悪役令嬢は姉の身代わりに結婚させられて王子に溺愛される

10.

しかも、相手は姉の婚約者である。
いくら何でも無茶な話だろう。
私としては、あまり気が進まないのだ。
しかし、姉は本気のようである。
私はどうすればいいのだろうか？
私はそう思いながら姉に質問する。
「えっと……つまり私がそのフィリス様の元へ行けばいいのですか？！」
姉はその通りだと答えた後で微笑んで見せた。
だが私は内心では困惑していたのである。なぜなら私はまだ彼と出会って間もないというのにどうしてこのような決断を下さなければならないのだろうか？
そう考えていると、姉が私に向けてこう言ったのである。
それはまるで、私の気持ちを見透かしているかのように思えた。
だが、彼女はそれ以上は何も言わなかったのだ。
恐らく彼女も私と同じことを思っていたのかもしれないわね。
それにしても、どうして私が彼の所へ嫁ぐことになったのかと言うと、私の姉は、今現在フリーの状態だという。
そこで姉は考えたのだ。
このままだと、いつ自分が誰かと結婚させられるかもしれない。
そうなる前に先手を打つべきだと。
だが、姉には相手が居ない。
そう悩んでいる時にふと思い出したのだという。
以前姉の婚約者だった男性が私のことを好きだと言っていたことを、だからこそ姉は私を利用することにしたのだ。
それを聞いた私は、複雑な気持ちになった。
だって、彼は姉の婚約者なのだ。
そんな彼が私に対して好意を抱いているなど考えられなかった。
きっと嘘に決まっている。
しかも、私は前の婚約者と婚約破棄した上舞踏会でフィリス殿下に無理やりキスされている。
それは世間的にも悪い意味で有名になっているはずだ。
それなのに、どうして彼の方から私に会いに来るというのだろうか？
それに私は彼を傷つけてしまったはずだ。それだというのにどうして？
私は彼の意図が全く分からず疑問符ばかり浮かんでいた。
私が姉に
「お姉様1人は怖いです、同席してください」
そう懇願するも肩を頑張りなさいと叩かれる。
そして入れ替わる様にフィリス王子殿下が入ってきた。
「おはよう、アンナ」
その声は何を考えているのか分からない。
「お断りさせてください、私のは自身の婚約していない人の元に輿入れしたくはありません」
すると、彼は困った表情を浮かべていた。私は、この表情を見たことがある。
あれは確か舞踏会の時だったわね。
私は、その表情を見て確信した。
彼は本気で私を愛しているということを、でも私にはその感情は分からない。
私には、まだそんな余裕がないの。
だから、私は彼を突き放そうとした。
「婚約破棄をお願いします、お姉様とやり直してください。私には心に決めた人がいますので、あなたとは婚約するわけにはいきません」
私はきっぱりとそう言い切った。
だけど彼は諦めようとはしない。
「確かに君のお姉さんは魅力的な女性だ。しかし、俺は彼女を婚約者として見ることができないんだ。だからどうか頼む、俺と一緒に来てくれ、そして二人で幸せになろう。君が俺の傍にいてくれるだけで、幸せなんだ」
私はその言葉を聞いて、思わず胸が高鳴ってしまった。
だけど私は首を横に振ると、必死になって彼に訴えた。
「嫌です、私は姉の代わりにはなれません」
すると彼は、悲しそうな表情を浮かべると、私を引き寄せると強引に唇を奪ってきた。
あまりに唐突だったので私は抵抗することができなかったのである。
しかもそれだけではなかった。
なんと舌を入れて絡め合わせてきたのだ。私は驚きを隠せなかったものの次第に受け入れてしまい、そのままされるがままになってしまう。