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罰Ⅳ
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方舟は、アードルハイム帝国軍基地と、隣接しているアードルハイム皇帝の宮殿の上空300mの高さに来ていた。
そして眼下に見えるのはアードルハイム帝国軍の兵士のみ。そして、舟から降りようとしているベルゾーグは森妖精達からユニークスキルの範囲を増幅させる強化をかけられていた。そして、ミクちゃんも同様に強化かけられている。
「ふう。久々に電磁パルスを使うな」
「俺、実は使っているの見たことないんだけどな」
「確かにそうだな。もはやいつぶりか分からん」
ベルゾーグはそう言いながら地面を見下ろしていた。
「飛び込む準備はいいか?」
「いつでもいい」
「ミクちゃんもいい?」
「うん。大丈夫だよ」
「じゃあ、電磁パルスを放った瞬間にベルゾーグを拾ってあげるんだ。いいな?」
「任せて」
ミクちゃんはそう言ってガッツポーズを決めていた。ベルゾーグからも緊張や焦りといったものは全く感じなかった。それどころか、まるで優雅な大平原で大の字になって、寝ているかのように穏やかだ。
「それでは行くぞ。3.2.1.0!」
俺の掛け声と共に舟から降りたベルゾーグ。あっと上空50m地点になって放たれた電磁パルスは、全ての電気、遠隔操作武器、生物のスキルを無効化する。
ブーン。という衝撃音は、まさに風を切り裂く轟音だった。そしてもう飛び込んでいたミクちゃんは、ベルゾーグが地面に着地する前に、強化と身体向上で光の速さになっており、見事にベルゾーグを拾って退散していた。
アードルハイム帝国軍の兵士達は、スキルが発動できない異変に気付いたようだ。
「どうだ? アリス」
「異常聴覚で聞いている限り、電気が付かない事と、スキルが使えない異常事態に慌てているようです」
「そうか。メイ、アードルハイム皇帝はどうだ?」
「私が何をしたというのだ! って言っていますね。死ぬのが相当怖いようです」
「面白い。お望み通り無にしてやるよ」
俺は下に向けて直径100kmの岩山を出した。そして、方舟の高度を上げながらアードルハイム帝国の帝都から離れていく。勿論、この舟も森妖精達の強化によって舟そのものの速度を上げている。
「神罰空堕」
俺は無意識のそう口走っていた。あれ? 何か今MPごっそり持っていかれたんだけどどういうこと?
「ナリユキさん。その厨二病臭いけど、ごっつ格好いいスキルは何ですか?」
「いや、俺にも分からん。それにユニークスキルなのにMPごっそり持っていかれたんだよな」
「ユニークスキルやのに?」
「ああ」
「謎ですね。それにしても恐ろしいな。ほら聞いてみ?」
レンさんに言われた通り辺りに意識を向けると。
「け――桁違いだ」
「ナリユキ様――。強化も何もかけていないのにあんなモノを」
マーズベルの森妖精達を含めて、捕まっていた人々はそう口々にしていた。
「ば――化物や」
「格が違いすぎるな」
「そ――そうですね」
と、アズサさん、ノーディルスさん、ネオンさんの順番に驚いていた。アマミヤを見てみると――。
口をパクパクさせていた。開いた口が塞がらないやつのようだ。と、いうか隣にいるフィオナも同じリアクションしているのが面白い。
一方、ランベリオン、アリシア、ベリト、アリスの幹部連中は、流石と言わんばかりの表情だった。まあノアは方舟のコントロールに神経を集中しているから、俺のこのスキル見ていないんだけどね。
「アードルハイム帝国の」
「歴史がやっと終わる」
フィオナがそう呟いた後に、ベリトがそう呟いた。
ベリトとフィオナの悔しい想いも。
ガープも無念も。
そして、今まで何百年とかけて犠牲になった何百万人もの人々の怨念――。
それらがこの隕石の如く巨大な岩山に込められていた。
「今だ! 森妖精の皆で帝都の外に結界を張れ! 衝撃を全て帝都内に閉じ込めるぞ!」
「はい!」
森妖精達はハッと我に返り自らの仕事を全うした。今回は森妖精達を酷使しすぎているけどな。本当に皆よくやってくれているよ。
100kmの岩山が地面に到達したと同時に展開された帝都を覆う巨大な結界。この衝撃は間違いなく遠方の国にも届くだろう。結構距離があるマーズベルやカーネル王国、レンファレンス王国にも届くはずだ。被害は揺れだけでいい。
勿論、音の振動だけは地面だけでなく、上空800m程まで上がっている俺達にも届く。まるで大気が震えているようだ。
これで、数千年の文明全てを破壊し、何十万人という帝国兵の命と、アードルハイム皇帝という独裁者は間違いなく死んだ。
そしてその歴史の幕を下ろすかのように、ほんの少しずつ晴れていく土煙。
様子を待っていると、ミクちゃんとベルゾーグが帰って来た。
「ナリユキ殿は相変わらず凄まじいな」
「ベルゾーグが電磁パルス持っていなかったら、こんなスムーズにはいかんだろうよ。何かしらの防衛スキルで生き延びるだろうし」
「そう言ってくれるのは有難い」
と、ベルゾーグは少し照れていた。今は人型化になっているので、金髪のオールバックの髪型をした褐色肌に、目元に入っている傷の大男だが、その仕草は何か可愛い。
「流石ナリユキさんだね」
「そんなことない。皆のお陰だし勿論ミクちゃんの働きも十分すぎるほどだった」
俺はそう言ってミクちゃんの頭を撫でると、ものすごく気持ちよさそうな表情になっていた。
「ナリユキ様。この土煙数時間は晴れないでしょう。私の風で飛ばしますか?」
「ああ頼む」
俺がそう言うとアリシアは目を瞑って帝都の方向に手を向けた。
「ハッ!」
その声と共に土煙は空に巻き上がっていく。本当にスキル多彩だなこの人。なんでも屋さんなんだよな。
まるで宇宙に吸い込まれるかのような土煙。ものの数分で土煙が消えると、俺は直径100kmの岩山を消した。
あんな大きな物が一瞬で無くなった! とザワザワしているが気にしない。
「ノア! ゆっくり帝都に向かってくれ」
「了解」
俺の指示でノアは帝都の方へ舵を切ってくれた。さて――。どうなっているかな?
そして眼下に見えるのはアードルハイム帝国軍の兵士のみ。そして、舟から降りようとしているベルゾーグは森妖精達からユニークスキルの範囲を増幅させる強化をかけられていた。そして、ミクちゃんも同様に強化かけられている。
「ふう。久々に電磁パルスを使うな」
「俺、実は使っているの見たことないんだけどな」
「確かにそうだな。もはやいつぶりか分からん」
ベルゾーグはそう言いながら地面を見下ろしていた。
「飛び込む準備はいいか?」
「いつでもいい」
「ミクちゃんもいい?」
「うん。大丈夫だよ」
「じゃあ、電磁パルスを放った瞬間にベルゾーグを拾ってあげるんだ。いいな?」
「任せて」
ミクちゃんはそう言ってガッツポーズを決めていた。ベルゾーグからも緊張や焦りといったものは全く感じなかった。それどころか、まるで優雅な大平原で大の字になって、寝ているかのように穏やかだ。
「それでは行くぞ。3.2.1.0!」
俺の掛け声と共に舟から降りたベルゾーグ。あっと上空50m地点になって放たれた電磁パルスは、全ての電気、遠隔操作武器、生物のスキルを無効化する。
ブーン。という衝撃音は、まさに風を切り裂く轟音だった。そしてもう飛び込んでいたミクちゃんは、ベルゾーグが地面に着地する前に、強化と身体向上で光の速さになっており、見事にベルゾーグを拾って退散していた。
アードルハイム帝国軍の兵士達は、スキルが発動できない異変に気付いたようだ。
「どうだ? アリス」
「異常聴覚で聞いている限り、電気が付かない事と、スキルが使えない異常事態に慌てているようです」
「そうか。メイ、アードルハイム皇帝はどうだ?」
「私が何をしたというのだ! って言っていますね。死ぬのが相当怖いようです」
「面白い。お望み通り無にしてやるよ」
俺は下に向けて直径100kmの岩山を出した。そして、方舟の高度を上げながらアードルハイム帝国の帝都から離れていく。勿論、この舟も森妖精達の強化によって舟そのものの速度を上げている。
「神罰空堕」
俺は無意識のそう口走っていた。あれ? 何か今MPごっそり持っていかれたんだけどどういうこと?
「ナリユキさん。その厨二病臭いけど、ごっつ格好いいスキルは何ですか?」
「いや、俺にも分からん。それにユニークスキルなのにMPごっそり持っていかれたんだよな」
「ユニークスキルやのに?」
「ああ」
「謎ですね。それにしても恐ろしいな。ほら聞いてみ?」
レンさんに言われた通り辺りに意識を向けると。
「け――桁違いだ」
「ナリユキ様――。強化も何もかけていないのにあんなモノを」
マーズベルの森妖精達を含めて、捕まっていた人々はそう口々にしていた。
「ば――化物や」
「格が違いすぎるな」
「そ――そうですね」
と、アズサさん、ノーディルスさん、ネオンさんの順番に驚いていた。アマミヤを見てみると――。
口をパクパクさせていた。開いた口が塞がらないやつのようだ。と、いうか隣にいるフィオナも同じリアクションしているのが面白い。
一方、ランベリオン、アリシア、ベリト、アリスの幹部連中は、流石と言わんばかりの表情だった。まあノアは方舟のコントロールに神経を集中しているから、俺のこのスキル見ていないんだけどね。
「アードルハイム帝国の」
「歴史がやっと終わる」
フィオナがそう呟いた後に、ベリトがそう呟いた。
ベリトとフィオナの悔しい想いも。
ガープも無念も。
そして、今まで何百年とかけて犠牲になった何百万人もの人々の怨念――。
それらがこの隕石の如く巨大な岩山に込められていた。
「今だ! 森妖精の皆で帝都の外に結界を張れ! 衝撃を全て帝都内に閉じ込めるぞ!」
「はい!」
森妖精達はハッと我に返り自らの仕事を全うした。今回は森妖精達を酷使しすぎているけどな。本当に皆よくやってくれているよ。
100kmの岩山が地面に到達したと同時に展開された帝都を覆う巨大な結界。この衝撃は間違いなく遠方の国にも届くだろう。結構距離があるマーズベルやカーネル王国、レンファレンス王国にも届くはずだ。被害は揺れだけでいい。
勿論、音の振動だけは地面だけでなく、上空800m程まで上がっている俺達にも届く。まるで大気が震えているようだ。
これで、数千年の文明全てを破壊し、何十万人という帝国兵の命と、アードルハイム皇帝という独裁者は間違いなく死んだ。
そしてその歴史の幕を下ろすかのように、ほんの少しずつ晴れていく土煙。
様子を待っていると、ミクちゃんとベルゾーグが帰って来た。
「ナリユキ殿は相変わらず凄まじいな」
「ベルゾーグが電磁パルス持っていなかったら、こんなスムーズにはいかんだろうよ。何かしらの防衛スキルで生き延びるだろうし」
「そう言ってくれるのは有難い」
と、ベルゾーグは少し照れていた。今は人型化になっているので、金髪のオールバックの髪型をした褐色肌に、目元に入っている傷の大男だが、その仕草は何か可愛い。
「流石ナリユキさんだね」
「そんなことない。皆のお陰だし勿論ミクちゃんの働きも十分すぎるほどだった」
俺はそう言ってミクちゃんの頭を撫でると、ものすごく気持ちよさそうな表情になっていた。
「ナリユキ様。この土煙数時間は晴れないでしょう。私の風で飛ばしますか?」
「ああ頼む」
俺がそう言うとアリシアは目を瞑って帝都の方向に手を向けた。
「ハッ!」
その声と共に土煙は空に巻き上がっていく。本当にスキル多彩だなこの人。なんでも屋さんなんだよな。
まるで宇宙に吸い込まれるかのような土煙。ものの数分で土煙が消えると、俺は直径100kmの岩山を消した。
あんな大きな物が一瞬で無くなった! とザワザワしているが気にしない。
「ノア! ゆっくり帝都に向かってくれ」
「了解」
俺の指示でノアは帝都の方へ舵を切ってくれた。さて――。どうなっているかな?
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