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王家と公爵家といえば、本来なら釣り合わないほど身分差がある。……まぁ、私の場合は養子だから関係ないと
言えばそれまでなのだが。
そんなことを考えながら歩いていくと、いつの間にか王宮の庭園に出ていた。手入れの行き届いた花壇を眺めつつ、
二人でゆっくりと歩き続ける。
すると、ヒリス殿下が急に立ち止まった。
どうしたのかと尋ねようとした時、彼は静かに語り始めた。
曰く、彼は自分の出自にコンプレックスを持っているのだという。それは、王族としての誇りか? それとも別のものなのか? 
……残念なことに、今の私はそこまで踏み込む勇気がなかった。
だから代わりにこう言ったんだ。
私は貴方を尊敬していますと。
彼のことをよく知りもせず、ただ表面的な部分だけを見て判断するのは間違っていると思う。
だから私は彼を尊敬する。
誰に恥じることも無い立派な人物だと。
その言葉に嘘偽りはない。……けれど、同時にこうも思った。
私がもっと早く生まれていればと。
そうしたら彼とは良き友として、また違う関係を築けたかもしれない。
だが、それももう遅い。
全ては後の祭りなのだ。
だから最後にこれだけは伝えておきたかった。
私は貴方のことを愛していると。
たとえそれが一方通行の感情であっても構わない。
伝えることができただけで満足だった。……こうして私たちは別れた。……。
あれ? おかしいな?なんか話が変だぞ?これじゃあまるで私が彼に告白したみたいじゃないか!
(うわあああっ!)
恥ずかしくて死にそうだ。穴があったら入りたい気分である。……でも、少しだけ胸の中にあった
モヤモヤが取れた気がした。
やっぱり直接言葉で伝えたかったのかもしれない。……よしっ、次は頑張ろう。
屋敷に帰ったあと、ヒリス殿下と会った。
相変わらず忙しい人だ。
けれど、今日はいつもと違ってとても真剣だった。
まるで何かを決意したかのような強い意志を感じた。
そのあと、なぜか彼の部屋に行くことになった。
初めて入るそこは想像以上に散らかっている。
そしてそこには聖女ユリナが裸でベットに寝かされて居てしかも、瞳からは涙が流れていた。
一体どういうこと!?思わず声を上げそうになるが、すんでのところで飲み込んだ。
とにかく今は落ち着かないと! 動揺しながらも必死に冷静になろうとするが、なかなか上手くいかない。
そして、ついに殿下が動いた。
彼は私に近づいてくる。
「忘れ物?」
唐突に聞かれて戸惑ってしまう。
えっと、忘れ物ですか……?特に思いつかないのですが。
首を傾げていると、ヒリス殿下がさらに問いかけてくる。
私は素直に答えるが、殿下はさらに質問を重ねてきた。
……結局、答えられずに黙り込んでしまった。
そして沈黙が場を支配する。
耐え切れなくなった私はその場から逃げ出すことにする。……しかし、すぐに捕まってしまった。
そして、殿下に抱きしめられる。
一瞬、心臓が止まるんじゃないかと思った。
驚きで思考停止しそうになるが、必死に考える。
……これは、まずい! 非常にまずい! だって、こんなのって! まるで恋人同士の抱擁だ。
そう思うと同時に顔が熱くなるのを感じる。
ドキドキして死にそう。いや、むしろ死にそう。
王太子が苦笑すると
「まずはお前の敵を始末せねばな」
そういうなり泣いている聖女のユリナに火属性攻撃魔法を放つのでした。
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