139 / 597
救出Ⅰ
しおりを挟む
煙が晴れると致命傷を負っているアマミヤがいた。俺のロケットランチャーを喰らって、鎧は所々損傷している。当然の結果と言えば当然の結果だ。それに念波動の数値もアリシアと同じくらいだろう。
だが、それにしても手応えがない。
「戦うの止めようぜ」
俺がそう手を差し伸べると、アマミヤはゆっくりと手を伸ばしてきた。
「格好いい事言ったけどやっぱり全然駄目だわ。MPの使い過ぎみたいね」
その意味はすぐに分かった。絶対零度をノアとアリスに放ったことが起因する。本来MPの完全回復には24時間は休憩を取らないと完全回復しない。俺達は報告を受けてから、6時間以内にここに来た。消費しまくっているMPが完全回復した訳では無いし、さっきの冷気がもし絶対零度なら、発動してはいないと言えど、俺のロケットランチャーで、ゲームで言うスーパーキャンセルが作動した状態。当然MPは多かれ少なかれ30%~50%の間くらいは減っていても可笑しくはない。
俺とアマミヤが触れようとしたとき。
「ゲホッ!」
俺は血の気が引いた。アマミヤはその場で吐血した。俺の服にもその血は付着したのだが、その血の量は明らかに異常だった。
「アリシア!」
そう呼びかけて呼んでみたものの、アリシアはガープと戦闘をしていた。それもガープの方が念波動の数値は上――。当然苦戦を強いられている。
「やっぱり……。駄目なのね。あの子達を助けなきゃいけない……。だから帝国に歯向かうものは……」
アマミヤは血を吐きながら、小太刀を杖に立ち上がろうとしていた。
しかし、そんな弱り切った体で立てるはずもない。腰を上げたと同時に、アマミヤはバランスを崩して地面に倒れこんだ。
そんな折にミクちゃんと目があった。
「アマミヤさんが鍵を持ってるよ!」
アマミヤはその言葉にビクッと反応した。あの反応はミクちゃんの鍵をアマミヤが所有している可能性が非常に高い。
俺はアマミヤに駆け寄り、まずは腰辺りに触れた。
「あっ……。駄目」
そう言いながら俺の手を払いのけようとするが力は全く入っていない。それにさっき言っていたあの子達ってのも妙に引っかかる。
俺はアマミヤから鍵を取り出すと、ミクちゃんの方に走って行った。
途中――。マカロフ卿とガープが、「させるか!」と雄叫びに似た声を放ちながら向かってきたが、レンさんがそれを食い止めた。
何とマカロフ卿もガープも氷漬けになったのだ。
「魔眼ちゅうのは凄いな。あらゆる属性のスキルを1ずつ使えるらしいわ。これは見ての氷や。数十秒止めたらいけるやろ!」
アリシアも唖然としていたが、一瞬で状況を把握して俺の方に向かって走って来た。アリシアは一瞬のうちにアリスの氷を溶かし、俺はミクちゃんの手と足の錠を外した。
「戦う必要ない! その姉ちゃん連れて森妖精の姉ちゃんの転移で逃げまっせ!」
レンさんの指示は俺が考えていたものと全く同じだった。
アリスは戸惑いながらもミクちゃんに引っ張られていた。
そして、アマミヤのところへ、俺、ミクちゃん、アリシア、アリス、レンさんが集まり、アマミヤごと転移した。
着いた場所はケトル島の海岸だ。
「何で私だけ……」
アマミヤは少量の血を吐きながらもまだ喋ろうとしていた。
「無理するな。ミクちゃんさっそくで悪いが回復できるか?」
「はい。任せて下さい」
ミクちゃんは懸命にアマミヤに対して回復を行った。しかし流血は止まらない。
「ど――。どうなっているの?」
「俺の魔眼で視たら分かったんやけど、この姉ちゃん――。心臓に黒いモヤみたいなんがかかっとるわ」
「人間なのに魔眼って珍しいですね。そのモヤは恐らく呪いだと思います」
「呪い?」
アリスの回答に俺とミクちゃんは同時に反応した。
「はい。この女性の方は、何らかのスキルで縛られていて、何らかの条件に引っかかると、心臓に損傷が与えられるようです」
一体どういうスキルだよ。まあまあチートスキルじゃねえか。クソ――。呪いとなると厄介だぞ。
「神聖なる治癒って、悪い心を浄化するってスキルだから、この場合意味ないよな」
「そうですね。残念ながら」
ミクちゃんはそう言って肩を落とした。
「なら、解除は? って関係ないか」
俺がアリスの方を向くとアリスは首を横に振った。
「どうしましょう」
アリシアがそう呟くと、レンさんが不思議そうな顔をしていた。
「どうしたレンさん?」
「いやちゃいますやん。普通に森妖精の姉ちゃんの不思議なスキルで心臓をイメージして触れたら、終いちゃいますん? アリスちゃん助けた時みたいに」
すると、俺もアリシアもポンと手を叩く。そうだそうだ。アリシアにはどんなものでも、スキル効果を無効化にするんだから、アマミヤの呪いもスキルの可能性が高い。と――。言うことは無効化にできる!
「レンさん天才!」
「いや、何で気付けへんねん。意外とテンぱったりするもんなんですね。この世界ではスキルという概念で出来るとんやから、呪いっていうニュアンスやけど正体はスキルでしょ? じゃあその森妖精の姉ちゃんのご都合スキルで何とかできるでしょ。だってこのポニーテールの、絶対零度は如何なるスキルも通用しないっていう効果を無効にして、アリスちゃんを開放したんやから理屈じゃいけるやろ」
そのレンさんの発言に、アマミヤは涙を浮かべていた。彼女が何を考えているのか分かる。期待と不安と安堵が同時に押し寄せているんだ。
俺がアリシアに向かってしゃくると、アリシアはコクリと頷き、アマミヤの右胸にそっと手を置いた。
アリシアの右手から放たれる神々しい光――。それは反して、アマミヤの胸から禍々しい邪気のようなものが飛び出して暴れている。悪魔のような叫び声が鼓膜の奥まで響くようだ。耳栓しているにこれは――。
案の定――。耳栓スキルを持っているが、反対に異常聴覚を持つアリシアとアリスは辛そうだった。
悪魔――。もしかしてマーズベルにサインを送ったのはアマミヤだったのか!?
しばらくすると、アマミヤの顔色は元通りに戻って来た。先程の邪気のようなものも無い。
「成功したのか?」
「はい。彼女に施されていたスキルは無効化しました」
「よっしゃあああ!」
俺は久々に大いに喜んだ。それは大型案件の新規契約の獲得時の比ではない。
周りを見ると、ミクちゃんとアリスは泣いていて。アリシアとレンさんは柔らかい表情を浮かべていた。
だが、それにしても手応えがない。
「戦うの止めようぜ」
俺がそう手を差し伸べると、アマミヤはゆっくりと手を伸ばしてきた。
「格好いい事言ったけどやっぱり全然駄目だわ。MPの使い過ぎみたいね」
その意味はすぐに分かった。絶対零度をノアとアリスに放ったことが起因する。本来MPの完全回復には24時間は休憩を取らないと完全回復しない。俺達は報告を受けてから、6時間以内にここに来た。消費しまくっているMPが完全回復した訳では無いし、さっきの冷気がもし絶対零度なら、発動してはいないと言えど、俺のロケットランチャーで、ゲームで言うスーパーキャンセルが作動した状態。当然MPは多かれ少なかれ30%~50%の間くらいは減っていても可笑しくはない。
俺とアマミヤが触れようとしたとき。
「ゲホッ!」
俺は血の気が引いた。アマミヤはその場で吐血した。俺の服にもその血は付着したのだが、その血の量は明らかに異常だった。
「アリシア!」
そう呼びかけて呼んでみたものの、アリシアはガープと戦闘をしていた。それもガープの方が念波動の数値は上――。当然苦戦を強いられている。
「やっぱり……。駄目なのね。あの子達を助けなきゃいけない……。だから帝国に歯向かうものは……」
アマミヤは血を吐きながら、小太刀を杖に立ち上がろうとしていた。
しかし、そんな弱り切った体で立てるはずもない。腰を上げたと同時に、アマミヤはバランスを崩して地面に倒れこんだ。
そんな折にミクちゃんと目があった。
「アマミヤさんが鍵を持ってるよ!」
アマミヤはその言葉にビクッと反応した。あの反応はミクちゃんの鍵をアマミヤが所有している可能性が非常に高い。
俺はアマミヤに駆け寄り、まずは腰辺りに触れた。
「あっ……。駄目」
そう言いながら俺の手を払いのけようとするが力は全く入っていない。それにさっき言っていたあの子達ってのも妙に引っかかる。
俺はアマミヤから鍵を取り出すと、ミクちゃんの方に走って行った。
途中――。マカロフ卿とガープが、「させるか!」と雄叫びに似た声を放ちながら向かってきたが、レンさんがそれを食い止めた。
何とマカロフ卿もガープも氷漬けになったのだ。
「魔眼ちゅうのは凄いな。あらゆる属性のスキルを1ずつ使えるらしいわ。これは見ての氷や。数十秒止めたらいけるやろ!」
アリシアも唖然としていたが、一瞬で状況を把握して俺の方に向かって走って来た。アリシアは一瞬のうちにアリスの氷を溶かし、俺はミクちゃんの手と足の錠を外した。
「戦う必要ない! その姉ちゃん連れて森妖精の姉ちゃんの転移で逃げまっせ!」
レンさんの指示は俺が考えていたものと全く同じだった。
アリスは戸惑いながらもミクちゃんに引っ張られていた。
そして、アマミヤのところへ、俺、ミクちゃん、アリシア、アリス、レンさんが集まり、アマミヤごと転移した。
着いた場所はケトル島の海岸だ。
「何で私だけ……」
アマミヤは少量の血を吐きながらもまだ喋ろうとしていた。
「無理するな。ミクちゃんさっそくで悪いが回復できるか?」
「はい。任せて下さい」
ミクちゃんは懸命にアマミヤに対して回復を行った。しかし流血は止まらない。
「ど――。どうなっているの?」
「俺の魔眼で視たら分かったんやけど、この姉ちゃん――。心臓に黒いモヤみたいなんがかかっとるわ」
「人間なのに魔眼って珍しいですね。そのモヤは恐らく呪いだと思います」
「呪い?」
アリスの回答に俺とミクちゃんは同時に反応した。
「はい。この女性の方は、何らかのスキルで縛られていて、何らかの条件に引っかかると、心臓に損傷が与えられるようです」
一体どういうスキルだよ。まあまあチートスキルじゃねえか。クソ――。呪いとなると厄介だぞ。
「神聖なる治癒って、悪い心を浄化するってスキルだから、この場合意味ないよな」
「そうですね。残念ながら」
ミクちゃんはそう言って肩を落とした。
「なら、解除は? って関係ないか」
俺がアリスの方を向くとアリスは首を横に振った。
「どうしましょう」
アリシアがそう呟くと、レンさんが不思議そうな顔をしていた。
「どうしたレンさん?」
「いやちゃいますやん。普通に森妖精の姉ちゃんの不思議なスキルで心臓をイメージして触れたら、終いちゃいますん? アリスちゃん助けた時みたいに」
すると、俺もアリシアもポンと手を叩く。そうだそうだ。アリシアにはどんなものでも、スキル効果を無効化にするんだから、アマミヤの呪いもスキルの可能性が高い。と――。言うことは無効化にできる!
「レンさん天才!」
「いや、何で気付けへんねん。意外とテンぱったりするもんなんですね。この世界ではスキルという概念で出来るとんやから、呪いっていうニュアンスやけど正体はスキルでしょ? じゃあその森妖精の姉ちゃんのご都合スキルで何とかできるでしょ。だってこのポニーテールの、絶対零度は如何なるスキルも通用しないっていう効果を無効にして、アリスちゃんを開放したんやから理屈じゃいけるやろ」
そのレンさんの発言に、アマミヤは涙を浮かべていた。彼女が何を考えているのか分かる。期待と不安と安堵が同時に押し寄せているんだ。
俺がアリシアに向かってしゃくると、アリシアはコクリと頷き、アマミヤの右胸にそっと手を置いた。
アリシアの右手から放たれる神々しい光――。それは反して、アマミヤの胸から禍々しい邪気のようなものが飛び出して暴れている。悪魔のような叫び声が鼓膜の奥まで響くようだ。耳栓しているにこれは――。
案の定――。耳栓スキルを持っているが、反対に異常聴覚を持つアリシアとアリスは辛そうだった。
悪魔――。もしかしてマーズベルにサインを送ったのはアマミヤだったのか!?
しばらくすると、アマミヤの顔色は元通りに戻って来た。先程の邪気のようなものも無い。
「成功したのか?」
「はい。彼女に施されていたスキルは無効化しました」
「よっしゃあああ!」
俺は久々に大いに喜んだ。それは大型案件の新規契約の獲得時の比ではない。
周りを見ると、ミクちゃんとアリスは泣いていて。アリシアとレンさんは柔らかい表情を浮かべていた。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる