悪役令嬢は姉の身代わりに結婚させられて王子に溺愛される

一ノ瀬 彩音

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だから、不意打ち気味な形でキスしてきた後に頭を撫でながらそっと抱き寄せてくる。
耳元で再び同じ台詞を口にしてくれたのだがそれを聞いた瞬間に思わず笑みを浮かべると彼に向けてこう答えることにした。
それはつまり、彼が、私を求めてきているということだ。
私が彼の事を拒絶できるはずがない。
何故なら、私も彼のことを求めているのだから
私が彼に対して特別な感情を抱いているのは既に分かっていたことだ。
けれども、それを素直に伝えるのは恥ずかしくてどうしてもできない。
そう思っているうちにいつの間にか彼のペースに乗せられてしまう。
それにしても、彼の私に対する接し方は一体どういうことなのだろうか。
私としては好都合なのかもしれないのだけれども、このままだと私の身体を好き勝手に弄ばれてしまうのではないだろうか。
そう考えるだけで私はゾッとする。
それは決して不快ではなく寧ろ逆で気持ちいいと感じてしまっているのだ。
彼の声や仕草に反応するように感じてしまい、私自身も彼を意識している。
けれども私は、まだ心の準備が出来ていないのだ。
彼の前では強がりたいのだ。
それだというのに彼の方が私を求めてきてくれているのである。
それがとてもうれしいのだ。
けれども私自身にその覚悟がまだ出来ていなかった。
私自身が彼のことを好きなのかどうかわからないからだ。
私は、彼の何処に惹かれて好きになってしまったというのだろうか?
最初はそうではなかったはずだ。
それならばどうして今は好きになっているのであろうか?
正直、今となってはよくわからなかった。
気が付けば、自然と惹かれていっていたのだから……。
それにしても、どうしてこんなことに!?
私はそう思いながらため息をつく。
すると、目の前にいた男性が心配そうにこちらを見ている、それもそうよね。
急に押し倒されたのだから困惑するのも無理はないと思うわ。
でも、これは全て私を騙そうとするための作戦に違いないんだから騙されてはいけないわ。
そもそも、こんなにもあっさりと引っかかってしまうとは思わなかった。
それにしても、この人はいったいなにしに来たのでしょうかね。
もしかして私を攫おうとしたのかしら?
そう思っていれば案の定だったようで
やはり、こいつは危険だ。
それに、私はこんな奴と結ばれるわけにはいかないんだ。
そう思っていたのも束の間の出来事で、
彼は私に対して好意を持っているようだ。
私に好意を持ってくれているのは、嬉しい
でも、今はそれどころじゃないの。
早く逃げないと大変なことになる。
だから、私は思いっきり突き飛ばして逃げようと思ったのだけれど、意外にも力が強くて逃げ出せない。
すると彼は泣きそうな表情を浮かべると、必死になって抱きついて来た。
その光景を見て思わず戸惑ってしまったのは言うまでもないわ。
だけど、ここで引き剥がさないと、もっと酷い目に遭うと思った私は、力づくで引き剥がすことにしたわ。
すると、彼は驚いた表情をしながら固まっていた。
でも、私は気にせずそのまま扉の方に向かって走って行った。
扉を開けて外に出ると、勢いよく閉めたのであった。
ようやく危機的状況から逃れることが出来た私は安堵したのと同時に、先ほどまでの事を思い出して思わず顔が真っ赤になる。
あの時の感触を思い出せば出す程にドキドキしてしまい、同時に恥ずかしさを覚えてその場で倒れ込んでしまった。
それからしばらく経ってようやく落ち着くと、私はある決意をする。
すぐに行動に移したのである。
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