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第39話 いなくなってからの出来事1
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エドウィンを見ると、険しい顔で俺に近寄ってきた。
「……お前、何やってんだ?」
「……いや、勢いで」
エドウィンの軌道を変えるため、足場を見定めてシールド魔法を唱えたので、自分のシールドを張ることが出来なかった。
結界魔法だけでいけるかな、って思ったけど、俺の結界魔法だと上級魔物の物理攻撃は防げないらしい。
ぶつかったときにキマイラが俺を振り払うように引っ掻いてきて、勢いはだいぶなかったものの、腕を怪我してしまった。ざっくり裂けて、血が流れている。
「大丈夫だ。俺は……威力はお前ほどないけど、使える魔法の種類が多い。回復魔法も使えるよ」
そう言うと、回復魔法を詠唱する。
「癒やしの加護よ、魔の物がつけし傷を慈しみで覆い、拭い去り清めよ」
すると、傷にヌルッとした透明な膜が張られたようになり、傷が癒えていった。
「よし、こんなもんだろ」
俺が頷くと、エドウィンが大きなため息をついた。
「ノーダメでいきたかったのに、つか、俺が駆けつけたときは怪我してなかったくせに、最後の最後で怪我をするとかねぇだろうがよ……」
「まだ未熟だからな。次はもう少しうまく動ける」
むしろ、最後の最後でうまく連携が取れた気がする。俺としては及第点だ。
「……にしても。本当に助かった。ありがとうな。よく俺の居場所がわかったな? というか、よく俺が罠にかかったってわかったな?」
エドウィンだって、すっかり騙されていた感じだったのに。
エドウィンが頭を掻く。
「あー……。それな。思い出した、ちょっと待ってろ」
エドウィンが、腕輪に手を当てた。手を離すと今度は腕輪に向かって話し始めた。
「おう、俺の勘が当たったぜ! んでもって、無事救出したぜ! んじゃ、帰っからよ、そっちも引き上げてくれや。なんかあったら連絡する」
そして、俺を見て言う。
「よし、帰るか」
「待て。もう少し説明しろ」
さっぱりわからない。
エドウィンは、俺がユーノと討伐に向かったのでハムザ・ヘンダーソンのところに行ったらしい。
エドウィンも元バディに思うところがあり、特に対抗戦でユーノに任せきりだったのが非常に気になったそうだ。
自分と違う奴と組んだらもっと上手くやれるのに、そう言っていたのだからもっと動くべきだ、ランキング一位におんぶに抱っこになりたいからバディを変えたいと言っていたのではないのだろう? と、そう発破をかけに向かったそうだ。
「ハムザとは腐れ縁……つーか、ガキの頃から一緒の孤児院で育ったからよ。ま、仲良かったかっつーと、あんまよくなかったんだけどな。でも、同い年だからって何かと一緒にされてたし、喧嘩ばっかしてたけど、それなりに長いこと組んでたんだよ」
孤児院時代からずっと、他の奴と組めれば自分はもっと上に行けるのに、と言い続けていたという。
不満しかない腐れ縁のバディと縁が切れ、念願叶って最高とも言える条件のバディとチームを組めたのだ。もっと喜びはりきって戦うべきだ、なのに――。
*
「お前はいっつもそうだ! 不満ばっかで、『じゃあどうすんだ』って聞いても言いやしねぇ! 他の誰かとなら上手くやれたはず、ソレばっかだ! テメェが決めて、テメェ自身でなんとかしろ! もう俺はいねぇんだ、お前がお前の手で掴み取れよ!」
怒鳴るエドウィンのセリフを、ハムザは黙って俯いている。
「……お前のバディは、お前の望んだ学年一位だ。なら、ソイツがどんな奴だろうとも、ぶつかり合って上に上がれよ。俺はもう二度とお前と組まねぇ」
エドウィンがそこまで言ったとき、ハムザが顔を上げ、挑むようにエドウィンを見た。
「……いや、ユーノは今日で俺とチームを解消するって言ったぞ。兄貴とお前をもう一度取り替えるから、お前と組めと。だからユーノは兄貴と依頼を受けに行ったんじゃないか」
エドウィンが怪訝な顔をした。
「違うぜ。その場に俺もいたけどよ、ユーノはお前を見限って、一人で全部やるから兄貴にやり方を教えろ、っつってた。ジミーは『学長の許可が下りたら、一度だけ組んで、そのときに教えてやる』っつったんだよ。で、学長の許可が下りたって話だった……」
そこまで話していてエドウィンは違和感を感じた。何かがおかしいと。
ハムザはエドウィンの発言を強く否定した。
「いや違う。俺は、ユーノとのチーム解消の申請書にサインをした。ユーノは、それを持って学長に再度取り替えるように説得する、って言ったんだ。兄貴とお前には話をつけたから、って……」
エドウィンはハムザの話を最後まで聞かずその場を飛びだし、学長室へ殴り込んだ。
「……お前、何やってんだ?」
「……いや、勢いで」
エドウィンの軌道を変えるため、足場を見定めてシールド魔法を唱えたので、自分のシールドを張ることが出来なかった。
結界魔法だけでいけるかな、って思ったけど、俺の結界魔法だと上級魔物の物理攻撃は防げないらしい。
ぶつかったときにキマイラが俺を振り払うように引っ掻いてきて、勢いはだいぶなかったものの、腕を怪我してしまった。ざっくり裂けて、血が流れている。
「大丈夫だ。俺は……威力はお前ほどないけど、使える魔法の種類が多い。回復魔法も使えるよ」
そう言うと、回復魔法を詠唱する。
「癒やしの加護よ、魔の物がつけし傷を慈しみで覆い、拭い去り清めよ」
すると、傷にヌルッとした透明な膜が張られたようになり、傷が癒えていった。
「よし、こんなもんだろ」
俺が頷くと、エドウィンが大きなため息をついた。
「ノーダメでいきたかったのに、つか、俺が駆けつけたときは怪我してなかったくせに、最後の最後で怪我をするとかねぇだろうがよ……」
「まだ未熟だからな。次はもう少しうまく動ける」
むしろ、最後の最後でうまく連携が取れた気がする。俺としては及第点だ。
「……にしても。本当に助かった。ありがとうな。よく俺の居場所がわかったな? というか、よく俺が罠にかかったってわかったな?」
エドウィンだって、すっかり騙されていた感じだったのに。
エドウィンが頭を掻く。
「あー……。それな。思い出した、ちょっと待ってろ」
エドウィンが、腕輪に手を当てた。手を離すと今度は腕輪に向かって話し始めた。
「おう、俺の勘が当たったぜ! んでもって、無事救出したぜ! んじゃ、帰っからよ、そっちも引き上げてくれや。なんかあったら連絡する」
そして、俺を見て言う。
「よし、帰るか」
「待て。もう少し説明しろ」
さっぱりわからない。
エドウィンは、俺がユーノと討伐に向かったのでハムザ・ヘンダーソンのところに行ったらしい。
エドウィンも元バディに思うところがあり、特に対抗戦でユーノに任せきりだったのが非常に気になったそうだ。
自分と違う奴と組んだらもっと上手くやれるのに、そう言っていたのだからもっと動くべきだ、ランキング一位におんぶに抱っこになりたいからバディを変えたいと言っていたのではないのだろう? と、そう発破をかけに向かったそうだ。
「ハムザとは腐れ縁……つーか、ガキの頃から一緒の孤児院で育ったからよ。ま、仲良かったかっつーと、あんまよくなかったんだけどな。でも、同い年だからって何かと一緒にされてたし、喧嘩ばっかしてたけど、それなりに長いこと組んでたんだよ」
孤児院時代からずっと、他の奴と組めれば自分はもっと上に行けるのに、と言い続けていたという。
不満しかない腐れ縁のバディと縁が切れ、念願叶って最高とも言える条件のバディとチームを組めたのだ。もっと喜びはりきって戦うべきだ、なのに――。
*
「お前はいっつもそうだ! 不満ばっかで、『じゃあどうすんだ』って聞いても言いやしねぇ! 他の誰かとなら上手くやれたはず、ソレばっかだ! テメェが決めて、テメェ自身でなんとかしろ! もう俺はいねぇんだ、お前がお前の手で掴み取れよ!」
怒鳴るエドウィンのセリフを、ハムザは黙って俯いている。
「……お前のバディは、お前の望んだ学年一位だ。なら、ソイツがどんな奴だろうとも、ぶつかり合って上に上がれよ。俺はもう二度とお前と組まねぇ」
エドウィンがそこまで言ったとき、ハムザが顔を上げ、挑むようにエドウィンを見た。
「……いや、ユーノは今日で俺とチームを解消するって言ったぞ。兄貴とお前をもう一度取り替えるから、お前と組めと。だからユーノは兄貴と依頼を受けに行ったんじゃないか」
エドウィンが怪訝な顔をした。
「違うぜ。その場に俺もいたけどよ、ユーノはお前を見限って、一人で全部やるから兄貴にやり方を教えろ、っつってた。ジミーは『学長の許可が下りたら、一度だけ組んで、そのときに教えてやる』っつったんだよ。で、学長の許可が下りたって話だった……」
そこまで話していてエドウィンは違和感を感じた。何かがおかしいと。
ハムザはエドウィンの発言を強く否定した。
「いや違う。俺は、ユーノとのチーム解消の申請書にサインをした。ユーノは、それを持って学長に再度取り替えるように説得する、って言ったんだ。兄貴とお前には話をつけたから、って……」
エドウィンはハムザの話を最後まで聞かずその場を飛びだし、学長室へ殴り込んだ。
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