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――私は、誰なんだろう。
そう思いながら、目を覚ました。
ここはどこなのか、自分が何者かも分からない。
ただ、一つだけ分かるのは、自分が今、見知らぬ部屋にいるということだけだった。
(どうして、こんなところにいるんだろう……)
起き上がろうとすると、ズキッと頭が痛んだ。
どうやら、頭を強く打ったらしい。
「うっ……」
思わず、声が出る。
すると、部屋の扉が開かれ、一人の男性が入ってきた。
(この人は、一体?)
その男性は、とても美しい顔をしていた。
彼は、私の方を見ると、驚いたように目を見開いた。
そして、すぐに駆け寄ってくる。
「大丈夫か?」
心配そうな表情を浮かべる彼に、戸惑いながらも、なんとか返事をする。
「あ、はい」
私が答えると、彼はホッとしたような顔になった。
それから、優しく微笑む。
ドクンッ、心臓が大きく跳ねた気がした。
彼の笑顔を見た瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げてくる。
それは、今まで感じたことの無い感情だった。
戸惑っている間に、彼がベッドに腰掛けてきたため、ギシッという音が部屋に響く。
それを聞いた途端、また、鼓動が激しくなった。
ドクンドクン、自分の心音だけが聞こえる中、彼が再び口を開く。
「良かった……。君を見つけた時は、本当に焦ったよ」
「えっと、あの、すみません、ここって、どこですか?」
恐る恐る尋ねると、彼は、少し困ったような笑みを見せた後、
「ここは、俺の家だよ」
と答えた。
家、ということは、やはり、どこかの建物の中なのだと思うのだが、全く見覚えがない場所です。
それに、先ほど、彼と話した時、違和感を覚えたのだけれど、その理由が分かった。
日本語を話しているはずなのに、何故か、言葉の意味を理解することが出来なかったからだ。
まるで、外国語を聞いているみたいである。
しかし、不思議と、会話自体は出来ていた。
そのことを伝えると、彼は、一瞬、複雑そうな表情をした。
だが、すぐに、元の優しい笑みに戻る。
そして、ゆっくりと、頭を撫でてくれた。
それが心地良くて、つい、頬を緩めてしまう。
すると、今度は、ギュウッと抱きしめられた。
突然の行動に驚きつつも、ドキドキしてしまう。
しばらく、そのままの状態でいた後、ようやく、解放してくれた。
名残惜しく思ってしまう自分に気づき、慌てて首を横に振る。
そんな私を見て、彼はクスリと笑うと、立ち上がった。
「とりあえず、何か食べるものを持ってきてあげるね」
そう言って、部屋を出て行ってしまった。
一人残された私は、改めて、辺りの様子を窺う。
まず、目に付いたのは、大きな窓だった。
そこから見える景色は、綺麗な青空が広がっている。
太陽の光が眩しく、思わず、目を細めた。
次に、視線を動かすと、机の上に花瓶が置かれていることに気づく。
そこには、白い薔薇の花が飾られていた。
(あれ? 確か、さっきまで、何も無かったはずだけど……)
そう思ったものの、特に気にせず、部屋を観察し続ける。
すると、しばらくして、彼が戻ってきた。手には、お盆を持っており、その上に、パンやスープなどが載っている。
それをテーブルの上に置くと、椅子を引いてくれた。
「どうぞ、座って」
促されるまま、席に着く。
目の前に置かれた食事からは、美味しそうな匂いが漂ってきて、空腹感が増していく。
ゴクリ、唾を飲み込むと、彼は、スプーンを手に取り、食べやすい大きさにちぎると、こちらに差し出してきた。
私は、戸惑いながらも、パクッとそれを食べる。
モグモグ、咀しゃくしている間、彼は、ニコニコしながら、その様子を眺めていた。
恥ずかしくなり、俯きながら、飲み込んだ。
それから、チラッと、彼を見る。
目が合うと、嬉しそうに微笑まれた。
ドキッ、心臓が大きく跳ねる。
そう思いながら、目を覚ました。
ここはどこなのか、自分が何者かも分からない。
ただ、一つだけ分かるのは、自分が今、見知らぬ部屋にいるということだけだった。
(どうして、こんなところにいるんだろう……)
起き上がろうとすると、ズキッと頭が痛んだ。
どうやら、頭を強く打ったらしい。
「うっ……」
思わず、声が出る。
すると、部屋の扉が開かれ、一人の男性が入ってきた。
(この人は、一体?)
その男性は、とても美しい顔をしていた。
彼は、私の方を見ると、驚いたように目を見開いた。
そして、すぐに駆け寄ってくる。
「大丈夫か?」
心配そうな表情を浮かべる彼に、戸惑いながらも、なんとか返事をする。
「あ、はい」
私が答えると、彼はホッとしたような顔になった。
それから、優しく微笑む。
ドクンッ、心臓が大きく跳ねた気がした。
彼の笑顔を見た瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げてくる。
それは、今まで感じたことの無い感情だった。
戸惑っている間に、彼がベッドに腰掛けてきたため、ギシッという音が部屋に響く。
それを聞いた途端、また、鼓動が激しくなった。
ドクンドクン、自分の心音だけが聞こえる中、彼が再び口を開く。
「良かった……。君を見つけた時は、本当に焦ったよ」
「えっと、あの、すみません、ここって、どこですか?」
恐る恐る尋ねると、彼は、少し困ったような笑みを見せた後、
「ここは、俺の家だよ」
と答えた。
家、ということは、やはり、どこかの建物の中なのだと思うのだが、全く見覚えがない場所です。
それに、先ほど、彼と話した時、違和感を覚えたのだけれど、その理由が分かった。
日本語を話しているはずなのに、何故か、言葉の意味を理解することが出来なかったからだ。
まるで、外国語を聞いているみたいである。
しかし、不思議と、会話自体は出来ていた。
そのことを伝えると、彼は、一瞬、複雑そうな表情をした。
だが、すぐに、元の優しい笑みに戻る。
そして、ゆっくりと、頭を撫でてくれた。
それが心地良くて、つい、頬を緩めてしまう。
すると、今度は、ギュウッと抱きしめられた。
突然の行動に驚きつつも、ドキドキしてしまう。
しばらく、そのままの状態でいた後、ようやく、解放してくれた。
名残惜しく思ってしまう自分に気づき、慌てて首を横に振る。
そんな私を見て、彼はクスリと笑うと、立ち上がった。
「とりあえず、何か食べるものを持ってきてあげるね」
そう言って、部屋を出て行ってしまった。
一人残された私は、改めて、辺りの様子を窺う。
まず、目に付いたのは、大きな窓だった。
そこから見える景色は、綺麗な青空が広がっている。
太陽の光が眩しく、思わず、目を細めた。
次に、視線を動かすと、机の上に花瓶が置かれていることに気づく。
そこには、白い薔薇の花が飾られていた。
(あれ? 確か、さっきまで、何も無かったはずだけど……)
そう思ったものの、特に気にせず、部屋を観察し続ける。
すると、しばらくして、彼が戻ってきた。手には、お盆を持っており、その上に、パンやスープなどが載っている。
それをテーブルの上に置くと、椅子を引いてくれた。
「どうぞ、座って」
促されるまま、席に着く。
目の前に置かれた食事からは、美味しそうな匂いが漂ってきて、空腹感が増していく。
ゴクリ、唾を飲み込むと、彼は、スプーンを手に取り、食べやすい大きさにちぎると、こちらに差し出してきた。
私は、戸惑いながらも、パクッとそれを食べる。
モグモグ、咀しゃくしている間、彼は、ニコニコしながら、その様子を眺めていた。
恥ずかしくなり、俯きながら、飲み込んだ。
それから、チラッと、彼を見る。
目が合うと、嬉しそうに微笑まれた。
ドキッ、心臓が大きく跳ねる。
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