元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音

文字の大きさ
上 下
5 / 737

5.

しおりを挟む
彼は人の良さそうな笑顔を浮かべてこちらを見つめてくる。
「はい、せっかくなので一緒に回ろうと思って」
ミハルは嬉しそうに答える。
俺も同じ気持ちだったので、素直に同意することにした。
「そうだな、俺もそのつもりだった」
俺の言葉を聞いたミハルは微笑んでくれる。
「ふふ、ありがとうございます」
それからしばらく三人で雑談をしていると、突然大きな歓声が上がった。
そちらを見ると、舞台の上で二人の男女が踊りを披露していた。
「おっ、始まったようだぜ」
俺はミハルと男の方へ目を向ける。
すると二人は情熱的なダンスを繰り広げている。
「うわ~凄いですね」
ミハルは目を輝かせている。
俺もミハルと一緒になって魅入っていた。
そして曲が終わり二人が離れようとした時、男の手が女の乳房に触れた。
すると女は顔を真っ赤にして怒っている様子で何かを叫んでいる。
だが、周りが騒がしくてよく聞こえなかった。
そしてそのまま口論になり、やがて殴り合いに発展した。
そして取っ組み合いになったところで、
「そこまでだ!  お前たち何をやっている!」
と、声が響いた。
見ると、そこには剣を携え鎧を着た男たちが立っていた。
彼らは衛兵隊と呼ばれる組織であり、普段は王都の治安を守ってくれている。
しかし、今回はたまたま巡回中に揉め事を見つけてしまったらしい。
すると、騒ぎを聞きつけた他の者たちが集まって来て、
「なんだ喧嘩かい?」
「またあいつらがやっちまったみたいだ」
などと口々に言い合っている。
そして、そのうちの一人が声を上げた。
「おい、やめろって。これ以上やるっていうんなら、騎士団を呼ぶぞ」
すると、争っていた二人は大人しくなり、お互いに謝り始めた。
そして、その場は収まり、騒動は終わった。
俺はホッと胸を撫で下ろすと、ミハルが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかなったよ。助かった」
俺とミハルは改めて感謝の意を伝えた後、再び祭りを楽しむことにした。
そしてしばらくした後、
「そろそろ帰らないといけませんね」
とミハルは残念そうに呟く。
俺もそれに同意した。
「ああ、そうだな。名残惜しいけど仕方がない」
するとミハルは俺の手を握って来た。
俺は驚いてミハルの顔を見る。すると彼女は恥ずかしそうに俯いていた。
俺はそんなミハルを愛おしいと思いながら、手を握り返した。
ミハルは顔を上げると、潤んだ瞳を向けてくる。
俺はそんな彼女にキスをした。
するとミハルは幸せそうな表情を浮かべ、そのまま俺の胸に顔を埋めてくる。
俺はそんなミハルを優しく抱きしめた。
しばらくして、
「あの、ユウトさん……私、まだ帰りたくないです」
と、ミハルが上目遣いで見上げてくる。
俺はドキッとしてしまう。
俺はミハルの肩を掴むと、真剣に見つめる。
するとミハルは頬を染めながらも真っ直ぐにこちらを見つめ返してきた。
「ミハル、俺は君を愛してる。だからずっと側に居て欲しい」
するとミハルは一瞬驚いたようにしていたがすぐに満面の笑みを浮かべる。
「はいっ!  喜んで」
こうして俺はミハルと結ばれたのであった。
翌朝、俺はベッドの中で微睡んでいた。
隣にはミハルがいる。
昨夜はとても幸せな時間を過ごした。
俺はミハルの頭を撫でる。するとミハルはゆっくりと瞼を開いた。
「おはようミハル」
「おはようございます。ユウトさん」
ミハルはニコリと笑う。俺はミハルの唇に自分のそれを重ねた。
「んっ……」
ミハルの口から甘い吐息が漏れる。
俺はミハルをギュッと抱き寄せた。
ミハルは俺の背中に腕を回し、身体を寄せて来る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

処理中です...