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ルイゼンバーンVSベリトⅡ
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「悪の破壊光」
両手で顔を覆い全身を硬質化させた。
あまりにも強力な邪悪で禍々しい闇のエネルギー光――。硬質化で全身を強化しているのに全身が焼き焦がれるようだ。
熱い――。
そして溶けそうだ。
「おやおや耐えましたか。凄いですね」
両手をゆっくりと下ろして、何とも無い表情を見て奴はそう言ったのだろう。冗談じゃない。私の体は所々ではあるが皮膚がただれている。
「いきなりそんなアクティブスキルをお見舞いしてくるとはな」
「結構強いので気に入っているのですが、死なないのであれば意味がありません」
「洞窟が崩落しているのに不十分なのか?」
いや。崩落しているからこそ不十分なのか。洞窟全体が震えている。ここに長くはいられないだろう。
「何だ!」
「今のスキルでこの洞窟に大きなダメージを与えたのかも」
「悪の破壊光は闇属性のアクティブスキルでも相当強力な部類だ。こうなることは想定できる」
「いや、しかし――」
異常事態と言わざるを得ない。私達が来た方向に悪の破壊光は飛んでいった。このスキルは人をすり抜けて、相当大きな障害物に当たらない限りはどこまでも飛んでいく。
私はただの通過点に過ぎんのだ。しかし、高密度のエネルギーが光に凝縮されているので、A級以下の者が喰らえばもれなく死に至る。
それほど、強力なスキルなので本来こんなに大勢がいる洞窟で放つようなスキルではないのだ。
「ど、どうなるのだ。洞窟が揺れているぞ――」
レイドラムはいつになく余裕がない。私からしてみればその狼狽え方は実に滑稽だ。
「やはり威力は申し分ないようですね。と考えるとルイゼンバーン殿の硬質化のスキルがよほど優秀ということですね」
「正直、効いているがな。瞬時にできる防御はこれくらいしかできないからな」
「と、いうことは他に防衛スキルがあるのですね?」
「何のことやら」
「ギルドマスター! ここから早く出たほうがいいです!」
「お前たちは先に行け。あと、このレイドラムをきっちり見張っておくのだ」
「もうレイドラムいないですよ」
そう言われて先程レイドラムが座り込んでいたところに視線を移すと確かにいなかった。私達が来た方向とは反対方向に走って逃げていく。
「――追って来い」
「はい」
部下にそう告げると、レイドラムを追ってくれた。ハワードもその後を追いかけている。そこからか。ゾロゾロとこの洞窟から、女性達も兵士達も逃げていく。
もはや戦闘を行っている者は誰一人としていない。
そのなかで動かないのは私達だけだった。まるで過ぎゆく時間に取り残されているようだ。
「私も生き埋めは嫌ですからね。私もここから退散しましょう」
ベリトは天に手を掲げて不気味に口角を吊り上げた。
掌には邪悪な光が輝いている。
「悪の爆風撃!」
邪悪なエネルギーがピカリと光り、紫色の禍々しい爆風が洞窟の天井を軽々と突き破った。
その後、ベリトは背中から黒翼を生やし悠々と飛び立った。
「逃がさないぞ! 燦爛の光線!」
私の手から極大の美しく輝く光線を放つ。しかし、ベリトは拳を握りしめ、手を大きく振ってあろうことか弾き飛ばした。
燦爛の光線は、私から見て右の洞窟内の壁に直撃し、この洞窟に更なるダメージを負わせた。
洞窟内はまるで巨大な地震でも起こったかのように揺れた。洞窟の奥からは悲鳴が聞こえる。
「楽しかったですよ。また会いましょう」
ベリトはそう言い残して、私の視界から消え去った。奴は一体どこに行ったのだろう。良からぬことを企んでいるのか?
と、考えていると、洞窟内の岩やらが天井から落ちてくる。私は身体向上を使い、全ての筋力を底上げした。
空いている天井は、地面から目測するとおよそ20mほどだ。これなら問題無い。
力を足元に溜めて一気にジャンプした。タイミングなども諸々ばっちりだ。
気が付けば穴を抜けて、私の眼前には夕焼けが輝く地平線が広がった。そして数百メートル先に黒翼を大きく羽ばたかせている奴が見える。私が持つアクティブスキルには、この距離から届くスキルは無い。追うのは無駄そうだ。
下を見るとハワード達と女性達が手を振っていた。無事に洞窟を抜けることができたようだ。レイドラムは――。どうやら捕まったらしい。
今回の犠牲者はレイドラムの兵士だけとなった。戦士である以上、死をつきもので、敵の兵士だが、同じ人間だ。尊い犠牲には変わりない。中には家庭を持つ者もいただろう。しっかり成仏できることだけを祈るばかりだ。
滞空時間が長かったのは言うまでもない。私はやっと地に足を付けて、迎えてくれるハワード達にこう声をかけた。
「よくやった」
「はい!」
「そして、脱獄した皆様もご無事でなによりです」
私はそう頭を下げると、女性達は各々感想述べては私に敬意を表してくれたのか、膝をついて感謝の言葉を皆同時に上げてくれた。しかし、達成感というのはまだ無い。
ベリトを追わないといけないのだから――。
両手で顔を覆い全身を硬質化させた。
あまりにも強力な邪悪で禍々しい闇のエネルギー光――。硬質化で全身を強化しているのに全身が焼き焦がれるようだ。
熱い――。
そして溶けそうだ。
「おやおや耐えましたか。凄いですね」
両手をゆっくりと下ろして、何とも無い表情を見て奴はそう言ったのだろう。冗談じゃない。私の体は所々ではあるが皮膚がただれている。
「いきなりそんなアクティブスキルをお見舞いしてくるとはな」
「結構強いので気に入っているのですが、死なないのであれば意味がありません」
「洞窟が崩落しているのに不十分なのか?」
いや。崩落しているからこそ不十分なのか。洞窟全体が震えている。ここに長くはいられないだろう。
「何だ!」
「今のスキルでこの洞窟に大きなダメージを与えたのかも」
「悪の破壊光は闇属性のアクティブスキルでも相当強力な部類だ。こうなることは想定できる」
「いや、しかし――」
異常事態と言わざるを得ない。私達が来た方向に悪の破壊光は飛んでいった。このスキルは人をすり抜けて、相当大きな障害物に当たらない限りはどこまでも飛んでいく。
私はただの通過点に過ぎんのだ。しかし、高密度のエネルギーが光に凝縮されているので、A級以下の者が喰らえばもれなく死に至る。
それほど、強力なスキルなので本来こんなに大勢がいる洞窟で放つようなスキルではないのだ。
「ど、どうなるのだ。洞窟が揺れているぞ――」
レイドラムはいつになく余裕がない。私からしてみればその狼狽え方は実に滑稽だ。
「やはり威力は申し分ないようですね。と考えるとルイゼンバーン殿の硬質化のスキルがよほど優秀ということですね」
「正直、効いているがな。瞬時にできる防御はこれくらいしかできないからな」
「と、いうことは他に防衛スキルがあるのですね?」
「何のことやら」
「ギルドマスター! ここから早く出たほうがいいです!」
「お前たちは先に行け。あと、このレイドラムをきっちり見張っておくのだ」
「もうレイドラムいないですよ」
そう言われて先程レイドラムが座り込んでいたところに視線を移すと確かにいなかった。私達が来た方向とは反対方向に走って逃げていく。
「――追って来い」
「はい」
部下にそう告げると、レイドラムを追ってくれた。ハワードもその後を追いかけている。そこからか。ゾロゾロとこの洞窟から、女性達も兵士達も逃げていく。
もはや戦闘を行っている者は誰一人としていない。
そのなかで動かないのは私達だけだった。まるで過ぎゆく時間に取り残されているようだ。
「私も生き埋めは嫌ですからね。私もここから退散しましょう」
ベリトは天に手を掲げて不気味に口角を吊り上げた。
掌には邪悪な光が輝いている。
「悪の爆風撃!」
邪悪なエネルギーがピカリと光り、紫色の禍々しい爆風が洞窟の天井を軽々と突き破った。
その後、ベリトは背中から黒翼を生やし悠々と飛び立った。
「逃がさないぞ! 燦爛の光線!」
私の手から極大の美しく輝く光線を放つ。しかし、ベリトは拳を握りしめ、手を大きく振ってあろうことか弾き飛ばした。
燦爛の光線は、私から見て右の洞窟内の壁に直撃し、この洞窟に更なるダメージを負わせた。
洞窟内はまるで巨大な地震でも起こったかのように揺れた。洞窟の奥からは悲鳴が聞こえる。
「楽しかったですよ。また会いましょう」
ベリトはそう言い残して、私の視界から消え去った。奴は一体どこに行ったのだろう。良からぬことを企んでいるのか?
と、考えていると、洞窟内の岩やらが天井から落ちてくる。私は身体向上を使い、全ての筋力を底上げした。
空いている天井は、地面から目測するとおよそ20mほどだ。これなら問題無い。
力を足元に溜めて一気にジャンプした。タイミングなども諸々ばっちりだ。
気が付けば穴を抜けて、私の眼前には夕焼けが輝く地平線が広がった。そして数百メートル先に黒翼を大きく羽ばたかせている奴が見える。私が持つアクティブスキルには、この距離から届くスキルは無い。追うのは無駄そうだ。
下を見るとハワード達と女性達が手を振っていた。無事に洞窟を抜けることができたようだ。レイドラムは――。どうやら捕まったらしい。
今回の犠牲者はレイドラムの兵士だけとなった。戦士である以上、死をつきもので、敵の兵士だが、同じ人間だ。尊い犠牲には変わりない。中には家庭を持つ者もいただろう。しっかり成仏できることだけを祈るばかりだ。
滞空時間が長かったのは言うまでもない。私はやっと地に足を付けて、迎えてくれるハワード達にこう声をかけた。
「よくやった」
「はい!」
「そして、脱獄した皆様もご無事でなによりです」
私はそう頭を下げると、女性達は各々感想述べては私に敬意を表してくれたのか、膝をついて感謝の言葉を皆同時に上げてくれた。しかし、達成感というのはまだ無い。
ベリトを追わないといけないのだから――。
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