上 下
5 / 36

5.

しおりを挟む
だから私は信じますと言った。
その言葉にヒリスは驚いた様子だった。
それから彼は、 私に真実を語り始めた。彼の生い立ちについて。
そして彼が抱えていたコンプレックスについても……。
彼の話を最後まで聞いた私は、ようやく理解することができた。
だから、私は決意を固めた。
彼を、愛していると。たとえ一方通行の想いだとしても構わない。
そう伝えることができただけでも十分だ。
だから私は彼にこう言った。
「私もあなたを愛しています」
と。
そして私たちは結ばれたのである。
後日、王宮にて国王陛下から謝罪を受けた。
なんでも、私が王宮を抜け出した後、ヒリス殿下が私を探しに行ったらしい。
そこで彼は偶然、聖女が国を抜け出そうとしている場面を目撃した。
もちろん、彼女は自分が異世界から来た人間であることを隠していた。
それを知った彼は、急いで王宮に戻り、国王陛下に報告したのだという。
すると、国王陛下は激昂して彼女を捕らえるように命令を下したというわけだ。
しかし、それは表向きの理由でしかなく、本当の理由は別にあるのだという。
実は、聖女が召喚されてからというもの、王宮ではある噂が広がっていた。
それは、彼女が神に選ばれた存在であり、
聖女の力で国は繁栄していくというものだった。
つまり、聖女を失うことは国の未来が閉ざされることと同義だった。
だから、私は聖女を守るために国外追放にしたのだとか。
そして、私は英雄としてまつられ始めた。
「お前さ、本当は違うって何で言わないの」
と呆れた口調で言う殿下に私は微笑みながら答えた。
だって、そんなことしたらみんなが混乱してしまうでしょう?
それに、こうして貴方と一緒になることができたのだから、もういいの。
こうして私たちは幸せよ。……だから心配しないで」
私は貴方のことが大好きだから。
……たとえ一方通行だとしても、私は貴方のことを愛し続けるのよ
そう思って居たら溜息をつかれた。
「お前さ、正直言うぞ、疲れないか?」
どういう意味だろうか?よくわからなかったけど、私は首を傾げるだけで答えた。
今日もまたヒリス殿下のお見舞いに来た。
相変わらず忙しそうだ。
だけど、最近は前よりはマシになったと聞いている。
その理由は、簡単だった。
「そんな悪役令嬢ごっこなんてやめちまえ、ここは乙女ゲームの世界では無い、異世界なんだ、
俺の愛を受けれないというのなら、もっとわかりやすくしてやろうか?」
そう言い放つなり、いきなりキスをしてきた。
突然のことに頭が真っ白になる。
しかし、すぐに離れてしまう。……残念なような、ホッとしたような複雑な気分だった。
そして、そのままベッドに押し倒される。
覆い被されて身動きが取れなくなるが、
「まって」
「お前は自分は悪役令嬢だとかこの世界はゲームで自分は脇役なのだとか思っているのだろう」
図星を突かれてドキッとする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの愛されヒロインに転生したら、ノーマルエンド後はゲームになかった隣国の英雄と過ごす溺愛新婚生活

シェルビビ
恋愛
 ――そんな、私がヒロインのはずでしょう!こんな事ってありえない。  攻略キャラクターが悪役令嬢とハッピーエンドになった世界に転生してしまったラウラ。断罪回避のため、聖女の力も神獣も根こそぎ奪われてしまった。記憶を思い出すのが遅すぎて、もう何も出来ることがない。  前世は貧乏だったこら今世は侯爵令嬢として静かに暮らそうと諦めたが、ゲームでは有り得なかった魔族の侵略が始まってしまう。隣国と同盟を結ぶために、英雄アージェスの花嫁として嫁ぐことが強制決定してしまった。  英雄アージェスは平民上がりの伯爵で、性格は気性が荒く冷血だともっぱらの噂だった。  冷遇される日々を過ごすのかと思っていたら、待遇が思った以上によく肩透かしを食らう。持ち前の明るい前向きな性格とポジティブ思考で楽しく毎日を過ごすラウラ。  アージェスはラウラに惚れていて、大型わんこのように懐いている。  一方その頃、ヒロインに成り替わった悪役令嬢は……。  乙女ゲームが悪役令嬢に攻略後のヒロインは一体どうなってしまうのか。  ヒロインの立場を奪われたけれど幸せなラウラと少し執着が強いアージェスの物語

異世界で迷子を保護したら懐かれました

稲刈 むぎ
恋愛
恋人いない歴=年齢だった私(宮内 稔)は、気がついたら高校1年の時の姿で知らない場所にいた。 運良く森で暮らす老夫婦に拾ってもらうが、老夫婦との幸せな生活も、2人の寿命であっさりと終わってしまう。 老夫婦が残してくれた家や畑で細々と生活していたある日、行き倒れている少年を拾う。 無口でおとなしい少年(ノルック)と打ち解けてきたと思ったある日、少年は姿を消しーーー “僕の帰る家はここです。 あなたのそばにいるのに相応しくなるためにあなたのそばを離れました。 もう2度と離れたりしません。” おとなしかった少年が執着溺愛魔術師になって再び姿を現すと、稔は徐々に世界の使命に巻き込まれていく。 執着溺愛魔術師(ノルック)×世話焼き転移者(ミノリ) ※ヤンデレ要素がありますので苦手な方は逃げてください。 ※完結しました。読み続けて下さった方ありがとうございます!

【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!

夕立悠理
恋愛
シアノ・メルシャン公爵令嬢には、前世の記憶がある。前世の記憶によると、この世界はロマンス小説の世界で、シアノは悪役令嬢だった。 そんなシアノは、婚約者兼、最推しの負けヒーローであるイグニス殿下を勝ちヒーローにするべく、奮闘するが……。 ※心の声がうるさい転生悪役令嬢×彼女に恋した王子様 ※小説家になろう様にも掲載しています

婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。 それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。 そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。 ※王子目線です。 ※一途で健全?なヤンデレ ※ざまああり。 ※なろう、カクヨムにも掲載

悪役令嬢なのに、完落ち攻略対象者から追いかけられる乙女ゲーム……っていうか、罰ゲーム!

待鳥園子
恋愛
とある乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わったレイラは、前世で幼馴染だったヒロインクロエと協力して、攻略条件が難し過ぎる騎士団長エンドを迎えることに成功した。 最難易度な隠しヒーローの攻略条件には、主要ヒーロー三人の好感度MAX状態であることも含まれていた。 そして、クリアした後でサポートキャラを使って、三人のヒーローの好感度を自分から悪役令嬢レイラに移したことを明かしたヒロインクロエ。 え。待ってよ! 乙女ゲームが終わったら好感度MAXの攻略対象者三人に私が追いかけられるなんて、そんなの全然聞いてないんだけどー!? 前世からちゃっかりした幼馴染に貧乏くじ引かされ続けている悪役令嬢が、好感度関係なく恋に落ちた系王子様と幸せになるはずの、逆ハーレムだけど逆ハーレムじゃないラブコメ。 ※全十一話。一万五千字程度の短編です。

猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。 王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。 最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。 あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……! 積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ! ※王太子の愛が重いです。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

処理中です...