悪役令嬢は隣国へ嫁ぐようですよ!?~私は旦那様に愛されてそして生まれるRhapsody~

一ノ瀬 彩音

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私を優しく見つめる視線はまさに聖母のような慈しみに満ちていて、
「あなたは誰なんでしょうか?  何故助けてくれたの?」
思わず疑問をぶつけてみると彼は微笑を浮かべてからこう言った。
「マリアベル様、私に名前なんてありませんよ。
ただ貴方が愛しいと感じた女性を守る為にこうして動いているだけのこと」
私は困惑しつつも彼の話を聞いていて、
まるで物語の主人公の様な言葉の数々に感動すらしていた。
しかしそれはすぐに恐怖へと変わることになった。
なんと彼からとんでもない事実を聞かされてしまったからだ。
「そう言えば申し遅れましたね。私はとある組織の長をしているものですが、
貴方のお陰で計画が進みました。ありがとうございます。
ところで私のお願いを聞いて貰えないでしょうかね?
聞いてくれたら色々とお礼をしたいと考えています」
「お願いの内容によって私の返答は異なるのですが、
私に叶えられることならお手伝いさせていただきます」
(内容を聞く前から断れないわ。私の運命を左右する選択ですもの。
慎重に検討しなければなりません。ですが彼の願いとはどのようなものになるのでしょう?)
私は恐ろしさ半分興味が半分といった感情でそのお願いを待ったが一向に口を開かない彼。
私としては焦れていたところだったのでようやく口にしてくれると
分かったときは安堵の溜息を漏らさずにはいられなかった。
彼のお願いの内容はとてもシンプルなものであった。
「貴方が欲しい」
「私はもうバレッド様のものです」
「違うね、君の心さ」
「それは違いませんわ」
「強情なんだね」
「貴方はどうなの?」
「僕?  そうだね……僕のモノになればきっと僕は満たされることができるかもしれないな」
「あらそうなんですか」
「まあね」
「私はどうなるのかしら」
「それは勿論決まっているさ、バレッド様と共に幸せを掴むことができる」
「そうか嬉しいなあ、本当にいい加減バレッド様のことを
考えるのが辛くなっていた所でしたの」
「じゃあ早速契約の儀を行うとしましょうか」
「分かりました。では私の処女を差し上げたいと思います」
そしてお互いが唇を重ね合わせ、熱い抱擁をしながら私は彼と繋がることになりました。
これが私にとって初めての出来事であり、バレッド様には言えない初めてでもありまして。
初めて結ばれた後は二人きりになれる空間を探し出すために人気のない場所を歩き続け、
見つけたのがこの場所、廃墟の教会です。
どうせ使う人もおらず忘れ去られた教会なのだから問題は無いとばかりに私は大胆に彼に体を預けていました。
(もうバレッド様への愛情が薄れ始めているのを実感している)
それくらいにこの方との時間は私の中で大きなものとなっているのだ。
彼はどんなことをされても私のことを大事にしてくれている。
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