53 / 597
建国Ⅴ
しおりを挟む
戻って来ると源泉は掘り起こされていた。
「お待ちしておりました!」
そう言って従者達は私達を迎えてくれた。私も含めて誰もが「凄い」と声を漏らしていたが、ベルゾーグさんは何をする気なのだ? と不思議がっていた。
「温泉を作るんだ。あ、お湯に浸かる文化は魔物には無いか」
「そうですね。森妖精の私達も水浴びくらいしかしないですからね」
「生産性をあげるためには必須のルーティンだ。浴槽に浸かることでリフレッシュ効果ができ、睡眠の質をあげることができる。つまり生き物にとっては必須の文化なのさ」
「成程。しかし我等は魔物である。故に眠りは浅いという概念で育っている。どれだけ足掻いてもいつ殺されるか分からない世界線で育っているから、睡眠が浅いのは生物の本能なのだ」
「まあその前提から覆してやるよ。平和な国にしようぜ?」
「まあ平和にはこしたことないがご飯はどうするのだ?」
「自給自足するつもりさ。品種改良なりを重ねて安価で美味しい食材を生産する。そのためには――」
「モトリーナの村の人何人か呼ぶんですね!」
「お、ミクちゃん分かっているじゃん。じゃあ早速屋敷建てるわ」
そう言われて私は思わずガッツポーズを決めてしまった。ふと横を見てみると、ベルゾーグさんとアリシアさんがチンプンカンプンになっていた。いきなり謎の話をされても分からないよね。そうだよね。
「温泉というのは聞いたことがあります」
ベリトさんがそう呟き始めた。え? 知っているの?
「この世界には転生者がたまにやってきますので、当然ミク様と同じ日本人の方もいらっしゃいます。ですので、他国では温泉という文化があると伺ったことがあります。ですので、その情報によると、シャンプー、リンス、ボディーソープが必要になってきますね」
「ベリトさんすご――その通りですよ!」
「しかし、ナリユキ様のスキルでは油は出せませんよね?」
「そうなんです。だから入手する必要があるのです」
「油が欲しいのですか? どんな油が必要なのですか?」
「ココナッツオイルとかあればありがたいですね」
「ありますよ」
あるんかい。流石森の管理者。何でも聞いたら資源を教えてくれそうだ。
「必要なものがあれば調達しますよ。代わりに温泉に入らせていただければ」
「じゃあ今度一緒に入りましょう!」
「勿論ですとも」
気付いたら私はアリシアさんとハグしていた。そんなときにベルゾーグさんが「失敬」と声をかけてきた。
「何でしょう?」
「拙者の仲間を回復することはできないか?」
ベルゾーグさんが指した魔物の死体の置き場? に電黒狼達がいた。ちょうど屋敷とは反対側のところにあった。てか、ノア君――。飽きずにまだ遊んでいたんだ。
でも、どっからどう見ても死んでいそうなんだけど。
「流石に死んでいるのは――」
「いや、生きているのは何匹かいる」
「解りました。とりあえず確認してみます」
魔物の山のところに向かうと、ノア君がこっちに気付いた。というか、電黒狼に顔を舐めれれている。
「あ、ミク! おかえり!」
「ただいま! ねえノア君。そこにいる魔物達ってもう息していないよね?」
「ん? 多分生きているよ」
「ありがとう。あ、その魔物達襲ってこないよね?」
「ボクの支配にいるから大丈夫さ。お前たちミクに手を出したら駄目だからね」
ノア君がそう言うと、多種多様の魔物達は首がもげるかと思うくらい頷いていた。いや、もう何なの。懐かれているのか脅しているかどっちなの。
とりあえず私からすれば生きていたのが驚きだ。脈に触れてみて、生きていることが確認できると、電黒狼を回復してみた。因みに触った感触はベタだけどモフモフだ。そして犬歯が凄い。顔だけ見れば可愛いけど、犬とかって威嚇しているときの顔は悪魔みたいな顔するからな~。そうなると狼はやはり獰猛な生き物である。
血まみれだけど、回復をすることによって傷口が塞がり呼吸も整ってきた。
ある程度パチッと目を見開き立ち上がる。尻尾をぶんぶん振って顔を舐められた。くすぐったい。そして、数回舐められた後、電黒狼は何かに気付いた。視線の先を見ると、ベルゾーグさんのほうだった。
ベルゾーグさんの方に向かって走っていくときは、尻尾の振り方が尋常は無い。もはや飼い主をずっと待っていたご主人様命! みたいな振り方だ。
ベルゾーグさんは「無事で何よりだ」と喜びを嚙みしめていたので、本当にごめんなさいと心底反省した。元はと言えば私の案で魔物を襲ったから、回復しただけで、ありがとうの意味を込めて舐められるなんて本来あってはならない。
私は罪滅ぼしのような気持ちで電黒狼合計20頭を回復して復活させた。
「できた!」
20頭目の回復が終えたと同時に聞こえたナリユキさんの声。見てみると物凄く立派な屋敷が完成していて、掘り起こした源泉で露天風呂が出来ていた。
「まさに神の如きお力ですね!」
「こ――これが温泉。拙者も入ってみたい」
「流石ナリユキ様。私の光そのものです」
「我が一番に入るぞ!」
アリシアさん、ベルゾーグさん、ベリトさん、ランベリオンさんというような順番で感想を述べていた。そして、従者達も、達成感に満ち溢れている笑顔を見せていた。
ナリユキさんが言っていたことが少し分かった気がする。一人でも多くの人の人生を豊かに! という目標の元、建国したいと言っていた。そのゴールがこの笑顔と達成感だ。今はまだ100人ちょっとだけど、ナリユキさんはこれをもっともっと増やしたいんだと思う。
「お待ちしておりました!」
そう言って従者達は私達を迎えてくれた。私も含めて誰もが「凄い」と声を漏らしていたが、ベルゾーグさんは何をする気なのだ? と不思議がっていた。
「温泉を作るんだ。あ、お湯に浸かる文化は魔物には無いか」
「そうですね。森妖精の私達も水浴びくらいしかしないですからね」
「生産性をあげるためには必須のルーティンだ。浴槽に浸かることでリフレッシュ効果ができ、睡眠の質をあげることができる。つまり生き物にとっては必須の文化なのさ」
「成程。しかし我等は魔物である。故に眠りは浅いという概念で育っている。どれだけ足掻いてもいつ殺されるか分からない世界線で育っているから、睡眠が浅いのは生物の本能なのだ」
「まあその前提から覆してやるよ。平和な国にしようぜ?」
「まあ平和にはこしたことないがご飯はどうするのだ?」
「自給自足するつもりさ。品種改良なりを重ねて安価で美味しい食材を生産する。そのためには――」
「モトリーナの村の人何人か呼ぶんですね!」
「お、ミクちゃん分かっているじゃん。じゃあ早速屋敷建てるわ」
そう言われて私は思わずガッツポーズを決めてしまった。ふと横を見てみると、ベルゾーグさんとアリシアさんがチンプンカンプンになっていた。いきなり謎の話をされても分からないよね。そうだよね。
「温泉というのは聞いたことがあります」
ベリトさんがそう呟き始めた。え? 知っているの?
「この世界には転生者がたまにやってきますので、当然ミク様と同じ日本人の方もいらっしゃいます。ですので、他国では温泉という文化があると伺ったことがあります。ですので、その情報によると、シャンプー、リンス、ボディーソープが必要になってきますね」
「ベリトさんすご――その通りですよ!」
「しかし、ナリユキ様のスキルでは油は出せませんよね?」
「そうなんです。だから入手する必要があるのです」
「油が欲しいのですか? どんな油が必要なのですか?」
「ココナッツオイルとかあればありがたいですね」
「ありますよ」
あるんかい。流石森の管理者。何でも聞いたら資源を教えてくれそうだ。
「必要なものがあれば調達しますよ。代わりに温泉に入らせていただければ」
「じゃあ今度一緒に入りましょう!」
「勿論ですとも」
気付いたら私はアリシアさんとハグしていた。そんなときにベルゾーグさんが「失敬」と声をかけてきた。
「何でしょう?」
「拙者の仲間を回復することはできないか?」
ベルゾーグさんが指した魔物の死体の置き場? に電黒狼達がいた。ちょうど屋敷とは反対側のところにあった。てか、ノア君――。飽きずにまだ遊んでいたんだ。
でも、どっからどう見ても死んでいそうなんだけど。
「流石に死んでいるのは――」
「いや、生きているのは何匹かいる」
「解りました。とりあえず確認してみます」
魔物の山のところに向かうと、ノア君がこっちに気付いた。というか、電黒狼に顔を舐めれれている。
「あ、ミク! おかえり!」
「ただいま! ねえノア君。そこにいる魔物達ってもう息していないよね?」
「ん? 多分生きているよ」
「ありがとう。あ、その魔物達襲ってこないよね?」
「ボクの支配にいるから大丈夫さ。お前たちミクに手を出したら駄目だからね」
ノア君がそう言うと、多種多様の魔物達は首がもげるかと思うくらい頷いていた。いや、もう何なの。懐かれているのか脅しているかどっちなの。
とりあえず私からすれば生きていたのが驚きだ。脈に触れてみて、生きていることが確認できると、電黒狼を回復してみた。因みに触った感触はベタだけどモフモフだ。そして犬歯が凄い。顔だけ見れば可愛いけど、犬とかって威嚇しているときの顔は悪魔みたいな顔するからな~。そうなると狼はやはり獰猛な生き物である。
血まみれだけど、回復をすることによって傷口が塞がり呼吸も整ってきた。
ある程度パチッと目を見開き立ち上がる。尻尾をぶんぶん振って顔を舐められた。くすぐったい。そして、数回舐められた後、電黒狼は何かに気付いた。視線の先を見ると、ベルゾーグさんのほうだった。
ベルゾーグさんの方に向かって走っていくときは、尻尾の振り方が尋常は無い。もはや飼い主をずっと待っていたご主人様命! みたいな振り方だ。
ベルゾーグさんは「無事で何よりだ」と喜びを嚙みしめていたので、本当にごめんなさいと心底反省した。元はと言えば私の案で魔物を襲ったから、回復しただけで、ありがとうの意味を込めて舐められるなんて本来あってはならない。
私は罪滅ぼしのような気持ちで電黒狼合計20頭を回復して復活させた。
「できた!」
20頭目の回復が終えたと同時に聞こえたナリユキさんの声。見てみると物凄く立派な屋敷が完成していて、掘り起こした源泉で露天風呂が出来ていた。
「まさに神の如きお力ですね!」
「こ――これが温泉。拙者も入ってみたい」
「流石ナリユキ様。私の光そのものです」
「我が一番に入るぞ!」
アリシアさん、ベルゾーグさん、ベリトさん、ランベリオンさんというような順番で感想を述べていた。そして、従者達も、達成感に満ち溢れている笑顔を見せていた。
ナリユキさんが言っていたことが少し分かった気がする。一人でも多くの人の人生を豊かに! という目標の元、建国したいと言っていた。そのゴールがこの笑顔と達成感だ。今はまだ100人ちょっとだけど、ナリユキさんはこれをもっともっと増やしたいんだと思う。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる