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立つんやⅠ
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俺達はあれからナリユキさんの助言に従い、少しずつマップ広げていった。あの通路は合計5つの道があったんや。そして、今来ているところは、今までで最も重要やった通路や――。
驚くことに、金網取って数歩行ったところには皇室がある。まあなんで地下に皇室あるねんって話やけど――。手間もかかるやろうに少し感心する。
1時間ほどやろうか? この窮屈なところでじっと観察していると、兵士の出入りは結構多かった。中には拘束されて喚き散らしてる奴もいた。
多分、不祥事を起こしたんか、皇帝の腹いせか――。理由は分からへんけど、見ている限りは何らかのキツイ灸を据えられるんやろう。じゃないとスキルが発動できへん手枷と足枷なんかしやんもんな。
ご愁傷さん。
そう呑気に考えていると、部屋の扉が開く音がした。ギギギという金属音はただならぬ重厚感を漂わせる。
さっき通っている兵士が言っていた情報によると、この扉の厚みは100cmらしい。俺はそれ盗み聞きしたとき思わず金庫か! って心の中でツッコんだ。
そんな厚い扉をどうやって開けるねんって話やけど、どうやら一部の人間だけが扉を開けることができるらしい。ラングドールが地下牢の扉を開けた時の方法と同じや。やからどうやっても部外者が開けることはできへん。
いや――。流石にそれは吃驚するって――。出てきたときから緊張感のある空気感みたいやと思ってたけど。
その老人は頭に王冠を被り、長い顎髭を蓄えた鷹のように鋭い目つきをしてる、尋常やないオーラの持ち主やった。出てきただけで空気そのものを支配し、息が詰まるような重圧を放ち続ける異色の存在感。
正直目が合っただけで胃液が込み上げるほどや。恐らく単純な強さだけなら俺の方が上。奴の強さはS級の序盤ら辺と見た。けどラングドールが言っていたユニークスキルで勝負はどう転ぶか分からん。戦い方次第でいくらでも戦況なんか変えることができる。
そんで、あの目はズルい事ばっかしてきた目や。プラス嘘つき奴の目や。念波動の数字はアテにならんってのはちゃっかり初めて知ったかもしれへんな。
「あいつは元気でやっているのか?」
「はい。張り切っております。皇帝陛下のお力添えが益々期待できることでしょう。彼には時間が迫っておりますし」
「そうか――。それは滑稽だな。安心したよ。地獄が待っているとも知らずにな。よく頑張ってくれているよ」
たったそんだけの会話を聞いた。アードルハイム皇帝はドラマでしか見たこと無いようなあの気味の悪い口角の吊り上がり方は何なんや。
それに地獄ってなんや。アードルハイム皇帝の事やから何かしらのルールを部下に課せているんやろう。じゃあそのルールは誰に課せられてる?
アカンわ。考えても分からへんわ。何かじっとしてて喉も渇いたし帰ろ。
そうやって来た道を戻っていると――。
「お帰り」
ほふく前進していてやっと立てると思っていた時やった。顔と声は一致しやけど、強烈に印象に残る声――。
そう考えているとふわっと葉巻の匂いがした――。分かった分かったぞ――。いや、せやけど何でおんねん。おかしいやろ。
「何だシカトかよ日本人」
そう出口の通路に顔を覗かせてきたのはオールバックの黒スーツの男。マカロフ卿や。
人生で初めてやないやろうか? ここまで冷や汗をかいたのは初めてや。全身の毛穴から吹き出すかのよう。そして凍りつくような恐怖。
俺が必死にさっきの道に行こうとしたときやった。
「おい。お友達を置いていくのか? お前が出てこなければお友達は死ぬことになるぞ?」
その一言で俺は止まった。そして手の震えが止まれへんかった。
「アズサ達に何かしたんか!?」
「していないから早く出てこい。あと、お前達が偽名を使っていることは知っているから心配しなくていいぞ日本人」
そう言われたのであの狭い通路から出ると、アズサ達が手枷と足枷をされて捕まってた。そしてガムテープで口を閉じられている。
「最近、視られていると思っていたら、貴様等部外者がいたわけだ。お前割と強いだろ? 少しウォーミングアップに付き合ってくれないか? 骨が無い奴ばかり体が鈍っちまうんだ」
マカロフ卿はそう言って腕をグルグルと回していた。
それより、気になるんは目的や。捕まえたんやったら俺達をさっさと皇帝にところに突き出せばいい。やのに何でそれをしやんねん。しかも戦いたいとか抜かしやがる。
「さっき辿った。部屋と通路が繋がっているんだろ? あそこは防音だし頑丈に出来ているから、少々派手に暴れても誰も気付かない。部屋まで戻るぞ。ああ、そうだ。お前たちは残しておくが、ここに戻ってきたとき、お前達がいなければこの坊主の首を刎ねるから下手な真似はするなよ」
マカロフ卿はそう言って、アズサ達に脅しをかけた。
アズサ達は首を縦に振るなり、俺を見て心配を訴えかけてきた。
大丈夫。大丈夫。大丈夫や。
「ほら早く先に行け」
マカロフ卿にそう言われて俺は部屋までに戻った。
こうなってしまった以上全力を出すしかない。踏ん張るんや。
さっきは怖い思たけど学生の時を思い出すんや。脳死で突っ込んでいた時の事を。
そう決意しても手の震えは止まれへんかった。
じゃあ何が怖いねん。
負けるんが怖い? 違う。
ボコボコにされるんが怖い? 違う。
戦うんが怖い? 違う。
死ぬんが怖い? 違う。
そう――。マカロフ卿という強大な存在によって仲間を失うことや。
だって学生の時に友達を殺したんは結局俺なんやから……。
驚くことに、金網取って数歩行ったところには皇室がある。まあなんで地下に皇室あるねんって話やけど――。手間もかかるやろうに少し感心する。
1時間ほどやろうか? この窮屈なところでじっと観察していると、兵士の出入りは結構多かった。中には拘束されて喚き散らしてる奴もいた。
多分、不祥事を起こしたんか、皇帝の腹いせか――。理由は分からへんけど、見ている限りは何らかのキツイ灸を据えられるんやろう。じゃないとスキルが発動できへん手枷と足枷なんかしやんもんな。
ご愁傷さん。
そう呑気に考えていると、部屋の扉が開く音がした。ギギギという金属音はただならぬ重厚感を漂わせる。
さっき通っている兵士が言っていた情報によると、この扉の厚みは100cmらしい。俺はそれ盗み聞きしたとき思わず金庫か! って心の中でツッコんだ。
そんな厚い扉をどうやって開けるねんって話やけど、どうやら一部の人間だけが扉を開けることができるらしい。ラングドールが地下牢の扉を開けた時の方法と同じや。やからどうやっても部外者が開けることはできへん。
いや――。流石にそれは吃驚するって――。出てきたときから緊張感のある空気感みたいやと思ってたけど。
その老人は頭に王冠を被り、長い顎髭を蓄えた鷹のように鋭い目つきをしてる、尋常やないオーラの持ち主やった。出てきただけで空気そのものを支配し、息が詰まるような重圧を放ち続ける異色の存在感。
正直目が合っただけで胃液が込み上げるほどや。恐らく単純な強さだけなら俺の方が上。奴の強さはS級の序盤ら辺と見た。けどラングドールが言っていたユニークスキルで勝負はどう転ぶか分からん。戦い方次第でいくらでも戦況なんか変えることができる。
そんで、あの目はズルい事ばっかしてきた目や。プラス嘘つき奴の目や。念波動の数字はアテにならんってのはちゃっかり初めて知ったかもしれへんな。
「あいつは元気でやっているのか?」
「はい。張り切っております。皇帝陛下のお力添えが益々期待できることでしょう。彼には時間が迫っておりますし」
「そうか――。それは滑稽だな。安心したよ。地獄が待っているとも知らずにな。よく頑張ってくれているよ」
たったそんだけの会話を聞いた。アードルハイム皇帝はドラマでしか見たこと無いようなあの気味の悪い口角の吊り上がり方は何なんや。
それに地獄ってなんや。アードルハイム皇帝の事やから何かしらのルールを部下に課せているんやろう。じゃあそのルールは誰に課せられてる?
アカンわ。考えても分からへんわ。何かじっとしてて喉も渇いたし帰ろ。
そうやって来た道を戻っていると――。
「お帰り」
ほふく前進していてやっと立てると思っていた時やった。顔と声は一致しやけど、強烈に印象に残る声――。
そう考えているとふわっと葉巻の匂いがした――。分かった分かったぞ――。いや、せやけど何でおんねん。おかしいやろ。
「何だシカトかよ日本人」
そう出口の通路に顔を覗かせてきたのはオールバックの黒スーツの男。マカロフ卿や。
人生で初めてやないやろうか? ここまで冷や汗をかいたのは初めてや。全身の毛穴から吹き出すかのよう。そして凍りつくような恐怖。
俺が必死にさっきの道に行こうとしたときやった。
「おい。お友達を置いていくのか? お前が出てこなければお友達は死ぬことになるぞ?」
その一言で俺は止まった。そして手の震えが止まれへんかった。
「アズサ達に何かしたんか!?」
「していないから早く出てこい。あと、お前達が偽名を使っていることは知っているから心配しなくていいぞ日本人」
そう言われたのであの狭い通路から出ると、アズサ達が手枷と足枷をされて捕まってた。そしてガムテープで口を閉じられている。
「最近、視られていると思っていたら、貴様等部外者がいたわけだ。お前割と強いだろ? 少しウォーミングアップに付き合ってくれないか? 骨が無い奴ばかり体が鈍っちまうんだ」
マカロフ卿はそう言って腕をグルグルと回していた。
それより、気になるんは目的や。捕まえたんやったら俺達をさっさと皇帝にところに突き出せばいい。やのに何でそれをしやんねん。しかも戦いたいとか抜かしやがる。
「さっき辿った。部屋と通路が繋がっているんだろ? あそこは防音だし頑丈に出来ているから、少々派手に暴れても誰も気付かない。部屋まで戻るぞ。ああ、そうだ。お前たちは残しておくが、ここに戻ってきたとき、お前達がいなければこの坊主の首を刎ねるから下手な真似はするなよ」
マカロフ卿はそう言って、アズサ達に脅しをかけた。
アズサ達は首を縦に振るなり、俺を見て心配を訴えかけてきた。
大丈夫。大丈夫。大丈夫や。
「ほら早く先に行け」
マカロフ卿にそう言われて俺は部屋までに戻った。
こうなってしまった以上全力を出すしかない。踏ん張るんや。
さっきは怖い思たけど学生の時を思い出すんや。脳死で突っ込んでいた時の事を。
そう決意しても手の震えは止まれへんかった。
じゃあ何が怖いねん。
負けるんが怖い? 違う。
ボコボコにされるんが怖い? 違う。
戦うんが怖い? 違う。
死ぬんが怖い? 違う。
そう――。マカロフ卿という強大な存在によって仲間を失うことや。
だって学生の時に友達を殺したんは結局俺なんやから……。
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