強いので」
ガブリエルさんがそう褒めてくれた。大天使に褒められるのはなかなかハッピーな気持ちになれるな。
「まあそういうことだから俺は行くわ。ミクちゃん達は観光するか?」
「今回はパスにしておきます。仕事が山積みになっているものですから」
ミクちゃんは申し訳なさそうな表情を浮かべながらルミエールに謝罪した。他の3人にも目でサインを送ったが、全員首を振ったので今回はパスという事らしい。
「それなら仕方ないね。またゆっくり遊びに来ておいでよ。ミクさん、これからもうちの冒険者パーティーの治癒をしっかり頼んだよ」
「勿論です。任せて下さい!」
ミクちゃんが自信満々にそう言うとルミエールは安堵していた。
「じゃあ行くわ。またな、ルミエール、クロノス、ガブリエル」
「ああ」
「ナリユキ様。くれぐれも気をつけて下さい」
「また必ずいらして下さいね」
3人にそう言われた後、俺はミクちゃん達にも微笑みかけた。すると皆返してくれたので、そのまま俺はこの場から姿を消した。
感覚としては転移と同じだった。目を瞑って行きたいところをイメージするだけで瞬時に移動する。
移動したかと思えば肌寒い風が俺を襲った。夏だと言うのにこの風――。それに辺りは建物が全くない景観だった。俺の目には何が映っているかと言うと、雲海と新緑の山々だった。
絶景――。その言葉が相応しい迫力のある景色だった。
「すげえな。そう言えば富士山も登ったことないもんな~。別にアウトドアもまとにやらねえし」
新鮮な空気を目一杯吸い込んでいると――。
「何だ。誰かと思えばその紳士服はナリユキ殿か」
後ろから聞き覚えがある声がしたので、振り返るとそこにはマスクをしていない青龍さんが近付いてきた。相変わらず綺麗な顔をしているけど、この人1,000歳超えているもんな――。と、考えると頭がバグりそうだ。
「青龍さん一週間ぶりですね」
「確かにそれくらいか。と、言うかお主も余の事は青龍と呼ぶがよい。名前長くて言いづらいだろ? フルネームで呼ぶ必要は無い」
「では青龍さんで」
「うむ」
青龍さんはそう満足気な笑みを浮かべていた。普段はマスクしているから表情分からなかったけど、意外と優しい笑みを絶やさない人なんだと思った。龍族で長い事オストロンの主を務めているから、最初は堅苦しくて怖い人を想像していたからな。
「青龍さんはここで何を?」
「余は先程まで修行していた。いつもこの時間帯はこの山の滝で瞑想を行って心を清めた後に、海を割っている」
海を割るってまた訳の分からんことを――。
「その後は友人と組み手を行っておる」
「そうでしたか」
「放っておくと動けなくなってしまうからな。少し気になったのだが、ナリユキ殿はまた強くなったか? 以前とは体から出ているオーラの質が違う」
「カルベリアツリーのダンジョンに潜ったんですよ。ですので、その事で少しお伺いしたい事と、報告しておきたい場所があったので来たんです」
「そうだったか。ではまず聞きたいことやら聞こうではないか」
「その前に座りますか?」
俺が手の甲を青龍さんに見せると、青龍さんは「うむ。そうだな」と応えてくれた。
俺が出したのはこの雰囲気に合うウッドチェアだった。すると青龍さんはなかなか趣があるなと気に入ってくれた。そして対面同士で座る。
「ではまず聞きたいことですが」
「うむ」
「龍騎士について知っている限りの事を教えてほしいのです」
すると、青龍さんは「ほう」と呟きながら眉をピクリと動かした。
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