【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
134 / 597

始動Ⅵ

しおりを挟む
 ナリユキ殿と、アリシアを背に乗せてアードルハイム帝国に向かった。勿論、張られていた結界はアリシアが解除して、帝国側に気付かれることなく通過できた。こうして考えると警備はとても薄い。いや、まあそれはマーズベルにとってはの話だな。

「それにしても、俺がお前に殴られる日がくるとはな~」

「ナリユキ様吃驚しておりましたもんね」

「おい、ちょっとからかっただろ」

「それは反応が可愛かったので」

 と、クスクスと笑っているアリシアの顔が容易に想像できる。仲がいいのはいいことだが、ミク殿がこの光景を見て嫉妬しないか心配だったりする。

「痛かったのは科学的根拠になるものが無いからな」

「そもそもスキルっていう概念が科学でも何でもないのですが。俺達の世界じゃあり得ないもん」

「それはそうだった。さて飛ばすぞ」

 我が猛スピードを出すと帝都に近付いてきた。眼下に見える森の中に一度入る。

 そこで一旦、我等は先程の作戦述べた作戦を実行する。転移《テレポート》でアリシアが島に戻って数分待っていた。すると、フィオナを含めた他の森妖精エルフ達をアリシアは連れてきた。その後にはアリシアのMPを回復するという手順だ。

「ここで待機していろ。家を建てておくからよ」

 ナリユキ殿はそう言って、小屋をいくつも建てた。これをする度に、マーズベルの国民は、ナリユキ殿に異常なくらい感謝する。こう言っては何だがこの光景は飽きた。

「ナリユキ様。くれぐれも気をつけて下さい。ご武運を」

 フィオナがそう言うと、ナリユキ殿はクスっと笑みを浮かべていた。

「まるで俺が長い旅をするようじゃないか。大丈夫だ。安心しな。アードルハイム帝国の暗黒時代に終止符を打とうぜ」

「はい」

 そう頷いたフィオナはそれ以上に言葉が出ない程感極まっていた。

 我等も――。昔ではあるがアードルハイム帝国が絡んで大切だった友人を失くしている。けれども、ナリユキ殿には死相や嫌な予感というものは見えない。絶対的な安心感――。これがナリユキ殿の神髄だ。

「さあ行こうぜ」

「はい」

「おう」

 フィオナを含めた森妖精エルフ達にしばしの別れを労った後、我等は帝都に潜入した。

「もっと中心に行ってください。そこから大きなパワーを感じます。恐らくノア様かと」

「それはどの辺りになるのだ?」

「説明が難しいですね――。あ! あそこで大量に倒れている鎧を着た兵士の近くですね」

「分かった。スピードを落とそう」

 そうゆっくりと飛行していた。これはベリトがやったのだろう。民間人がいないことを考えると、もう任務を終えているようだ。勿論、ただ逃げた人もいるだろうが。

「あの家ですね」

「妙に縦に横に長いな。いや家からすると縦か」

「どうでもいいことグチグチ言っていないで、降りようぜ」

「いつも通りの雑さで安心だ」

「――。今思ったんだけど、それが俺の精神バロメーターになってる?」

 我が見抜かれたので無視していると――。

 ブチッ――。

「いったい! ナリユキ殿! 我の体毛抜いたろ!」

「お――。分かるんだ」

「ワイバーンの王の体毛を抜くのは流石に酷すぎるぞ。よし着いたぞ」

 我は着陸すると、建物の入り口が破壊されて剥き出しになっていた。それに建物の前には黒焦げになっている人が数人倒れている。

「誰がやったのだろう」

「多分レンさんだな。俺が依頼した冒険者グループで一番強い人だよ。炎の攻撃スキルで近距離と中距離が得意っぽいんだ。アルティメットスキルなんてバリバリの和名だしな」

「何という名前だ?」

火之迦具土神カグツチって名前だ」

「ほう。ちゃっかり初耳だな」

「あら意外。アリ――」

 ナリユキ殿がそう言おうとしたとき、アリシアは既にノアのスキルの解除に取り掛かっていた。

「俺の部下優秀じゃね?」

「元マーズベルの森の管理人だからな」

 ピキピキと氷が割れる音がした。

「お、ナリユキ! 皆!」

 と言って無邪気にナリユキ殿の胸に飛び込むノア。

「ごめんね。ミクとアリスを守れなかった――。一瞬で氷漬けにされちゃったんだ」

 と、すすり泣きをしているノア。ここまで子供っぽい表情を見せたのは何気に初めてかもしれないな。

「ノア様が氷漬けで動きを封じられるなんて、凄い手練れですね。本当に私のスキルでなければ解除できる人間は他にほぼいないでしょう」

「まあミクちゃんで無理だったくらいだからな。アリシア有難う」

「いえいえ。褒めても何も出ませんよ」

 なんで。腰をクネクネさせているんだこの森妖精エルフは?

「とりあえず状況を教えてほしい。ノアは誰にやられたんだ?」

「ちょっと待ってね――」

 ノアはしばらくう~んと考えた。しばらく考えた後、手をポンと叩き。

「思い出した! ミユキ・アマミヤって名乗っていた」

「ミユキ・アマミヤ――?」

 ナリユキ殿は何か思い出しかのように、名前を小さく呟いていた。知り合いなのだろうか? そして、ゆっくりと口を開いた。

「黒髪の女性で、肌はミクちゃんと同じくらい白かったか? 釣り目だったか?」

「そんなに言われても分からないよ。ボクは根本的に他人に興味ないから、名前を憶えていただけでも褒めてほしいくらいだよ!」

「ああ悪い」

 ナリユキ殿の顔色は明らかに悪かった。まるで血の気が引いたような――。そんな顔色だった。

「もしアイツだったら俺に復讐か? いや、そもそも何でアードルハイム帝国なんだ?」

「大丈夫――。では無さそうだな? 我に話してみてもよくないか? 少しは楽になるかもしれないぞ?」

 ナリユキ殿は立ちくらみをしていたので、我が支えると「悪い」と感謝の述べた。普段、ナリユキ殿はこのような弱い面を見せない。少し人間味があってホッとしたような気がするが、冷静に考えると、ミク殿が隣にいたからこそ、弱い自分を見せたくない――。という想いが顕著に出ていたのだろう。勿論、ミク殿の行方が分からない為に、余計に精神名が不安定になっているようだが。

 そう考察していると、ナリユキ殿がスウと息を吸った。そしてゆっくり吐く。

「同姓同名だが――。俺がこの世界に来る前の友人に、ミユキ・アマミヤという人間がいた。その女性ヒトは、俺がまともに相談できていなかったせいで自殺をした女性ヒトだ」

 意外な繋がりではあるが、それは同時に複雑な繋がりのような気がしてならなかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...