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レイドラムとベリトの調査Ⅱ
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今日はあれから一週間後の朝だ。やっとの思いで王宮がある敷地内に入る手前の広場に着いた。辺りを見渡すと、ここの王都もカーネル王国と同じで賑やかである。街並みもレンガ造りの家が多い。まあ、久しぶりに来たが、うちの国とさほど変わらんな。しかし、国にいる魔物は少ないようだ。うちの国は魔物と共存している国だが、この国はほとんどいない。まだまだ価値観が古いな。
それにしても、部下達の疲労が溜まっているな。彼等の目の下のクマが明らかに多い。特にハワードが連れ来た一年目の兵は大分ハードだった筈だ。確か、長距離の遠征は初めてと言っていた。まあ、やる気はあるからここにいる訳だが、如何せん体がついてきていないようだ。道中では魔物にも襲われたしな。さて――。
「午前中はハワードと二人でレンファレンス国王に会ってくる。他の者は自由時間だ。仮眠をとるのも良し、観光するのも良し。今の間に時間を有意義に使ってくれ。但し、疲れている者はしっかり仮眠をとるように。恐らく厳しいい任務なるだろうからな。ここまでで何か質問はあるか?」
ハワードが部下四名の顔を伺っている。まあ当然私も伺っているが、特に問題は無さそうだ。
「ありません」
「よし、ならここに13時にもう一度集まっておいてくれ。解散」
「それでは行きましょう」
「ああ。くれぐれも無礼の無いようにな。うちの国王と違い厳格なお方だ」
「勿論です。この私がお目にかかれること自体、本来であれば有り得ない事ですから」
「そうだな。それにしても、大分緊張しているようだな。まあ私が話すので見ていればよい。国王から話を投げられた時で良い」
「かしこまりました」
ハワードを連れて、足を進めると王宮に立つ二人の槍兵が、宮殿の敷地内に繋がる門を封鎖してきた。
「ここから先は王宮の敷地だ。進入はできないぞ」
「レンファレンス王と約束している。問い合わせてくれないか? 私はカーネル王国ギルド本部、ギルドマスター、アドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンだ」
「私はカーネル王国ギルド本部、第一兵団指揮官、カインド・ハワードと申します」
「これは失礼致しました。無礼な言葉遣い、どうかお許しください。お問い合わせ致しますので少々お待ちください」
そう言って門番は目を閉じた。これは珍しい、彼はどうやら念話ができるようだ。
「彼は何をしているでしょうか?」
小声でハワードが話しかけてきた。
「念話をしているのだろう。見たことないか?」
「ええ」
「森妖精族や闇森妖精族が得意とするパッシブスキルだ。恐らく、彼は人間に危害を及ぼす闇森妖精族を何体か倒して、運よくパッシブスキルを手に入れたのだろう」
「そうでしたか」
そう小声で話をしていると兵士は目を開いた口を開いた。どうやら念話は終わったらしい。
「お待たせ致しました。どうぞお通り下さい。入場後は直ぐに使用人が伺いますのでお待ちいただければと思います」
「ああ。有難う」
門が開かれると、そこはまた別世界。正直なところ街並みの中にこのような広大な土地があるなど誰が想定してするのか。100m程先にあるのが中心地にあたる池がある。そして池の回りには四つの芝の広場のようなものがある。その芝の他はレンガの道となっており、何やら紋様になっている。レンファレンス王曰く、空から見るとその芝の部分はペイズリー柄になっているらしい。私からすればお金持ちの趣味というものはよく分からん。
そして、道の住には5.0m程の木が等間隔で植えられている。これも自慢気に言っていたが、この箇所にはおよそ1,000の木が植えられているのだとか。ここにいる使用人には同情する。自分で植えた木じゃないのに、木の手入れを強要させるだから――。まあ給料は多いらしいから、彼等、彼女等にしてみれば、それでいいのかもしれない。
「凄いところですね」
「まるで別世界であろう」
「恐らく、ハワードは最初で最後の訪問になるかもしれん。目に焼き付けておくとよい」
「はい」
お、来たか。あちらもこっちに気付いたようだ。銀縁の眼鏡をかけた私と同い年のここの使用人の長をやっている者だ。黒の紳士服と赤のネクタイを着こなす彼は、歳をとっても凛々しさは衰えない。
「ルイゼンバーン様、ハワード様お待たせ致しました」
「久しいなセバスチャン。あと、様付けは止せ。部下がいるからと言って敬語を扱わなくてよい」
「いえいえ、今はご客人でいらっしゃいますので」
「相変わらずストイックだな」
「勿論ですとも。でなければ王の使用人を務めることはできません」
「ギルドマスター。お知り合いの方ですか?」
「ああ。古い仲なのだ。彼はセバスチャン・ロドリゲス。ここの使用人の長をやっていて、私と同い年なのだ」
「そうでしたか。お二人とも歳をそれほど取っているように見えませんので」
「そうでしたか。ハワード様は世渡り上手ですな。今年でもう68歳です」
「お互い歳を食ったな」
「そうですな。さあ、ご案内致しますので向かいましょう」
「ああ。宜しく頼む」
セバスチャンに案内されながら王宮の入り口に着くと、セバスチャンは王宮の鍵を開けた。何百年も建設されてから経つ筈だが、金色の扉は錆一つなく丁寧な手入れが施されている。それもそうだ。今のレンファレンス王は何かと神経質なのだ。錆を見つけたとしたら、憤慨しているだろう。
まあ、中に入るとやはり天井の高さに驚く。ワイバーン姿のランベリオンが立ってもまだ余裕ができるほど高い。それに天井にある豪華な数多のシャンデリアが豪華絢爛という言葉がまさにピッタリである。まあ、うちの若い部下に見せれば、目がチカチカして眩しいと言いそうなのは内緒である。
「す――凄い。何て綺麗なんだ。まるで黄金の宮殿――」
「そう言って頂けて何よりです」
「私もここに来るのは三回目だが相も変らず凄いな」
「レンファレンス王国自慢の場所ですからね」
「これで国民の税を一円たりとも使わず建設した初代の国王の財力は飛び抜けておるな」
「そうですね。偉大なお方だったと耳にしますから。さあもう少し歩きます。ついて来てください」
それにしても、部下達の疲労が溜まっているな。彼等の目の下のクマが明らかに多い。特にハワードが連れ来た一年目の兵は大分ハードだった筈だ。確か、長距離の遠征は初めてと言っていた。まあ、やる気はあるからここにいる訳だが、如何せん体がついてきていないようだ。道中では魔物にも襲われたしな。さて――。
「午前中はハワードと二人でレンファレンス国王に会ってくる。他の者は自由時間だ。仮眠をとるのも良し、観光するのも良し。今の間に時間を有意義に使ってくれ。但し、疲れている者はしっかり仮眠をとるように。恐らく厳しいい任務なるだろうからな。ここまでで何か質問はあるか?」
ハワードが部下四名の顔を伺っている。まあ当然私も伺っているが、特に問題は無さそうだ。
「ありません」
「よし、ならここに13時にもう一度集まっておいてくれ。解散」
「それでは行きましょう」
「ああ。くれぐれも無礼の無いようにな。うちの国王と違い厳格なお方だ」
「勿論です。この私がお目にかかれること自体、本来であれば有り得ない事ですから」
「そうだな。それにしても、大分緊張しているようだな。まあ私が話すので見ていればよい。国王から話を投げられた時で良い」
「かしこまりました」
ハワードを連れて、足を進めると王宮に立つ二人の槍兵が、宮殿の敷地内に繋がる門を封鎖してきた。
「ここから先は王宮の敷地だ。進入はできないぞ」
「レンファレンス王と約束している。問い合わせてくれないか? 私はカーネル王国ギルド本部、ギルドマスター、アドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンだ」
「私はカーネル王国ギルド本部、第一兵団指揮官、カインド・ハワードと申します」
「これは失礼致しました。無礼な言葉遣い、どうかお許しください。お問い合わせ致しますので少々お待ちください」
そう言って門番は目を閉じた。これは珍しい、彼はどうやら念話ができるようだ。
「彼は何をしているでしょうか?」
小声でハワードが話しかけてきた。
「念話をしているのだろう。見たことないか?」
「ええ」
「森妖精族や闇森妖精族が得意とするパッシブスキルだ。恐らく、彼は人間に危害を及ぼす闇森妖精族を何体か倒して、運よくパッシブスキルを手に入れたのだろう」
「そうでしたか」
そう小声で話をしていると兵士は目を開いた口を開いた。どうやら念話は終わったらしい。
「お待たせ致しました。どうぞお通り下さい。入場後は直ぐに使用人が伺いますのでお待ちいただければと思います」
「ああ。有難う」
門が開かれると、そこはまた別世界。正直なところ街並みの中にこのような広大な土地があるなど誰が想定してするのか。100m程先にあるのが中心地にあたる池がある。そして池の回りには四つの芝の広場のようなものがある。その芝の他はレンガの道となっており、何やら紋様になっている。レンファレンス王曰く、空から見るとその芝の部分はペイズリー柄になっているらしい。私からすればお金持ちの趣味というものはよく分からん。
そして、道の住には5.0m程の木が等間隔で植えられている。これも自慢気に言っていたが、この箇所にはおよそ1,000の木が植えられているのだとか。ここにいる使用人には同情する。自分で植えた木じゃないのに、木の手入れを強要させるだから――。まあ給料は多いらしいから、彼等、彼女等にしてみれば、それでいいのかもしれない。
「凄いところですね」
「まるで別世界であろう」
「恐らく、ハワードは最初で最後の訪問になるかもしれん。目に焼き付けておくとよい」
「はい」
お、来たか。あちらもこっちに気付いたようだ。銀縁の眼鏡をかけた私と同い年のここの使用人の長をやっている者だ。黒の紳士服と赤のネクタイを着こなす彼は、歳をとっても凛々しさは衰えない。
「ルイゼンバーン様、ハワード様お待たせ致しました」
「久しいなセバスチャン。あと、様付けは止せ。部下がいるからと言って敬語を扱わなくてよい」
「いえいえ、今はご客人でいらっしゃいますので」
「相変わらずストイックだな」
「勿論ですとも。でなければ王の使用人を務めることはできません」
「ギルドマスター。お知り合いの方ですか?」
「ああ。古い仲なのだ。彼はセバスチャン・ロドリゲス。ここの使用人の長をやっていて、私と同い年なのだ」
「そうでしたか。お二人とも歳をそれほど取っているように見えませんので」
「そうでしたか。ハワード様は世渡り上手ですな。今年でもう68歳です」
「お互い歳を食ったな」
「そうですな。さあ、ご案内致しますので向かいましょう」
「ああ。宜しく頼む」
セバスチャンに案内されながら王宮の入り口に着くと、セバスチャンは王宮の鍵を開けた。何百年も建設されてから経つ筈だが、金色の扉は錆一つなく丁寧な手入れが施されている。それもそうだ。今のレンファレンス王は何かと神経質なのだ。錆を見つけたとしたら、憤慨しているだろう。
まあ、中に入るとやはり天井の高さに驚く。ワイバーン姿のランベリオンが立ってもまだ余裕ができるほど高い。それに天井にある豪華な数多のシャンデリアが豪華絢爛という言葉がまさにピッタリである。まあ、うちの若い部下に見せれば、目がチカチカして眩しいと言いそうなのは内緒である。
「す――凄い。何て綺麗なんだ。まるで黄金の宮殿――」
「そう言って頂けて何よりです」
「私もここに来るのは三回目だが相も変らず凄いな」
「レンファレンス王国自慢の場所ですからね」
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