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第40話 いなくなってからの出来事2
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ジェイド学長はエドウィンの話を聞き、「そんなバカな申し込みを受けるはずがない」とキッパリ否定する。
「……ジミーが危ねぇ」
エドウィンは、ユーノがジミーに何かしでかすと感じ、訝しむ学長にキャル鑑定士を呼ぶように頼んだ。
エドウィンは何事かと目を丸くしているキャル鑑定士に、
「ユーノに嵌められた。アイツは兄貴に何かしでかす気だ。ジミーが危ねぇ」
と真剣な顔で訴える。
キャル鑑定士は、
「どう危ないのかはともかく……危ないということはわかりました」
と、言ったのでエドウィンが叫んだ。
「わかってねぇだろ!? ――ユーノは、あの勉強大好きなジミーの弟、校則を全部覚えてる変人だ! ハムザと違って、『アイテムハンター候補生』つーのがどんなんか、キチンとわかってる! なのに、ハムザとジミーをもっかい取り替えて再結成する、なんて話を本気でするワケがねーんだよ!」
その言葉で、ジェイド学長とキャル鑑定士は眉根を寄せた。
「最初からおかしかったんだよ! いくら弟が好きだからって、ポイントをソックリ全部くれてやる、なんていくらなんでもやり過ぎだろ! 俺みたく、メンドーだとかそういう考えじゃねえ! 弟に尽くしすぎてるんだよ!」
ここまで叫ぶと、エドウィンは声を落として説得するような口調でさらに言い募る。
「――アイツは弟になんらかの負い目があって、弟もそれを脅しに使ってた。たぶん、アイツの親父が関連してる何かでな。だから、弟の言うことをなんでも聞いてんだよ! でもって、兄貴が自分から逃げたことに対して、弟は腹ン中で怒り狂ってる。どんな手を使ってでも取り戻すか……戻らねぇなら消すかする気だ!」
エドウィンの推測を聞いたジェイド学長は額を片手で押さえ、深いため息をついた。
キャル鑑定士は、合点がいったような顔をして呟いた。
「なるほど……そういうことでしたか。エドウィン君の推測は、恐らく真実をえぐってます。……ユーノ君の実の父親はジミー君の父の親友で、ジミー君の父のバディであるジミー君の母が育児で休職している間に彼女の代理を務めていたのですが、任務中に命を落としました」
エドウィンが驚いた。
キャル鑑定士は真剣な顔をして、さらに続ける。
「その後、バディとしてセイバーズに復帰したお母さんも任務中に亡くなり、ジミー君の父とユーノ君の母が再婚したのです。親友を死なせた償いで、その妻と再婚したことは美談として語られていますが……。ユーノ君としては、ジミー君の父はにっくき仇ですね。ジミー君自身へも思うところがあっても、おかしくはありません」
「ますますヤベェじゃねーかよ! チーム組んで自分の下でこき使って憂さ晴らししてたら、チーム解消になって俺と快進撃続けてます、とか、面白くねーに決まってんだろ!」
エドウィンがまた叫ぶと、ジェイド学長はいつの間にか地図を出し、机に広げた。
「恐らく、ユーノ・モーガン君自身がジミー・モーガン君を襲うことはないだろう。ジミー・モーガン君が強いことはユーノ・モーガン君も理解している。彼は聡いからね。となると、魔物をぶつけるはずだ。……とはいえ、上級魔物の地帯におびき寄せるのはジミー・モーガン君が怪しむだろう。となると、中級の出没地帯」
地図に何ヶ所か丸を付ける。
「人目を避けるはずだ。アカデミー生が近くにいたら、間違いなく不審に思うだろうし、もしもけしかけられても助けが入る。……フィッシャー教官を呼んできてくれ」
キャル鑑定士が飛んでいき、しばらくするとフィッシャー教官が依頼票を持って来た。
既にキャル鑑定士から説明を受けているからか、質疑応答なしに依頼票を見せて答える。
「現在、中級魔物の出没地帯で生徒に依頼に出ているのは、これらです」
学長が確かめると、×をつけていく。
「……ジミーが危ねぇ」
エドウィンは、ユーノがジミーに何かしでかすと感じ、訝しむ学長にキャル鑑定士を呼ぶように頼んだ。
エドウィンは何事かと目を丸くしているキャル鑑定士に、
「ユーノに嵌められた。アイツは兄貴に何かしでかす気だ。ジミーが危ねぇ」
と真剣な顔で訴える。
キャル鑑定士は、
「どう危ないのかはともかく……危ないということはわかりました」
と、言ったのでエドウィンが叫んだ。
「わかってねぇだろ!? ――ユーノは、あの勉強大好きなジミーの弟、校則を全部覚えてる変人だ! ハムザと違って、『アイテムハンター候補生』つーのがどんなんか、キチンとわかってる! なのに、ハムザとジミーをもっかい取り替えて再結成する、なんて話を本気でするワケがねーんだよ!」
その言葉で、ジェイド学長とキャル鑑定士は眉根を寄せた。
「最初からおかしかったんだよ! いくら弟が好きだからって、ポイントをソックリ全部くれてやる、なんていくらなんでもやり過ぎだろ! 俺みたく、メンドーだとかそういう考えじゃねえ! 弟に尽くしすぎてるんだよ!」
ここまで叫ぶと、エドウィンは声を落として説得するような口調でさらに言い募る。
「――アイツは弟になんらかの負い目があって、弟もそれを脅しに使ってた。たぶん、アイツの親父が関連してる何かでな。だから、弟の言うことをなんでも聞いてんだよ! でもって、兄貴が自分から逃げたことに対して、弟は腹ン中で怒り狂ってる。どんな手を使ってでも取り戻すか……戻らねぇなら消すかする気だ!」
エドウィンの推測を聞いたジェイド学長は額を片手で押さえ、深いため息をついた。
キャル鑑定士は、合点がいったような顔をして呟いた。
「なるほど……そういうことでしたか。エドウィン君の推測は、恐らく真実をえぐってます。……ユーノ君の実の父親はジミー君の父の親友で、ジミー君の父のバディであるジミー君の母が育児で休職している間に彼女の代理を務めていたのですが、任務中に命を落としました」
エドウィンが驚いた。
キャル鑑定士は真剣な顔をして、さらに続ける。
「その後、バディとしてセイバーズに復帰したお母さんも任務中に亡くなり、ジミー君の父とユーノ君の母が再婚したのです。親友を死なせた償いで、その妻と再婚したことは美談として語られていますが……。ユーノ君としては、ジミー君の父はにっくき仇ですね。ジミー君自身へも思うところがあっても、おかしくはありません」
「ますますヤベェじゃねーかよ! チーム組んで自分の下でこき使って憂さ晴らししてたら、チーム解消になって俺と快進撃続けてます、とか、面白くねーに決まってんだろ!」
エドウィンがまた叫ぶと、ジェイド学長はいつの間にか地図を出し、机に広げた。
「恐らく、ユーノ・モーガン君自身がジミー・モーガン君を襲うことはないだろう。ジミー・モーガン君が強いことはユーノ・モーガン君も理解している。彼は聡いからね。となると、魔物をぶつけるはずだ。……とはいえ、上級魔物の地帯におびき寄せるのはジミー・モーガン君が怪しむだろう。となると、中級の出没地帯」
地図に何ヶ所か丸を付ける。
「人目を避けるはずだ。アカデミー生が近くにいたら、間違いなく不審に思うだろうし、もしもけしかけられても助けが入る。……フィッシャー教官を呼んできてくれ」
キャル鑑定士が飛んでいき、しばらくするとフィッシャー教官が依頼票を持って来た。
既にキャル鑑定士から説明を受けているからか、質疑応答なしに依頼票を見せて答える。
「現在、中級魔物の出没地帯で生徒に依頼に出ているのは、これらです」
学長が確かめると、×をつけていく。
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