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それはフィリス王子が最近お疲れ気味な様子を見せていたことから少しでも元気づけられないだろうか?
と考えていた私だったがその方法について悩んでいた。
悩み続けて早数ヶ月、その間ずっと考えていた事だったのだがいい案が浮かぶこともなく時間だけが過ぎていった。
そんな折、フィリス王子の方から声を掛けられてしまったのだ。
普段から忙しそうにしているフィリス王子がわざわざ時間を割いてまで話しかけてくれたことが嬉しいと感じた私は喜びを隠しきれないといった感情を抑え込み平静を装いながら応じることが出来た。
その事によってフィリス王子は安堵したかのような微笑みを見せると共に私へと視線を向けて来る。
その行為だけで私は胸の奥がきゅぅーとなる感覚を覚えてしまう。
私はそのことに戸惑いを感じていたのだけれども、それを表に見せないように意識しながらも、何とか話題を探すべく必死になって思考を走らせていくことにした。
そんな私を見兼ねたのかフィリス王子は助け舟を出してくれるかのように私の名前を口にすると優しい口調で告げてくださった。
「そんな緊張なさらなくても結構ですよ。いつも通りにして頂いても私は一向に気にしないので安心なさっていてください。」その言葉を聞いた私は、一瞬戸惑ってしまったのだがすぐに気を取り直すとともに、感謝の意を込めてお礼を言うと共に笑顔を向ける。
彼は驚いたのか少しだけ顔を赤く恥ずかしげな表情を見せてくる。
その反応が何とも可愛く見えてしまい、
つい意地悪をしたくなる衝動に駆られる。だがそれは私の中の理性で押し止める。
これ以上彼を困らせるのはあまりよろしくない。
それに、今は他に考えるべきことがある。
私は、一度大きく深呼吸をする。
「申し訳ございませんでした。取り乱したりしてしまって。」
私がそう謝罪の言葉を告げると同時に再び笑みを浮かべながら改めて彼の名前を呼ぶ。今度ははっきりとした声で。
「ありがとうございます。私の事を気遣ってくれただけでも凄くうれしゅうごじゃいます」
またしても、噛みながらのお礼となってしまった。
何度、練習しても、上手く話すことが出来ない自分が悔しいと思ってしまう。
その事に気づいたのか、フィリスは優しく語りかけてきた。
その事にまた、私の鼓動が激しく脈打つ。きっと、私の顔色は、茹で蛸のように真っ赤になっているに違いない。
その事に、私は、さらに、羞恥心を煽られて、まともに彼と向き合うことが出来なくなってしまった。
その行動はあまりにも不敬だ。
私は、その事に、気づくと、咄嵯に身を引こうとした。
その事に、私は、焦りを感じ、身体の動きを止めようとする。
けれども、その事に対して、私の体は、全くと言っていいほど、動いてはくれなかった。
そして、次の出来事は、私にとっては予想外の事だったと言ってもいい。
なんと、私の体が勝手に動き出して、私は、彼の胸に飛び込み、抱きついていた。その事に、私は、驚きの声を上げそうになるものの、寸前で思いとどまり、なんとか声を上げることはなかった。
けれども、その事に、私の、気持ちが高ぶりすぎていたのか、私の瞳からは、大粒の涙が流れ出していた。
泣きたいわけではない。
むしろ、今すぐこの場から離れたいという思いに溢れているはずなのに、私の体は自分の思いとは反対に、私の意思とは無関係に、涙を流し続けていた。
けれども、なぜか私の頬は、緩んでしまっており、
口角が上がるのを抑えることが出来ずにいた。
私の脳裏には、あの時、初めて出会った時のことを思い出し始めていたからだと思われる。
そう、あれは初めて会った時だ。
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