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尾行Ⅱ
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カフェに入る前に2人にも仮面を外してもらい、お店の中に入った。
店員に案内されながら店内を見渡していると、客席はそれほど埋まっていない様子だった。客の最大収容人数が30人前後に対して、今いる客数はその1/3といったところだ。
基地がすぐ近くにあるとは言え、鎧を着た人間がいないことから、帝国兵はいなさそうだ。まあこんなところで油を売っていたら普通に処罰されそうだけど。
客層に関しては40代~60代がほとんどだった。1組だけ母親と5歳くらいの子供でパフェを堪能しているという何とも微笑ましいお客さんもいた。
私も何気にああいう生活に憧れを持っている。なりゆき君と――。なんて考えてしまう。となると、なりゆき君と2人の子供ってなる……。
「お姉様どうしましたか? さっきからぼ~としていますけど」
「な――何でもないよ! とりあえず好きなもの選んで」
嘘ばっかり。何かしかない。挙動がおかしかったから、案の定アリスちゃんには不思議そうに見られていた。
しばらく待っていると、女性店員がお冷を持って来てくれた。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「ボクはこのチョコバナナパフェ」
「私はトロピカルフルーツジュースで」
「2人共凄いの頼むね。私はアイスコーヒーで」
「かしこまりました」
店員さんはニコッと微笑んで去って行った。
「ノア様楽しみですね」
「そうだね。ボク等の国じゃまだ見たことない食べ物やジュースだもんね」
隣同士で座っている2人はそう言いながら笑っていた。
「そういえばそうだね。私アイスクリームの作り方なんてよく分からないしね」
「そうなんだ。めちゃくちゃ美味しそうだ」
と、ノア君の目の輝き方は半端じゃないので、今度パフェは無理だけど洋菓子でも作ってあげるかと思っていた。
「お姉様、夜はどうされますか? やはり無難に酒場ですかね?」
「そうだね。けど私が求めている情報って、ここに住んでいる人が、どんな酷い事をされているか――。だからね。仮に酒場に行ってもそこに帝国兵がいたら意味ないし」
「帝国兵の悪口を言えば処罰されるってことですよね?」
「そう。適当な理由付けてね」
「アードルハイムに住んでいる人は大変ですね。私達の国は自由なのでそう感じます」
「と、言っても住める場所と食料を確保しているだけだけどね」
「それがいいんですよ。さっきのロビンソンさん達はとても健康とは言えない様子でした。人間なのに、まるで自然界に野放しにされているよう。しかも武力も無いので、魔物のように他者から奪い取ることもできませんし」
「大前提だけど、それは人間界では駄目だからね。自然界は弱肉強食の世界で生きるか死ぬかの瀬戸際にいつもいるけど」
「確かにそうでした」
「来たよ」
ノア君がそう言ったので見てみると、30cmほどの巨大なチョコバナナパフェが出てきた。いや、ちょっと大きすぎない? 私あんなの1人で食べれない――。
「ノア君、パフェって大前提でめちゃくちゃ甘いから、無理しないでね? 無理そうだったら私とアリスちゃんも食べるから」
「うん分かった!」
と、全く物怖じしていない。そもそもパフェという存在を知らないから、人によったら甘くて舌が痺れるって感想だったりするので、本当に大丈夫だろうか? と心配になる。
そして、アリスちゃんの前に置かれたのは、トロピカルというくらいなので、パイナップル、バナナ、マンゴーなどをすり潰したジュースだろう。強いて言うなら糖度のオンパレードだ。絶対に美味しい。
私の前にはごく普通のアイスコーヒーを置かれたので、さっそく手に付けた。そして、2人を見てみるとものすごく幸せそうな表情を浮かべていたので、私としては大満足だ。
「凄いねこれ。めちゃくちゃ美味しい」
「このジュース不思議ですね。色々な甘みを感じられるのですが何でしょうか?」
「ちょっと貰っていい?」
「いいですよ。あの――でも――」
アリスちゃんはそうモジモジしているので、まさかと思ったけど――。
「お姉様との間接キスですね」
「だね」
と、流したけどやっぱり何ルートなのこれ。いや、めちゃくちゃ嬉しいんだけど。
そう、考えながら、トロピカルフルーツジュースをストローで少し飲んでみた。甘みや香りからすると、パイナップル、バナナ、マンゴー、ドリアン、パパイヤ、ライチも入っている。
「文句なしに美味しいね。パイナップル、バナナ、マンゴー、ドリアン、パパイヤ、ライチっていうフルーツを潰しているジュースだね。フルーツの甘みをぎゅっと凝縮しているから、恐らくこのジュースには砂糖が全く使われていないと思うよ」
私はそう言いながら、アリスちゃんにジュースを返した。
「そうなんですね。凄く美味しいです」
はあ――。ずっとこの平和な空間が続けばいいのに。そう思いながら特に会話することなく2人を見ていた。でもまあ遊びに来た訳ではないからノア君に頼むか。
「ノア君。気になることを話している人はいる?」
「いや? 特に気になることを話している人はいないね。それより外のほうが気になるよ」
「外?」
「そうだよ。帝国兵が出てきて様子が騒がしいんだよね」
そう言っていたので、少し体をずらしてガラス張りの窓の席のほうを眺めた。基地からゾロゾロと帝国兵が出てきた。
「捕らえるぞって言っているね」
「何か事件のニオイだね。とりあえず張り込みしておこう」
店員に案内されながら店内を見渡していると、客席はそれほど埋まっていない様子だった。客の最大収容人数が30人前後に対して、今いる客数はその1/3といったところだ。
基地がすぐ近くにあるとは言え、鎧を着た人間がいないことから、帝国兵はいなさそうだ。まあこんなところで油を売っていたら普通に処罰されそうだけど。
客層に関しては40代~60代がほとんどだった。1組だけ母親と5歳くらいの子供でパフェを堪能しているという何とも微笑ましいお客さんもいた。
私も何気にああいう生活に憧れを持っている。なりゆき君と――。なんて考えてしまう。となると、なりゆき君と2人の子供ってなる……。
「お姉様どうしましたか? さっきからぼ~としていますけど」
「な――何でもないよ! とりあえず好きなもの選んで」
嘘ばっかり。何かしかない。挙動がおかしかったから、案の定アリスちゃんには不思議そうに見られていた。
しばらく待っていると、女性店員がお冷を持って来てくれた。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「ボクはこのチョコバナナパフェ」
「私はトロピカルフルーツジュースで」
「2人共凄いの頼むね。私はアイスコーヒーで」
「かしこまりました」
店員さんはニコッと微笑んで去って行った。
「ノア様楽しみですね」
「そうだね。ボク等の国じゃまだ見たことない食べ物やジュースだもんね」
隣同士で座っている2人はそう言いながら笑っていた。
「そういえばそうだね。私アイスクリームの作り方なんてよく分からないしね」
「そうなんだ。めちゃくちゃ美味しそうだ」
と、ノア君の目の輝き方は半端じゃないので、今度パフェは無理だけど洋菓子でも作ってあげるかと思っていた。
「お姉様、夜はどうされますか? やはり無難に酒場ですかね?」
「そうだね。けど私が求めている情報って、ここに住んでいる人が、どんな酷い事をされているか――。だからね。仮に酒場に行ってもそこに帝国兵がいたら意味ないし」
「帝国兵の悪口を言えば処罰されるってことですよね?」
「そう。適当な理由付けてね」
「アードルハイムに住んでいる人は大変ですね。私達の国は自由なのでそう感じます」
「と、言っても住める場所と食料を確保しているだけだけどね」
「それがいいんですよ。さっきのロビンソンさん達はとても健康とは言えない様子でした。人間なのに、まるで自然界に野放しにされているよう。しかも武力も無いので、魔物のように他者から奪い取ることもできませんし」
「大前提だけど、それは人間界では駄目だからね。自然界は弱肉強食の世界で生きるか死ぬかの瀬戸際にいつもいるけど」
「確かにそうでした」
「来たよ」
ノア君がそう言ったので見てみると、30cmほどの巨大なチョコバナナパフェが出てきた。いや、ちょっと大きすぎない? 私あんなの1人で食べれない――。
「ノア君、パフェって大前提でめちゃくちゃ甘いから、無理しないでね? 無理そうだったら私とアリスちゃんも食べるから」
「うん分かった!」
と、全く物怖じしていない。そもそもパフェという存在を知らないから、人によったら甘くて舌が痺れるって感想だったりするので、本当に大丈夫だろうか? と心配になる。
そして、アリスちゃんの前に置かれたのは、トロピカルというくらいなので、パイナップル、バナナ、マンゴーなどをすり潰したジュースだろう。強いて言うなら糖度のオンパレードだ。絶対に美味しい。
私の前にはごく普通のアイスコーヒーを置かれたので、さっそく手に付けた。そして、2人を見てみるとものすごく幸せそうな表情を浮かべていたので、私としては大満足だ。
「凄いねこれ。めちゃくちゃ美味しい」
「このジュース不思議ですね。色々な甘みを感じられるのですが何でしょうか?」
「ちょっと貰っていい?」
「いいですよ。あの――でも――」
アリスちゃんはそうモジモジしているので、まさかと思ったけど――。
「お姉様との間接キスですね」
「だね」
と、流したけどやっぱり何ルートなのこれ。いや、めちゃくちゃ嬉しいんだけど。
そう、考えながら、トロピカルフルーツジュースをストローで少し飲んでみた。甘みや香りからすると、パイナップル、バナナ、マンゴー、ドリアン、パパイヤ、ライチも入っている。
「文句なしに美味しいね。パイナップル、バナナ、マンゴー、ドリアン、パパイヤ、ライチっていうフルーツを潰しているジュースだね。フルーツの甘みをぎゅっと凝縮しているから、恐らくこのジュースには砂糖が全く使われていないと思うよ」
私はそう言いながら、アリスちゃんにジュースを返した。
「そうなんですね。凄く美味しいです」
はあ――。ずっとこの平和な空間が続けばいいのに。そう思いながら特に会話することなく2人を見ていた。でもまあ遊びに来た訳ではないからノア君に頼むか。
「ノア君。気になることを話している人はいる?」
「いや? 特に気になることを話している人はいないね。それより外のほうが気になるよ」
「外?」
「そうだよ。帝国兵が出てきて様子が騒がしいんだよね」
そう言っていたので、少し体をずらしてガラス張りの窓の席のほうを眺めた。基地からゾロゾロと帝国兵が出てきた。
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