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第8話 将来……
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俺が物思いに沈んでいたら、いきなり背中を強く叩かれた。
「イテッ!」
「何暗い顔してんだよ! 喜ぶところだろココはよ!」
浮かれた顔のエドウィンがこちらを見ている。
「俺ら、〝アイテムハンター〟っつーカッコいいチームになれるんだぜ? お前の言う通り、これからは真面目に拾うからよ! でもって、お前のその空間魔法にバンバンしまってくれよな!」
「ソコは他力本願かよ」
「別にいいだろ? お前と組んでんだからよ! 俺ら、チームだろ?」
「……まぁ、確かにそうだけどさ。……それにしても、良かったのか? ポイント」
エドウィンは今回、俺がエドウィンと同位に上がるようにポイントを割り振ってくれ、と頼んだ。
俺は断ろうとしたが、エドウィンが怒鳴ったのだ。
「お前に荷物持たせて、交渉させて、こんだけポイントもらって、そんでも半々は俺のプライドが許さねぇんだよ! お前だって、逆だったら嫌だろうが!」
俺はそれで頷いた。エドウィンのプライドを傷つけるつもりはない。
同位に上がることでエドウィンが納得してくれるのなら、そうするべきだ。
「……お前は、前、自分が好きに動いているんだから、俺にも好きなように動け、って言ったよな?」
エドウィンが頷いた。
「俺はたぶん、世話をするのが好きなんだ。いろいろ尽くすのが好きなんだと思う。だから俺、弟に対してそこまで悪感情はないんだ、アイツは尽くす俺に対して何も思うことはなかったから」
俺は、エドウィンを見た。
「俺はこれからも、お前のプライドを傷つけるようなことをするだろう。いつか耐えられなくなって、チーム解消をするかもしれない。……そうなったら、アイテムハンターを目指したとしても意味が無い。俺とお前が組まなけりゃ、レアドロップは発生しないんだから。だったら、最初から目指さず普通にセイバーズとして卒業するべきだ……イテッ!」
最後まで言いきったらエドウィンに頭を叩かれた。
そしてエドウィンが盛大なため息をつく。
「あのなー……。テメーが異常なまでの世話好き綺麗好きなのなんざ、とっくに知ってるわ! 女子か、って思うわ! んでもって、そのネガティブ思考やめろ! なんでそう、暗ーく物事を最悪な展開に考えんだよ!? 第一、俺は耐えねーよ! なんで俺様がテメーに気兼ねして耐えなきゃなんねーんだよ!? 嫌なことは嫌だっつうわ! テメーだってさんざん俺に言ってんだろうが! なんで俺だけ耐える前提なんだよ!?」
エドウィンに怒鳴られて、俺は口を開けて呆けた。
……確かにそうだ。俺は耐えてない。だって、ちょっとでも耐えたら爆発しそうだから。
なのに、エドウィンに耐えろ、っつってんのか。
エドウィンがジロリと睨む。
「やなこった! 誰が耐えるかボケ。俺は俺のやりたいようにやるし、言いたいことを言う。ドロップアイテムを拾うのは、俺が納得したからだ。俺のやりたいことを阻止する気なら、俺を説得してみろってんだよ! あと、アイテムハンターになるのは決定だ! 理由はカッコいいからだ! レア、ってのもそそる! 嫌なら俺を説得してみろ!」
一気にまくし立ててきた。
俺は逡巡する。
……理由は言っても理解してもらえないか、理解したら即解消されるかの二択で、ただ……エドウィンはそもそもセイバーズとしても合格ラインにいるはずなので、アイテムハンターとしての依頼を受けていたとしても、卒業後に俺とバディを解消して普通のセイバーズになったとしても大丈夫だろう。
「……プライドが傷つけられたって言っただろう?」
「傷ついた、なんて言ってねーよ。俺のプライドが許さねぇ、っつったんだ! そんで、お前が俺を納得させる理由を言えば、納得するかもしんねぇ。こないだみたく、『教官命令に逆らったら反省文書かされるぜ』ってよ」
……え、そんなんでよかったのか?
ていうか、そんなに反省文が嫌なのか……。
ハァ、と俺はため息をつく。
「……なら、いいよ。俺の世話好きのせいでプライドをへし折られた、って奴がいたから、お前もそうかって考えただけだ。……あと、お前が俺と同位で納得したからいいけど、俺、一般教養の試験は全科目満点で、純粋にポイント差分で穴埋めしたら、俺はもっと上位に入ってるから」
俺が付け加えた、みたいな感じで呟いたらエドウィンは愕然としていた。
「だから、半々にしときゃよかっただろ? 次の一般教養の試験で満点取らないとお前、俺より下位に転落だよ」
「……テメェ! それこそ俺のプライドを傷つけてきたじゃねーかよ! 泣くぞ!」
エドウィンが情けない声で怒鳴ってきたので、俺は声を出して笑った。
そして空を見上げた。
……将来のことどころか、卒業した後もわからなくなる。
だけど……俺とアイテムハンターを目指そうと言ってくれるバディが、横にいる。
今は、その現状に甘えたい。俺を憎む義母と弟のことを、忘れていたい。
顔を戻すと、エドウィンに言った。
「疲れたし、早く寮に戻ろうぜ。衣類は出しとけ、一緒に洗ってやるから。あと、シャワーを浴びて歯磨きしてから寝ろ、わかったな」
「さっそくうぜーんだよ。わーったわーった、荷物は全部お前に預けてあっから、全部任せた」
「お前もやれよ! 他人任せにするな!」
「お前がやった方が確実だろ。俺は向いてねぇ」
「じゃあ、向くようになるまで徹底的にしごいてやるから。部屋に戻ったら衣類のたたみ方をみっちり教えてやる」
「やめろ、お前マジでやりそう」
マジで言ってるからな。教育してやるわ。
「イテッ!」
「何暗い顔してんだよ! 喜ぶところだろココはよ!」
浮かれた顔のエドウィンがこちらを見ている。
「俺ら、〝アイテムハンター〟っつーカッコいいチームになれるんだぜ? お前の言う通り、これからは真面目に拾うからよ! でもって、お前のその空間魔法にバンバンしまってくれよな!」
「ソコは他力本願かよ」
「別にいいだろ? お前と組んでんだからよ! 俺ら、チームだろ?」
「……まぁ、確かにそうだけどさ。……それにしても、良かったのか? ポイント」
エドウィンは今回、俺がエドウィンと同位に上がるようにポイントを割り振ってくれ、と頼んだ。
俺は断ろうとしたが、エドウィンが怒鳴ったのだ。
「お前に荷物持たせて、交渉させて、こんだけポイントもらって、そんでも半々は俺のプライドが許さねぇんだよ! お前だって、逆だったら嫌だろうが!」
俺はそれで頷いた。エドウィンのプライドを傷つけるつもりはない。
同位に上がることでエドウィンが納得してくれるのなら、そうするべきだ。
「……お前は、前、自分が好きに動いているんだから、俺にも好きなように動け、って言ったよな?」
エドウィンが頷いた。
「俺はたぶん、世話をするのが好きなんだ。いろいろ尽くすのが好きなんだと思う。だから俺、弟に対してそこまで悪感情はないんだ、アイツは尽くす俺に対して何も思うことはなかったから」
俺は、エドウィンを見た。
「俺はこれからも、お前のプライドを傷つけるようなことをするだろう。いつか耐えられなくなって、チーム解消をするかもしれない。……そうなったら、アイテムハンターを目指したとしても意味が無い。俺とお前が組まなけりゃ、レアドロップは発生しないんだから。だったら、最初から目指さず普通にセイバーズとして卒業するべきだ……イテッ!」
最後まで言いきったらエドウィンに頭を叩かれた。
そしてエドウィンが盛大なため息をつく。
「あのなー……。テメーが異常なまでの世話好き綺麗好きなのなんざ、とっくに知ってるわ! 女子か、って思うわ! んでもって、そのネガティブ思考やめろ! なんでそう、暗ーく物事を最悪な展開に考えんだよ!? 第一、俺は耐えねーよ! なんで俺様がテメーに気兼ねして耐えなきゃなんねーんだよ!? 嫌なことは嫌だっつうわ! テメーだってさんざん俺に言ってんだろうが! なんで俺だけ耐える前提なんだよ!?」
エドウィンに怒鳴られて、俺は口を開けて呆けた。
……確かにそうだ。俺は耐えてない。だって、ちょっとでも耐えたら爆発しそうだから。
なのに、エドウィンに耐えろ、っつってんのか。
エドウィンがジロリと睨む。
「やなこった! 誰が耐えるかボケ。俺は俺のやりたいようにやるし、言いたいことを言う。ドロップアイテムを拾うのは、俺が納得したからだ。俺のやりたいことを阻止する気なら、俺を説得してみろってんだよ! あと、アイテムハンターになるのは決定だ! 理由はカッコいいからだ! レア、ってのもそそる! 嫌なら俺を説得してみろ!」
一気にまくし立ててきた。
俺は逡巡する。
……理由は言っても理解してもらえないか、理解したら即解消されるかの二択で、ただ……エドウィンはそもそもセイバーズとしても合格ラインにいるはずなので、アイテムハンターとしての依頼を受けていたとしても、卒業後に俺とバディを解消して普通のセイバーズになったとしても大丈夫だろう。
「……プライドが傷つけられたって言っただろう?」
「傷ついた、なんて言ってねーよ。俺のプライドが許さねぇ、っつったんだ! そんで、お前が俺を納得させる理由を言えば、納得するかもしんねぇ。こないだみたく、『教官命令に逆らったら反省文書かされるぜ』ってよ」
……え、そんなんでよかったのか?
ていうか、そんなに反省文が嫌なのか……。
ハァ、と俺はため息をつく。
「……なら、いいよ。俺の世話好きのせいでプライドをへし折られた、って奴がいたから、お前もそうかって考えただけだ。……あと、お前が俺と同位で納得したからいいけど、俺、一般教養の試験は全科目満点で、純粋にポイント差分で穴埋めしたら、俺はもっと上位に入ってるから」
俺が付け加えた、みたいな感じで呟いたらエドウィンは愕然としていた。
「だから、半々にしときゃよかっただろ? 次の一般教養の試験で満点取らないとお前、俺より下位に転落だよ」
「……テメェ! それこそ俺のプライドを傷つけてきたじゃねーかよ! 泣くぞ!」
エドウィンが情けない声で怒鳴ってきたので、俺は声を出して笑った。
そして空を見上げた。
……将来のことどころか、卒業した後もわからなくなる。
だけど……俺とアイテムハンターを目指そうと言ってくれるバディが、横にいる。
今は、その現状に甘えたい。俺を憎む義母と弟のことを、忘れていたい。
顔を戻すと、エドウィンに言った。
「疲れたし、早く寮に戻ろうぜ。衣類は出しとけ、一緒に洗ってやるから。あと、シャワーを浴びて歯磨きしてから寝ろ、わかったな」
「さっそくうぜーんだよ。わーったわーった、荷物は全部お前に預けてあっから、全部任せた」
「お前もやれよ! 他人任せにするな!」
「お前がやった方が確実だろ。俺は向いてねぇ」
「じゃあ、向くようになるまで徹底的にしごいてやるから。部屋に戻ったら衣類のたたみ方をみっちり教えてやる」
「やめろ、お前マジでやりそう」
マジで言ってるからな。教育してやるわ。
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