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そしてもう一人は、こちらもまた、若そうな女性だった。
ただし、その容姿は異形のモノだった。
人間の上半身と、巨大な下半身が分かれていたのだ。
その巨大すぎる尻のせいで、太もものあたりまで地面に埋まっていた。
なんなんだ、あいつらは!?
魔物、ではないだろう、魔物は知能が低い。
あんな、人を馬鹿にしたような格好はしないはずだ。
「あー、ごほんっ」
咳ばらいが聞こえてきた。
見れば、その美女の背後で、先程の老人が佇んでいた。
「お爺様」
そう言った彼女の声は、先程とは違い、とても甘ったれたものに聞こえる。
なるほど、そう言えば彼女はそう呼んでいましたね。
「姫、先ほども申したが、お主はお嫁に行く身なのだぞ。いつまでも、そのような口調で話すものではない」
そう言いつつ、お祖父さんは腰掛けに座った。
そして、私にも椅子を勧めてくれた。
私は黙ってその申し出を受けることにした。
お礼を言いつつ、遠慮なく、その立派な革張りの座面に体を預けさせて貰う、
「ふむ、なかなかいい座り心地ですね」
思わずそんな感想を漏らしてしまったら、お祖父さんは何とも言えない微妙な顔をされてしまった。
そして、私の隣の席にどっかりと大きな音を立てて腰を下ろしたかと思うと、
「あの子、普段は物静かなんですが……失敬、孫娘は少々気が立っているのです。何分、年頃なものでしてな。しかし、貴方の事は大変気に入ったようです。先ほど、自分の事のように語ってくれましたよ。是非、今度うちに遊びに来てくださいと言っております」
「えぇ喜んで伺わせてもらいましょう。ところで、先ほど話に出ていた魔王というのは?」
私が問うと少しばかり、躊躇いを見せるお祖父さんだ。
そして、小さく溜息をつくとお話ししてくだされば幸いだと言葉を続けられた。
そこで俺は思い返す。
何故こんな状況になったのかを、話は数時間前に遡る。
俺がいつも通り目を覚まし、布団の中で伸びをした時、突然視界が暗くなった。
停電でも起きたかなと思ったのだが、どうにも様子がおかしい。
真っ暗闇の中、俺は必死に考えを巡らせる。
そもそもここはどこだ? 部屋なのか、外なのか、それすらわからない。
体を動かそうとしたが、妙に重い。
金縛りにでもあったのか? いやまて、これはまるで――
「……あれ? なんでこんなところにいるんだろう? 俺、確か学校に行って……それで……あれ? あぁそうだ、思い出してきた……俺死んだんだ……」
俺の頭上より、少年の声が響く。
その瞬間、俺は悟ってしまった。
あ、詰んだと。
その声の主は、所謂神という奴だろう。
俺の魂は輪廻転生の輪に組み込まれ、来世へと運ばれていく。
俺自身が死ぬ前に体験したことで、今更疑う余地もない。
つまり、この状況は死後の世界ということになる。
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