16 / 51
第16話 やっぱ女かよ!
しおりを挟む
翌日。ホームルームで、俺とエドウィンがアイテムハンターを目指していること、アイテムハンターはセイバーズの中では特殊な職位かつポイント制では評価しきれなくなったことにより、ランキングから外されることになった、という説明があった。
ざわついたが、ほぼ全員が納得した顔だ。
昨日のナタリア教官の悲鳴や、俺たちの納品の査定でマスターズルームが空になった話、さらには、俺たちが去ってからの教官たちの浮かれようが噂になり、ポイントがすさまじいことになったのを察したのだろう。
全員がチラリと俺を見たが、俺は特に反応しなかった。
俺を憐れんでくれるのなら御の字だし、ざまあみろでもまあまあいい。そう絡まれたとき、相槌を打てばいいからな。
問題は、この措置すら納得しない連中だな。いないことを祈ろう。
昼休み、ランキング表が張り出されたらしい。
もちろん見に行かない。興味ない。絡まれたくない。
俺は、マスターズルームに行ってようと考えて席を立った。
シモンズ教官がさっそく参考書を取り寄せてくれたらしい。
「学長も、わがアカデミーからアイテムハンターが輩出されることを喜び、皆でサポートするようにとの指示が出ている。君たちのおかげで予算も潤沢にあるからな! 他にもほしい参考書があったらぜひ言ってくれたまえ!」
と、ホームルームが終わった途端に声をかけられたわけだ。
予算が潤沢か……。確か、アカデミーは直営の商会があり、そこで生徒が納品したドロップアイテムを販売していたな。
しかも、まだ本職ではないということで格安に売っている、とか聞いた。行ったことすらないけど。
俺が廊下を歩いていると、向かいから誰かやってきた。……確か、俺に殴りかかったエエカッコしいの男だ。
俺が思わず眉根を寄せてしまったら、相手も俺を認めてばつが悪そうな顔で謝ってきた。
「……その、悪かったよ。殴りかかってさ……」
「謝られても許す気はない。女子にカッコつけたいからって理由で俺を利用した罪は重い」
「そっちかよ!? ……あ、いや、確かにそう言われるとホント悪かったって思った、反省してるって。……だって、イイトコ見せたいじゃん?」
じゃん? じゃねーよ! ふざけんな!
「違うことでイイトコ見せろよ! 俺に食ってかかったって別にカッコいいワケねーだろ! 大ごとになってお気に入りの女子ごと反省文書かされるだけだわ! そんなんなら、ちょっとポイント譲ってやった方がまだ効果的だろ!」
「それはもうやってる。しかも、慣れちゃってて当たり前になってる」
マジかよ。女子って結構エグいな。いや男がバカなだけか。
悪かったもうやらないから、とペコペコ謝ってきたので一度だけ許すことにした。いや、次にやったらマジで女子ごと反省文書かせるように仕向けてやるからな!
謝ってきた男はグレッグ・クワンと名乗った。
なんとなく連れ立って歩く。
「アイテムハンターってどうよ?」
「どうって言われてもなぁ……。わりとプレッシャーかもな。魔物討伐が目的じゃないから、アイテムを必ず拾わなきゃならないのと、レアドロップアイテムが依頼内容だから、ボス部屋なんかは周回確定。効率よくやらないと任務失敗になりそうだ」
「うわぁ……マジかよめんどい」
「そっちはどうよ? 俺、元のバディは弟でちょっと特殊だったし、今はアイテムハンターになったから他所を知らなくてさ。どういう感じで戦ってるんだ?」
聞いたら、互いに見つけた敵をそれぞれ倒すらしい。もしも二人で倒したときは、彼女にドロップアイテムを譲っている、って感じだそうだ。
ふーん……。どこも似たような感じか。俺たちも連携はしてないな。どっちかがメインで戦って、雑魚掃討はそれぞれ頑張る、って感じだもんな。
「魔法は?」
「あんまりだなー。詠唱してる暇があったら剣で斬りつけた方が早い。お前は?」
「同じくかな。エドウィンはわりと使ってるけど」
「え!? あの脳筋、魔法使いなのかよ!?」
「……俺も驚いてる。アイツってわりと天才型。真面目にドロップアイテム拾ってりゃもっと上にいけただろうに……」
言動は確実に脳筋なのにな。
「あー……。それで思い出したけど……ランキングはいいのか? 弾かれてたけど」
グレッグ・クワンが俺の顔色をうかがうような感じで尋ねてきた。
「気にしない。俺はワーストワン、エドウィンはワーストツー。順位を気にしてたらもっと頑張ってたよ。というか、レアドロップアイテムに関しては努力じゃどうにもならないから、そこを評価されてランキングで上がってもなー……って俺たちも思ってたし」
「……なら、いいけど。俺らが騒いだからランキングから外されたかもしんないって、ドナが気にしてたから……」
グレッグ・クワンがモニョモニョ言った。
…………。やっぱ女かよ!
尻に敷かれている疑惑のグレッグ・クワンと別れてマスターズルームに行くと、エドウィンとばったり会った。
「あれ? ランキング見に行ってたんじゃないのか?」
「見に行ったら呼び出された」
俺は目を細めた。
「……俺が目を離している隙に、暴れたりしてないだろうな?」
「してねーよ! 濡れ衣着せんな! つか、誰も話しかけてこなかったぜ。アレだな、『腫れ物に触るな』」
それはよかった。
「じゃあ、なんで呼び出された?」
って俺が尋ねたらフィッシャー教官が出てきた。
「ちょうど良かった、ジミー・モーガン。学長室へ来てくれ」
……学長に呼び出されたのか。
ざわついたが、ほぼ全員が納得した顔だ。
昨日のナタリア教官の悲鳴や、俺たちの納品の査定でマスターズルームが空になった話、さらには、俺たちが去ってからの教官たちの浮かれようが噂になり、ポイントがすさまじいことになったのを察したのだろう。
全員がチラリと俺を見たが、俺は特に反応しなかった。
俺を憐れんでくれるのなら御の字だし、ざまあみろでもまあまあいい。そう絡まれたとき、相槌を打てばいいからな。
問題は、この措置すら納得しない連中だな。いないことを祈ろう。
昼休み、ランキング表が張り出されたらしい。
もちろん見に行かない。興味ない。絡まれたくない。
俺は、マスターズルームに行ってようと考えて席を立った。
シモンズ教官がさっそく参考書を取り寄せてくれたらしい。
「学長も、わがアカデミーからアイテムハンターが輩出されることを喜び、皆でサポートするようにとの指示が出ている。君たちのおかげで予算も潤沢にあるからな! 他にもほしい参考書があったらぜひ言ってくれたまえ!」
と、ホームルームが終わった途端に声をかけられたわけだ。
予算が潤沢か……。確か、アカデミーは直営の商会があり、そこで生徒が納品したドロップアイテムを販売していたな。
しかも、まだ本職ではないということで格安に売っている、とか聞いた。行ったことすらないけど。
俺が廊下を歩いていると、向かいから誰かやってきた。……確か、俺に殴りかかったエエカッコしいの男だ。
俺が思わず眉根を寄せてしまったら、相手も俺を認めてばつが悪そうな顔で謝ってきた。
「……その、悪かったよ。殴りかかってさ……」
「謝られても許す気はない。女子にカッコつけたいからって理由で俺を利用した罪は重い」
「そっちかよ!? ……あ、いや、確かにそう言われるとホント悪かったって思った、反省してるって。……だって、イイトコ見せたいじゃん?」
じゃん? じゃねーよ! ふざけんな!
「違うことでイイトコ見せろよ! 俺に食ってかかったって別にカッコいいワケねーだろ! 大ごとになってお気に入りの女子ごと反省文書かされるだけだわ! そんなんなら、ちょっとポイント譲ってやった方がまだ効果的だろ!」
「それはもうやってる。しかも、慣れちゃってて当たり前になってる」
マジかよ。女子って結構エグいな。いや男がバカなだけか。
悪かったもうやらないから、とペコペコ謝ってきたので一度だけ許すことにした。いや、次にやったらマジで女子ごと反省文書かせるように仕向けてやるからな!
謝ってきた男はグレッグ・クワンと名乗った。
なんとなく連れ立って歩く。
「アイテムハンターってどうよ?」
「どうって言われてもなぁ……。わりとプレッシャーかもな。魔物討伐が目的じゃないから、アイテムを必ず拾わなきゃならないのと、レアドロップアイテムが依頼内容だから、ボス部屋なんかは周回確定。効率よくやらないと任務失敗になりそうだ」
「うわぁ……マジかよめんどい」
「そっちはどうよ? 俺、元のバディは弟でちょっと特殊だったし、今はアイテムハンターになったから他所を知らなくてさ。どういう感じで戦ってるんだ?」
聞いたら、互いに見つけた敵をそれぞれ倒すらしい。もしも二人で倒したときは、彼女にドロップアイテムを譲っている、って感じだそうだ。
ふーん……。どこも似たような感じか。俺たちも連携はしてないな。どっちかがメインで戦って、雑魚掃討はそれぞれ頑張る、って感じだもんな。
「魔法は?」
「あんまりだなー。詠唱してる暇があったら剣で斬りつけた方が早い。お前は?」
「同じくかな。エドウィンはわりと使ってるけど」
「え!? あの脳筋、魔法使いなのかよ!?」
「……俺も驚いてる。アイツってわりと天才型。真面目にドロップアイテム拾ってりゃもっと上にいけただろうに……」
言動は確実に脳筋なのにな。
「あー……。それで思い出したけど……ランキングはいいのか? 弾かれてたけど」
グレッグ・クワンが俺の顔色をうかがうような感じで尋ねてきた。
「気にしない。俺はワーストワン、エドウィンはワーストツー。順位を気にしてたらもっと頑張ってたよ。というか、レアドロップアイテムに関しては努力じゃどうにもならないから、そこを評価されてランキングで上がってもなー……って俺たちも思ってたし」
「……なら、いいけど。俺らが騒いだからランキングから外されたかもしんないって、ドナが気にしてたから……」
グレッグ・クワンがモニョモニョ言った。
…………。やっぱ女かよ!
尻に敷かれている疑惑のグレッグ・クワンと別れてマスターズルームに行くと、エドウィンとばったり会った。
「あれ? ランキング見に行ってたんじゃないのか?」
「見に行ったら呼び出された」
俺は目を細めた。
「……俺が目を離している隙に、暴れたりしてないだろうな?」
「してねーよ! 濡れ衣着せんな! つか、誰も話しかけてこなかったぜ。アレだな、『腫れ物に触るな』」
それはよかった。
「じゃあ、なんで呼び出された?」
って俺が尋ねたらフィッシャー教官が出てきた。
「ちょうど良かった、ジミー・モーガン。学長室へ来てくれ」
……学長に呼び出されたのか。
13
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――
唯野晶
ファンタジー
【シリアス悪役令嬢モノ(?)。分からないことがあるのは幸せだ】
ある日目覚めたらずっと大好きな乙女ゲーの、それも悪役令嬢のレヴィアナに転生していた。
全てが美しく輝いているセレスティアル・ラブ・クロニクルの世界。
ヒロインのアリシア視点ではなく未知のイベントに心躍らせる私を待っているのは楽しい世界……のはずだったが?
「物語」に翻弄されるレヴィアナの運命はいかに!?
カクヨムで先行公開しています
https://kakuyomu.jp/works/16817330668424951212
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる