【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

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クレイジーな依頼

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「なあレン。次のクエストはどうするん? アンタがだらしないから金欠なんやで?」

 俺は、パーティーメンバーで同じ関西人のアズサの一言に困っていた。そして言ってることはごもっともや。最近お金の浪費が激しすぎた。同じパーティメンバーのアンデッド族で、人型化ヒューマノイドになれるノーディルスと、森妖精エルフのお店で、綺麗な姉ちゃんいっぱいつけてもらった。その散財で、俺とノーディルスのお金は見事にすっからかんになってた。

 アズサと森妖精エルフのネオンちゃんには口が裂けても正直に言う事ができへんから、お酒飲み過ぎて、飲んでいたら巾着袋落としてもたっていう嘘をついてる。

 せやから、アズサからはオカンみたいにガミガミ怒られた。しょうみ怠すぎる。

「せやな~」

 カーネル王国のギルド本部は、人がいっぱいいてるから、リスクが低くて報酬が高いクエストはすぐに他の冒険者に取られてしまう。せやからお金が欲しかったら、クエストが直ぐに終了したとしても、ギルドボードをチェックするのが鉄則や。

 どれどれ? 俺達4人パーティーでこなせるクエストはと――。

 そう探していると、ネオンちゃんが「あっ! これどうですか!?」って言ってきたので、アズサとノーディルスでその依頼内容を覗いてみた。

 えらい可愛い顔で、明るく言うてくれるからチョロい内容なんかと思ったら――。

「レン。流石にアードルハイム帝国はまずくないか?」

 ノーディルスの意見はごもっともや。いくら、俺達が全員S級のパーティーやからってこれは悩む。でも内容としてはものすごく魅力的なもんやった。頭金で金貨1枚最低でも貰えるんや。この世界なら十分魅力的な報酬や。

「でも、依頼主が謎なんですよ。マーズベルって、あのランベリオン様がいるマーズベルですよね?」

「そうやな。つかそれしかないやろ――。ホンマやな。いつからマーズベルは国になってん」

「レン、しかも名前見てみ? うちらと同じ転生者がマーズベルを治めているやろ」

「ナリユキ・タテワキって、名前はバリバリ日本人やもんな」

「となると、レン達みたいに死んだときに、死因でパッシブスキルが付いて、成し遂げたかったことや、後悔や、叶えたかった願いがパッシブスキルとユニークスキルになっているのか?」

「そらそうやろ。俺もアズサもそんな感じのスキルやから共通しているはずやで。それに身体能力もそのままの筈やしな」

「そう考えると意外と転生者多いんですね」

「仕組みは全く分からへんけどな。とりあえずコレ受けてみる?」

 俺はあんまり気乗りしやんけど、アードルハイム帝国の調査ってだけで、人気は全然あれへんし俺達が独占状態やった。いつもやったら、調子乗ってる冒険者が、「これは俺のモノだ」って喧嘩売ってくる奴がおるから、ご丁寧に喧嘩買ってあげてボコボコにしてるけど、そんな茶番は今日は無さそうや。

「はーい!」

 女性陣が挙手しているけど、俺とノーディルスは手を挙げへんかった。俺達は別にいいんやけど、何かあったときにアズサとネオンちゃんが危険な目に遭うのは辛いからや。

「なんで手挙げへんの?」

「しょうみな話、俺とノーディルスも個人的になら手を挙げてる。けど、アズサもネオンちゃんも女性や。もし何かあったとき、アードルハイム帝国は、女性を一生性奴隷として扱うヤバい国なんやで? リスク高すぎると思えへんか? たかが調査やけどされど調査や。それを覚悟したうえで手を挙げてるんか?」

「そうやで。うちにはどうしても行かないといけない理由があるねん。状況によったら、マーズベルの国主さんにも手助けしてもらえるかもしれへん。今のうちには必要やねん」

 かれこれ1年程アズサと冒険者パーティーを組んでいるけど、これほど真剣な目を見たこと無い。なにより瞳の奥には闇と悲しみが宿っているように思えて仕方なかった。

「しゃあない。このクエスト受けよか。ここに書いている通り、状況を見つつ1ヶ月ぴったりで止めることもあるからな。覚悟して行かなあかんで?」

「分かってる」

「はい! やります!」

「仕方ない。いつも平和ボケしているからいい刺激になるかもしれないしな」

 アズサ、ノーディルス、ネオンちゃんはそう言って返事をしてくれた。どうやら皆の覚悟は決まってるようやから、受付嬢にこのクエストの紙を渡した。

 依頼内容を確認するなり、驚くことにまずはギルドマスターと会えってことやった。何でそんな大事なん? S級難易度でもギルドマスターに呼ばれる事なんか絶対無いからな。

 そう、考え事をしているとギルドマスターの部屋に案内され、受付嬢がその扉を開いた。何気に初めて入るから少しワクワクしてる。

 扉を開けたら、黒と金色が基調の高そうな椅子に座っている、鎧に身を包んだ肌が黒い、銀髪オールバックの初老のおっちゃんが座ってた。そんで、手前には来客用の6人がけのテーブルがある。割とシンプルな部屋やった。

 あと特徴的なんは、デスクの上に山積みになってる書類と、ギルマスの近くにある本棚が置いてるくらいやな。

 まあ、ちょっと強面って感じの人やな。現場の所長さんでよくこんな感じの厳つい人おるわ。俺がおった鳶の世界なんて、表向きでは普通やけど、裏の顔は反社やったりするしな。

「君達が依頼を受けてくれたのかな?」

「そうや」

「とりあえずそこにかけてくれ」

 ギルマスに促されて俺達4人は椅子に座った。

「まずはこのクエストを受けると言ってくれてありがとう。実力も申し分はなさそうだ。最初に説明しておくと、私がこうやって君達に会うのは、このクエストを受けて帰ってこれるレベルかどうかを見極めたかった。4人共究極の阻害者アルティメット・ジャマーを持っているので、実力は十分あるとみた」

「せやろ? 俺達最強の冒険者パーティーやからな」

 その瞬間、太ももをつねられた。

「っ――何すんねんアホアズサ!」

「うるさいな! アンタが調子乗るからやろ! ホンマにすみません。うちのレンがデカい態度取ってしまって」

「でもまあ、レンさんがこの中で一番強いですからね」

「そらレンはこっちの世界の前じゃ、バイクという乗り物に乗って、はしゃぎまくる頭の悪い軍団の総長だったらしいから」

「うるさいな。昔の話掘り返さんでええやろ! しかも俺悪いことしてないっちゅうに。つか、褒めてるんか、けなしとるんかどっちかはっきりしろや」

「これやから関西人はうるさい言われねん。ほら、見てみ? ギルドマスターさんの困った目」

 そうアズサに言われてギルマスの顔を見ると、コホンと気まずそうに咳払いされた。

「いや、何かえらいすんまへん」

「どっちかと言うと変わった口調だったたから、つい呆けてしまった。こちらこそすまない」

「因みに君達には私のスキルは視えているかな?」

「視えてないですよ。そもそも、究極の阻害者アルティメット・ジャマー持ってるんやったら、鑑定士Ⅴでも視られへんやろ?」

「いや、視ることはできる。このクエストのマーズベル共和国のナリユキ殿と、その傍にお仕えしているミク殿は、鑑定士Ⅵというスキルを持っているからな。てっきり転生者なら持っているかもと思ったのだ」

 その話を聞いて、アズサ、ノーディルス、ネオンちゃんは驚いてた。当然俺もや。そんなんあるん知らんかった。一体何者やねん。そのナリユキって奴と、ミクって女の子は――。

「まあ当然気になるだろう。だから一度見てみるといい。ナリユキ殿が君達の実力が申し分なく、クエストしても良いと判断が下されると、1人につき金貨1枚と、支給品が渡される。いいな?」

「OKや。任せとき!」

「よしじゃあワイバーンを4人分手配するが、問題無く乗れるか?」

「いえ大丈夫ですよ。しばらく歩けば私が転移テレポートでマーズベル森林に入りますので」

「分かった。期待しているぞ」

 ネオンちゃんの転移テレポートっていうキーワード聞いてか、ギルマスはさらに安心したような顔を浮かべとった。まあ森妖精エルフやからって皆が転移テレポートできる訳ちゃうからな。

 そうして、俺達はギルドを出た後しばらく歩いてからネオンちゃんの転移テレポートでマーズベル共和国に訪れた。
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