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謎のサインⅡ
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昨晩、結局考え事をしていたらあまり眠れなかった。って言っても25時には寝ていたから一般の人からすれば普通だ。しかし、夢とかも見ていたから最悪だ。
今更になってあの女の子が俺に語りかけてきた。記憶の片隅に追いやっていたはずなのに何で――。
とは言っても朝にミクちゃんの寝顔を見れば、それだけで晴れやかな気持ちになれる。過去は過去。今は今。決して過去は忘れてはいけないけど、ズルズル引きずるのもナンセンスだ。どうやっても過去を塗り替えることはできないからな。
そう考え事をしながら会議室に来た。部屋は開放されたままなので、扉を開ける必要もない。
ミクちゃん、ランベリオン、ミーシャ、ベリト、アリシア、ベルゾーグ、アリス、フィオナといった代表するメンバー達は皆着席していた。ノアは残念ながらまだまだ子供みたいなところがあるから今回の議題からは外した。
俺の顔を見るなり、「おはよう」や「おはようございます」と言った挨拶をしてくれた。
最後なのは俺一人。扉を閉めた後、一番奥の席に座った。
「さあ始めるぞ。今日はドローンに隠されたサインについてだ。まずはコレをランベリオン、ミーシャ、アリシア、ベルゾーグ、アリスに見てほしいから回してくれ」
そう言って俺がランベリオンに回したのは昨日のドローンだ。
「その裏側には絵が描かれているから、どういう意味なのかを
考察してほしいんだ」
返事をもらった皆の意見は同じ意見だった。
「何かが泣いているから、助けてほしいって意味に捉えることができるな」
「これはアードルハイムにおける悪魔を指していますね」
と、アリシアはナイスな回答を見せてくれた。やっぱり博識だな。
「正直アードルハイムの事はあまり知らんからな。我の過去の友人であった転生者達も頑なに行きたがらなかった。重要なのは、この助けは誰が求めているんだってことだ。フィオナよ。現在の王国兵の魔族はガープだけか?」
「そうです。それどころか、王国兵で人族以外の種族はガープただ一人のはずです。あとは全員捕らわれていますし」
「ナリユキ殿。そのサインはガープからの可能性はないか?」
「俺も散々考えたんだけど。そんな気がするんだ」
そう話をしていると、フィオナが立ち上がってテーブルをバンと叩いた――。
「そんな事はありません! 奴の命令で私の友人だった仲間達は酷い目にあったんです!」
「お前の気持ちは分かるが座れ。ナリユキ様の前で失礼だぞ」
「も――申し訳ございません――」
フィオナはそう力無く言って着席した。
「どういう事説明してくれるか?」
「はい――。ガープは帝国軍第1騎士団の騎士団長です。私達闇森妖精達は皆第1騎士団に捕らわれていました。ガープから直接酷いことをされたわけではありませんが、その兵士達によって私達は――。そして、身体を犯すのは好き勝手にやりますが、殺すのは騎士団長の許可が下りないとできない仕組みになっています。そんな人が何故助けを求めるんですか……?」
フィオナは泣きながらそう訴えて来た。何とも言えない。こういうときはどう声をかけてあげればいいのだろう。俺から発せられる今の言葉は全て気休みだし、フィオナからすれば嘘にしかならない。
「フィオナ。一度部屋で休もう」
ベリトはそう言って、フィオナに優しく声をかけるなり、俺に申し訳なさそう目で見てきた。俺が黙って頷くとベリトはフィオナを連れて部屋を出た。
「フィオナさんまだ辛そうですね」
アリスがそう言うと、アリシアは「無理も無いでしょう」と返答した。
「仮にランベリオンが言っている、ガープが助けを求めているのであれば何を助けてほしいんだ? 拙者には全然分からん」
「そこまでは我にも分からん。いずれにせよ情報が少なすぎる。ナリユキ殿が依頼した者達に任せるしかないだろう」
「1つ提案があるんだけどいいか?」
「提案?」
ランベリオンがそう返してきたので、アリシアの方を見ながら言った。
「アリシアに、アードルハイム帝国の近くまで連れ行ってもらい、念話でレン達の状況確認をするんだ」
「確かに、アードルハイムに行く前に孤島がありましたね。しかし 、森妖精の私ですら、その距離の念話は実現できないのですが――」
「なあに俺なら届くさ。移動は全部 転移で行きたいから、ミクちゃんもついて来てほしい。MPが足りなくなってきたら分けてやって欲しいんだ」
「いいですよ。任せて下さい!」
「と、いうわけだそれくらいはいいよな?」
ミーシャ、ベルゾーグ、アリスは「はい」と返事してくれたが――。
「あり? ランベリオン?」
「本当にアードルハイムには侵入しないんだよな?」
「する予定はない」
「する予定はないというと、場合によったらするのではないか?」
「――。まあ大丈夫だと思う」
「いいかナリユキ殿約束しろ。何があっても絶対に戻ってこい。うぬはこの国の主なんだ。アリス殿を付ける。これが我からの条件だ」
「なんでアリス?」
「嘘をつけばアリスが見破れるからな。因みに今はどうだ?」
そうするとアリスはにこっと微笑んだ。
「大丈夫ですよ。ナリユキ様が行くって言った時点で確認しておりましたので」
どんだけ俺信用ないの? もしかしてあれか? 厄介ごとに首を突っ込む人間ナンバーワン認定されているのか?
「ならばよし。ナリユキ殿、ミク殿、アリシア、アリス。くれぐれも気をつけてくれ」
各々ランベリオンに台詞に返事した後、アリシアの近くに立った。
「ランベリオン。しばらく留守番頼むな」
「任せろ親友よ」
ランベリオンがそうニッと微笑むと、俺もニッと笑って返し、俺達はこの場を後にした。
今更になってあの女の子が俺に語りかけてきた。記憶の片隅に追いやっていたはずなのに何で――。
とは言っても朝にミクちゃんの寝顔を見れば、それだけで晴れやかな気持ちになれる。過去は過去。今は今。決して過去は忘れてはいけないけど、ズルズル引きずるのもナンセンスだ。どうやっても過去を塗り替えることはできないからな。
そう考え事をしながら会議室に来た。部屋は開放されたままなので、扉を開ける必要もない。
ミクちゃん、ランベリオン、ミーシャ、ベリト、アリシア、ベルゾーグ、アリス、フィオナといった代表するメンバー達は皆着席していた。ノアは残念ながらまだまだ子供みたいなところがあるから今回の議題からは外した。
俺の顔を見るなり、「おはよう」や「おはようございます」と言った挨拶をしてくれた。
最後なのは俺一人。扉を閉めた後、一番奥の席に座った。
「さあ始めるぞ。今日はドローンに隠されたサインについてだ。まずはコレをランベリオン、ミーシャ、アリシア、ベルゾーグ、アリスに見てほしいから回してくれ」
そう言って俺がランベリオンに回したのは昨日のドローンだ。
「その裏側には絵が描かれているから、どういう意味なのかを
考察してほしいんだ」
返事をもらった皆の意見は同じ意見だった。
「何かが泣いているから、助けてほしいって意味に捉えることができるな」
「これはアードルハイムにおける悪魔を指していますね」
と、アリシアはナイスな回答を見せてくれた。やっぱり博識だな。
「正直アードルハイムの事はあまり知らんからな。我の過去の友人であった転生者達も頑なに行きたがらなかった。重要なのは、この助けは誰が求めているんだってことだ。フィオナよ。現在の王国兵の魔族はガープだけか?」
「そうです。それどころか、王国兵で人族以外の種族はガープただ一人のはずです。あとは全員捕らわれていますし」
「ナリユキ殿。そのサインはガープからの可能性はないか?」
「俺も散々考えたんだけど。そんな気がするんだ」
そう話をしていると、フィオナが立ち上がってテーブルをバンと叩いた――。
「そんな事はありません! 奴の命令で私の友人だった仲間達は酷い目にあったんです!」
「お前の気持ちは分かるが座れ。ナリユキ様の前で失礼だぞ」
「も――申し訳ございません――」
フィオナはそう力無く言って着席した。
「どういう事説明してくれるか?」
「はい――。ガープは帝国軍第1騎士団の騎士団長です。私達闇森妖精達は皆第1騎士団に捕らわれていました。ガープから直接酷いことをされたわけではありませんが、その兵士達によって私達は――。そして、身体を犯すのは好き勝手にやりますが、殺すのは騎士団長の許可が下りないとできない仕組みになっています。そんな人が何故助けを求めるんですか……?」
フィオナは泣きながらそう訴えて来た。何とも言えない。こういうときはどう声をかけてあげればいいのだろう。俺から発せられる今の言葉は全て気休みだし、フィオナからすれば嘘にしかならない。
「フィオナ。一度部屋で休もう」
ベリトはそう言って、フィオナに優しく声をかけるなり、俺に申し訳なさそう目で見てきた。俺が黙って頷くとベリトはフィオナを連れて部屋を出た。
「フィオナさんまだ辛そうですね」
アリスがそう言うと、アリシアは「無理も無いでしょう」と返答した。
「仮にランベリオンが言っている、ガープが助けを求めているのであれば何を助けてほしいんだ? 拙者には全然分からん」
「そこまでは我にも分からん。いずれにせよ情報が少なすぎる。ナリユキ殿が依頼した者達に任せるしかないだろう」
「1つ提案があるんだけどいいか?」
「提案?」
ランベリオンがそう返してきたので、アリシアの方を見ながら言った。
「アリシアに、アードルハイム帝国の近くまで連れ行ってもらい、念話でレン達の状況確認をするんだ」
「確かに、アードルハイムに行く前に孤島がありましたね。しかし 、森妖精の私ですら、その距離の念話は実現できないのですが――」
「なあに俺なら届くさ。移動は全部 転移で行きたいから、ミクちゃんもついて来てほしい。MPが足りなくなってきたら分けてやって欲しいんだ」
「いいですよ。任せて下さい!」
「と、いうわけだそれくらいはいいよな?」
ミーシャ、ベルゾーグ、アリスは「はい」と返事してくれたが――。
「あり? ランベリオン?」
「本当にアードルハイムには侵入しないんだよな?」
「する予定はない」
「する予定はないというと、場合によったらするのではないか?」
「――。まあ大丈夫だと思う」
「いいかナリユキ殿約束しろ。何があっても絶対に戻ってこい。うぬはこの国の主なんだ。アリス殿を付ける。これが我からの条件だ」
「なんでアリス?」
「嘘をつけばアリスが見破れるからな。因みに今はどうだ?」
そうするとアリスはにこっと微笑んだ。
「大丈夫ですよ。ナリユキ様が行くって言った時点で確認しておりましたので」
どんだけ俺信用ないの? もしかしてあれか? 厄介ごとに首を突っ込む人間ナンバーワン認定されているのか?
「ならばよし。ナリユキ殿、ミク殿、アリシア、アリス。くれぐれも気をつけてくれ」
各々ランベリオンに台詞に返事した後、アリシアの近くに立った。
「ランベリオン。しばらく留守番頼むな」
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