悪役令嬢は姉の身代わりに結婚させられて王子に溺愛される

29.

仕方が無いので、スープを飲むことにする。
これならなんとか飲めそうである。
とはいえ、一口飲んでみるとやっぱり無理だ。
それどころか、お腹に不快感を覚えると急いでトイレへと駆け込んだ。
「ごめんなさ……い」
吐いてしまい慌てて兵士に抱き起される。
「まさか、王子妃様、おなかに……」
その言葉を聞いた私は、顔色が悪くなり絶望した。
その言葉の意味する意味は妊娠を意味しており、
しかも私は昨日、弟に抱かれてしまっている。
つまり、私が彼の子を宿した可能性があるということなのだ。
そんな事になったら私はもう二度と元の場所に戻れないと思った。
そして私は、必死になって懇願する。
だが、その願いは届かなかったのである。
その後、私は体調が優れないので部屋で休んでいた。
本当は安静にしなければならないのに私の心は乱れたままで中々落ち着くことは出来なかった。
私は目を閉じて思い出す。
私は今までに人を好きになったことはない。
ましてや異性に恋をするといった経験がなかった。
だからこそ、私は今回の件で戸惑ってしまっていた。
そればかりか、私は彼に触れられると嬉しいと感じていた。
それだけではなく、彼のことが気になっていた。
私は彼に会った時から、不思議な感覚に囚われていたがその理由がようやく理解出来た。
私は彼の事が好きだったんだ。
だけど、それも終わってしまう、私は取り返しのつかないことをしたのだから。
だから私はせめて彼の側に居たいと強く願ったけど、叶わない。
そもそも、ここから出られたとしても、私は帰る家がない。
だから私はここで静かに暮らすことを選んだが、彼は違う。
彼は次期国王として忙しく過ごすことになる。
そして私は邪魔者にしかならず、いずれは処刑されてしまう。
それは絶対に避けなければならない。
だが、どうすればいいのか分からない。
その時私はふと思い出す。
そういえば、彼はどうして私の事をここまで大切にしてくれるのだろうと疑問に思う
最初は確かに、政略的な婚約関係だったが、彼は次第に私に対して優しく接してくれていた。
なのに裏切ってしまった。
もう、フィリス王子殿には嫌われてしまったであろう。
そう思ってしまうと涙が出てしまう。それに加えて、私は弟の事が気になってしまう。
彼は、ラヴィーゼはとても寂しそうな顔をしていたが、今はどんな表情をしているのだろうか。
彼は一体何を考えているのだろうか。
私はここを出ることは出来ない。
何故ならば、私は罪を犯した人間なのと、そして何よりもフィリスを裏切ったという自覚があり、
とてもじゃないが合わせる顔が無かったのだ。
私は、彼が好きだと気付いたと同時に失恋してしまったのだと改めて実感してしまい、泣き崩れてしまう。
いつの間にか眠りについていたのであった。
次の日の早朝の事だった。
フィリスが私を迎えに来たのは、そして、彼に連れられて向かった先は、私の実家だった。
「いまなんて……」
「お前のお腹の子は俺の子だと言った」
その言葉に私は驚愕した。
それは、私達が初めて出会った時の言葉であったからだ。
私は、思わず後ずさりする。
そうしてから、私は彼から逃げようとするが、それは叶わなかった。
そればかりか、彼に強く抱きしめられてしまう。
そして、耳元で囁かれる。
「どうして逃げる？ 俺の事嫌い？」
私は首を横に振る。
そんな訳はない。むしろ私は彼が好きで好きで堪らなかったのだ。