122 / 597
騒動Ⅲ
しおりを挟む
「こんな子供を冒険者パーティーに入れているパーティーなど知れている。大方、問題だらけのパーティーで、子供を入れないと人手が足りないんだろう。貴様も可哀想だな」
「ミ――。じゃない。ロトス」
「何?」
「コイツ思いっきり顔面ぶん殴っていい?」
「思いっきり殴ったら多分顔面吹き飛ぶから駄目だよ」
「だよね~。じゃあ逆にデコピンだけで倒すのはありだよね?」
「それなら問題ないね」
と、涼しい顔で会話してるけど、いくら敵が弱いとは言えデコピンだけで倒すなんて、少年漫画の主人公みたいなことができる訳ないやん。いくら強いって言ってもハッタリきつすぎる。
「デコピンというのはなんだ?」
「オジサン知らないの? 額にこうやって指だけで弾く攻撃だよ」
ノアはそう言ってデコピンを実演してみせた。わざとゆっくり動かしたんやろう。あんなんデコピン一発でKOなんて100%無理やからな。
それを見た帝国兵達は笑いを堪えてる。喋りかけてくる帝国兵も笑いを堪えながら――。
「いいだろう。私に一発入れてみるといい」
そう言って帝国兵は中腰になって額を差し出した。
「ほい」
遠慮なく繰り出されたノアのデコピンは帝国兵にクリーンヒット。中腰になっていたせいで、額に直撃して、地面にゴロンゴロンと転がるなり、後ろの帝国兵の馬に激突。
当然馬は暴れ始めたから、危険を予知した他の帝国兵がフォローに入って、馬の足踏みを食らわずに済んだ。
この帝国兵がフォロー入れへんかったから、コイツの顔面がグチャグチャになっていたところやな。
「あれ? 結構手加減したはずなのにな。おじさん弱いね」
「兵長、大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「ええい。この私をコケにしやがって」
せっかく心配されているのに、そのフォローに入った帝国兵の手を振り払って、こっちにズカズカと歩いてきた。
「もう遠慮はせん。殺してやる」
まあ――。そうなることは大方予測できていたけどな。
いくら何でも剣を抜くのは――。と考えていそうな表情を浮かべている帝国兵が何人かいた。
「なんだ。おじさん殺し合いやるの? 本当に?」
と、不気味な笑みを浮かべているノアは、さっきまでの顔つきとまるで別人。
「なっ――」
そう声を漏らす兵長と呼ばれる男は、剣を抜いたものの物怖じしていた。俺から見ても、ノアが一瞬放った殺気は背筋が寒くなるもんやった。
「ねえ? やるの? やらないの?」
ノアはそう言って眼光を飛ばしながら一歩進んだ。
すると、他の帝国兵も焦りを見せ始めて、全員一歩後退していた。さっき見せた異常なデコピンと、ただならぬ重圧はマカロフ卿と同等レベル。
「きょ――。今日のところは見逃してやろう。幸運だったと思え」
そう言って兵長は馬に乗り、他の帝国兵を連れて立ち去った。
完全に帝国兵が消え去った後。
パチパチと拍手する音が聞こえた。お店の方を見ると、客はスタンディングオベーションでノアを見ながら祝福を送ってる。
「凄いぞ坊主!」
「スッキリしましたわ」
「ちっさいのよくやるよ」
そう拍手を送られて少し戸惑いを見せつつも照れているノア。こういうところはただの子供やねんけど、さっきの殺気は殺人鬼そのものやったもんな。まるで人を殺すのに躊躇いという感情が一切無い感じや。
マーズベルはこんなヤバい子も味方につけとるんか。この国の戦力と対等と戦争できる国ってあるんかいな――。
「ありがとうございます!」
ノアはそう言って清々しい一礼をしていた。
「まあ何はともあれ平和にいけたな」
「そうですね。アル君は威圧して撃退してくれたし」
「本当は戦いたかったけどね」
「それは駄目。じゃあ私達もそろそろ行きましょうか」
「何や。もう行くんかい」
「ええ。一応あの人と13時に約束しているので」
べりーちゃんが言ったあの人とはラングドールの事や。言うてまだまだ時間あるけど、ここのお店の人達にさらに怪しまれないように歩いて行くつもりなんやろ。
「ほな俺達も行くわ。また何かあったら連絡するわ」
「分かりました。くれぐれも気を付けてください」
べりーちゃんがそう頭を下げると、アリスちゃんもノアも頭を下げてくれた。
「こちらこそ」
俺達もそう言って頭をしばらく下げた。
「互いに上手くやろうな」
無意識に俺は手を差し出していた。するとべりーちゃんも手を差し出してくれたので、軽い握手を交わして俺達は別々の行動を再びとることになった。
反乱軍の裏切り者を見つけてくれさえすれば、こっちが動きやすくなって、捕まっている人々の解放もしやすくなる。あの3人がヘマをすることも無い――。いや、ノアが喧嘩っ早いからちょっと何とも言われへんけど、順当にいけば上手くいくはず――。
はずやった――。
「ほな俺達も行こか」
「そうですね」
俺達はある程度お店から離れたら 転移でお店から離れた。
こん時に感じていた違和感を、俺は密会してるときに熟考するべきやったんや。
俺達の去り際に見せた、口角が吊り上がっていた奴の表情を――。その表情の意味を「気味が悪い」だけで済ますんやなかったんや。
「ミ――。じゃない。ロトス」
「何?」
「コイツ思いっきり顔面ぶん殴っていい?」
「思いっきり殴ったら多分顔面吹き飛ぶから駄目だよ」
「だよね~。じゃあ逆にデコピンだけで倒すのはありだよね?」
「それなら問題ないね」
と、涼しい顔で会話してるけど、いくら敵が弱いとは言えデコピンだけで倒すなんて、少年漫画の主人公みたいなことができる訳ないやん。いくら強いって言ってもハッタリきつすぎる。
「デコピンというのはなんだ?」
「オジサン知らないの? 額にこうやって指だけで弾く攻撃だよ」
ノアはそう言ってデコピンを実演してみせた。わざとゆっくり動かしたんやろう。あんなんデコピン一発でKOなんて100%無理やからな。
それを見た帝国兵達は笑いを堪えてる。喋りかけてくる帝国兵も笑いを堪えながら――。
「いいだろう。私に一発入れてみるといい」
そう言って帝国兵は中腰になって額を差し出した。
「ほい」
遠慮なく繰り出されたノアのデコピンは帝国兵にクリーンヒット。中腰になっていたせいで、額に直撃して、地面にゴロンゴロンと転がるなり、後ろの帝国兵の馬に激突。
当然馬は暴れ始めたから、危険を予知した他の帝国兵がフォローに入って、馬の足踏みを食らわずに済んだ。
この帝国兵がフォロー入れへんかったから、コイツの顔面がグチャグチャになっていたところやな。
「あれ? 結構手加減したはずなのにな。おじさん弱いね」
「兵長、大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「ええい。この私をコケにしやがって」
せっかく心配されているのに、そのフォローに入った帝国兵の手を振り払って、こっちにズカズカと歩いてきた。
「もう遠慮はせん。殺してやる」
まあ――。そうなることは大方予測できていたけどな。
いくら何でも剣を抜くのは――。と考えていそうな表情を浮かべている帝国兵が何人かいた。
「なんだ。おじさん殺し合いやるの? 本当に?」
と、不気味な笑みを浮かべているノアは、さっきまでの顔つきとまるで別人。
「なっ――」
そう声を漏らす兵長と呼ばれる男は、剣を抜いたものの物怖じしていた。俺から見ても、ノアが一瞬放った殺気は背筋が寒くなるもんやった。
「ねえ? やるの? やらないの?」
ノアはそう言って眼光を飛ばしながら一歩進んだ。
すると、他の帝国兵も焦りを見せ始めて、全員一歩後退していた。さっき見せた異常なデコピンと、ただならぬ重圧はマカロフ卿と同等レベル。
「きょ――。今日のところは見逃してやろう。幸運だったと思え」
そう言って兵長は馬に乗り、他の帝国兵を連れて立ち去った。
完全に帝国兵が消え去った後。
パチパチと拍手する音が聞こえた。お店の方を見ると、客はスタンディングオベーションでノアを見ながら祝福を送ってる。
「凄いぞ坊主!」
「スッキリしましたわ」
「ちっさいのよくやるよ」
そう拍手を送られて少し戸惑いを見せつつも照れているノア。こういうところはただの子供やねんけど、さっきの殺気は殺人鬼そのものやったもんな。まるで人を殺すのに躊躇いという感情が一切無い感じや。
マーズベルはこんなヤバい子も味方につけとるんか。この国の戦力と対等と戦争できる国ってあるんかいな――。
「ありがとうございます!」
ノアはそう言って清々しい一礼をしていた。
「まあ何はともあれ平和にいけたな」
「そうですね。アル君は威圧して撃退してくれたし」
「本当は戦いたかったけどね」
「それは駄目。じゃあ私達もそろそろ行きましょうか」
「何や。もう行くんかい」
「ええ。一応あの人と13時に約束しているので」
べりーちゃんが言ったあの人とはラングドールの事や。言うてまだまだ時間あるけど、ここのお店の人達にさらに怪しまれないように歩いて行くつもりなんやろ。
「ほな俺達も行くわ。また何かあったら連絡するわ」
「分かりました。くれぐれも気を付けてください」
べりーちゃんがそう頭を下げると、アリスちゃんもノアも頭を下げてくれた。
「こちらこそ」
俺達もそう言って頭をしばらく下げた。
「互いに上手くやろうな」
無意識に俺は手を差し出していた。するとべりーちゃんも手を差し出してくれたので、軽い握手を交わして俺達は別々の行動を再びとることになった。
反乱軍の裏切り者を見つけてくれさえすれば、こっちが動きやすくなって、捕まっている人々の解放もしやすくなる。あの3人がヘマをすることも無い――。いや、ノアが喧嘩っ早いからちょっと何とも言われへんけど、順当にいけば上手くいくはず――。
はずやった――。
「ほな俺達も行こか」
「そうですね」
俺達はある程度お店から離れたら 転移でお店から離れた。
こん時に感じていた違和感を、俺は密会してるときに熟考するべきやったんや。
俺達の去り際に見せた、口角が吊り上がっていた奴の表情を――。その表情の意味を「気味が悪い」だけで済ますんやなかったんや。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる