【溺愛の恋】~あなたは、私だけのモノ~

一ノ瀬 彩音

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キョロキョロッ、辺りの様子を窺いながら、中に入る。
後ろから、彼が付いて来ているのを確認しつつ、奥へと進んでいく。
部屋の中央まで来ると、ピタッと足を止め、振り返った。
すると、彼が、近づいてきて、ギュウッと抱きしめられる。

ドクンドクン、鼓動が速くなっていく。
ドキドキ、緊張しながらも、恐る恐る、背中に手を伸ばし、抱きしめ返した。
しばらく、そのままの状態でいると、彼が離れていったので、ホッと息をつく。

それから、二人で、ソファーに移動した。
並んで座り、お互いの顔を見ると、自然と笑みがこぼれる。

彼は、優しい笑みを浮かべたまま、
「これからは、ここで暮らすんだよ」
と言った。

どうやら、ここは、二人の愛の巣になる予定の場所らしい。
そう思うと、急に、恥ずかしくなってきたけれど、同時に、嬉しい気持ちにもなった。
(この人と、ずーっと一緒なんだ)

そう考えると、ドキドキして、落ち着かない気分になってしまう。
そんな私を見て、彼がクスッと笑みをこぼした。
それから、少しの間、他愛のないことを話した後、立ち上がる。

「それじゃ、また後でね」
そう言って、部屋を出て行った。

一人になった途端、寂しさを感じてしまう。
(早く、戻ってこないかしら)
そう思いながら、待っていると、しばらくして、彼が戻ってきた。

手に持っていたものをテーブルの上に置くと、隣に座ってくる。
それは、一冊のアルバムだった。
パラリ、ページが捲られていく。
そこには、沢山の写真が貼られていた。

写真の中には、幼い子供の姿もある。
おそらく、彼が子供の頃のものなのだろう。
懐かしそうに見つめている彼に、恐る恐る尋ねる。

「あの、これは……」
すると、彼は、アルバムを閉じて、こちらを見た。
真剣な表情になっていることに気づき、思わず、姿勢を正す。

ゴクリ、唾を飲み込むと、彼は、ゆっくりと口を開いた。

「君には、俺の子供を産む義務がある」
突然の言葉に驚きつつも、なんとか返事を返す。

「えっと、はい」
「俺には、君が必要なんだ」
「……」

彼は、真っ直ぐにこちらを見据えていた。
その瞳には、強い意志が宿っており、思わず、見惚れてしまいそうになる。
だが、すぐに我に返ると、慌てて口を開く。

「えっと、どうしてですか?」
すると、彼は、少し困ったような表情になりながらも、説明してくれた。

どうやら、彼には、子供が出来ない体質らしく、このままでは、跡継ぎがいなくなってしまうのだと言う。
そのため、私に子供を産んで欲しいのだそうです。
正直、いきなりそんな話をされても困ってしまうのだが、断れる雰囲気ではなかった。

それに、私自身も、彼との子なら、生みたいと思っている。
なので、了承することにした。
すると、彼は、嬉しそうに微笑むと、ギュウッと抱きしめてくる。
そして、耳元で囁かれた。
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